2023年4月16日 (日)

"軽老”の時代に生きる

 4月14日の朝日新聞を広げて、え?敬老の日?いや9月だったはず。最初に目に飛び込んだ全面広告が、「音で、認知症に挑め。」という、塩野義製薬と「ピクシーダストテクノロジーズ」とかいう会社とのコラボ広告らしいが、文面を読んでも認知症に音がどうかかわるのかわからなかった(5頁)。

 全面広告は、イエローハットのタイヤ、ホームミュージック全集、コンサート案内と続く。つぎに、現れたのが「デュオセーヌ」船橋高根台の所有権型シニア向け分譲マンション(20頁)、グラクソ・スミスクラインKKの「50歳以上の皆さん!」として帯状疱疹予防(22頁)、「80代でも「シャキッ」と歩けています」というサントリーロコモア(24頁)、「ラビドール御宿」介護付き有料老人ホーム(26頁)の全面広告だったのである。

 この日の朝日は36頁、そのうち全面広告に限っても8頁、その半分の4頁がシニア向けの広告だったといえる。新聞はもはやシニア世代が支えているのかもしれない。若者の新聞離れも著しく、スマホやテレビで用が足りてしまうのだろう。テレビをよく見るのは前世紀?生まれの者たちなのか。電車内で新聞を読んでいる人自体めったに見かけなくなった。全面広告以外でも、「薬に頼らず血圧を下げる」「健やかな暮らしに生薬の力」「朝までぽかぽか」「腎機能改善」などの文字が大きい。

 発行部数も激減、物価高騰の中、朝日は、来月から1カ月の購読料が4500円から4900円になる。値上げをするからには、広告収入もぜひ公開してほしいものである。* わが家も、かつて、日経や日本農業新聞、琉球新報などを購読している時期もあって、5~6紙が郵便受けにあふれんばかりの時代があった。いまは、4紙となり、3紙の夕刊をとめている。最近は、もう1紙減らそうかと話している。新聞販売店には申し訳ないが、引き落としではなく、集金をお願いし、家計費から支払い、金額を確認、意識するようにしている。

 上記のシニア向けの分譲マンションは、販売価格が2500~5000万、管理費だけでも4~6万、修繕積立金やその他もろもろ経費が上乗せされ、もちろん生活費は別となると、いったいどんなシニアが購入するのだろうかと思う。介護付き老人ホームの方は、入居金2590~5590万、管理費81400円、食費が65400円、光熱費、リネン代、おやつ代、介護にかかる消耗品・・・。いずれも、全面広告の割には極端に小さな文字でぎっしり書かれているのである。どちらの場合も、よほどの年金をもらっているか、貯えのある人たちにちがいない。夫婦二人で長生きしたら!?なおさらのことである。

 同じ日の新聞には、13日には「高齢者の医療保険料の負担増」にかかる健康保険法ほかの改正案が衆院を通過した、とのニュースがあった。これによれば、75歳以上の4割にあたる人が負担増になる。昨年の10月に続いての負担増である。さらに14日には、保険証を廃止してマイナンバーカードに一本化する法案改正が衆院本会議で審議に入った。同時に、マイナンバーカードの利用拡大、マイナンバーと預貯金口座の紐づけが盛り込まれるが、個人情報満載の一枚のカードを持ち歩くのは、高齢者にとってはかなりの負担とリスクがあるばかりでなく、現在でも、医療機関や高齢者施設の現場ではかなりの混乱を招いている。(「保険証廃止 根強い懸念」『朝日新聞』2023年4月14日)

 財源の確保がないまま、“異次元”の少子化対策といって、増税、国債、社会保険料からの捻出をもくろんでいる。得体のしれない”経済学者“成田某の発言ではないが、高齢者は、早く死ねと言わんばかりである。増税というならば、法人税増税、富裕税新設、所得税の累進性の徹底の実現と税金使い方―予算の見直し、防衛費の削減が先だろう。

  うやまってもらわなくてもいい、当たり前の暮らしができればいい。

*
《新聞社の経営関連調査》広告収入の構成比2割切る 総売上高は1兆6619億円(日本新聞協会)
https://www.pressnet.or.jp/news/headline/191126_13250.html

新聞社の総売上高の推移(日本新聞協会)
https://www.pressnet.or.jp/data/finance/finance01.php

新聞業界全体の総売り上げが2兆円を割ったのは2010年、販売収入が1兆円を割ったのが2017年、総売り上げの60%から徐々に減って2021年は56%になっている。広告収入が5000億を切ったのは2009年、20%を割ったのは2018年、2021年は18%であった。

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数日前に、ご近所の菜園をなさっている方からいただいた、たくさんの菜の花。おひたし、みそ汁の具、炒めもの・・・、何でも使える重宝な野菜。今晩は、てんぷらにしてみました。冷蔵庫の中で、花が咲かないように。

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2023年4月 7日 (金)

フランスでは、大規模な年金改革反対デモが続いている~日本人は勤勉なのか

 3月28日、フランスでは、年金改革反対の大規模な反対デモが繰り広げられた。日本での報道は、ネットや新聞で見る限り、かなり控えめ?であった。フランスでのデモは、今年の1月以来、年金の受給開始年齢を62歳から64歳に引き上げる法案をめぐっての10回目のデモだった。これまでの経過は、下記の当ブログでも触れている。11回目のデモも4月6日に予定されている。

どうする高齢者!立ち上がるのは誰か(2023年2月13日)
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2023/02/post-5d21d1.html

どうする高齢者!どうすればいいのか~ルーブルや大英博物館職員がストできるのは(2023年2月18日)
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2023/02/post-3ba626.html

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3月28日、年金制度改革への反対を唱えながらパリ市内をデモ行進する人たち。(『東京新聞』4月4日)。かつて、私の学生時代、両手を広げて手をつないだ、道路いっぱいのデモ行進を、フランスデモと呼んで、穏やかな抗議手法だったのだが。

 

 年金改革法案は、3月20日、僅差で、すでに成立しているのだが、3月23日の9回目のデモは、フランス内務省の発表でさえ、1月に始まって以来、過去最多となる109万人が参加し、3月28日の10回目の抗議運動にも93万人が参加したと報じている。(谷悠己「フランスで年金改革反対デモが激化 「62歳定年」を死守したい国民…実は欧州随一の高い生産性」『東京新聞』 2023年4月4日)法律が成立した後も、抗議運動の勢いが衰えないのが頼もしい。

 それでは、なぜ、多くの市民が、これほどまでに持続して、抗議を続けるのか。
 フランス在住のジャーナリスト安部雅延は、マクロン政権が安全保障や社会保障で緊急性、重大性が認められる場合、議会審議の投票を省略して法案を可決させられるとする、憲法49条3項を適用し、国会の審議がないまま、一方的に法案を可決成立させたことをまずあげる。二つ目の理由として、反対派を見下す態度を国のトップ、マクロンが取ったことが、国民の怒りに火をつけた、と分析する。さらに、年金改革案に反対を表明しながらも、デモには参加しない市民の声として、「16歳から働いている人や肉体的に重労働の人たちへの配慮が足らない」「いかにも超エリート家庭で育ち金融機関で高給を取っていたマクロン氏の庶民感覚のなさが露呈した」とも伝える。(「パリがゴミだらけ、仏年金改革「反対スト」深刻背景受給年齢の引き上げに怒りを爆発させる理由」東洋経済オンライン 2023年4月1日)

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AFPBB-newsより

 そういえば、もう四半世紀ほど前になるが、退職して通っていた大学の社会学のゼミで、ピエール・ブルデューの報告があったとき、「ハビトゥス」とか「ディスタンクシオン」とかの言葉が行き交っていた。人間は、気づかないうちに、生まれた時から、自らが属する社会的階層によって教養や学歴、社会的地位などが決定づけられるという理論がなぜもてはやされるのだろうと、戸惑っていたことを思い出す。いまの日本では「親ガチャ」なるイヤな言葉を聞くのだが。

 続くフランスのデモについて、日本では暴徒化する抗議デモと報じられることが多いが、先の安部雅延は、「デモ隊に紛れ込んで警官や憲兵隊に暴力を振るい、公道に面した店の商品の略奪やバス停の破壊行為を行う、通称<ブラックブロック>と呼ばれる暴力グループに警察は頭を悩ませている」という。(同上。 東洋経済オンライン 2023年4月1日)

 また、欧州連合(EU)の統計では年金受給はドイツやイタリアが67歳で始まる一方、フランスの62歳は最も低い。そのため年金財政は苦しく、2020年の支出は国内総生産(GDP)比15.9%と、加盟国で3番目に高い。その一方で、フランスの専門家は、「フランスの生産性は欧州随一だ」とし、週35時間の制約がある中で業務量は変わらないため、従業員が同じ時間内でこなすべき業務量は逆に増えた、という。(前掲『東京新聞』2023年4月4日)決して働きたがらないわけではないと。

 なお、マーサーの「グローバル年金指数ランキング」によると、「十分性」「持続性」「健全性」の三つの指標での評価で、フランスは43か国の中で22位、ちなみに日本は35位である。

マーサーの「グローバル年金指数ランキング」(2022年度)(2022年10月12日)
https://www.mercer.co.jp/newsroom/global-pension-index.html

 かなり劣悪な年金制度の日本では、65歳になっても、70歳になっても、働け、働け、と言わんばかりの風潮である。働かないにしても、年金や医療、介護の不安から、せめて健康寿命だけは延ばしたいと、高齢者は、歩け、歩けと街中を歩いている光景は見かけるが、年金制度の不安解消や改革に向けての抗議デモというのを、最近聞いたことがない。国家公務員に限っても、諸外国の近年のストライキの事例が、人事院の資料からも見て取れる。Img649
諸外国の国家公務員制度の概要(人事院)より。クリックして拡大してみてください。

  もう20年も前のことになるが、初めてのパリで、ロダン美術館の帰りだったか、官庁街を通り抜けたのが、午後4時半ごろだった。ちょうど退勤の人たちの群れに出会ったのである。誰もが、さまざまなファッショナブルな着こなしで、実にいきいきとした表情で家路へと急いでいるのが印象的であった。日本の官庁街ではあまり見かけない光景であった。

<参考資料>

主要各国の年金制度の概要<日本年金機構)
https://www.nenkin.go.jp/service/shaho-kyotei/kunibetsu/20131220-01.html

主要国の年金制度の国際比較
https://www.mhlw.go.jp/content/12500000/000941410.pdf

諸外国の国家公務員制度の概要(人事院)
https://www.jinji.go.jp/kokusai/syogaikoku202202.pdf

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2023年2月18日 (土)

どうする高齢者!どうすればいいのか(2)ルーブルや大英博物館職員がストできるのは

 どうする家康、どころではない。
 前の記事で述べたように、年金支給開始を段階的に62年から64年にしようとするフランスのマクロン政権は、大規模な反対運動に立ち往生している。反対運動を続ける市民たちに、私は少なからず心動かされている。そして、ストを実行し、デモに参加する多くの公務員がいることにも衝撃を受けている。さらに、ともに参加し、見守る市民がいることにも。

 そういえば、数年前に、パリの国立ルーヴル美術館の職員たちが突如、ストライキに入り、美術館が閉館となったニュースにも驚かされたことを思い出す。当時、組合側は、「2018年には1000万人以上がルーヴル美術館を訪れている。来場者数は2009年から2割以上増えたが、一方で職員数は減少している」と指摘、人手不足がストの理由だったのである(「ハフポスト日本版」2019年05月28日)。

  そして、この2月1日、 記録的な物価高が続くイギリスで、省庁の職員や教師などを含む50万人が賃上げを求めてストライキを実施したというニュースにも接した。大英博物館も臨時休館となり、観光客は戸惑っているが、職員は、ギリギリの生活の中での最後の手段としてのストだと語っている(TBSテレビ 2023年2月2日)。スナク政権の支持率は12%と低迷。不支持は70%にもなっているという。

 この大規模なストに先立ち、昨年の12月下旬には、救急隊員と電話の応答業務の人たちが、昇給を求めるストライキを実施したニュースも記憶に新しい。さらに、昨夏には、鉄道労働者による、30年ぶりとも言われる大規模な、断続的なストライキが続いた(さかいともみ「いつまで続く?英国「30年ぶり」の大規模鉄道スト激しい物価上昇で全国鉄道労働者が賃上げ要求」『東洋経済(オンライン)』2022年8月11日)

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202212月21日、クリスマスを前に、英イングランドとウェールズの大半の地域で、救急隊員や緊急電話の応答係などが昇給を求めるストライキを行った。BBC news Japan(2022年12月23日)より

 

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看護師のストライキ、2022年6月 BBC news Japan(2022年12月2日)より

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地下鉄の24時間ストライキ 2022年6月21日、さかいともみ撮影、東洋経済オンライン(2022年8月11日)より

 ところで、フランスやイギリスの公務員たちは、なぜこれほどストライキを続けることができるのかといえば、下記の表を見てみると、一目瞭然である。要するに、国家公務員の労働基本権のうち団結権は、表中の各国に認められ、協約締結権については英仏で分かれるが、争議権については、英仏ともに認められており、日本では争議行為は禁止されている。 Photo_20230218174801
諸外国の国家公務員制度の概要(2022年4月2日更新)
https://www.jinji.go.jp/kokusai/syogaikoku202202.pdf

  そして、日本の国家公務員は、下記の表をみると、「労働組合」とは名付けられず「職員団体」としての位置づけであって、その加入率が省庁別に記されている。復興庁、外務省と文部科学省には、そもそも職員団体=労働組合自体が存在していないことも驚きであるが、組合加入者数の加入しうる在職者総数に対するの割合、加入率は、2021年(平成3年度)で37.0%、2020年の38.3%から下がり、組合数自体も減少していることがわかる。なお、ILOは、日本政府に対して、公務員全般に団結権や争議権に制約があることを問題視し、特に消防職員と刑務所職員には直ちに団結権を付与するよう求め続けてきたが、いまだ、実現されることがない。

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  「第6章「職員団体」『令和3年度人事院年次報告書』より
https://www.jinji.go.jp/hakusho/pdf/1-3-6.pdf

  また、下記の表の全国の労働組合数、組合員数、推定組織率をみると、組織率は、近年17%前後を推移している。一方、2022年6月30日現在、雇用者数は微増しているが労働組合数は確実に減少を続けているし、直近の組織率も下がり、16.5%となっている。国家公務員の組織率も2022年3月31日現在37.0%で、前年の38.3%から下がっていることがわかる。

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令和4年労働組合基礎調査の概況(厚生労働省 2022年12月16日https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/roushi/kiso/22/dl/gaikyou.pdf

    諸外国の労働組合組織率について、同じ年のデータというのが見当たらなかったが、以下のような資料が出てきた。2019年現在で揃った数字はつぎの通りであった。
 アメリカ:10.3%、ドイツ:16.3%、イギリス:23.5%、韓国:12.5%
(「諸外国の労働組合組織率の動向」(2023年1月11日更新)『主要労働統計』独立行政法人労働政策研究・研修機構https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/shuyo/0701.html

 日本は2019年では16.7%、フランスは別のデータで10.3%ということがわかった。
(「フランスの労働組合加入率、2019年に10.3%まで低下」『日刊メディアダイジェスト』2023年2月3日)

 こうしてみると、ノルウェーなど北欧諸国の組織率は60~70%なのだが、英仏と比べては、日本の組織率は決して低くはないけれど、着実に成果を上げている英仏の労使交渉、労働運動の高まりの違いはどこから来るのだろうか。
 前述のように、一番の理由は「産業別」組合でなく、「企業別」組合であることだろうか。日本も戦前は職業組合的な争議も見られたが、1900年治安警察法、1925年治安維持法などにより弾圧され、敗戦直後は、産業別労働組合が結成され、40~50%台の組織率だったが、GHQによるに二・一ゼネスト中止指令などを経て、企業別組合が定着してしまうのである。日本企業の終身雇用、年功序列は、いま崩れつつあるが、企業別組合からの脱却が、当面の課題となった。企業別組合とて正社員、大手企業が中心である。大手企業の春闘の妥結額が報じられはするものの、非正規やパート従業員は、蚊帳の外である。連合の会長が自民党の党大会に出席するとか、しないとか、いや招待されているとかいないとか、なんと情けない姿であろう。その一方、非正規やパート従業員の一部は、必要に迫られて、横断的なユニオンなどが結成され、部分的ながら成果を上げつつあるのではないか。 

 私たち高齢者は、どうすればいいのだろう。途方に暮れるのだが、企業別組合から産業別へのみちのりは遠いかもしれないが、少なくとも連合体の組織がもう少し強くなって欲しいし、未組織の人たちの応援をし、できれば一緒に活動したいのだが・・・。かつての職場の組合の「国会職連」「私教連」はどうなっているのだろう。前者では、組合に入って当たり前、7~8割の職員たちが加入していた感覚だった。私立短大では、教員を含めて7割くらいは入っていたと思う。たしかに事務局の職員は組合員ではなかったし、職員では図書館職員だけが入っていたことなどを思い出す。最後の職場の新設大学は、一族経営の感が強く、組合はなく、私が退職した後に組合結成の動きがあり、犠牲者が出たとも聞く。30年近くも前の話だが・・・。

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ことしは、ハトも時々迷い込んでくる。1月5日

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広いエサ台に頑張るヒヨドリ。2月18日

 

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2023年2月13日 (月)

どうする高齢者!立ち上がるのはだれか(1)

 「どうする家康」 どころではない。
   高齢者には、ガラガラと坂を転げ落ちるように生きづらい社会になってゆく。内閣支持率下落のさなか、「閣議決定」で、何もかも決まっていってしまう現実を目の当たりにし、国会は形骸化するばかりである。

 2月10日の閣議で、75歳以上の健康保険料引き上げのための健康保険法改正が国会に提出される。昨年10月には、医療費が倍額になった。週一の通院、二カ月、三カ月ごとの定期診療に通わなければならない身には、大打撃である。今回の保険料値上げの対象は、後期高齢者の四割あたるという。コツコツと働いてきて、年金生活者になってからは、医療や介護への不安が募るばかりで、老後を楽しむどころではない。コロナ対策にしても、死者のほとんどが高齢者で、増加のさなかに、対策を緩和したり、感染者の受け皿の医療体制が整わないまま、5月には5類にしたりするというのだから、いわば、高齢者を置き去りするに等しいのではないか。

 こんな仕打ちをされている高齢者を横目で見て、国会では、与党はもちろん、野党もまったくと言っていいほどアテにならない。政権の敵失ばかりを責め立てるばかりで、自らの政党の選挙対策に余念がなく、連携だの共闘などと騒がしく、党内外の批判にさらされ、慌てふためいて反撃している党もある。

 どうすればいいのか。本来ならば、自ら立ち上がらねばならないはずの高齢者だが、その核になる組織がない、リーダーがいないと、あきらめてしまいそうになる。いや、リーダーや組織が華々しい運動は、大方は、しぼんで、挫折してしまうのが、通例ではなかったか。だったら、ひとりでも、片隅からでも叫びたい。その声が重なり合うときが来る日まで、とも思う。

   2018年11月から数カ月にわたって展開されたフランスの「黄色いベスト」運動を想起する。当初、私は、ガソリン税値上げ反対の、トラックの運転手たちによる抗議行動と思っていた。一部暴徒化する様子も報道されていた。ところが、どうだろう、毎週土曜日の抗議デモは、地方から都市へ、サラリーマンや自営業者、高齢者や女性へと多くの市民による運動となった。その結果、マクロン政権は、ガソリン税値上げの完全撤回、富裕税課税の不動産限定を中止、購買力向上ための減税、国民との大討論会の約束などをとりつけるに至ったのである。

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『毎日新聞』2018年12月17日、より

フランスでは、いま

 それにつけても、フランスやイギリスの労働者たちの大規模な集会やデモの報道を目にして思うのは、なぜ、日本人はこれほどおとなしいのだろう、従順なのだろうかと。

 フランス政府は、今年の1月10日に、年金の支給開始を62歳から段階的に64歳に引き上げるという改革案を発表した。1月19日には、労働組合が中心となって、改革案に反対する大規模なストや抗議デモが各地で行われ、 内務省は、  112万人が参加したと発表した。一方、主催者側は、ストやデモの参加者は200万人を超え、公共職の参加率が高かったとする。国民教育省によれば、全国で四割の教員が参加小学校の休校が相次ぎ、一斉ストでは、パリの地下鉄などダイヤが大きく乱れた、と報じた。(「フランス、反年金改革デモ112万人 政府に逆風強まる」『日本経済新聞』2023年1月20日、「仏年金デモ100万人超」『東京新聞』2023年1月21日)

 さらに1月31日には、「全国で280万人、パリ50万人。1995年の社会運動より大きい歴史的な動員だ。労組に一般市民が大勢加わり若者も多く、大学や高校での封鎖も始まっている」と報じるメディアもあった(「年金改革反対デモ広がる〜1995年を超える歴史的動員に(飛幡祐規)」『れいばーネット』 2023年2月1日)。「1995年の社会運動」とは調べてみると、やはり年金改革の問題で、公共交通、電気・電気・ガス・学校など大規模なストが約1カ月にも及んだときのことらしい。そして、2月7日にも大規模なストライキが実施され、公共交通機関や学校、製油所などの運営がストップし、国民の反対は根強いと、ロイターは伝える(「仏で3度目の大規模スト、年金改革巡り 交通機関や学校にも影響」 2023年2月8日)。さらに2月11日にも、大規模ストライキを予定しているというが、どうなったことだろう。

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『朝日新聞』2023年1月20日 、より

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年金制度改革案に反対する抗議デモに参加し、警官隊に拘束された男性=パリで2023年1月31日、AP。『毎日新聞』2023年2月1日、より

 こうしたストライキやデモをする人たちの意思とエネルギーは何に由来するのだろうか。今回の大規模な運動は、最大の労働組合「労働総同盟」(CGT)を含め、八労働組合が呼びかけている。と言っても、フランスの労働者の組合組織率は8.8%だというが、団体交渉適用率が98%という高さなのである。組合員でなくとも、団体交渉で得た成果は、非組合員にも適用されている(「日本の労使問題」『東京新聞』(サンデー版大図解シリーズ)2023年2月5日)。そして何より、その組合というのは、業種別、産業別組合なのであって、日本の企業内組合とは性格を異にする。日本の組合の組織率は日本の組合の組織率は、「厚生労働省のまとめによると、2022年6月時点の労働組合員数は999万2000人と前年に比べて0.8%減った。雇用者に占める組合加入者の割合(推定組織率)は16.5%」(「労働組合加入率22年は16.5%で過去最低」『日本経済新聞』2023年1月4日)で、日経のこの記事では、加入率の減ったり理由として、正社員の加入が減ったことと、働き方の多様化、労組への期待低下を上げていた。日本の企業内組合は、いわゆる「御用組合」が多くを占め、本来の組合の役割を果たしていないといってよいだろう。(続く)

 

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2015年12月 5日 (土)

マイナンバー通知、到着、どうしますか、「ニューデンシャ」って、何?!

 マイナンバー制度の基本的な欠陥
  友人たちの中には、簡易書留のマイナンバー通知の受け取りを拒否したという人も多い。我が家では、確認の意味もあって受理はしたのだが、もちろんカード交付申請をするつもりはない。いずれにしても、もう、住民票にはマイナンバーが付記されてしまっているのだから、いずれの場合も実質的な効果にさして変わりがない。しかし、受領拒否が「未達」としてカウントされ、増大すれば、これから先、制度運営に何らかの影響を与えるだろう。
  そもそも、私は、住民の意思に関係なく、個人番号を付与し、社会保障・税・災害などに使用すること自体、プライバシーの侵害により憲法に違反していると考えている。 しかし、マイナンバー通知を受領して、開封してみて、あらためて明確になったことがある。マイナンバーは、決して「個人番号」ではなく、「世帯番号」であるということである。カードの個人番号部分を隠して、その利用の拡大を狙っているようだが、そんなことはあまり意味がない。個人番号や個人情報が守れる保証は、もはやない。私は、そこが疑問であった。「世帯」の概念も曖昧だ。
  マイナンバーの無料問い合わせ番号は、いまだに通じないことが分かったので、「内閣官房社会保障改革担当室・内閣府大臣官房番号制度担当」(03-6441-3457直通)に問い合わせてみた。「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」という長たらしい法律は、とりあえず「マイナンバー法」と呼ぶ。その法律自体より、内閣官房HPの逐条解説の方が日本語としてまだ通じやすい。それを見ながら、以下の問い合わせをした。12月3日のことである。

ナンバーの削除は、市役所に申し出ることができる!
  私の問い合わせに対して、内閣官房の担当者がたしかに答えたのである。

:第5条で、地方公共団体は、可能な限りマイナンバーの利用推進をする、独自的、主体的な取り組みを求めているが、マイナンバーの利用を市民に義務付けてはいないので、私は利用してほしくないということで、住民票からの個人番号を削除してほしい。
担当(Uさん):自治体などが利用するまでには、個別の法律や条例や改正が必要なので、自治体に住民票からの削除を申し出ることできる。

   そういうことだったのである。いろいろなやりとりはあったが、結論的には、意外とあっさりとした回答だった。逆に、判断を自治体に振ったという無責任さも垣間見られる。各地でマイナンバー法の違憲性に伴う損害賠償請求の民事裁判が提訴されている。それはそれとして大事だが、とりあえず、今すぐ、市民たちができることは、住民票に付与されている個人番号の削除を申し出ることではないか。カードを受け取った人も受け取ってない人も、自治体に個人番号を使用させないための手立てとして、他にどんなアイデアがあるか、知恵を絞ることが大事だろう。 

「世帯」って、「家族」って、何? 
 内閣官房の担当に、もう一点確かめたことがある。

:マイナンバーの通知は、「世帯」ごとに届けられている。簡易書留を開いてみて驚いた  のは、家族分の個人番号が明示されているカードがむき出しのまま入っていて、家族間では、個人番号は、お見通しというかオープンの中で、一生変わらないという個人番号の情報は守られるのか。
担当(Uさん):いえ、家族には、信頼関係がありますから。
: 家族の間、一世帯住人の間の信頼関係の有無など、法律が介入することではないと思うが。現に家族間のトラブルや不祥事、殺人までが多発しているではないか。「世帯」となると、もっと拡大されるのではないか。
担当:住民票の「世帯」は、あくまで「生計を一にする」同居人から構成されている。住民票は、世帯主の申請により作成されるものだから、問題がない。

  たしかに、家族一人一人に、それぞれに乱数まがいの12ケタの個人番号ではあるが、赤ちゃんのとき付せられた個人番号が一生ついて回ることになるのに、世帯内だからと言って、こんなにも無防備でいいものだろうか。使用目的によって、個人情報は分散管理され、個人番号だけで個人情報全てが漏れないシステムといい、委託、再委託先からの情報漏れは、適正な管理、第三者機関の保護委員会のチェックもあるというが、これまでの個人情報管理すら機能していないのにと、不安は募るばかりである。

「ニューデンシャ」って、何?
  内閣官房の担当と話し合っていて、何度も発せられる「ニューデンシャ」なることば、新しい電車?がどうしたの?と、さえぎって尋ねてみた。皆さん分かりますか?私は初めて聞くことばだったが、聞いてびっくり、役所言葉にもほどがあり、笑い話にもならない。そのときの一問一答・・・。

:「ニューデンシャ」って、何なのですか。
担当(Uさん):「入電者」と書いて、電話をいただいているお客様のことを言います。
:? 私は、内閣府のお客様ではありません。一度聞いてもわからないような、日常使われていない「入電者」なんて、通じませんよ。
担当:「お客様」と呼んで、何度も叱られたことがあります。
:「あなた」でいいではないですか。
担当:役所に「あなた」と呼ばれたくないという人もいて、「俺・お前」「あなた」の関係ではないとおっしゃる方もいまして・・・。 

   「入電者」なんて、いったい、だれが考えたのだろう。「あなた」でも、「そちら様」でも何でもいいではない か。 ほかに、もっと考えることがあるでしょうに。

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2009年11月29日 (日)

1年半かかって届いた、とんでもない「ねんきん特別便」の回答

昨年の5月に届いた「ねんきん特別便」、その直後の「ねんきん特別便専用ダイヤル」でのやり取りは、2008518日に本ブログでも記事とした。私は四つの職場をわたり、二つ共済組合に加入し、その後国民年金に加入している。共済組合の加入年月に間違いはなかったが、一つの共済組合の資格取得・喪失の「日付」がまったく事実と反していたので、社会保険庁にも共済組合にも電話したのだった。双方の言い分は異なったが、加入月数に変わりがなく、年金の計算には直接影響を及ぼさないことが分かった。それでも、なぜ、架空の日付が入るのか釈然としなかったので、「特別便」の照会書で、記録には正確な日付を記入するよう返信した。正直言って忘れていたのだが、この11月中旬に地域の社会保険事務所から書状が届いた。

開けてびっくり、私が資格取得・喪失の「日付」を修正してほしいと返信した、その共済組合に加入していた11年間について「被保険者加入期間については『被保険者記録照会回答票』のとおりです。なお、あなたからの申し出のあった事業所名称****に係る昭和*年*月*日~昭和*年*月*日までの期間は見当たりませんでした」と「日付」修正を要請した期間がそっくり抜けた「回答票」が同封されていた。現在すでに国民年金分とあわせて受給されている加入期間が「見当たらない?」って、いったいどういうことなのか。「日付」の修正を要請したばっかりに、その期間が加入期間より削除されるとは。

ようやく通じた地域の社会保険事務所への電話では、しばらく調べた後「当方のミスでした申しわけありません」と繰り返すばかり。どうしてこんなミスが発生したのか検証してください、同じようなミスを防ぐためにも検証してください、といえば、共済組合の情報が一元化されていないのが原因だというのだ。これはすでに1年半前にも聞いていた話。基礎年金番号で記録を一元化するのが今回の見直しの眼目ではなかったのか。さらにやり取りは続いた。

問:社会保険庁が自ら作成した、一年半前の記録票について、その中のある事業所在籍期間、資格取得・喪失の日付の修正どころか、その在籍期間が見当たらない、という回答はどうして出てきたのか?

答:厚生年金の期間のみを調べた結果で回答したと思う。

問:かつての回答した記録から一定期間の大幅削除をする以上、なぜチェックしないのか?

  共済組合に問い合わせてもよいし、私は、お宅の社会保険事務所の窓口で国民年金受給手続きをしているから、その時の書類なり、年金受給記録を見てもらえば、たちどころに解決することではないか?

答:担当者がよく解らないまま作業したのではないか。

問:解る人間がチェックしないのか?

答:チェックからたまたま漏れた。

問:たまたまというが、チェックから漏れたのは、能力の問題か、人員の問題か?

答:人員の問題である。

問:チェックのためのマニュアルはないのか。

答:共済組合の記録確認や照会はマニュアル以前の問題なのでマニュアルには入っていない。

問:同じ社会保険事務所の隣の窓口の年金受給記録となぜ一元化しないのか、なぜそのデータを活用しないのか。

答:被保険者記録と年金受給記録とは別のボックスのデータであって、それをいまどのように調整するかを進めている。

問:一年半かけて何をやってきたのか。

答:あなたが昨年の5月に社会保険庁へ提出された照会の返信は、今年の2月になって当社会保険事務所に届いた。その頃は、電話照会に追われて手がつけられなかった。遅くなった上に、間違えたのは申しわけなかった。

 もう、質問の意欲も失い、訂正の書類と、今後のためにも今回のミスの原因を精査した上での回答文書を、総務課長に依頼した。

  今回のやり取りでわかったのは、社会保険庁と出先の社会保険事務所のなかでも同じ年金記録を共有しているのかが明確ではなかったこと。同じ社会保険事務所の中でも、受給申請手続きに基づく受給記録と関係ないところで年金記録点検作業が実施されていること。まさに縦割りで、その一元化が難しいのは、従来の役所のシステムそのままで、同じような作業を、それぞれお金と人員をかけて並行して実施しているのではないか。見直しと称して多大なムダが横行しているのではないか、という気がした。同種、同様の事業を「横串で刺して」の仕分けがここでも必要だと痛感した。

  事情に詳しい方、教えてください。

 

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2008年5月18日 (日)

つながらない「ねんきん特別便専用ダイヤル」

               

 5月中旬、一般年金受給者に対象を広げたという、「ねんきん特別便」が社会保険庁から届いた。私の場合は二つの共済組合と国民年金とが入り組んでいる。一つの共済の資格取得年月日と資格喪失年月日が異なっていた。年月は合致しているが、日が異なる。41日に就職、331日に退職、のパターンで、いずれもその日付の辞令が残っている。ところが、加入記録によると、資格取得が430日、資格喪失が32日となっていたのだ。事実と異なるのが気になって、共済組合に電話を入れると、「同じ問い合わせが来て困っている。社会保険庁が勝手に日付けを変えて・・・。近く、心配がないようにいっせいに皆さんにお知らせを送る」ということだった。「年金額は加入資格のある月数で決まるので、日付けが間違っていても影響がありませんのでご心配なく」という話だった。

 念のため、特別便の封筒に大きく印刷されている「ねんきん特別便専用ダイヤル」にかけてみるが

つながらない。「ただいまの時間は大変混雑しています。このままお待ちになるか、お掛けなおしてください。電話料金は、市内通話の料金になっています。電話は、週の後半、木曜・金曜日、5時以降がかかりやすくなっています」という主旨の録音が繰り返し流れるばかりなのだ。ちなみに週日は朝9時から夜は8時までで、土曜日は第2土曜日のみで夕方5時まで受けるというが、通じなければどうしようもない。テープの声は、根気よくかけるのはいいけれど有料だぞと、威圧的にも聞こえる趣向で、諦めさせようという魂胆なのか。

それでも、私の場合、火曜日から金曜日までに、午前・午後・5時以降と連日かけ、金曜日の午後、20回目くらいでとにかく通じた。「なぜ、日付が事実と違うのか」と問えば、分からない、「調べてくれ」といえば、ここでは分からないという。「どこで分かるか」といえば、近くの社会保険事務所に尋ねよという。「社保庁で一元管理してはいないのか」には、各共済からの報告をそのまま転記しているはずで、資料は各社会保険事務所にあるので、ここでは分からない。「今回の特別便の中の加入記録は、社保庁にはないのか」には、年金番号ほか個人情報を聞き出された上、私の「加入記録」をパソコンの画面ででも見ているのだろうか、日付の件は、各共済のルールがあるはずだから、共済組合へ問い合わせてくれ、ということで、電話は切れた。市内通話料金とはいうものの、テープを聞かされた時間もしっかり料金はとられていたのだろう。社保庁と共済組合の言い分のどちらがほんとうなのだろう。いずれ、共済組合には再度電話をしなければならない。腹立たしい数日間ではあった。加入記録に大幅なモレや重大なミスがある人たちだったら、その怒りも大きいにちがいない。

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