2024年8月 7日 (水)

オリンピック、早く終わらないかナァ

 オリンピックの中継はほとんど見たことがない。ニュース番組やワイド番組でたまたま見る程度なのだが、現地に派遣のアナウンサーやレポーターがやたらとはしゃいでいるのと、スタジオの解説者がいい加減だったり、訳知り顔の発言だったりが気になってしまう。嫌いなアナウンサーや解説者のアンケートなるものがネット上で出回っているらしい。

 それに、日本の選手の中には、日本人とのハーフの人もだいぶ多くなってきたのを見ると、国を「背負って」競うオリンピックの意味はもう薄れてきてしまっているのではないか。個人やチームで競うのが、スポーツ本来の姿ではないのか、とも。

 敗れた選手の涙や謝罪が強調される報道の背景には、「国威発揚」の影がちらつく。スポーツは、選手たちも観客たちも、もっと楽しむものではなかったかと。

 そして、“昭和”の人間には、これって、競うべき「スポーツ」なのかと思うような種目もいくつか見受けられ、選手たちの身の安全を、願うばかりなのである。

 選手ファーストは、いつのまにか開催国ファーストになってしまい、セーヌ川を泳がされたトライアスロンの選手たちは気の毒だった。

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「いらっしゃるー」と門扉を開けてのいつもの声に飛び出すと、写真のような野菜いっぱいの袋をいただく。土地を借りて本格的に野菜を育てているHさんから。この夏は、猛暑でインゲンも大きなトマトもまるっきりダメだったと嘆いていました。モロヘイヤはさっそくおひたしにして、ミニトマトときゅうりはサラダにして夕飯のお供にしました。きゅうりは、写っている以外にも太ったり曲がったりのものも何本かあって、漬物にしたり、ジャンボピーマン?と炒め物にしたりしていますが、まだ野菜室に残っています。ごちそうさまです。

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2021年3月22日 (月)

それでも五輪は開催するのか、国民は延期や中止を望んでいる

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2020年3月23日のNHKの昼のニュースで伝えられた、新型コロナ感染者マップである
 
 いったい、だれのためのオリンピック・パラオリンピック(以下五輪と略す)なのだろう
 
つい一年前のことを思い出してみたい。安倍首相が、東京五輪の一年延期を決めたのが2020年3月24日だった。当時のコロナ感染状況を忘れてはいないだろうか。上のテレビ画面が、私のカメラに残っていた。そして、次の画像はNHKの「新型コロナ特設サイト」から得た最新の感染者マップである。こんな画面を、毎日毎日見ていたことになり、若干の一喜一憂はするものの、数字そのもの、数字も直近の比較ばかりに目が奪われて、その危機感も薄れていくようで恐ろしくもなる。

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2021年3月20日感染者マップ、NHK[新型コロナ特設サイト」より

 以下、下の表で、去年の3月20日と今年の3月20日の数字を単純に比較してみても、国内の感染者数は、1105⇒1517、東京の感染者数は、125⇒342、死者数は2人から19人であった。表にはないが、今年の3月20日の直前の死者数は、19日は33人、18日は32人、17日は43人、16日は57人であり、激増しているのである。下の表では、この一年の第1、第2、第3波と言われた時点を中心に、その推移をたどってみた。結構、手間がかかったのだが、見ていただきたい。PDF版にもしているので、そちらの方が見やすいかもしれない。

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東京五輪1年延期以降の感染状況と政府の動向年表
(カッコ内の数字は東京都の内数)          (内野光子作成)
 ダウンロード - e382b3e383ade3838ae5b9b4e8a1a8.pdf

 今日、3月22日の非常事態宣言解除にあたって、その根拠として言われているのが、病床のひっ迫状況の改善で、強調されていた。絶対数から言っても最も高いピークを示した今年1月の第3波の時点と解除直近3月18日の状況を次の表にまとめた。昨年の8月に分科会が公表した「6つの指標」の感染状況の段階で示すと、黄色の部分が感染状況の第3段階であって、「感染急増」段階なのである。埼玉県と東京都は6つの指標のうち3つがその急増段階を脱していないことになる。また、病床の確保といっても、文字通りベットの確保であって、安心してはいけないということは、病院関係者からよく聞く話である。医師・看護師などのスタッフが確保されているわけではないから、「絵に描いた餅」に近い。感染が激増段階に入ったら医療崩壊につながることが目に見えている。

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6つの指標、2117日(上段)と318(下段)の比較
黄色のマーカーの数値がステージ3(感染者急増段階、医療提供体制に支障)を示す
ダウンロード - e5b9b4e8a1a8.pdf

参考「感染状況の4段階と6つの指標」
ダウンロード - 2021e5b9b41e69c887e697a5.pdf

 その上、感染力が強いという変異種が増えているこのような状況の中で、いまだに、五輪開催を目指している政府は、なにを考えているのだろうか。海外からの観客は断念する至ったが、海外選手・関係者・メディアの入国・出国・宿泊・移動、国内選手関係者の宿泊・移動に伴う検疫・検査体制を支える医療スタッフ、もろもろの日本人スタッフの確保がいまだ明確ではない。聖火ランナーやボランティアの辞退者が相次ぐのも、国民の大多数が延期や中止を望んでいることの反映でもあろう。国内の観客数制限という以前に、試合会場やそもそも密なる競技の試合の管理など、素人でも、その困難さが予想できるが、それへの対策は聞こえてこない。IOC会長と都知事、組織委員会会長、五輪担当大臣らの協議からは見えてこない。オリンピック精神、その理念云々以前の問題である。
 はたして、海外からの選手やメディアは日本にやってくるのか。
 その上、感染が拡大したら、だれが責任を取るのだろう。

 地元の小さな会で、現役の病院勤務の医師からは、PCR検査はすでに縮小段階に入っていて、かつては感染者が出た病棟勤務者全員に検査がなされていたが、今は濃厚接触者だけになっているという話を聞いた。また、小学校に勤務する先生からは、クラスに感染者が出たら、かつてはクラス全員に検査がなされていたというが、いまはそれがなされていない、ということだった。私は10年近く通院していた大学病院からは、コロナ禍のため転医を迫られ、閉院のためかかりつけ医を失った今、途方に暮れている。

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ヒヨドリのつがいが、イチジクのえさ台の「しらぬい」を上と下で見張って
いるようにも見える.。東側の紫モクレンがつぼみをつけ始めた。スイセンは
昨日の雨に打たれて倒れそうにもなっていたが、続いて、チューリップがつ
ぼみをつけ始めている。球根のまま放置していたアムステルダムの花市で
買ってきたのはどれだったのか。いつ植えたのかわからない球根も、毎年
花を咲かせてくれる。
年が明けてから、植えた球根もある。なまけ者の庭にも
春は確実にやってくる。

 

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2019年12月 1日 (日)

改元、一連の行事はいつ終わるのか=その根源たる差別も続く

 昨年の5月、改元前後からの皇室行事は、いつ果てるともなく続いているかのような光景である。大嘗祭後に行われた4回の饗宴の儀、そして、続く伊勢神宮参拝・報告、奈良や京都の天皇陵参拝、そして京都では御所でのお茶会まで開いていた。ご先祖への墓参というならば、もう少しひそかにしてもよろしいのではと思う。関西に暮らす友人は、「大嘗祭ごっこ」は、もううんざりとも嘆いていた。宗教的な色彩が強いので私費でという秋篠宮の意見もあったが、こんな状況になった。私費という内廷費とて国費には違いないのだが。

 天皇家にとって大嘗祭という儀式に伝統があるというのであれば、せめて内々に済ませるべきだったろう。歴史上の宮廷行事とて、技術的には、もっと素朴なものであったに違いない。一夜限りのあの施設には20億近い費用が掛かったという。国民の日常から離れたあのような儀式を、少なくとも国民の統合の象徴である天皇がなすべきではなかった。「天皇」こそ利用されるべき存在であることを、国民も自覚しなければならないと思う。「国民に寄り添う」というならば、まだ仮設住宅にも入れない被災者、仮設住宅を追われる人々、三交代の過酷な職場で働き続ける人々、住いもなく行きどころのない高齢者、三食満足に食べていない子供たち、いわれのない差別を受け続けてきた人たちに思いをいたせば、饗宴や茶会で乾杯をしている場合ではないだろう。招く方も、招かれる方も、一番大事なもの、国民の暮らしの在り様を忘れてはいないか。

 勲章や園遊会、そして国民栄誉賞、今回の桜を見る会に至るまで、その選出の構図は一緒である。喜ぶのは政治家や芸能人かアスリートたちかと思えば、その筋の人たちも「紛れ込んだり」するらしい。そして、研究や文芸、経済界やマス・メディアの世界で活躍する人々も嬉々としてはせ参じているのを見るのは情けない。

そして、原発事故は何一つ収束できないまま迫る来年の東京オリンピック、いわくつきの国立競技場、すったもんだのマラソン開催地の変更、不祥事が続くスポーツ団体の中で、選手たちの困惑は続くだろう。国を挙げてのメダル競争は、もうすでにオリンピック精神からは隔絶したものである。

国民の考える力は、改元やオリンピックで削がれてはならない。

 

 

 

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2018年8月 7日 (火)

オリンピックと天皇代替わり批判はタブーなのか

 

この夏は、図書館通いとパソコンに向かう時間が多かった。新聞をじっくり読めず、いつも見ているテレビのニュースも見逃すこともたびたびだった。スポーツ界――相撲、アメフト、レスリング、ボクシング・・・選手たちを抱える各競技団体、大学スポーツなどの旧態然とした一強体制には、あらためておどろくとともに、その体制が選手たちをいかに苦しめてきたかも知ることができた。今更ながら、さまざまな報道がされるたびに、安倍一強体制のいまの政治と同じ構図だなと、つくづく思う。メデイアも、いまでこそ勢いに乗って、スポーツ界のスキャンダルを連日報道するけれども、今までは、いったい何をやっていたの、とも言いたくなる。それに、「情報番組」の大半は、このスポーツネタと、いまは災害報道に終始する。災害報道にしても、災害救助、身内を失った人々の悲痛、避難遅れや地域の助け合いやボランテイア活動には言及するが、肝心の災害の要因や災害対策に割かれる情報は極端に少ない。政治ネタを扱うとなれば、政治家や官僚の放言・失言やスキャンダルと自民党総裁選の攻防とやらに焦点があてられる。それに、直近の国会で強行採決に近い形で成立してしまった働き方改革やIR法など、さらに中国・ロシア・韓国・北朝鮮とアメリカとの間で右往左往するだけの「外交」、沖縄の新基地建設、オスプレイ、イージス・アショア導入などを決めた防衛予算に見るアメリカ・ファーストの実態などは、もはや素通りに近い。そして、来年の天皇代替わり、二年後に迫ったオリンピック関連の報道が過熱の一途をたどっている。

 

そもそも、現天皇が、「象徴天皇制」の存続のために、生前の代替わりという方法で「強制終了」に踏み切ったことを受けて、「特例」づくめの半端な形で、乗り切ろうとした政府に、国会では、全政党・会派、「リベラルな」政党も、異議を唱えなかった。そして、すでに、なにやら「恩赦」による特典にだけには浴したいという露骨な動きさえもあるという。

 

東京オリンピック開催にも、政府・議会あげて、盛り上げに懸命なのである。IOCにおける東京招致、関連施設建設、建設費高騰、暑さ対策、聖火のコース、選手強化補助金、広報費用・演出、治安対策・・・。当然のことながら「想定内」の問題であって、いずれも大きな疑問符がつけられ、これらにまつわる不祥事やスキャンダルは後を絶たないだろう。不祥事まみれの「オリンピック」で得をするのは誰なのだろう。

 

直接は聴いたわけではないが、久米宏のラジオ番組でのオリンピック批判に、少し勇気づけられて。

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2018年8月 1日 (水)

スポーツ界のこの無様な姿は何だ!

 連日の災害・猛暑報道に続いて、スポーツ界のスキャンダルが後を絶たない。

 スポーツとは、もともと縁がない私は、プロのスポーツというのが、理解できない。そして、いまのような、国を背負って、勝敗を賭けるオリンピック競技というものにも、そもそも関心がない。それどころか、むしろ、害悪だと思っている。IOCのスキャンダルは、後を絶たないし、2年後の東京オリンピック・パラオリンピックを控えて、JOCの怪しげな動向にも、みな口をつぐみ始めている。

近頃、明るみに出ている日本のスポーツ界のスキャンダルを見るにつけ、何十年間にも及ぶ、しがらみ、悪弊、いや犯罪すらをも、黙認してきた監督官庁やスポーツ団体、それに、スポーツ報道の関係者は、いったい何をやっていたのかと不思議なのだ。今頃になって、どんなコメントをされようと、これまでの勝敗至上報道、情報源としての団体や関係者、選手とのパイプばかりが大事にされ、おそらく、知り得た不祥事情報も不問に付して来たにちがいない、と思われるのだ。ベテランのスポーツジャーナリスト、スポーツ評論家という存在も、あてには出来ない。多くのスポーツ団体も、たたけば何か出るところが多く、限りなく怪しい。アマ・プロを問わず、強いチームの陰には、何かありそうなのだ、というのが素人の直観でもある。

そして、さまざまな誘惑に負けるのも選手であり、そこから、立ち上がるのも、事情を一番よく知った選手たちなのである。メディアが垂れ流す、選手やチームの根性物語やファミリー・ヒストリーは、もうたくさんだ。老若男女を問わず、健康のために、勝敗を楽しみながら、本来のスポーツに興じることができる日を待ちたい。

それには、いまのような国単位で勝敗を競うオリンピックは不要でしかない。少なくとも、引き受ける国や都市が無くなり、4年毎も難しくなるかもしれない。各競技の国際大会があれば、十分ではないか。それとて、健全な運営は、複雑な国際情勢を背景に、むずかしい局面があるにちがいない。

 

 

 

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2017年12月 2日 (土)

生前退位とオリンピックと~2019年、2020年はどうなる

 きょう、121日のNHKは、テレビの「ニュース7」を一時間に延長して、その大半を、天皇の退位関連情報に費やしていた。安倍首相が議長の皇室会議で、採決を経ずに「2019430日退位に決まった」と、各紙の夕刊も伝えた。いずれも「退位19430日」(毎日)「194月末退位」(東京)「天皇陛下194月退位」(朝日)が見出しで、ここでは「平成」の元号は使用されてないことが共通している。「平成314月」とは、表現していないのはなぜか、不思議でもあった。ずばり19年の方が、明確でわかりやすかったからだと思う。NHKは、「再来年(2019年)」との表現をとっていた。

ことほど左様に、元号表示は、明確さを欠き、継続性を損なうことは明らかである。しかし、再来年の5月まで、「平成30年の歴史」は繰り返し、繰り返し語られるだろう。多くの国民は、自分の暮らしの先行きの方が不安で、「静かな環境」で「代替わり」を見守るしかないと思っているに違いないのに、政府やそれに追随するマス・メディアは、目くらましのように、大々的に平成回顧を展開するだろう。天皇の退位表明が政治的関与とならない配慮どころか、「代替わり」は、まさに「政治的利用」されていると言ってよい。今回の退位・改元日程も、政府の政治日程から割り出されたようだ。役所的な発想でも、41日が、順当のような気もするのだが。

いまの日本で、元号でくくられる歴史に、どれほどの意味があるのだろうか。グローバルな思考や「地球規模の歴史」が問われる中で、まさに真逆の方向としか言いようがない。

東京オリンピックまで1000日を切ったというから、あわせての二重の狂騒曲を聞かせられることになりそうだ。東京誘致が決まる過程も不透明であり、安倍首相の虚言のプレゼン「原発事故による放射能はコントロールされている」も今では問われないまま、国を挙げての盛り上げに懸命である。その一方、スポーツ界と競技者たちの事件が続く。オリンピックでメダルを何個という発想が、指導者とアスリートをむしばみ、暴力事件や往年の選手の不祥事が絶えない。

平成回顧、オリンピックの狂騒にうつつを抜かし、日馬富士引退などと騒いでいる間に、政治の私物化、森友・加計問題の幕引きも、原発再稼働も、北朝鮮脅威論による改憲問題も一気に進んでしまいそうな、憂鬱な日が続く。

(日付は変わってしまったが)

 

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2017年5月 1日 (月)

ほんとに、何から言い出していいのかわからないほど(2)政治家の「失言」ではない「虚言」

 政治家の「ウソ」は「失言」ではあり得ず、確信犯的な「虚言」といっていい。政策や公約に沿った形での発言が多いので見破りにくい。それだけに、本音の「失言」よりもたちが悪い上、国や国民へ影響大ながら、責任追及が難しい。国民が、有権者がよほどしっかりしなければならない。

 私がふだん、「ウソばっかり!」と思わず叫んでしまう、いくつかを紹介してみよう。自分の薄れた記憶をよみがえらせ、少し調べてみた結果でもある。

 

「東北の復興なくして、日本の再生なし」とは

 

 東日本大震災後5年を経た、このときの記者会見では、「東北の復興なくして、日本の再生なし」としめくくった。首相は、被災地に30回以上も訪ねたと、前置きして、次のようにも述べている。

「3年前に訪れた時、見渡す限りの更地であった、宮城県の女川町の中心地は、先月、その景色を一変させていました。地域の皆さんの<足>であるJR石巻線が復旧し、木の温もりを感じる新しい駅舎の前には、電気屋さん、青果店、フラワーショップ。素敵な商店街が完成し、たくさんの人たちで賑わっていました。 政権交代した3年前、計画すらなかった高台移転は、ほぼ全ての事業が着工し、この春には、全体の4分の3の地区で造成が完了します。ほぼ全ての漁港が復旧します。7割を超える農地が作付可能となり、9割近い水産加工施設が再開を果たしました。」

 ここでも、「政権交代した3年前、計画すらなかった」と前政権の批判を欠かさないなか、女川町の復興に言及している。同じ年の20164月に私も、女川を訪ねている。町会議員のAさんに女川原発と町内を案内していただいた。町の中心地であった場所に新しい女川駅舎と商業施設がオープンして間もなかったのである。首相は、賑わいを強調するが、私たちが訪ねたのは、大型連休の初めで、イベントの開催中であったが、閉店中の店もあり、地元の人が日常の買い物をするような場所でもなく、観光客で賑わっているという風でもなかった。ランチをと思っても、ワカメうどんの店かマグロ丼かがメインの店しかなかった。

 航空写真を見ても分かるように、安倍首相は、鳥の眼も虫の目も持ち合わせていないのだろう。女川駅舎の北の高台、町立病院から見おろせるのは、かさ上げ工事真っ最中であって、下の写真のように、造成地の形がまだ見えなかった。飛び地のような商業施設、工場やその他の施設と復興住宅が道路と結ばれても、まさに点と線の「まちづくり」となってしまわないか、の危惧が去らない。Aさん家族も、まだ病院近くの仮設住宅に住んでいるとのことだった。 「復興のトップランナー」と言われた女川町、Aさんは、これまでの5年間は、何とか頑張れたが、これからの5年が大変だろうとも語っていた。

 

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(左)地盤をかさ上げし、約200m内陸に移設されたJR女川駅(左下)。駅前には遊歩道が海に向かって延び、両側には商業施設が並ぶ。昨年末に開業した=2016年2月19日、本社へリから喜屋武真之介撮影。(右)津波で街が流された旧JR女川駅(右)周辺2011年3月19日、撮影。 

 宮城県女川町では、住宅約4400棟のうち約2900棟が全壊し、死者・行方不明者は872人(震災関連死含む)に上った。震災前に1万人余だった人口は7000人を割った。2017年度までに864戸の災害公営住宅(復興住宅)を整備する計画だが、完成したのは3割の258戸。=毎日新聞2016310日から=

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女川町立病院の在る高台から見た海側と山側のかさ上げ工事。町立病院の脇にも
いくつかの慰霊碑があったが、下の写真の道路脇にも見える=2016年4月29日、筆者撮影。撮影時からちょうど一年、どれほど進捗しているだろうか

 

 今回の今村前復興相の「東北でよかった」発言は、自主避難者への借り上げ住宅の無償提供の打ち切り方針に対して、「故郷を捨てるのは簡単だ」(2017312NHK日曜討論)、「福島原発事故による自主避難者が帰還できないのは自己責任」(前記事参照、44日記者会見)の発言に続くもので、安倍内閣の原発事故の国や東電の責任を認めようとしない、被災者切り捨て、復興予算を残してしまうという「復興政策」の破たんを体現する発言であって、「東北の復興なくして、日本の再生なし」「東北の復興が最優先課題」などのキャッチフレーズは、もはや裏付けを失っているのだ。 

「世界で最も厳しい水準の安全規制」とは

 原発の安全性について、安倍首相が「世界で最も厳しいレベルの新規制基準」「世界で最も厳しい水準の規制基準」と胸を張って答弁するのを何度見てきたことか。20129月、田中委員長を含む5人の委員による原子力規制委員会が立ち上げられ、新規制基準は、2013619日決定、78日に施行された。2014124日第186回国会施政方針演説で、安倍首相は「世界で最も厳しい水準の安全規制を満たさない限り、原発の再稼働はありません」と宣言し、同年4月11日の閣議決定「エネルギー基本計画」において、「原子力発電所の安全性については、原子力規制委員会の専門的な判断に委ね、原子力規制委員会により世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し原子力発電所の再稼働を進める。その際、国も前面に立ち、立地自治体等関係者の理解と協力を得るよう、取り組む」として以来、様々な場面で、その真偽が質されることになる。日本の原発の安全性、新基準による再稼働の安全性については、日々、その説得力を失いつつあるのが現実であろう。

 例えば、菅直人元首相は、2014416日に提出した「エネルギー基本計画に関する質問主意書」で、「世界で最も厳しい水準の規制基準」という根拠は何か、を問うたところ、政府答弁書(2014425日)では、つぎのようにいう。

「(新規制基準は)国際原子力機関や諸外国の規制基準を参考にしながら、我が国の自然条件の厳しさ等も勘案し、地震や津波への対策の強化やシビアアクシデント対策の導入を図った上で、世界最高水準の基準となるよう策定したものである。

 なお、新規制基準においては、事業者が満足しなければならない性能の水準を定めており、これを実現する方法の詳細についてあらかじめ指定しておらず、国際的にも、原子力に係る規制基準においては、性能基準を規定していると承知している。

 この答弁に見るよう、「世界最高水準の基準となるよう」策定したにすぎず、水準をクリアする具体的な方法は、事業者任せとしか読めない。

 また、201472日、原子力規制委員会田中委員長は、記者会見で、つぎのようにも述べる。「最高水準にあるというのは、様々な、いわゆる重大事故対策について我が国の場合は特に外的な要因、自然条件が厳しいということを含めて、そういうものに対する対応というのは相当厳しいものを求めているということから最高水準であるということ」、そして、「世界最高水準とか世界最高とかいうのは、やや政治的というか言葉の問題なので、具体的ではなく、今、私どもが求めているのは適合性」でしかなく、適合したからと言って「安全性」を担保するわけではないとの発言は、幾度となく繰り返されている。

 また、20141021日参議院内閣委員会での山本太郎議員の「日本の原発は世界で最も厳しい安全基準といえるか」の質問に、田中委員長はつぎのようにも答えている。

 「政府特別補佐人(田中俊一君) 正確に申し上げますと、世界で最も厳しい基準とは言っていなくて、最も厳しいレベルの基準と言っているんです。ですから、そこのところは間違えないようにしていただきたいと思います。」やはり、山本議員の質問主意書への答弁(2014年11月25日)の中で、つぎのように明言しているのである。「世界最高水準の基準となるよう策定したものであるが、必ずしも最も厳しい基準であることを意味するものではない」と。

 

以上のことからも、日本では、「世界で最も厳しい規制基準によって、原発の安全性は確保されているわけでない」ことは明白になった。それでは、その安全性に責任を持つのは、原子力規制委員会の「専門家」の委員なのか、その専門性を「尊重」する政府なのか。少なくとも、安倍首相の「世界で最も厳しい水準の安全規制」は、少なくとも現実を正しく伝えてはいない。騙される国民が悪いのか。

かつてテレ朝の「報道ステーション」で、「世界一厳しい規制基準なのか」を問うた番組(2014725日)を見たことを思い出し、薄れた記憶と紹介記事でたどってみた。すると、先の記者会見の速記録や議員の質問書への政府答弁やの国会質疑の答弁とも重なる。

 その日の報道ステーションは、フィンランドのオルキルオト原発とそれに併設されたオンカロなどの取材に基づき、日本の新しい規制基準とを比較している。

フィンランドの岩盤の強固さと地震国日本との違い、そして、地下450mのオンカロの併設、日本では、使用済み核燃料、汚染水・汚染土などの中間処分場、最終処分場が確保されてないことを前提にしての比較である。①原子炉の二重の格納設備②フィルターベント(圧力を下げ、放射の物質を除く)③メルトダウン対策としてのコアキャッチャー、の有無が指摘された。 

 ①は、テロ対策にも備えることにもなっている。③は、原子炉創設時には可能だが、現存の原子炉に備えるのは困難であり、原子力規制委員会の田中委員長は、コアキャッチャはーは、「広げて冷却する装置なので、、事故後の時間稼ぎ」程度にしかならないとしばしば明言している。

 以上は、私なりのまとめなので、参考資料と合わせお読みいただきたい。と同時に、フィンランドのように、いかに厳しい規制基準のもと「夢の原子炉」への道を歩み始めたものの、その過程でいくつかのトラブルに見舞われ、その工事を受注していた、フランス原子炉メーカー「アレバ」自体が、倒産の危機に直面し、大幅な工期の遅れが生じてもいるのも現実である。原発に関しては、世界一厳しい規制基準などあり得ないことを知るのであった。

 首相や政府は、原子力規制委員会が「世界で最も厳しい水準の規制基準を目指して」策定した基準に適合したことを以って、原発再稼働の安全性を担保してないことは、明らかなのだ。「だれも世界一厳しい安全基準なんて、言った覚えはないよ、世界で最も厳しい水準を目指して策定した基準に過ぎないんだから」と、すでに開き直っているようなものではないか。

 また原発事故関連の政治家の「虚言」で忘れてはならないのは、20139月、東京オリンピック招致のプレゼンテーションでの安部首相の福島原発事故による汚染水はコント―ロル下に置かれている、「アンダーコントロール」されているとの発言であった。ちなみに、そのプレゼン直前にの94日の東京オリンピック招致委員会の竹田理事長が、汚染水問題で集中質問を浴びたブェノスアイレスでの記者会見で、「福島は東京から250キロ以上も離れている。東京は安全であり問題がない」と答え、当時も福島県民の顰蹙をかっていたことを思い出す。これらの発言については、本ブログでも記事にしたことがあるので、合わせてご覧いただければと思う。

 

〇これでいいのか、2020東京オリンピック(201399日) 

http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2013/09/2020-d1d1.html

〇オリンピック東京招致はいいことなのか(201397日)

http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2013/09/post-77a7.html

 

参考

〇報道ステーションの紹介記事

http://kiikochan.blog136.fc2.com/blog-entry-3843.html

http://saigaijyouhou.com/blog-entry-3302.html

〇原子力規制委員会の記者会見速記録

file:///C:/Users/Owner/Desktop/000068790201472日原子力規制委員会記者会見.pdf

〇山本太郎ホームページ

https://www.taro-yamamoto.jp/national-diet/3816

山本太郎質問主意書への20141125日の答弁http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/187/touh/t187083.htm

安全な原発は夢か 仏アレバの新型炉建設が難航  (安西巧)
2015/1/26 7:00 日本経済新聞 電子版版http://www.nikkei.com/article/DGXMZO82205990R20C15A1000000/

〇経営崖っぷち 仏原発アレバ
2017年3月7日 東京新聞

ttps://silmarilnecktie.wordpress.com/2017/03/07/37%E7%B5%8C%E5%96%B6%E5%B4%96%E3%81%A3%E3%81%B7%E3%81%A1%E3%80%80%E4%BB%8F%E5%8E%9F%E7%99%BA%E3%82%A2%E3%83%AC%E3%83%90-%E7%B4%AF%E7%A9%8D%E8%B5%A4%E5%AD%97%EF%BC%91%E5%85%86%E5%86%86%E8%B6%85/

 

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各地のプロジェクトで、工期の大幅な遅れが繰り返されている。
=日本経済新聞電子版2015126日より=


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 仏原子力大手アレバ、16年は最終赤字が縮小:3月1日、経営再建中のフランスの原子力大手アレバが発表した2016年決算は、最終赤字が6億6500万ユーロ(7億0200万ドル)で、15年の20億4000万ユーロ、14年の48億3000万ユーロから縮小した。写真はロゴ、パリ近郊で2015年5月撮影(2017年 ロイター/Charles Platiau)=2017 3 1日 ダイヤモンドオンラインhttp://diamond.jp/articles/-/119879

 

 

 

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2016年7月29日 (金)

都知事選に思う~なぜ、東京はオリンピックを中止できないのか

オリンピックは、今
 
都知事選“主要3候補”の政策論議は実らないまま、選挙戦は終盤戦に入ってしまった。投票日は二日後に迫った。参院選の当時は、舛添問題を執拗に報道しながら、国政選挙報道自体を自粛していたテレビ、とくにNHKの対応には、このブログでも触れたように、重大な問題を残した。都知事選において、主要候補が出そろって、これまでとは違う方向性が見出せるかもしれないという期待はあったが、見事に裏切られてしまった。各新聞やテレビ局は、それなりの工夫をしながら、テーマごとに各候補に質問している。しかし、その回答が、いずれも似たような、曖昧なものだったり、権限のない国政にかかわるものだったりする。あるいはキャッチフレーズやパフォーマンスだけで、実態をどれほど把握し、財政的な裏付けをどうするかが聞こえてこない。街頭にしても、個人演説会にしても、敵失を喜ぶネガティブキャンペーンは見苦しい。

私は都民ではないが、都民にはぜひ考えてもらいたい都政の課題がいろいろある。私には、どうしても、そのうちの一つ、オリンピック問題が気にかかるのである。三候補のうち、小池は、「情報公開をして、民間からの寄付も大事な財源」、鳥越は「情報公開をして、見直しコンパクトなものにしたい」といい増田は「復興五輪の原点に立ち返りたい」とも答えているが、いずれも、現実的な施策には結びつかない。

やや旧聞に属するが、参院選のさなか、あるミニコミ誌の電子版に寄稿したものがあったので、若干、手を加え、あらためて記事としたい。そもそも、オリンピックの原点に立ちかえって、考え直せないのか、と思ったからである。

そして、リオのオリンピックが近づき、アスリートたちが現地入りしているが、治安や衛生状態が心配されている。さらには、ロシアのドーピング問題も不明瞭なままに、なし崩し的に参加・不参加が決められてゆく。そんなところでメダルを争って何の意味があるのだろうか。

 

「底なしの疑惑の宝庫五輪かな(さいたま 高本光政)」 

表題は、69日の『毎日新聞』の読者川柳(「仲畑流万能川柳」)の入選作だ。東京オリンピックに、これほどケチがついているというのに、なぜ、「東京オリンピックをやめてしまおう」という機運にならないのかが不思議なのだ。というより、これほど今の安倍政権の失政が明らかであるのに、ほかに選択肢がないからと支持率が下がらず、無関心層が劇的に減ることもない。その構図と似てはいないか。

オリンピックの招致活動において、その報道、明らかな世論操作によって、東京オリンピック開催が決まっていく、実に見苦しい経過を知ることになる。さらに、安倍首相がIOC総会でのプレゼンで「フクシマについて、お案じの向きには、私から保証をいたします。状況は、統御されています。東京には、いかなる悪影響にしろ、これまで及ぼしたことはなく、今後とも、及ぼすことはありません」とスピーチし、質疑で放った「福島の汚染水は、完全にコントロールされている」(201397日)との虚言を忘れることができない。

それまで、東京での開催を危ぶんでいた人たちも、東京に決まった以上、最善を尽くそうではないか、などという大きな声に流されて、多くの国民は取り込まれ、アスリートたちは利用されているのを知ってか知らずか「きれいな色のメダルをとるため頑張りたい」などと抱負を語るのを見るのは、やりきれない。そして、保守層はもちろん、「革新的」な野党に至るまで、企業もメディアも色めき立っている。もはや「スポーツの祭典」などでもなく、「国威発揚」と「利権政治」の温床になってしまっているにもかかわらず、である。

開催決定までと決定後の不祥事が続く

 過去のことを水に流すのが、日本人の美徳なのだろうか。思い返せば、東京オリンピック決定までも、いろいろ取りざたされたではないか。20116月石原都知事が東京への招致を表明、2011311日以降は、具体的な施策もないまま、東日本大震災復興のための「復興五輪」が声高に叫ばれ、201191日締め切りの立候補に名乗りを上げた。2012217日、国立競技場建て替えを決定した。しかし、世論はそれほど甘くはなく、20125月、IOCの日本での世論調査では、東京開催賛成が47%、反対23%、どちらともいえない30%であったのである。ちなみに、いわば開催国の国民支持率は、当時、マドリード78%、イスタンブール73%とは大きく隔たっていた。大震災、原発事故で、オリンピックどころではない、というのが日本国民の大方の気持ちだったのではないか。これに、危機感を覚えたJOCは、立候補ファイル提出の1317日までに、必死のメデイア戦略を展開しての招致活動を続けた。同ファイルには、どこにも東日本大震災も、復興の文字も出てこない。記載された国内支持率は201211月現在66%に上昇したものの、それでも他の2都市には届かないことが明らかとなった。その後も2012年から13年にかけて、新しい猪瀬都知事、メダリストらを動員しての年末年始の活動をメデイアに幾度となく登場させている。

立候補ファイル提出後は、以下のような社説が続き、以降、国際キャンペンが解禁となった。一部のメデイアが若干の懐疑を示しつつも、東京オリンピックGO!のモードに切り替わった。

19産経:東京五輪招致 国を挙げて発信力を競え

19東京:社説:東京五輪招致、足元の支持を広げたい

110朝日:東京五輪招致、成熟都市と誇るなら

110毎日:五輪招致、東京だからを示せ

111日経:五輪開催で日本を元気に

113読売:東京五輪招致、日本の総力で実現したい

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20133IOC評価委員の東京視察がなされ、その先々での報道が活発化、6月のIOC世論調査における国内支持率は、東京70%、マドリード76%、イスタンブール83%と東京は上向いた。そして97IOC総会におけるプレゼンがなされ、翌日、開催地「東京」が発表された。910日の全国紙は、一斉に以下のような社説を掲げ、テレビでは、どの報道番組も、バラエティも、東京オリンピックに沸いた。あるプレゼンテイタ―の「お・も・て・な・し」のジェスチャーがもてはやされもした。また高円宮妃のプレゼンは、皇室の利用ではないかの声は、その後、すぐにかき消された。

 朝日:東京五輪―成熟時代の夢を紡ごう
日経:国や都市の未来を考える五輪に
読売:2020年東京五輪 復興と経済成長の起爆剤に
産経:2020年東京五輪 成功は世界への約束だ
東京:2020年 東京五輪 成功の条件 原発事故を封じ込めよ

1015日、国会では、「2020年東京五輪に向けた努力を政府に求める決議」が衆参本会議で採択され、反対は参院の山本太郎一人のみだった。パフォーマンスとの見方もあったが、私には至極まっとうな対応に思われ、全会一致、同調圧力の恐ろしさを感じたのだった。その後の顛末は、まだ記憶に新しい。

2015717 予算大幅増のザハ設計案撤回
201591  エンブレム佐野案模倣で白紙撤回
20151222 隅研吾設計案発表
2016425 新エンブレム野老案発表
2016511  JOCの不正振り込み疑惑発覚

2016511日には、英ガーディアン紙、BBCが、JOCIOC委員国際陸上連盟ラミン・D関係者に16億円振り込みをした件をフランス当局が捜査していることを伝えた。代理人として「電通」の名が浮上し、531日の参院内閣委員会の山本太郎議員の質問で、竹田日本JOC会長は、認めるに至ったが、電通への依頼は信頼に足りるとした。その後は、新聞・テレビの報道は、「舛添都知事公私混同事件」の異常なほどの報道が展開され、この裏金問題も、甘利元経済再生大臣の裏金問題もどこでかき消された印象が強い。テレビ・新聞が報じなければ、週刊誌や月刊誌に期待したいが、タレントの不倫や病気を追いかけるのではなく、オリンピック裏金疑惑を徹底取材に奔走してもらいたいという思いもある。

東京オリンピックという名のもとに、まるでオリンピックが聖域のようになって、どの政党やメディアも「やると決めた以上は・・・」はと、立ち止まることなく2020年に突き進むとしたら、やはり恐ろしい。安保法制、沖縄の基地問題、憲法改正問題、原発事故の収束・原発再稼働・廃炉、さらには、保育・介護の拡充、貧困・格差という政治的な課題が「さて置き」され、「オリンピック」のためならばという「大義名分」となってしまうことには、警戒しなければならない。都民はもちろん国民は、これまでなされてきた情報の隠蔽や操作を見抜く力、いざとなっても、決して責任を取らない権力のシステムを監視しなければならない。私たちの覚悟と責任は重い、とつくづく思う。

 

なお、オリンピックと経済効果が声高に叫ばれているが、以下の資料では、過去の実績に照らし、つぎのような危うさを警告しているように思う。近年のオリンピック運営における国力を誇示するような演出、メダル獲得競争などは、「競技者ファースト」、開催国の負担軽減というオリンピック精神に反する実態が横行していることにも目を向けなければならない。

 

1.収支決算をプラスにするには以下の3条件のクリアが必須だが、困難を極める

・ 直接経費が収入(放映権料、企業協賛金、チケット・ライセンス売り上げなど+公費)と見合う

・費用対効果のあるインフラ整備(交通・ホテル・IT環境など)が実施される

・諸施設の後利用も採算がとれる

2.経済効果以外の都市再生・政治的結束・環境配慮・国際理解・ダイバーシティなどが望める

<参考>

「オリンピックと経済」(坂田和光)

 

http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_9880033_po_078103.pdf?contentNo=1

『レファレンス』(国立国会図書館立法調査局)781号(20162月)

<総合調査 2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けて諸課題>

 

 

 

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2014年2月 1日 (土)

NHKの番組編集権とはなにか~31日衆院予算委員会の質疑中継と「ニュース7」

 NHK会長の品位とは
 
NHKの籾井新会長の125日の記者会見での発言は、報道機関のトップとして決して許されるものではなく、辞任に値しよう。個人の発言として取り消して済む問題ではない。安倍首相が仲の良い経営委員を送り込んで選任した会長人事だった。いまだに、「従軍慰安婦はどこにもあったでしょう、フランスはありませんでしたかァ?ドイツはありませんでしたかァ?」とそのへんの一杯飲み屋の酔っぱらいの風情だった。あの品位のなさはどこからくるのだろう。安倍首相が口にする「女性の力の活用」の本気度が知れる。

衆院予算委での質疑

この件に関して、131日の衆議院予算委員会では原口議員(民主党)が質問した。NHKの国会中継を見ていたのだが、議員は、放送法の第1条と4条を前提に、番組制作の最終責任は会長にあることを確認した上で、会長①「特定秘密保護法が通っちゃったんだからしょうがない・・・」発言、②国際放送における政府が右と言っているものを左とはいえない・・」発言に絞って、放送法4条第4項「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に反するとの質問であった。NHK会長は、どの質問にも、参考人席の真後ろの事務方が脇の下に差し出す紙片を受け取ってからの答弁となった。しかも、慣れない席での記者会見で私的な意見を述べたことを陳謝したが、答弁は、放送法の条文を読み上げることを繰り返すばかりで、質問とはかみ合わない内容のないものだった。

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         「毎日新聞」(2014年2月1日)朝刊 

                  三本の手?背後から伸びる手は?

二つの疑問          

このやりとりで、私はつぎの2点に疑問があった。番組制作・編集権は、ほんとうに会長にあるのか。放送法のどこにもその記載はない。NHKの総括的な責任は会長にあることは確かだが、制作・編集は実質的には番組担当者だと思うし、番組にかかわる件は番組担当者に伝えるというのが、NHKの視聴者センターの姿勢でもある。もっとも会長に最終責任があるということが大昔からの「内規」にあるらしいとは、放送関係者から聞いたことがある。今回のNHK会長の暴言は番組編集の責任者である会長として「ケシカラン」というよりは、報道機関、公共放送のトップとしての資質の問題ではないだろうか。 選任した経営委員会にも大きな責任があるはずだ。

つぎに、質問者の原口議員は、委員会質問の事前に行われたNHKのレクで、「従軍慰安婦関連の記者会見のやりとりのみが私的な意見として取り消されたので、この問題には今日は触れない」と、質問の冒頭で明言したことである。ということは、記者会見における他の質疑における会長答弁は、公人としての発言だったことを認めたことになる。だとしたら、あの会見の暴言は、経営委員長の国会での答弁のような「今回のことを踏まえても、会長として適任だ」として「お咎めなし」で済まされる問題ではないはずであろう。この2重の意味での経営委員会の責任がある。にもかかわらず、安倍首相は、経営委員の選任についての質問に「経営委員会の決定に介入するつもりはない」と、意図的にすり替えた答弁をするのである。

その日の「ニュース7」 

そんな疑問が去らないまま、当日の「ニュース7」を見た。

「消費者物価指数上昇」「有効求人倍率、職種で違い」「ソチオリンピック、あと1週間」に続いての「国会質疑」であった。エネルギー政策、核密約問題、特定秘密の廃棄問題についての質問は、要約のアナウンスだけで、安倍首相の答弁のみを画像と肉声で放映するとう方式である。さらに、NHK会長の質疑に移るが、原口議員の質問は一か所だけ取り上げられ、あとは、会長の答弁が続くのだが、いくつかの質問の回答を適宜、つなげての編集であった。しどろもどろの繰り返し答弁が、整った形で答弁したように映るしかけである。さらに経営委員長には、会長の記者会見発言に経営委員会ではどういう議論がなされたのかの質問については、一切アナウンスがないまま、会長答弁に続けて、答弁の一部のみが放映されたのである。何に応えているのか、ニュースだけを見ている人はおそらくわからないだろう。伝わるのは、ただ最後に、軽々しい発言を遺憾に思い、注意したことがわかる程度で、この件は、一件落着という筋書きのニュースであった。そして、このニュースのつぎに流れたのが、「外国観光客にもわかりやすい、地名・施設標識」で、これまでのローマ字表記がわかりにくいので、たとえば「roppongi dori」の「dori」を「street」にするとか、「sensoji」の後ろに「tenple」を付記するとか、大きなパネルまでつくって、それは丁寧にいくつもいくつも紹介していた。前記「国会中継」のニュースより長いくらいの時間を割いてであった。しかも、このニュースは6時台の首都圏ニュースでも放送されたのを、私は見ていた。「ニュース7」の全国ニュースで、こんな扱いを受けるニュースではなかったのではないか。

この実に恣意的な編集がまかり通る恐ろしさを、改めて感じた。発言の切り取り方、画像の切り取り方、自由自在なのだから。放送法第4条には、「1.公安及び善良な風俗を害しないこと。2.政治的に公平であること。3.報道は事実をまげないですること」の3項もあるのだ。とくに報道番組の編集は、先の第4項も踏まえて、どのニュースを取り上げるか、どれほどの時間をかけるのか、繰り返し報道するのか、などさまざまなバランスが問われる仕事で、不断の努力が要求されるはずである。

NHK会長の記者会見発言のNHKの報道の絶対量が極端に少なかったのは歴然としていた。1月25日の会見当日の「ニュース7」では、放送法を順守するという所だけを伝えるのみで、他局が報じた従軍慰安婦発言領土問題についての発言は全く報じなかった。28日「ニュース7」になってようやく、衆院本会議の民主党海江田代表の質問で言及したことで会長の従軍慰安婦発言が伝えられただけだった。そして、31日の「ニュース7」での報道となったのである。

「なに様」のNHK?

少なくとも私が、ほぼ毎日見ている「ニュース7」は、とくに最近、このバランスは大きく崩れ、政権へのすり寄り、政権の広報が顕著になり、「安倍首相」を主語とするコメントと「経済の好循環?」の一端をどこからか拾ってきて流し続け、ソチオリンピックや6年後の東京オリンピック関連、サッカーや野球選手の移籍のニュースを長々伝え、災害や事件・事故があれば、大々的に報じ、政治ニュースを押しやる傾向が続いている。ニュースの軽重のバランスが取れていないことが続く。と感じるのは、私の偏見でもなさそうなのは、テレビ欄への番組に対する投稿でもよく見かけるようになった。

ニュースに限らず、他の番組、たとえば、大河ドラマさえ、「黒田官兵衛」のあとは、安倍首相の地元を舞台にしたいと、ドラマになりそうな話を探って、ようやく吉田松陰の妹をヒロインにすることになったという話さえ聞こえて来るではないか。

受信料で成り立っている公共放送「みなさまのNHK」への監視を怠ってはならない。

 

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2013年9月 9日 (月)

これでいいのか、2020東京オリンピック

 とうとう、東京に決まってしまった。本当にこれでいいのだろうか。日本は、東京はどうなるのだろう。けさは5時過ぎに起きて、ラジオをかけると、どうも決戦投票の結果待ちのようだった。安倍政権暴走の歯止めのためにも、東京であってはならない、というのが正直な気持ちだった。

 昨夜の最終プレゼンの日本人のスピーチは、わざとらしい笑顔やジェスチャーが目立ち、内容が空疎で、見ていてキマリの悪いものだった。つなぎに、大型画面に流れる映像はいったい何?これも見え透いたイメージが先立つコマーシャルフィルムだった。むしろ、一番自然体だったのが、オリンピックとは直接関係のない内容の「挨拶」をした皇族であったろうか。これは宮内庁の相当な制御が働いていた結果かもしれない。

 最悪だったのは、福島原発事故の汚染水対策を問われての安倍首相の答弁だった。首相は、プレゼンの冒頭で「フクシマについて、お案じの向きには私から保証をいたします。状況は、統御されています。東京には、いかなる悪影響にしろ、これまで及ぼしたことはなく、今後とも、及ぼすことはありません。」(NHKのwebニュースによる)と述べたことに対して、ノルウェーの委員から「科学的根拠を」との質問に、私のメモによれば、「汚染水による影響は福島第一原発の港湾内の0.3平方キロメートル範囲内で完全にブロックされている、状況はすべて、コントロール下に置かれている」「健康問題は今までも現在も将来も、まったく問題ない、私が保証し、約束をする」「水も食料も安全だ、日本の基準は、世界でもっとも厳しい」などという主旨であった。しかし、これって、少なくとも日本人がいまニュースなどで知らされている事実にすべて反しているではないか。外国人相手だからって、ウソで固めていいわけがない。その上「みなさん、ニュースのヘッドラインだけを読まないで、中身を読んでほしい」などと気の利いた風なことも言っていた。さらに、福島で出会った少年とのエピソードを持ち出していたが、その趣旨は、質問とどう絡むのか意味不明だった。

 こうした安倍首相の回答を、日本のメディアはどう伝えるのか。今ネット上で流れている報道では、安倍首相のプレゼンが、勝因だとか、IOC委員に高い評価を得たとかするものが多く、回答の中身の検証には至っていない。新聞は、折しもきょう日曜の夕刊とあす月曜日の朝刊は休刊である。原発事故に限らず、マイナス情報への隠蔽にまっしぐら・・・、メディアはそれに甘んじるのか。

 

 

 すでに日付が変わってしまったのだが・・・。

 

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