憲法改正、急ぐに及ばず~憲法記念日の世論調査にみる
5月3日の朝日新聞は「高市政権で改憲 賛否拮抗 本社世論調査 賛成47% 反対43%」、毎日は「改憲《賛成》37% 本社世論調査 首相人気 機運押し上げ」と一面で報じている。憲法記念日恒例の世論調査である。この日のための世論調査の結果報道、社説や特集が組まれ、市民団体による意見広告も散見できる。
この頃、「世論調査」というのに疑問を持ち始めている。まず、思うのは設問・回答の在り方と回収率の低さと調査方法である。最近、ケータイや固定電話に、何か所からかのさまざま「世論調査」らしき電話を受けるようになったが、私自身、警戒心の方が強く切ってしまうので、回答者が世論を反映しているかな、と思ってしまう。かつて、新聞社の文書による世論調査を受けたことがあり、その時はもの珍しさもあって、じっくり考えて記入したものである。
朝日新聞の見出しになっている賛成47%というのは、
・「高市首相は憲法改正を目指すことを明言しています。高市政権のもとで憲法改正を実現することに、賛成ですか、反対ですか。」
という設問の回答だったのである。正直、この質問には、私だったら回答できない。この設問の直前の二問の問い方とその回答も付してみた。
・「自民党は、憲法9条の1項と2項をそのままにして、新たに自衛隊の存在を明記する憲法改正案を提案しています。こうした9条の改正に賛成ですか、反対ですか。」賛成52%、反対40%
賛成の理由:明記することで、海外活動がしやすくなる21%
反対の理由:明記することで、自衛隊の海外活動拡大の恐れがある25%
・「いまの憲法を変える必要があると思いますか。変える必要はないと思いますか。」必要がある49%、必要はない44%
これらの設問の幾つか前には、つぎのような設問もある。
・「以下は、憲法第9条の条文です。(条文略)憲法9条を変えるほうがよいと思いますか。変えないほうがよいと思いますか」 変えるほうがよい30%、変えないほうがよい63%
9条に関しては、二つの設問があって、一つは、条文をあげて、1・2項の変更の有無を問うもの、一つは、その後に設けられていて、1・2項はそのままに、(3項として)自衛隊の明記の可否を問うものであった。回答から見えてくるのは、現行9条の「戦争の放棄」と「戦力及び交戦権の否認」はそのままに、自衛隊を明記するというのが大きな流れのように読み取ることができる。
以下の画像は、いずれも拡大て読めます。
他の新聞、NHKを見てみよう。憲法改正という設問は共通しているが、毎日が高市首相在任中という条件を付けているが、憲法改正の賛成・反対はたしかに拮抗していると言える。読売とNHKは、改正賛成は、反対をかなり上回っている。もっとも、NHNの世論調査は、「どちらとも言えない」が賛成と同様38%を占めている。NHKの世論調査では、「どちらとも言えない」の選択肢を設けるのが「得意技?」と言ってもよい。ときには「どちらかと言えば賛成」「どちらかと言えば反対」の選択肢を設けることもある。今回は「どちらとも言えない」の選択肢によって、賛成、反対の差を広げたようにも思える。「どちらかと言えば・・・」の回答を用意していたら、賛成・反対の差は縮まるのではないか。
朝日と読売は、今回、憲法改正問題だけでなく設問は多岐にわたっているのが、他と異なる所であり、憲法9条についても、両者は、同様である。「自衛隊明記」といういわば「加憲」に特化した設問もNHK以外は用意しているが、いずれも明記に賛成する方がかなり上回っていることがわかる。その理由を問うている朝日の結果によれば、明記賛成の理由で多いのが「海外での活動がしやすくなる」で、反対理由で多いのが「海外での活動が拡大する恐れがある」という真逆の理由であった。
なお、読売は「今後、9条はどうあるべきか」の設問の回答の選択肢として、つぎの三つを用意していたが、その結果から、①+③を「改正しない」とカウントした。
①これまで通り解釈や運用で対応する43%
②解釈や運用で対応するのは限界なので改正する38%
③9条を厳密に守り、解釈や運用で対応しない12%
なお、今回調査の対象としなかったが、日本経済新聞の世論調査で「高市首相に優先的に処理してほしい課題」として、憲法改正は8つの選択肢の最下位で、11%に過ぎなかった。また、NHKの設問はいささか異なるが、今国会において、「憲法改正以外の課題を優先すべき」だとする回答が、52%も占めていた。
世論調査自体は、その回収率からしても、どこか頼りないのだが、各社の結果を総体的にみると、要するに、国民の大半は、いま、憲法改正を望んではいないということではないか。なぜ、そんなに急ぐのか。「法の支配」と「自由と民主主義」を標榜する国のやることかと、不安は増すばかりである。
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