映画「グリーンブック」を見て
映画サークル主催による映画会が開かれた。1月の入居以来3回目となる。2月は「最高の人生の見つけ方」、3月は「家族はつらいよⅢ 妻よ薔薇のように」であり、洋画と邦画を交代で上映して来たらしい。
「最高の人生の見つけ方」(ロブ・ライナー監督 2007年)、余命半年と宣告を受けた自動車工場の工員のモーガン・フリーマンと実業家で金持ちでもあるジャック・ニコルソンが病院で同室となる。慌てふためくニコルソンと冷静で、博識なフリーマンとは、何かと騒動を起こすのだが、フリーマンが、死ぬまでやっておきたいことのリストを認めているのを知ってから、二人がそれらを一つ一つ実行してゆく物語といっていい。原題は“Bucket Lsit”(棺桶リスト)というのだから、かなりそっけない。ニコルソンの資金あっての一種のアメリカンドリームに思えたが、興行成績は良かったという。日本でも同じ題名のリメイク版が吉永小百合・天海祐希で製作されている(犬童一心監督 2019年)らしい。
「家族はつらいよⅢ」は、山田洋次監督のシリーズ物で、贅沢な俳優陣で繰り広げられるホームドラマ。一家の大黒柱の主婦夏川結衣が、ある一件で、家出するとどんなことになるか、家事労働の評価を問うみたいな解説もあったが、映画の結末では、おそらく、何も変わらずに、元のさやに戻るハッピーエンドではなかったか。
今回の「グリーンブック」(ピーター・ファレリー監督 2018年)は原題のままで、それは、黒人専用ホテルや店のリストを掲載するガイドブックだったのである。実話に基づくもので、アフリカ系のピアニスト(マハーシャラ・アリ)と彼のコンサートツアーのために雇われたイタリア系白人の運転手(ヴィゴ・モーテンセン)とによるアメリカ南部が舞台のロードムービー。時代は1962年の設定で、1876年から1964年の公民権法制定まで南部各州には、人種差別的内容を含む州法が存在していた。これらの人種差別の法律は、ホテルやレストラン、公共施設に至るまで、白人が有色人種を分離することを合法としていたので、演奏先の先々でさまざまな迫害を受けるのだが、ピアニストは、あるときは毅然として抵抗し、あるときは迫害に耐えるのだった。私は、いまさらながら、さまざまな差別、迫害の実態を知って、いささか驚くのだが、2020年、警官の黒人男性殺人事件の記憶は新しい。トランプ政権下で、多様性が否定され、差別が助長されているのを目の当たりにすると、人種差別は、決して解消はされてないことも知るのだった。
映画では、紳士的で高踏的にも思えたピアニストと庶民的で粗野にも思える運転手は、互いに認め合い、理解を深めてゆく。一つ興味深かったのは、ピアにストへの迫害に、つい暴力をふるってしまった運転手が拘束され、ピアニストもろとも警察に留置されてしまう。ピアニストが弁護士と連絡を取ると、ただちに釈放するよう電話が入り、一件落着するのだが、当時の司法長官ロバート・ケネディの名が交わされる?場面があった。そういえば、ロバート・ケネディは、黒人差別による事件には厳しく臨んでいたのではなかったか。実話だったのか、少し話が出来過ぎてる感?もあった。
運転手の旅先からニューヨークへの妻への約束の手紙、添削や代筆までするピアニストは、たばこもやらず、ケンタッキーのチキンも食べたことがなかった。
写真は1940年版のグリーンブック(COURTESY NEW YORK PUBLIC LIBRARY)
ニューヨークの郵便配達員だったビクター・ヒューゴ・グリーンが1936年に創刊したグリーンブックには、自動車で旅行する黒人が安全に利用できる施設が掲載されていた。1967年まで、毎年のように刊行されていた。
施設が主催する映画会も、近く再開するとのことで、楽しみにしている。
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