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2024年7月16日 (火)

何年ぶりかな、御茶ノ水、聖橋あたり~短歌会の全国大会に参加して

  私の所属する「ポトナム短歌会」の全国大会が、7月14日、湯島の東京ガーデンパレスで開かれた。前回、私が参加したのは2019年の京王プラザホテル一泊での開催だった。この間、大会はコロナ禍で中止になったり、日帰りとなったりした。今回も、11時受付開始、夕方の6時半には懇親会も終えるという忙しない日程であった。講演、分科会、写真撮影、表彰式もほとんど休憩もなく続けられた。東京の会員を中心とする準備も苦労が多かったのではと思う。

  今年の「白楊賞」は、大学生の小野愛加さんの「先生になる」だった。懇親会の途中、立話ながら、若い編集委員と小野さんも交えて、中断している「ポトナム短歌会」のブログ再開やオンライン歌会の話にもなった。何とか実現してほしいものと願うばかりだ。

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  お料理を堪能しながら、同じテーブルの方との話が進む。当日欠席となった方の分のお料理も、何かと運ばれてきて、テーブルの上は賑やかになる。分科会終了後、配布された作品集にある、選者賞も、互選賞も、私には縁がなかったが、提出歌は「卓上のミモザの花の散り初めて触れたる棘に寛容なる朝」。ご近所で枝打ちさなかの一枝を分けていただいたミモザ、黄色い小さな花が散り始めて、灰色の棘に、思わず触れたけれど、しばらくの間、黄色い花を十分楽しんだのだから・・・といった気分の歌だった。分科会で、ある評者が、ミモザは、国際女性デーのシンボルの花だと触れてくださったのは、うれしかった。あの棘は、いつまでたっても、日本では、いや世界各地でも女性の権利が十分守られていないことへ抵抗のような気もして、寛容どころか、ストレートに怒りを表現すべきだったかとも。

 当日、佐倉の自宅に帰れる時間ではあったが、一泊することにした。翌日は、雨も上がったので、ホテルの近辺をまわることにした。

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 何十年ぶりかの「神田明神」だったが、境内は広く、整備されていて、外国人も多く、ミストが流れる休息所まであった。本殿の右手奥には、江戸時代の木材商、店舗兼家屋だった建物を移築された「神田の家・井政」があり、さらに進むと、木立に囲まれた「宮本公園」があった。その入り口に何やら消防車と数人の消防署員たち立っている。「何かあったのですか」と尋ねてみるが、「いや、何も、どうぞ、お気をつけて」と。ところが、消防署員の視線の先は、ベンチに、微動だにしない、老紳士風な人が座っていた。病人でもなさそうだし・・・。道にでも迷った人だったのか。

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 本郷通り(17)を渡ると小さな公園があって、湯島聖堂・昌平坂学問所跡との案内板があり、塀を隔てて、聖橋方面の本郷通りに面して、大成殿へと通じる入口がある。

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 湯島聖堂は、江戸時代、綱吉将軍が1690年、儒学振興のために設置されたもので、後、昌平坂学問所にもなった。明治維新後、文部省所管となり、日本最初の博物館が置かれた。1872年、日本最初の図書館と言われる書籍館、東京師範学校が設置されたので、近代教育発祥の地と言われるようになった。関東大震災で焼失して、今はコンクリート造りの「大成殿」を背に階段をくだると「入徳門」に至る。上記写真の階段の先に見えるのが「大成殿」となる。

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 湯島聖堂を出て道路の反対側、聖橋の傍らにも、「近代教育発祥の地」の銘板があった。そして、聖橋の真ん中あたりからの眺めは、格別である「松住町架道橋」というらしい緑のアーチ状の橋、神田川の水面すれすれに走るのが地下鉄丸ノ内線だそうだ。かつては毎日池袋始発で通勤に利用していたというのに。

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2024年7月 2日 (火)

来年の歌会始の選者が決った~やっぱり栗木京子も

  2022年12月に亡くなった篠弘の後任は栗木京子だろうとブログなどで予想していたのだが、みごとに外れて2024年から大辻隆弘になった。*ところが、来年の選者になったのである。きのう、宮内庁から7月1日付で発表になった2025年の歌会始の選者五人は、以下の通りである。肩書は産経新聞に拠る。

三枝昂之(80)=山梨県立文学館館長、永田和宏(77)=歌誌「塔」選者、京都大名誉教授、今野寿美(72)=歌誌「りとむ」同人、現代歌人協会会員、栗木京子(69)=現代歌人協会理事長、歌誌「塔」選者、大辻隆弘(63)=現代歌人協会会員、現代歌人集会理事

*来年の「歌会始」はどうなるのだろう(2023年3月 9日)
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2023/03/post-74140a.html

   2012年から務めてきた内藤明に替わって栗木京子が入ったことになる。誰が選者になったって、コップの中のこと、世の中に関係ないよ、と言われそうだが、やはり、ここで確認しておきたい。

 これまでも、幾度となく、書いてきたことなのだが、歌会始の選者になることが、歌人にとって、一つのステイタスになっていながら、歌壇ではなんとなく無関心を装ったり、無視したりする風潮がある。また、歌会始は、数ある短歌コンクールの一つに過ぎないという軽くいなす人たちもいる。果たしてそうだろうか。

 歌会始は、天皇と国民をつなぐ伝統ある貴重な文化的な行事であると喧伝されているが、毎年、あのNHKの中継を見ていると、文化的というより、異様な雰囲気にしか思えない。伝統といっても、たかだか明治以降、いや戦後から今のような形になったといってよい。国民から募った入選作、皇族・召人・選者の短歌は天皇に捧げる次第となっている。その一部が独特の朗誦で披講され、披講される間、作者は立ち上がる。天皇だけは、終始座って、それを聴き、いちばん最後に天皇の一首が披講されて終了する。選者の一人は、「御用掛」となって、年間を通して皇族方の短歌の指導にあたるのである。

 選ばれる歌も、普通に短歌雑誌や新聞歌壇、ネット上に行き交っている短歌が登場するだろうか。たとえば、政権批判や脱原発、基地反対、日本の戦争責任を読むことができるだろうか。誰もが傷つかない、平和への希求、暮らしの中の機微などが選ばれるだろう。

 それに選者の顔ぶれを見てみると、永田と栗木は、アララギ系の結社「塔」の選者、幹部である。三枝・今野は、夫婦で「りとむ」という結社を運営している。大辻は、「未来」の理事長、選者である。現代にあっては、「短歌結社」の独自性などはすっかり弱まってはいるものの、歌壇的に見ればかなり偏っていて、選者の私物化にも思えてくる。

 昨年、若い研究者と「短歌と天皇制」について話しあったことが活字になった。その時の参考資料として作成した表の一つを参考までに下記に示した。国家的褒章制度の中での「歌会始選者」の位置づけを見て欲しい。ダウンロードの方が見やすいかもしれません。        

  近年の歌会始選者たちの国家的褒章受賞歴

木俣修 1928~1983 (形成)

歌会始選者1959~83 →御用掛1960~1983→ 紫綬褒章1973 → 芸術選奨文部大臣賞1974 → 日本芸術院賞恩賜賞1983死去

岡野弘彦1924~ (人) 

歌会始選者1979~2008/芸術選奨文科大臣賞1979 → 御用掛1983~2007 → 紫綬褒章1988 → 芸術院賞・芸術院会員/勲三等瑞宝章1998 → 文化功労者2013 → 文化勲章2021

岡井隆
1928~2020 
  (未来)

 歌会始選者1993~2014 → 紫綬褒章1996 → 御用掛2007~2018 → 芸術院会員2009 → 文化功労者2016 → 旭日中綬章追贈2020死去

永田和宏1947~              (塔)

芸術選奨大臣賞2003 → 歌会始選者2004~ →紫綬褒章2009 → 瑞宝中綬章2019 御用掛2023~

篠弘1933~2022 
(まひる野)

紫綬褒章1999 → 旭日小綬章2005 → 歌会始選者2006~22 →  御用掛2018~2022   
(日本文芸家協会理事長2010~2016)(現代歌人協会理事長1995~2008)

三枝昂之1944~
(りとむ)

芸術選奨文科大臣賞2006 → 歌会始選者2008~ → 紫綬褒章2011 →  旭日小綬章2021

河野裕子1946~2010               (塔)

 歌会始選者2009~2010 

内藤明1954~ (音)

 芸術選奨新人賞2003 → 歌会始選者2012~2024

今野寿美1952~        (りとむ)

 歌会始選者2015~

大辻隆弘1960~   (未来)

 歌会始選者2024~

栗木京子1954~ (塔)

芸術選奨大臣賞2007 → 紫綬褒章2014 → 歌会始召人控2019 → 歌会始召人2020 → 歌会始選者2025~             (現代歌人協会理事長2020~)


(参考)

馬場あき子
1928~   (かりん)

紫綬褒章1994 → 芸術院賞2002 → 芸術院会員2003 → 文化功労者2019 → 旭日中綬章2021

佐佐木幸綱
1938~心の花)

芸術選奨大臣賞2000 → 紫綬褒章2002 → 芸術院会員2008 →  旭日中綬章2022 
現代歌人協会理事長2008~2017)

小島ゆかり
1956~ (コスモス)

 芸術選奨大臣賞/紫綬褒章2017 → 歌会始召人控2023 

2023年10月現在。但し、マーカ部分を2024年7月、(参考)欄より移動改訂
(内野光子作成)

 ダウンロード - 2024e5b9b4e8bf91e5b9b4e381aee6ad8ce4bc9ae5a78be981b8e88085e3819fe381a1e381aee59bbde5aeb6e79a84e8a492e7aba0e58f97e8b39e.pdf

「近年の歌会始選者たちの国家的褒章受賞歴」
座談会「臣下」の文学――「勲章」としての短歌 内野光子・位田将司・立尾真士・宮澤隆義 『G・W・G(ミーヌス)』8号 (2024年5月)所収

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