2019年5月23日 (木)

自治会と寄付・募金について、やはりおかしくないですか(1)社協会費の徴収、「自由」定着への歩み

 年度が替わって4月に入ると、私のブログの自治会と各種「募金」に絡む記事へのアクセスが激増?!する。新しく自治会役員になったり、班長になったりして、多分、募金徴収の仕事がわが身に降りかかってきて、疑問を持つ人が多くなるからではないかとも考えられる。私たちの自治会でも、かつては、役員や班長になって最初の仕事というのが、自治会費の徴収と5月の社協への募金500円の徴収であった。

当ブログでも、何回か触れている、自治会と寄付・募金の問題は、新聞紙上などでもよく記事にもなり、テレビのバラエティ番組の話題になることもあった。各地の自治会・町内会での強制的な寄付集めの実態やそうしたことへの疑問や改革の取り組みが紹介されることもあるのだが、全国的な動きには連動しないのが現実である。

私たちの自治会では、もう20年も前のことになるが、あることがきっかけになって、600世帯規模の10人の役員のうち6・7人が女性であった年が続いた。私もその中の一人だったのだが、社会福祉協議会が「会費」、日本赤十字社が「社資」と称して、500円を強制的に徴収するのっておかしくない?!という声が、役員からも班長からも飛び出した。私も、寄付集めを請負うのは自治会本来の仕事ではないという思いから、とりあえず、「強制」だけはやめて、社協の会員になる、日赤の社資に協力する、共同募金をするのは、あくまでも「自由」であるべきではないかと提案して、運営協議会と呼んでいる班長会の大多数の賛成で決定した。「強制」とならないためにと考えられたのは、B5の茶封筒の右肩の切れ目するから、会員・社資・寄付の希望者は、氏名を記入の上、500円を入れた小袋を、投入方法をとった。あとで、班長さんが、会員証や領収書を届けるという方式であった。封筒には、現金が入っているので、用心のため、郵便受けではなく、必ず手渡しで、ということにもなった。当初は「この町内は、なんと福祉に冷たいのか」などの声も聞かれたが、この20年間で定着した。ときには、社協や日赤の支部の人が、役員会に説得に来たこともあったという。年度初めには、市の自治人権課主催の自治会・町内会長を集めた地区代表者会議が開かれ、相変わらず、社協や日赤の支部スタッフによる協力要請の時間が設けられている。自治体が、こうした民間団体の寄付集めに全面的に協力していること自体も問題なのだが。

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私たちの自治会の方式は、むしろまれで、ほとんどの自治会は、ほぼ強制的に一定額を徴収しているか、それが面倒ということで、自治会会計から、世帯分の会費や社資、募金額をまとめて拠出しているところもかなり多いというのが現況である。

 ところが、昨日回ってきた、その手渡しの集金袋には会長名で「社会福祉協議会(会費募集)に関する補足説明」、という回覧文書が付いてきた。そこには、以下の文章とともに、「社会福祉法第109条」にもとづく、地域福祉の推進役を担う民間法人であることが付記されていた。

Img201_1

 「まず、当自治会としましては、社協の会費募集に際し、お手伝いはしますが、自治会員に社協会費を強制するものではございません。あくまで、社協の活動趣旨にご賛同いただけた方のみ会費を納入頂き、当自治会はその際に回覧ネットワークを提供するのみとの姿勢です。くれぐれも誤解の無き様、よろしくお願いします」

  前述のように、私は、個人的には、本来、自治会が民間団体への寄付や民間団体の募金を請け負うべきではなく、協力する必要もないと思っているものの、現況にあっては、とりあえず、上記のように、「会費の強制」をきっぱり否定し、確認する文書を回覧に付したことは、至極まっとうなことだと思ったのだった。

 全国各地で悩まれている皆さん、自治会・町内会による社協の会費徴収について疑問を持ったり、戸惑いを感じたりしたときは、寄付や募金の基本に立ち返り、ぜひ「自由意思」によるべきとする改革を提案してみてはどうだろう。

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2017年10月 6日 (金)

これ以上<希望>をばらまかないで~「赤い羽根」募金を通して考える 

102日に東京へ出た。最寄りの駅の構内では赤い羽根の募金が始まっていた。国立国会図書館に調べ物があって出かけたのだが、議事堂近辺は、集会の声もなく、人通りも少なく、いたって静かなものだった。等間隔に立つ警官の姿、なぜか路上の何カ所かに置かれた蛇腹の鉄柵だけが目立っていた。すでにギンナン落果の季節は過ぎたのか、足元を気にしなくてもいいようであった。

今年の10月は、とんでもない10月になりそうだ。臨時国会の開催を3カ月も放置した挙句、9月末日に冒頭解散をした安倍内閣。臨時国会を開催しないのも、憲法7条解散もそれ自体が憲法違反ではないのか。議会軽視もはなはだしい。こじつけたような解散理由が「大義なき解散」といわれる所以である。一方、「野党共闘」に「期待」するあまり、「積み上げ」というよりは、ゆずりに譲ってしまった共産、小池新党の国政進出、民進党の希望の党への合流、はしごを外された「野党共闘」は「野党と市民の共闘」と言い換えたりしている。民進党リベラル派新党立ち上げで、少しばかり、選択肢が増えたかもしれないが、なし崩し的に選挙モードに入ってしまった。

これからいったいどうなるのだろう。日本は、近隣諸国との関係でも軍備強化、原発輸出・再稼働推進、雇用・消費が一向に伸びず、「全世代型」の福祉切り捨てなどによる危機が目前に迫り、私たち、高齢者にとっては、“命がけ”で病院や施設に入るか、そうでなければ、家族を疲弊させる在宅医療・介護に甘んじなければならない時代に入り、「絶望列島」になりかねない。「国民の命と財産を守る」と叫びながら、軍備増強によるリスクや国の借金を増やすばかりの自民党、「希望がゆきわたる国へ」とのポスターを街角に掲げる公明党、「希望の党」と名付けた小池新党・・・。不安や失望が渦を巻いているからこそ、政党は「希望」や「期待」という実のない、口あたり、聞こえのよい言葉だけをばらいてはいないか。

国にあっては、優先度をつけて、実施して欲しい施策がある。憲法改正などはまず不要で、現憲法下ですぐにでも実施できることは、山ほどある。「消費税の使い道を変える?!」って、自公は得意げではあるが、法人税のわずかな増税、内部留保税の導入、所得税の総合課税や累進性を高めれば、消費税増税などまったくもって不要にもなる。教育の無償化や補助は、憲法を改正しなくても立法により十分対応できるはずである。メディアは、政局内の攻防を面白おかしく伝えるばかりだし、登場する専門家という人たちは、素人でもいえそうなことしか口にしない。 

地域に押し寄せて来る数々の危険

この度の選挙にしても、私たち市民には、どんな選択肢があるのだろう。地域では、治安というだけの名目で、監視カメラがめぐらされ、自治会を中心に、社協、PTA、子供会、商店会、さまざまなNPOなどを束ねた「まちづくり協議会」、自治会の「法人化」、募金・防犯・防災というボランティアの強制など、いずれも自治体の行政下請け化、自治会の弱体化を図る目論見である。共謀罪新設と相まって、相互監視社会へと突入する。自治体が直面する危機~人口減少、商店街の衰退、学校の統廃合、交通困難、空き家問題など過疎化の問題、私の住む千葉県では、行政にも議会にも、羽田・成田空港の拡張に伴う環境被害、木更津基地へのオスプレイ配備の危険性、拙速な開発・再開発による弊害などについては、住民の切実な声が届かない、聞こえないふりをしているのが現実ではないのか。地元佐倉市でも、市からの24億円助成を前提にした順天堂大学学部誘致で揺れに揺れた。地元の不動産業者が暗躍、誘致の一点で市長選に候補者を立て、あくどい選挙戦を繰り広げた。消極的な市長も選挙戦後半には、その攻勢にフラフラしだしたのだ。誘致は今、白紙状態となったが、胸をなでおろしている人たちも多いであろう。

駅頭での赤い羽根募金は、あまり目にしなくなったのも、ボランティアの高齢化が進んだからであろう。自治会からはもう先月には、募金袋が回ってきていた。私たちの自治会では辛うじて、募金は、するもしないも、金額も、世帯の自由になっている。赤い羽根募金は、中央共同募金会が自治体の社会福祉協議会に募金業務を委託し、社協は、自治会や町内会に丸投げしているのが現状だ。自治会などがまさに集金マシンとなっている。本来ならば自由な寄付が、強制に近い形で集金される現状は、各地で問題を起し、裁判にもなった。このブログ記事でも何回か記事にしている。だいぶ古くなってしまったが、基本はいまだに変わっていない。

赤い羽根共同募金の行方(1)(2)

http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2009/12/post-2f90.html

http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2009/12/post-dd38.html

 集められた募金は、年々減少の一途をたどる。中央共同募金会のデータによれば、赤い羽根共同募金は、70年前、1947年、約6億程度でスタートし、1851年に10億、1980年に100億、1998年の261億をピークに、減少し始めたのである。2015年には184億にまでになっている。自治会等を通して集められる「戸別募金」は、歳末助け合いなどを含むと、募金全体の70%以上占めることも、ほとんど変わっていない。街頭や学校での募金は、合わせても5%にも満たないのが現状である。以下の図をご覧いただきたい。これが募金の入り口と出口で、2015年度では、募金総額184億、助成総額160億、差額が経費とみてよいだろう。

Img328

出典:中央共同募金会 年次報告書平成27年度(2015年)
http://www.akaihane.or.jp/organization/pdf/annual_h27.pdf 

では、これらの募金は、どう使われているのか。たとえば、千葉県では30%が広域で使われ、70%が地元に還元されているという。最後はどこに行き着くのかは、地元の佐倉市のデータベースに詳しいが、少し立ち入ってみると、疑問も多い。

佐倉市赤い羽根データベース<はねっと>

http://hanett.akaihane.or.jp/hanett/pub/homeTown.do?data.jisCd=12212 

たとえば、2016年度(平成28年度)で、歳末助け合いを含めての募金の配布先を見ると、14ある地区社協に各10万、各施設に3.5万、施設の催事に3万など合わせて80件、大口の配分先を含む個所を複写するとこんな具合だ。各行の【表示】をクリックすると、その詳細が現れる。各地区社協は10万をどのように使用しているかも見ることが出来る。

下記の大口の例では、支援金配分事業がほとんどで、対象の利用者数の延べ人数と使用目的~見舞金・祝い金の記載があるのみである。まさに、配分のための配分、機械的なバラマキの感がぬぐえない。募金会は単なる配分機関となり、配分を受けた事業主体や施設がまた配分機能を果たし、募金が配分されるたびに、人件費や経費がかさんでいく仕組みである。福祉の対象の人たちに届く時点では、わずかな見舞金や茶菓子代になってしまっていないか。これって福祉なのだろうか。

 

22

 
 

広報雑誌「社協さくら」発行

 
 

赤い羽根

 
 

2,858,000

 
 

表示

 
 

23

 
 

在宅福祉(いきいきサロン・食事サービス等)

 
 

同上

 
 

1,039,000    

 
 

表示

 
 

24

 
 

福祉総合相談事業

 
 

同上

 
 

1,044,000  

 
 

表示

 
 

27

 
 

要支援世帯に対する支援金配分事業

 
 

歳末助け合い

 
 
  

2,040,000   

 
 

表示

 
 

28

 
 

母子・父子世帯に対する支援金配分事業

 
 

同上

 
 

5,013,000 

 
 

表示

 
 

29

 
 

ひとり暮らし高齢者世帯に対する支援金配分事業

 
 

同上

 
 

1,680,000

 
 

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30

 
 

寝たきり高齢者世帯に対する支援金配分事業

 
 

同上

 
 

94,000

 
 

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31

 
 

心身障がい児・者世帯に対する支援金配分事業

 
 

同上

 
 

424,000    

 
 

表示

 

 

  身近な福祉に目を向けていくと、国における福祉政策が透けて見えてくる。年金記録問題や年金支給漏れなど、原因や責任の解明が済まない先の不祥事は後を絶たない。根っこには、寄付文化やボランティア精神が根付かないまま、「絆」とか「共助」、「家族愛」まで持ち出し、福祉や災害復興政策の補完が強制されている現実を見失っていないか。足元の地域で何が起こっているかも知らずして、国の政治は語れないと思うのだ。

 

活動の対象

 

活動の対象

 
 

件数

 
 

金額

 
 

高齢者

 
 

32

 
 

2,889,00013.2%

 
 

障害児・者

 
 

15

 
 

1,559,000円 7.1%

 
 

児童・青少年

 
 

9

 
 

  5,273,00024.1%

 
 

課題を抱える人

 
 

2

 
 

2,052,000円 9.4%

 
 

その他

 
 

22

 
 

10,106,48846.2%

 
 

合計

 
 

80

 
 

21,879,488

 

  活動の目的  

 

活動の目的

 
 

件数

 
 

金額

 
 

日常生活支援

 
 

16

 
 

   11,745,00053.7%

 
 

社会参加・まちづくり支援

 
 

51

 
 

   9,224,48842.2%

 
 

社会福祉施設支援

 
 

2

 
 

70,000円 0.3%

 
 

その他の地域福祉支援

 
 

11

 
 

840,000円 3.8%

 

合計

 

80

 
   21,879,488 

 

    図書館からの帰り道、議員会館の方から、なにやら黒いスーツの一団が渡ってきた。この時期に陳情団でもないし、地方議員の見学でもないだろう。よく見るとまだあどけない青年たちだった。そう、近辺の役所の新人たち、どうも内定者たちなのか、101日は休日だったから、今日が内定式解禁日ということなのか。先頭に、これも若い案内役が「今年は女子が少ないんですよ」との声、その後はよく聞こえなかったが、「ヴァレンタインデーが・・・」の声のあとでは、若者たちの小さな笑い声が起きていた。総勢145人だったろうか、茱萸坂を下って行った。決して佐川長官のようにはなるな、初心を忘れるな、と見送るのだった。

 

 

 

 種類 助成額 

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2016年10月 6日 (木)

いま、なぜ、「情報公開」の後退なのか~佐倉市社会福祉協議会がやっていること~予算・決算の広報に見る(2)人件費の内訳、正職員・嘱託職員・非常勤職員別がわからないしくみは、どうにかならないのか

 佐倉市社会福祉協議会の予算・決算についての下記の記事を書いてから、だいぶ日が経ってしまった。前回は、予算・決算の広報の仕方が例年と異なりグラフ化などされて、情報量自体が大幅に減らされた上に、実に分かりにくくなったことを伝えた。広報で円グラフ化された数字の元をたどろうと思って、社協のホームページや送ってもらった冊子体の予算書や決算報告書、事業報告書と照合しようにも、該当する表が作成されていないのだ。担当者によれば、広報の事業活動別の数字は、複数の表から数字を拾って作成している、数字の総計には間違いはないというが、市民としては、そんな操作を確かめようがない。

いま、なぜ、「情報公開」の後退なのか~佐倉市社会福祉協議会がやっていること~予算・決算の広報に見る2016820 ()

101日、広報紙『社協さくら』 の最新号189号には、「佐倉市社会福祉協議会の人事・給与などの状況」(平成27年度)という記事がでた(とんでもない単位のミスがあって仰天!)。

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これとて公表され始めたのはここ数年のことである。職員数、正職員14名、嘱託職員18名合わせて32名、今、2010年(平成22年度)からの推移を見ているが、2013年から正職と嘱託の数が逆転し始めた。記事の中央には、諸手当の正職と嘱託の差は事細かく示される。しかし、記事の右端の3(1)(2)の表で職員32名の人件費17570万円とその資金源は、正・嘱の別が示されていないし、自主財源の内容も分からない。これは、当方からの8月の問い合わせで、別途送ってもらった資料で分かるのだが、自主財源には、事業収入ほか障害者福祉サービス等・介護サービス・収益事業による収入があるはずだが、そこに配置された人数もわからない。資金源の方に合計欄はないが、私が加えてマーカーをした。合計額は、当然のことながら一致する。行政からの委託事業による受託金の人件費は、理解できるが、佐倉市からの人件費補助金の根拠は相変わらず不透明で、一社会福祉法人に過ぎない「社協」のみが、人件費の補助を受けるのか、が問題のはずだ。他の社会福祉法人との公平性に欠け、受託に拠る人件費と補助金の人件費は人件費の2重どりではないか、とする指摘もある。

さらに、ここには、現場で、大半のサービス業務に苦労されている多くの非常勤職員の人件費は、この数字から抜け落ちている。これも問い合わせで分かったのだが、昨年度、非常勤職員給与は、総計で約5964万円であった。さらに、その内訳、実態のわかる数字、人数配置と時間数、支払額など、これまでの資料からはわからないので、質問を続けている。

3職員の人件費と補助金(平成27年度)

1)職員の人件費                          

 

職員数

 
 

32

 
 

給料・諸手当

 
 

給料・諸手当

 
 

112691千円

 
 

期末・勤勉手当

 
 

 29768千円

 
 

社会保険料

 
 

 24611千円

 
 

退職掛金

 
 

 8648千円

 
 

合計

 
 

175708千円 

 

 2)人件費の資金源                        

 

区分

 
 

金額

 
 

佐倉市補助金(人件費)

 
 

32957千円

 
 

佐倉市受託金(人件費)

 
 

46650千円

 
 

県社協受託金(人件費)

 
 

 9568千円

 
 

自主財源

 
 

86534千円

 
 

合計

 
 

175708千円

 

 『社協さくら』の記事で、最大の難点は

さらに、この広報記事の難点は、左側の「(2)平均給料月額など」の欄の数字である。これはなんと、正職員・嘱託職員込みの平均給料(基本給)24万8443円と平均給与(諸手当含む)26万3389円だったのである(平均年齢45・7歳)。この一緒くたにした平均に意味があるのであろうか。限りなく意味のない「平均」というマジックに、市民や読者は惑わされるに違いない。これは、上記の表の人件費・資金源と同様、まさに「正職員給与・給料」を意図的に不明確にする常套手段ではないのか。この点は改めるよう、担当者に申し入れの際「趣旨は分かりました」と言っていたが、来期実現すかどうか見守りたい。

ほかの社協では、どうなのか

お隣のほぼ同規模の千葉県八千代市社協の広報『ふくし八千代』はどうだろう。最新号196号(20167月)で、昨年度の事業報告と決算報告が2頁にわたって掲載され、去年の佐倉市『社協さくら』と同様に財務諸表が公表されていた。倍の規模の東京都府中市社協の場合は、広報『ふちゅうの福祉』年6回の発行で、5月1日号に予算、7月1日号決算の収支が報告される。項目別の割合が出ているのはわかりやすい。会費は収入総額の3.6%(広報では不明、佐倉市社協5.2%)に過ぎず、市からの受託金収入が41.7%(広報では不明、佐倉市社協47.6%)を超え、人件費については別途、正職員に関してのみ、以下のように公表している。豊中市社協はドラマ「サイレント・プア」で有名にもなったが、どうだろう。広報『みんなの福祉は』は年3回、佐倉市社協はこんなところだけまねたのだろうか。決算は収支決算報告のみとあっさりしているが、事業計画・予算にあっては歳入歳出の円グラフながら、内訳の数字が明記されているし、別にサービス区分別の予算も付されているので、佐倉市社協よりはわかりやすい。社協職員は、私たちよりも、各地社協の情報が集まるだろうし、研修もしているはずだ。わかりやすい広報を目指してほしい。

 ・八千代市社会福祉協議会事業報告・収支決算書(平成27年度)

     file:///C:/Users/Owner/Desktop/yatiyosi196.pdf

・府中市社会福祉協議会職員の給与・職員数等について

(平成2741日現在)

http://www.fsyakyo.or.jp/img/about/27syokuin.pdf

・豊中市社会福祉協議会『みんなの福祉』

117号(201610月)116号(201661日)

http://www.toyonaka-shakyo.or.jp/nav/nav_toyosyakyo/paper

  さらに、非常勤職員の実態について、問い合わせてもいるので、分かり次第報告したい。

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2016年8月20日 (土)

いま、なぜ、「情報公開」の後退なのか~佐倉市社会福祉協議会がやっていること~予算・決算の広報に見る

 これも、やや旧聞に属するのだが、気になっていたことがある。615日の新聞折り込みで届いた佐倉市社会福祉協議会の広報紙「社協さくら」(188号 2016年6月15日)の2頁目を見て、一瞬「?」と思った。今年度の「事業計画・予算概要」と昨年度の「事業・決算報告」が、なんと一緒に1頁に収められていた。例年は、5月に事業計画・予算が、7月に前年度の事業・決算が報告されていたはずだったが。今回の予算・決算は、その情報量が極端に少ないし、肝心の計算書や内訳書はすべて省略されて、円グラフが登場していたのだ。内訳部分が、まさに「墨塗り」状態となってしまったのである。

「社協さくら」188号 http://www.sakurashakyo.or.jp/koho/koho_188.pdf

詳しく見てみよう。ご覧のように「予算概要」が「事業活動収入」「事業活動支出」が二つの円グラフでしか示されていない。決算も同様である。

1頁分を「予算」と「決算」に分けてコピーした。
 

<2016年度 事業活動収入>  「社協さくら」188号2p

http://www.sakurashakyo.or.jp/koho/koho_188.pdf

Img199_2

<2016年度事業活動支出>上記 「社協さくら」188号2p

http://www.sakurashakyo.or.jp/koho/koho_188.pdf

Img200
  例年だと、年度初めの最初の号(51日号)に、事業計画と共に「(法人全体)資金収支当初予算書」が、1頁を使って掲載されていた。夏の号(71日号)には前年度の事業報告と共に「事業別資金収支計算書」「「貸借対照表」「財産目録」が掲載されていたのである。昨年の5月と7月号の該当頁は以下のとおりであった。

「(法人全体)資金収支当初予算書」(「社協さくら」183号)http://www.sakurashakyo.or.jp/koho/koho_183.pdfImg201
「事業別資金収支計算書」「貸借対照表」「財産目録」(社協さくら」184号

http://www.sakurashakyo.or.jp/koho/koho_184.pdf
Img202


   私が今回、問題にしたいのは、例年「社協さくら」で、わずかながらでも公表してきた上記の会計情報が、今年は、すべて落とされていたのである。予算も決算も、広報紙「社協さくら」に収録できる情報は、その紙面の制約を受け、限られるだろう。詳細な数字は、それぞれ、分厚い予算書や決算書、下記の社協のホームページのサイトで見るしかない。確かにたくさんの数字を並べても、市民には分かりにくい。だから、市民に分かりやすい言葉と数字で公表するのが、広報の役割のはずだ。

こともあろうに、スペースを圧縮した上、事業活動の収支を事業活動別に円グラフで示されても、その中身がさっぱりわからなくなってしまった。ホームページを探してみても、この円グラフの元になっている資料が見当たらないのである。円グラフだけとなった今年の予算と決算、例年と比べての問題点を探ってみたい。

1)自治体からの「補助金収入」が明示されなくなったこと


 
今年度の予算の収入事業活動収入(法人全体)の円グラフにある「法人本部」に入る収入源は何なのかがわからない。昨年まで、「法人本部」というくくりはなく、上記昨年の「(法人全体)資金収支当初予算書」には、主要な収入源である「会費収入」2329万円(万以下切り捨て)、「経常経費補助金収入」6610万円、「受託金収入」19809万円であることがわかる。ここで「経常経費補助金収入」とは、何のことかわからないかもしれないが、佐倉市と千葉県からの補助金の合算で、昨年度の予算では6600万円というのがわかる。

2)佐倉市からの人件費補助の実態が相変わらず不明確なこと

調べてみると、この大部分は、佐倉市からの人件費の補助金で、2013年度(平成25年度)までは、長い間、1億円を超えていた。市や県、自治体からの補助金、つまり税金によって社協の人件費が賄われていることになる。これは他の社会福祉法人との大きな違いであり、公平性を欠くことは明らかでありながら、今日まで続いている。佐倉市からの指定管理による事業や受託事業を受ける場合の人件費もあり、法人全体への人件費補助との関係の不明確さが、監査のたびに指摘されながら、その措置がなされずに放置されていた。それがようやく、平成26年度(2014年)から、若干修正がなされているようだが、その不明確さは、依然として解明されていない。にもかかわらず、「経常経費補助金収入」の勘定科目すら、「法人本部」とくくられてしまったのである。

(佐倉市の佐倉市社協への人件費補助については、以下の記事を参照して下さい。
*2014年6月6日 佐倉市社協への人件費補助は大幅に減額されたのか~その背後を探る
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2014/06/post-b3b6.html

 3)「会費」収入の占める割合が分からなくなったこと

 いわゆる、多くは自治会などを通して、各世帯から集められる「会費」も、「会費収入」として勘定科目にあげられることなく、今年度の円グラフでは「法人本部」にくくられてしまっている。私は、この「会費」という存在自体に、大きな疑問を持つので、注視を続けている。

「社会福祉協議会」は法律上自治体に設けられる「社会福祉法人」だとされるが、他の社会福祉法人と同等のはずである。それが、社協だけは、「会費」と称して、多くは自治体公認、支援の下に自治会などを通して、いわば「半強制的に」集金するシステムを作り上げている。本来は一社会福祉法人への個人の「寄付」であるべきものである。法律的な根拠もなく、こんな集金方法が横行することに対してはすでに司法的判断が出ているのにもかかわらずなのだ。すなわち、社協に限らず日赤や神社その他への寄付金が自治会を通じて集められたり、自治会費に上乗せされたりすることに対しては、「違憲」であるという「最高裁決定(滋賀県甲賀町希望が丘自治会)」が出ているにもかかわらず、各地の社協や自治体は、いまだ野放し状態なのである。

(「会費徴収」についての判例については、以下の記事も参照ください。  

*2013年10月24日「赤い羽根募金、社協の会費って、個人の自由ですよね!「希望が丘自治会の最高裁判決」の勉強会に参加して 

http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2013/10/post-3888.html

 

  私たち市民は、そうして集金された「会費」が、社協の収入源として持つ意味合いを常に認識するためにも、会費収入の額は示されていなければならない。全国にに各地の自治会では、「寄付の強制は違憲」との認識で闘っている人々も多い。佐倉市社協も、ようやく、上記「最高裁決定」を自治会長の説明会資料などに小さく報告するようになったが、いまだ、「寄付のお願い」という形で、自治会を通じて「会費」を集めることを続けている。こうして、佐倉市の傘のもと、他の社会福祉法人との差異化を目指し、佐倉市からの人件費補助を受け、佐倉市からの膨大な受託事業を請け負っているのである。かつては、社協が佐倉市の定年退職者の天下り先であった時代もあったが、いまは、「嘱託職員」の採用実態などに、癒着がないかは、注視する必要があるだろう。職員の採用は、独自の試験によるというが、佐倉市職員待遇に準じている。

 4)「社協さくら」の発行が、年4回から3回に減ったこと

 そもそも、「社協さくら」の188号(2016年615日)に今年度予算と昨年度決算資料が、例年になく簡略化されて、一度に掲載されたのはなぜか、を問い合わせてみた。今年の事業計画により、「社協さくら」の発行は、経費費削減のため、これまで4回発行していたのを3回にしたというのである。「ホームページも充実させましたし・・・」というのがその理由である。しかし、予算・決算報告については「情報公開」の流れには完全に逆行するものだろう。そのホームページにも、今回、私が何回か閲覧しているうちにも、不備はみつかり、いま、修正を申し入れている。

 

なお、各年度のデータは、次のサイトで知ることができる。

佐倉市社協事業計画・予算・事業報告・決算

http://www.sakurashakyo.or.jp/m0102_page01.html

しかし、開いてみればわかる通り、諸表の羅列で、表自体の説明や表相互の関係が全く示されていないので、表題だけで、その表の意味を理解するのは難しい。今回188号の円グラフの下にも、「詳細につきましては本会ホームページをご覧ください」との注意書きが記されているが、このサイトにたどり着いても、前述のように、そもそも円グラフのもとになっている数字を示す資料(表)が作成されていない。担当者は、「今回の円グラフは、収入・支出のおおきなくくりによる割合を示しているので、勘定科目とは一致するものではない。各くくりの扇形の数字や内訳は、各種の複数の表から寄せ集めているが、総計の数字に間違いはない」という。市民は、「広報」の読者は、根拠となるべき数字を求めようにも、数字の海を前に途方に暮れるばかりだろう。まずここであきらめよと言わんばかりに。(つづく)

なお、当ブログにおける、社協の会費、日赤の募金などについての記事は、カテゴリ「社会福祉協議会」「寄付・募金」をクリックしていただくと、見ることができます。

 

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2016年2月28日 (日)

佐倉市社会福祉協議会の現況~コメントの返信に代えて

  知恵 カモメさん、コメントありがとうございます。具体的なご報告ありがとうございます。コメントの返信は、少し長くなりましたので、記事といたしました。最近の社協の広報誌から、簡単な報告をしたいと思います。 佐倉市社会福祉協議会の広報誌『社協さくら』186号(2015年12月1日、データは、同年4月1日現在)の「社協の人事・給与などの状況」によれば、人口18万弱の佐倉市社協の職員は、正規職員15人、嘱託職員18人。人件費(手当・社会保険料・退職掛金含む)は、1億9079万、その資金源は、以下の通りですが、広報誌では「平均月額給与」「同給料」しか発表されていません。約1億9079万円を職員数で割って、年俸額を見て驚きます。正規職員の諸手当は市職員に準じています。採用試験の実態は、となると・・・。

<人件費の資金源>
佐倉市補助金:       3935万円
佐倉市受託金:       5934万円
県社協補助金・受託金 1070万円
自主財源:           8140万円
合計             1億9079万円

    また、平成26年度(2014年度)決算報告(『社協さくら』184号、2015年12月1日)の「事業別資金収支計算書」によれば、事業活動支出計4億3213万の内人件費は2447万、57%を占めています。事業活動収入の方では、会費収入2221万は、収入計4億0572万の5%にも満たないことになります。社協は、自治会を通じて、大方は1世帯500円を収めると300円が地区社協に還元されるという触れこみで、必死で会費徴収させているのが実態でしょう。年度初め、自治会長を集めての地区代表者への説明会では、自治会ごとの会費納入額を発表するという、社員の営業成績を競わせるようなことをしているのです。そもそも、善意による寄付金は競われるものなのでしょうか。

    それでは、地区社協では何をやっているかというと、広報誌ではイベントの写真と役員や福祉委員の名前は、ものものしく掲載されるけれども、数年前から、決算報告が掲載されなくなってしまったようです。市社協から還元される補助金や佐倉市からの配分金で実施される最大のイベント敬老会やその他の事業への参加者は少なく、敬老会ですら、市内、どの地区社協も参加者は30%内外に過ぎないことは、佐倉市ホームページで高齢者福祉課も公表しています。 これからもこんなイベントを続けていくのでしょうか。コメントの知恵 カモメさんがおっしゃるように、住民の税金、社協募金が、一部の住民の恣意的な福祉(リクレーション)になりかねません。佐倉市では、かつて評判の悪かった記念品に代えて、敬老の日前後に後期高齢者に千円分の「地域敬老商品券」なるものをばらまいています。本当に必要なところに届ける福祉への努力が見えてきません。

   規制緩和、民間委託、指定管理者制度などによる、政府と自治体の手抜きによる質の劣化が日増しに露わになる福祉事業です。もし、とりあえず社会福祉協議会を存続させるのであれば、正規職員を丸ごと自治体の補助金でまかない、市民は半ば強制的な会費納入を横行させているようでは、ほんとうのボランティア精神にはつながらないと思います。一民間の社会福祉法人として、自治体との蜜月を断って、自立した社会福祉法人となるべきだと思っています。自治体は、厄介な事業を人件費で釣って丸投げしているようでは、福祉の質の向上は望めません。

    一市民として理不尽なことがあれば、一つ一つの自治体、一つ一つ社会福祉協議会、自分の属している自治会に向けて、異議を申し立てなければと思うのです。同じような考え方を持つ人は必ず、身近にいるに違いないと私は信じながら、仲間と動くことができればと思っています。一昨年の朝日新聞「私の視点・自治会と寄付金」や先日の「自治会は今」の記事を見たという方からの新聞社を通じての問い合わせを受けたり、ブログのコメントを通じて、各地の実態を知ったりすることもあります。

 各地で声を上げる多くの方々と情報交換をし、少しづづ共感の輪が広がればと思います。先日も市内の、来年自治会長を務める羽目になったという方からの問い合わせがありました。役員会や班長会議での丁寧な話し合いや合意形成ができればいいな、と思ったところでした。

・平成27年度佐倉市社会福祉協議会事業計画(簡易版は『社協さくら』183号(2015年5月1日) http://www.sakurashakyo.or.jp/kokai/H27jigyouan_yosan.pdf

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2015年12月10日 (木)

「自治会と寄付金」問題がなかなか改善されないのはなぜか~自治会が共同募金や社協会費を集める根拠がないのに?

「赤い羽根募金」が終わったら、「歳末助け合い募金」 が始まる・・・

 

  私の住む佐倉市でも、自治会や町内会(以下自治会)では、年中と言っていいほど、寄付金集めをしている。毎年、年度初めに、市役所が自治会長を集めて、その寄付のお願いをしている状況は変わらない。その際に配られる自治会が集めるとしている会費・募金など「寄付金」一覧である。その要点は以下の通りである。

 

ご協力いただく会費・募金等一覧表    
  
 

 

種類・納入期間

 

 内容
 
 

使途

 

 問い合わせ先
 

日本赤十字社資 

5月~6  


社費:500円以上  

寄付金:500円未満

 

災害救護・健康安全知識の普及・その他の赤十字活動 


佐倉市社会福祉課

 

愛の一円募金  

6月中旬~7

 

法務省主唱「社会を明るくする運動」活動資金  


街頭広報・講演・音楽会・作文コンテスト


佐倉市社会福祉課


社会福祉協議会会費  

4月~6

 

社会福祉法109条に基づく「地域福祉団体」 

世帯一般会費:1500  

個人賛助:11000  

法人:110000円など


地域福祉推進 

地区社協活動ほか 

法人運営事務費など

 

社会福祉協議会

 

共同募金・赤い羽根

10月~12

社会福祉法112条に基づく国民助け合い運動、目標額と市使途を事前設定

 

6割:佐倉市内 

4割:県内の施設、団体、災害見舞金など 


共同募金会佐倉支会(社会福祉協議会内)

 

共同募金・歳末助け合い  

 

12  


要支援世帯、高齢者、児童、障害者へ支援金

 

  先の自治会長たちへの説明会で手渡される「自治会・町内会・区役員の手引き」(佐倉市のホームページで閲覧できます*)によれば、日赤の募金は、どういうわけか、佐倉市と自治会との委託契約に基づく業務となっている。自治体からの文書回覧、民生委員の推薦、会員の要望の取りまとめなどと並んで、「その他市長が必要と認めた事項」に入っている。一方、そのすぐ下に「社協が行う募金は、委託業務には含まれていません」との注意書きがある。それは当然のことながら、日赤が、日本赤十字社法により厚生労働省管轄の認可による「一般社団法人」ではあるが、日赤の募金が、なぜ佐倉市が自治会に委託する業務になるのかがわからない。日本赤十字社のHPにはつぎのようなQ&Aがあったが、地域の 日赤のボランテイアの方の存在など知る由もなく、自治体を介しての自治会の集金が当たり前のごとく横行している、その由縁を説明したことにはならないだろう。

http://www.city.sakura.lg.jp/cmsfiles/contents/0000004/4954/27jichikai.tebiki.pdf 

よくあるご質問 (← 寄付する ← 日本赤十字社)

社費の募集に、なぜ町内会の人などが来るのですか?

 

赤十字の活動は、地域福祉やボランティア活動など地域に根ざした活動を行っており、また、災害が発生すると、自治体や地域住民の方々と協力して救護活動を展開するなど、赤十字の活動は地域と密接なかかわりを有しています。

こうした活動を支えていただくため、地域の皆さまには、社費へのご協力をお願いしているのですが、その際、赤十字ボランティアが直接お宅を訪問しお願いに伺うほか、それが困難な場合には、自治会・町内会の方々にご協力をお願いする場合があります。

 

また、上記の表であたかも募金の根拠規定のように記されている社会福祉法109条は、社協が会費や寄付金の募集をすることができる規定にはなっていない。社会福祉法112条は、共同募金会が募金をすることができるとはなっているが、社協との関係が不明確な上に、なぜ、自治体が、自治会の共同募金への協力を推進ないし便宜を図っているのかも不明である。社協も共同募金会も一つの「社会福祉法人」に過ぎない位置づけなのに。


寄付は「個人(自治会員)の自由意思」をなぜ徹底させないのか

 

自治会を通して、寄付を集めること自体に法的根拠はなく、むしろ寄付の自由を阻害することがわかっていても、現在、全国のかなりの自治会で問題になっているのはなぜなのだろう。この件に関しては、昨年、私は、「私の視点・自治会と寄付金」と題して『朝日新聞』(2014317日)に寄稿している。それ以前にも当ブログでは、寄付の集め方自体とその背景となっている募金の主催団体たる社会福祉協議会、日本赤十字社などの成り立ち、募金の使われ方、さらに自治体との関係など、10本近い記事で言及している。その記事へのアクセスが、年度初めと赤い羽根募金が始まる10月から年末にかけて、かなりの数にのぼり、初めて自治会長や役員になられた方々や募金の自治会費上乗せや強制について常々疑問を持っている方々からのコメントが多くなるのも恒例である。

 

 そんな折、『朝日新聞』が9月から「どうする?自治会・町内会」と題して特集が連載された(97日、26日、104日、11日、18日、25日)。反響が大きく、読者アンケートや各地域の関係者への取材をもとに構成され、かなりの問題点が浮き彫りにされたのではないかと思う。たんなる「ご近所の底力」的な、行政へのお助け、多くは思い付きの域を出ない、持続性が危ぶまれる自己満足的な活動の礼賛に終わらなかったのがよかった。なかでも、私が注目していたのは、やはり、第3回(104日)の中心テーマであった「自治会の会計」であり、「募金の自動徴収」であった。前者では、自治会予算は、前年度踏襲になりがちで、会員の意思が反映しにくい点、後者にあっては、強制募金や自治会費上乗せ、自動徴収などが横行している点を指摘していた。2008年、滋賀県甲賀市希望が丘自治会の住民が各種募金の自治会費上乗せを違法とする最高裁決定(大阪高裁判決2007824日判決)を勝ち取ったにもかかわらず、募金のチラシなどに、小さな字で「寄付は個人の自由な意思によります」などと書き添えたりする程度で、自治体も、自治会を通じての強制募金や会費上乗せ、自動徴収などを見て見ぬふりをし、協力しているのが実態ではないか。 

 なぜ、改まらないのかといえば、その要因は、募金の主催団体が自治会を集金組織としか考えていない傲慢さと怠慢にあるからだと思う。自治体は、それらの集金団体が福祉や医療など人道的な活動の一端を担っていることから、自治体行政がそれらに依存したり、補完させたりしている関係があるからでもある。しかし、そこには善意のボランティア精神をないがしろにするように、各団体の運営費、とくに人件費や広報費の割合が高いことはよく指摘される点である。寄付をしても、直接、福祉や医療の現場に届くまでには時間がかかり、目減りが著しいという現実がある。さらに全国組織になると、国の役人の天下り先になったりする現象もある。

 

ともかく、自分の自治会で、募金の集め方がおかしいぞと思ったり気付いたりした人が、何人か相寄って、異議を申し立てることが、スタートではないかと思う。あわせて、自治体の自治会担当、社協や日赤などから「寄付の任意性」を明言させることが大事なのではないか。 

 

佐倉市では、私たちの自治会では・・・

 

佐倉市では、前述の自治会長などに配る「手引き」の「自治会との委託契約業務とする日赤の募金の注記に、昨年から次の記述、矢印部分が加わった。しかし、私が昨年参加した説明会では、この件についての口頭での説明は、市からも、募金団体からも一切なかったのも現実である。さらに、前年度の各自治会の寄付金額一覧を配る悪弊が続いていることも確かである。

 

〇募金などは、個人の自由意思に基づくものです。募金等を自治会費に上乗せして徴収するとした総会議決は無効であるとの判例(*H19.824 大阪高等裁判所)もございますので、自治会等におかれましても、募金等の取り扱いについてご配慮いただきますようおねがいいたします。

Img104

 

 また、私たちの自治会では、毎年、各募金ごとに、つぎのような募金袋を各班の回覧ルートにのせて回ってくる。ポスティングではなく、必ず手渡しで回し、班長さんに戻る仕組みになって10年余を経た。ともかく、寄付の任意性が維持されてはいる。最近、回ってきた集金袋の表書きである。百均のファスナーのついた透明な袋に入れられているから、かなりの重さ?にも耐えられるだろう。 

Img105


 しかし、自治会が、毎年、地域の自治体連合会に「消防団協力金」(50円×世帯数)、周辺の自治会・商業施設などを中心とする実行委員会形式でのまつりの参加費(700×世帯数)、防犯パトロールなどのNPO法人への協力費が一括で納入されているのも実態である。「消防団」関連への寄付は、消防団員が準公務員であることからや強制募金の性格が強いことから、法廷でも問題になっている。祭りに関しては、現実の参加者数、会場との距離、開発業者主導、参加費の高さなどから、一括納入は問題が多い。さらに「お世話になっているから」と特定のNPO法人のみへの協力金は、拡大への懸念が課題になるだろう。

ああ、問題が多すぎる!まずは、気づいた人からの、自治会、募金団体、自治体へ切り込む力が必要である。

 

 

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2014年6月 6日 (金)

佐倉市社協への人権費補助は、大幅に減額されたのか~その背後を探る

 市内の友人から、「ことし、社協の人件費補助が大幅に減額されている!」とのメールが入った。「ほんと?」との疑問から調べてみると、たしかに、千万単位で減額されているのがわかった。しかし、結論的に言えば、それは単なる費目の付け替えだったのである。

自治体は地方自治法により、毎年10月、財政援助団体などの監査結果報告とその報告に基づいて講じた措置を公表することになっている。いま、市のHPでは平成1925年度の監査結果と措置結果を閲覧することができる。そこでは、佐倉市の社会福祉協議会への「人件費補助」については、毎回、毎回、法人経営の見直し、職員の意識改革の必要が指摘されながら、いっこうに変わる気配がなかったのである。以下の表には、社協への経常経費補助、人件費補助、事業費補助などのその他の補助金の額を時系列でたどってみた。

近年の佐倉市から佐倉市社会福祉協議会への人件費補助の推移

http://dmituko.cocolog-nifty.com/syakyojinnkennhisuii.pdf

佐倉市でも1996年、行財政改革という時代の流れにのって、7年後に補助金のすべてを白紙に戻すという「大綱」が決定されたものの、一年延長、その間、2001年には個々の補助金の価値性・公平性・効率性などのチェックシートによる全体的な再点検を行うことした。2003年から第三者委員会、補助金検討委員会が立ち上げられ、全136件についての審査が行われた。という流れの中でも、社協への人件費補助の一件は、相変わらず、抜本的な改善がみられないまま、社協内部での不透明感や他の福祉関係団体との不公平性が引き継がれていた。チェックシートも第三者委員会も機能せず、2013年度まで、ほぼ同じ状況が続いていた。監査委員による「監査結果」のポイントは表にも記しているが、もう少し、詳細にたどってみると、監査結果の報告を受けた市長名による「措置結果」の記述に大きな変化が見られるのがわかるだろうか。以下のとおりである。

平成19年年度(2007年)には、つぎのようなに監査結果が出た。

「事業運営については、人件費をはじめとする多額の市補助金が充てられています。(中略)昨年度も指摘しましたが、抜本的な法人経営の見直しと市および法人職員の意識改革をはじめとする体質改善が不可欠です。平成18年度においては『検討すべき案件がなかった』として経営検討委員会が一度も開催されませんでした。市民の負託にこたえるためにも、さらなる使命感および緊張感をもって経営を行ってください」

これに対して、市長名の措置結果は「平成19年度の5つの重点実施事項が着実に実施されるよう指導してまいります。また、経営検討委員会の開催により法人経営の見直しが図られるように併せて指導してまいります」といった、まるでオウム返しのような文面であった。

 

平成23年度(2011年)の監査結果に、つぎのように、先進他市に学べと付け加えられた。

「佐倉市は、市社会福祉協議会に対して、人件費をはじめとして多額の市補助金を充てています。また、自治会・町内会に頼る会費収入にも限界があります。このための抜本的な法人運営の見直し及び市社会福祉協議会役職員の意識改革をはじめとする体質改善が不可欠です。引き続き、先進市の社会福祉協議会の運営状況などを参考にして経営改善方策を検討し改善を進めてください。」

措置結果として「佐倉市と同等かそれ以上の規模の他市(県外)の先進市社会福祉協議会の運営状況を参考にして、人事考課制度の有効活用や役職員の意識改革等経営改善が図られるように指導してまいります」と応えている。

 平成24年度(2012年)においては、つぎのように、やや具体的な監査結果が出された。

「佐倉市社会福祉協議会事業推進費補助金の人件費分については、市の関係部署等と協議し、さらに対象となる職務内容や社会情勢についても考慮した上で、検討してください。社会福祉協議会が行う社会福祉事業は、市民からの会費と市の補助金が主な財源です。『社協さくら』やホームページ等に、市からの補助金の内容や職員給与についても掲載するなど、一層の情報公開に努めてください。」

市長名による措置結果の文面が変わった。すなわち、「社会福祉協議会に対し、措置結果を照会したところ、次のとおり報告がありました」とあり、従来の文言の主語は市長であったのに反し、「・・・協議してまいります」「情報公開に・・・努めてまいります」の主語は社協に変わった。これは何を意味するのだろう。市長は、行政の長としての「指導」を放棄し、財政援助団体に「丸投げ」をしたことになったわけである。

 最も新しい、平成25年度(2013年)では、さらに具体的に「人件費の算定資料には、委託事業に係る人件費も含まれていることから、対象経費の見直しに努めてください」と指摘している。

 これに対して、市長名による措置結果では、つぎのように社協からの報告という形式は前年度を踏襲し、「佐倉市社会福祉協議会事業推進費補助金につきましては、委託事業に係る人件費も含まれていることから、市の関係部署と協議しながら、委託事業に人件費を含めるよう見直しを進めてまいります

 そして、平成26年度の(2014年)の予算に行き着き、前年度の予算における人件費補助の7415.7万が今年度予算では一気に3935.0万に減額されている。なぜ?人件費補助金はすべて正職員に充てられていたので、職員が半減?そんなわけはない。今年度予算が掲載された「社協さくら」5月号では、何の説明がないので、社協に問い合わせてわかったのだが、従来の人件費補助には、委託事業の人件費も含まれていたので、それを「受託金収入」に入れることにした、というのである。上記、平成25年度の「監査結果」に見るように、「人件費の算定資料には、委託事業に係る人件費も含まれていることから、対象経費の見直し」の指摘に従って、「措置結果」では、委託事業の人件費は「受託金収入」繰り入れたことになる。

 ということは、受託金収入における人件費を算定しなければ、平成25年度以前の人件費補助金との比較はできないことになる。ちなみに、参考までに「委託金」(平成24年度以降は「受託金収入」)の額を付記しておく。市から社協への委託事業は、昨年度から一挙に増え、受託金収入は、昨年が14000万円、今年が20300万円となった。たしかに、佐倉市社協は、成年後見支援センター、昨年10月から生活困窮者自立促進支援モデル事業の受託をしている(参考「社説・生活困窮者支援 お役所仕事ではできぬ」『毎日新聞』201429日、「困窮者の自立・就労支援」『朝日新聞』201464日)。

 「成年後見支援」も「生活困窮者支援」も、どちらも個人や家庭のプライバシーに最も深く立ち入らねばならぬ仕事である。いわゆる「お役所仕事」ではできないことはもちろんだが、本来ならば「役所」がしなければならない仕事ではないか。安倍政権は生活保護費を削減しているので、生活保護に至る手前の支援に重点を置こうというものだが、相談者は社協の相談窓口で、ほんとうのことが話せるだろうか。担当者は、社協の正規職員なのか、嘱託職員なのか、非正規の専門職なのか。プライバシーはほんとうに守れるのか。各地で問題になっている生活保護受給申請の回避や不正受給者というレッテル張りによる受給申請への抑止につながらなければいいと思っている。最近の補助金検討委員会(2014219日)でも議論されていて、社協職員採用基準が佐倉市職員と違うのに同様の待遇を受けるのはおかしいのではないか、人件費補助と委託事業の人件費がどうなっているのか、5月のヒヤリングまでには資料を作成してほしいなどの素朴な疑問が相次いでいた。

 上記の表でもわかるように、社協への人件費補助は、何十年来、問題を指摘されながら、まるで既得権のように手離そうとはしない様相が明らかだ。そして自治体の方は、委託事業、指定管理者制度などのもとに社協を勝手よく使いまわすことによって、他の社会福祉法人や多数のNPO法人との差別化を図り、福祉において最も丹念に対応しなければならない人々を遠ざけてはいないか、不安なのである。

 

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2014年6月 5日 (木)

ドラマ「サイレント・プア」が終わった~現実とのギャップ

NHK火曜のドラマ10「サイレント・プア」が終わった。社協職員の深田恭子が、弱者には根気よく寄り添い、前向きに生きる力を引き出すという役柄で、自らも阪神淡路大震災の折、弟の手を離したので死なせてしまったという自責の念に苛まれているという設定だ。全回を見たわけではないが、その主人公は、ごみ屋敷にこもる老齢の女性、引きこもりの青年、認知症の母を抱える主婦、余命を知ったホームレス男性、東日本大震災の折、施設の職員として高齢者を助けられなかったと、これも自分を責める避難者である男性とその家族、一話、一話、どれも明るい兆しが見えて完結する。こんなにうまくいくのかな、現実はこんなものではないだろう。べテランの助演者に囲まれての深田の演技は、やはり単調さが目立った。繰り返されるクローズアップの表情には、心の葛藤が見えにくい・・・。ドラマの舞台は東京だが、豊中市の社会福祉協議会の全面的な協力をあおいでいるという。ドラマでは、社会福祉協議会の組織や業務、行政との関係、その位置づけが曖昧だし、職場の人間関係は図式的である。いま、ほとんどの社協の現場でその職務を担っているのは非正規・非常勤職員であり、地区社協のボランテイアである。

豊中市と言えば、2011年1月、当時の報道によれば、元資産家の60歳代の姉妹が唯一の所有となってしまったマンションの自室で、数十円の小銭しか残っていない、餓死状態の遺体で発見され、死後2週間以上経っていたという事件、が思い出される。相続した不動産の運用に失敗―その不動産に付け込まれ、多額の借金、相続税の滞納、差し押え、無収入への道をたどり、電気やガスもすでに止められていたという。裁判所執行官が豊中市役所担当課に連絡、相談するよう何回か張り紙やポスティングをしたものの、双方、それ以上のことはしなかった、という。豊中市男女共同参画推進センター「すてっぷ」初代館長でありながら、不当解雇事件で市や市議会と闘い、最高裁で勝訴が確定(2011120日)した三井マリ子さんも、当時、このニュースを聞いて、自身のブログ「三井マリ子の世界」で「救命力世界一宣言の豊中市で孤独死」(2011111)で次のように記していた。

「姉妹の住まいの周辺には病院もいくつもあり、駅も近い、市役所だって1駅だ。そんな環境にいて、なぜ餓死するまでほおっておかれたのか。市の福祉担当者や市議会議員は、死に至る前に、なぜその徴候を嗅ぎとれなかったか。電気ガス会社はなぜSOSを発しなかったのか。個人情報云々で善意のサポートが入り込めない事態を招いてはいなかったか・・・。」

「とよなか このまちいいな 救命力世界一宣言」というのが、20101月、豊中市のキャッチフレーズになったそうで、市役所や公用車にはこの標語の幕が付されていたそうだ。現実とのギャップは大きい。豊中市社協のコミュニティ・ソーシャル・ワーカーCSWで、いまは管理職となっている勝部さんという方が「CSWの星」のような形で活躍中のようであるが、社協をめぐる課題は、まだまだ不透明で重いはずだ。

ひるがえって、地元の社協だが、かねてより注視していた、佐倉市からの人件費補助について若干の動きがあった。次の記事でまとめたい。

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関東梅雨入りの6月5日、アマリリスが開いた

 

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2014年4月22日 (火)

地区代表者会議、昨年と変わらず~たった一人の傍聴記  

 市長の「あいさつ」は選挙演説!
   私たちの自治会は、志津地区に属し、4月20日(日)9時30分~(志津コミセン)ということであった。毎年この時期に、新しい年度の80にちかい自治会長・町内会長・区長を集めて、市と日赤、休憩をはさんで社協が説明会を開催する。私は、いま自治会の役員ではないが、昨年から傍聴をしている。同じ週末には、他の3地区も含めて4回開催される地区代表者会議には、必ず市長が出席して30分近い「あいさつ」がなされる。この日の市長の「あいさつ」も、佐倉市全体にかかる事業と志津地区にかかる事業に分けて説明するのだが、「あいさつ」というよりは、自分はこれだけのことをしてきたという、いわば選挙演説のようなものだった。
  今年、私がこの会議で確認しておきたいことが2点あった。一つは、自治会などでの募金や寄付についてどのように説明するのかであり、一つは、佐倉市が推進する「まちづくり協議会」についてどのように説明するかであった。 第1点、自治会での寄付金の一律徴集が横行している実態を少しでも改善したく、これまでも幾度となく市長への手紙や有志グループでの担当課長との話し合いや要望書提出などを重ねてきた。しかし、大きな改善は見られなく、先の投稿に及んだわけである(前回記事参照)。市の関係者は、あの投稿を読んでいるか、今年の説明にいささかの変化はあるだろうかも気になった。 行政は、自治会の寄付金一括徴収を黙認するのか 一昨年、市民グループでの市への要望書提出と話し合いを通じて、自治会で行う寄付集めは、自治会が一律で集めるものでなく、個人の自由なのだから、その徹底、指導を実施するよう、要請していた。昨年の説明会では、説明会における配布資料「自治会・町内会・区役員の手引き」(平成25年度)の「自治会等業務委託契約とはどのようなものですか?」の回答として、はじめて、つぎのような文面が挿入された(5頁)。しかし、自治人権推進課長の口頭の説明では、一切省かれていた。今年度も下記の文言は全く同一のものであり、口頭の説明もなく、昨年と同様であった。

「募金等は、個人の自由意志に基づくものです。募金等を自治会費に上乗せして徴収するとした総会決議は無効であるとの判例(*H19.8.24 大阪高等裁判所)もございますので、自治会等におかれましても募金等の取扱についてご配慮いただきますようお願いいたします」
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2013/04/post-74bc.html

   ただ、日本赤十字社の「社資」の募集は、市から自治会が委託を受けている業務ということで、日赤の千葉県支部の担当者からパンフレットに従い今年度の事業計画と回覧文書・納入方法などが説明された後、社会福祉課長からの口頭説明があり、自治会による加入の推進と社資取りまとめの依頼がなされた。そして最後に、社資(社費と寄付)は「個人の自由な意思、判断によるところでありますのでご配慮願います」と「手引き」にある言葉が付け加えられた。該当箇所の「手引き」の文言は昨年と変わらないが、口頭で「個人の自由な意思、判断による」が、最後の最後に付け加えられたことが昨年との違いだろうか。 しかし、多くの自治会長たちは、多分前年度通りの自治会費上乗せ徴収や班長による社資500円集金が引き継がれることだろう。「個人の自由な意思、判断による」発言は、たんなるアリバイ作りにも思えるのだった。大事なのは、具体的にどういう方法があるのかの方向性を示すことではないか。

「まち協」は将来見直す?
   
ここで、市役所からの説明は終了した。 私の関心事である「まち協」について、市長は地域振興の項目で「地域まちづくり協議会への支援」と一言で済ませたし、「手引き」による自治人権推進課長の口頭説明では、通りいっぺんの協力要請であった。しかし、ある自治会長から、「まち協」についての核心に触れる質問が出た。 ① 「地域まちづくり協議会」と各地区自治会等の「連合協議会」とはどう違うのか。 ② まち協の目的がはっきりしない。本来市がやるべき業務を、なにがしかの補助金(初年度70万円、次年度から90万円)で、地域に投げているようなものではないか。 というものだった。担当課長は、①について、「まち協」は、一小学校校区の範囲内で、自治会のみならず、地域で活動する種々の団体で構成する点がことなる。②については、地域のつながりが薄れていく中で、たとえば大災害が起きたとき、単独の自治会では、その対応が難しいとき、力を合わせて解決する共助・自助が進められる・・・?といった答弁だった。その後、市長は自ら立って、「①のような疑問は当然だが、ともかく今は、まち協と連合協議会が連携して、大災害などに備えてほしい・・・。将来は、両者を融合していくようなあり方も考えていきたい・・・。皆さんは、自治会の仕事が増えるのではないかという不安があるかもしれないが、決してそんなことはなく、これまでと同様の活動をしていただけばよい・・・」という主旨のことを述べたのだった。なんだか、イギリスの例などを引っ張りながらあまり自信のない答弁だった。「今までと同様の活動」でよいというならば、なんで「まち協」が必要なのかが分からなくなる。たしかに、既成の「まち協」の実態を見てみると、主力メンバーが自治会、PTA、事業者などのOBや退職者などで固められ、これまで自治会や地区社協等で十分やれたことをなぞるだけの居場所づくりになっていることが多い。市長の答弁ははからずも「まち協」の実態を言い得ていたのではないか。「まち協」推進策は、税金のバラマキによる地域の不満解消策にすぎず、行政指導による差障りのない仲良しクラブになりかねないのではないか。本来の自治会活動をさらに弱体化するものではないかとさえ思われるのだった。

社協の説明会は、昨年と変わっていなかった
   
「地区代表者会議」は休憩をはさんで、残りの約30分間は社会福祉協議会の説明会に様変わりし、説明要員は、すべて社協職員に交代する。「社会福祉法人佐倉市社会福祉協議会説明会」となるわけである。以降は、「社協が行う業務は市の委託業務ではありません」という「手引き」の注記にあるように、市から自治会への説明ではなく、「社協独自」の説明会なのである。しかし、説明をうける自治会長ら地域の代表者たちの認識はどうであろうか。 そして始まる「佐倉市社会福祉協議会会員募集」の説明会。ひたすら、募金のお願いと納入方法である。司会の事務局長は、複数回「個人の自由な意思、判断による」を口にはしたが、どうしたらそれが担保されるのか、徹底するのかの精神が伝わってこない。いや、その気持ちがあったのだろうか。配布の「関係資料」の末尾には、前年度と同様、平成25年度の自治会ごとの集金実績「会費納入額一覧」が付されている。まるで競争を煽る成績表のように。 佐倉市は、社協と一線を画するような説明会だが、市と社協との濃密な関係については、拙ブログで何度か触れたので、ここでは省く。

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2013年10月24日 (木)

赤い羽根募金、社協の会費って、個人の自由ですよね!「希望ヶ丘自治会、募金等の自治会費上乗せ決議無効判決」勉強会に参加して

 10月に入ると、しばらく、このささやかなブログにも、アクセスが少しずつ増えてきます。例年のことながら、街頭や自治会で赤い羽根の共同募金が始まったからだと思います。私は、ブログ開設の2006年以降、自治会における寄付・募金の在り方、自治会員において、募金等が強制ないし事実上強制に近い状況で集められていることの違法性について書いてきました。それらの記事へのコメントも読んでいただきますとわかるように、多くの意見や実践記録が寄せられています。
 
それに先立ち、私自身は、自治会役員時代に、会員の皆さんと日赤の社資と社協会員募集・集金について、少しでも募金の任意性を担保するための改善を図り、定着して10年余になります。近年は、市内の有志で、各自及び近隣の自治会の集金実態調査、佐倉市や佐倉市社会福祉協議会と意見交換や申入れなどをしてきました。そうした活動の励みになったのは、個人的には、私のブログ記事への全国各地からのアクセスやコメント、さまざまなサイトでリンクをしていただいたことでした。さらに、大きく背中を押されたのは、2007824日の大阪高裁の判決、翌2008年年43日の最高裁による上告棄却、大阪高裁判決の確定判決でした。

 では、その判決の内容とは何であったのか。概略は、新聞報道やネット上で知ることができましたが、件の高裁判決文自体がオフィシャルな判決集に登載されないこともあって、全貌がわかりにくかったのです。私たちの市民有志の間からも、じっくり勉強してみようということになって、10月初め、勉強会が開かれました。その時の、私のレポートのレジメを少し書き直し、その一部を記録にとどめておきたいと思います。内容的には、これまでの記事とほとんど重なりますが、参照すべき原資料のURL も付しましたので、あわせて、ぜひ原文にあたってほしいと思います。

 滋賀県甲賀市希望ヶ丘自治会のケースの実態、訴えた会員5名の主張、訴えられた自治会(役員)の主張、大阪高裁の結論に至った理論構成、判決を受けての全国社会福祉協議会の通知の内容、をぜひ確かめていただきたいと思います。私たちは、この判決後の佐倉市役所と社協の対応についていくつかの疑問点を指摘してきました。わずかながら、私たちの意見を取り入れられた部分もありますが、基本的な姿勢の改善が見えてこないのが現状です。

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「<希望ヶ丘自治会>の募金等の自治会費上乗せ決議の無効判決」について

1.事実の経過:

20063月:希望ヶ丘自治会(940世帯、加入率89%)は定期総会において、自治会費を年6000円から8000円に増額を賛成多数で決議、2000円分は日赤・社協・小中学校後援会などの会費に充てるとした。

・その後の役員総務会で、増額分の支払いをしない者は、自治会離脱届の提出を求め、市からの配布物を配布しない、災害・葬儀等に協力しない、ごみステーションを利用させない、など決議した。

・会員5人(原告)が、思想及び良心の自由を侵害し公序良俗に反するから、決議は無効と自治会(被告)を訴えた。

2200843日最高裁確定判決までの経過:

20061127日(一審)大津地裁判決  会員5名の請求を却下、会員控訴

2007824 (控訴審)大阪高裁判決 一審判決を破棄、自治会決議無効の判決*

200795日  自治会が最高裁に上告

200843日 (最高裁)上告を棄却、控訴審・大阪高裁判決確定

*全文収録http://www.kcat.zaq.ne.jp/iranet-hirakata/text-070824akaihane-osakakouhan.htm

http://bkref.web.fc2.com/ok070824.htmlなどにもあり)

 

3.判決の内容のポイント        

 

会員5人(控訴人)

 
 

 自治会(被控訴人)

 
 

①各会は自治会とは別個のもので、寄付や加入は個人自由で憲法19条思想信条の自由、21条結社の自由を侵害する。

 

②当自治会は地方自治法の「地縁による団体」の認可を得ている。住民の加入の自由、民主的運営、差別的扱いの禁止を定める。増額分を支払わない者への差別は同法違反。

 

憲法22条①居住の自由に違反  

 

よって、諸人権規定違反は、民法90条の公序良俗に違反し無効。

 

 

 

①各会への寄付金支出は自治会の目的の範囲内で、会員は決議による会費負担の義務を負う。

 

②自治会は、会員総意による運営をしており、各会は地域社会に資する団体で、そこへの寄付は地域社会や会員の福祉にかない、自治会の目的に沿う。

 

③自治会費上乗せによる募金・寄付金の徴収方法は、住民の高齢化・集金業務の負担大に伴い、住民の強い要望により決議したもので、全国的に見ても一般的で合理性、必要性がある

 

<判決理由>

①募金及び寄付金は、その性格から、その使途如何を問わず、すべて任意になされ、強制されるべきではない。それは決議以前の自治会員の募金及び寄付金への対応が多様で、さまざまな価値観、思想信条は十分尊重されなければならない。

②その支払いを事実上強制され、社会的に許容される限度を超えるときには、思想・信条の自由を侵害するものとして民法90条の公序良俗違反によりその効力が否定される場合もありうる。

③本件自治会決議は、強制を伴うとき、会員の任意の意思決定の機会を奪うものとなる。

④地域住民の日常生活に支障をきたすような差別が、自治会未加入者になされることは、会員の脱退の自由は事実上制限されているものと言わざるを得ない。

⑤規約上の脱退を求めない会費不納付者扱いでなく、増額分を支払わない会員に対して会費全額の保留扱いとしているからといって、将来も脱退を余儀なくされる恐れがないとは言えない。 

<結論>

本件決議に基づく増額会費名目の募金及び寄付金の徴収は,募金及び寄付金に応じるか否か,どの団体等になすべきか等について,会員の任意の態度,決定を十分に尊重すべきであるにもかかわらず,会員の生活上不可欠な存在である地縁団体により,会員の意思,決定とは関係なく一律に,事実上の強制をもってなされるものであり,その強制は社会的に許容される限度を超えるものというべきである。

したがって,このような内容を有する本件決議は,被控訴人の会員の思想,信条の自由を侵害するものであって,公序良俗に反し無効というべきである。

 

4.判決後の全国社会福祉協議会の対応

①社協会費等の納入方法に関する考え方について(2007927日、全社地発第231号)

 (都道府県及び指定都市社会福祉協議会あて通知)

「自治会の決定による社協等の会費や共同募金会への寄付金の一括徴収について違法と判断を下したものではなく自治会の意思決定を行うにあたって『募金及び寄付金に応じるか否か、どの団体等になすべきか等』について各会員に任意の態度、決定を十分尊重すべきことを求めたものである。

*全文http://dmituko.cocolog-nifty.com/zensyakyo2007.pdf

②社協会費等の納入方法に関する考え方について(2008430日、全社地発第25号)

(都道府県及び指定都市社会福祉協議会あて通知)*

「・・・確定した判決は、自治会として社協会費納入の協力や、社協会費を含めて自治会費を集めることが違法であるとの判断を下したものではなく、自治会がその意思決定を行うにあたって、本件決議が『募金及び寄付金に応じるか否か、どの団体等になすべきか等』について『会員の意思、決定とは関係なく一律に、事実上強制をもってなされるものであり、その強制は社会的に許容される範囲を越えるもの」であったことが問題とされたものであり、・・・」

「自治会費と一括して会費を集める場合・・・、社協会費の納入が任意であることを明示したり、社協会費専用の封筒を用意するなどの工夫が必要になる。・・・」

*全文http://dmituko.cocolog-nifty.com/zensyakyo2008.pdf

 

5.最近の佐倉市社協・佐倉市役所の対応

①佐倉市社会福祉協議会

「佐倉市の地域福祉を推進するために皆様に会員募集をお願いしています」(2013420日 佐社福第31号)(各地区代表者各位あて通知の付属)(地区代表者への説明会資料『佐倉市社会福祉協議会平成25年度会員募集関係資料』20134月所収)

「佐倉市社会福祉協議会の会員の募集にあたり、下記の点につきまして、特段のご配慮をいただきたくよろしくお願いいたします。

 (1)全世帯の皆様にぜひ会員になっていただき、地域福祉を推進する一員としてご参加をお願いいたします。

 (2)会員は自由意志によりご参加いただくことを尊重してください。

 (3)集金の際、市民の皆様が強制的に徴収されているような印象を受けないようご配慮をお願いいたします。

②佐倉市役所(自治人権推進課)

『自治会・町内会・区役員の手引き・平成25年度版 自治会・町内会・区活動Q&A』5

「Q:自治会等業務委託契約とはどのようなものですか

A:委託契約に基づく業務…①②③④()

⑤その他市長が必要と認める事項(日本赤十字社社資募集、愛の一円募金)

○社会福祉協議会が行う業務(会費・赤い羽根募金)は委託業務に含まれません。

○募金等は、個人の自由意思に基づくものです募金等を自治会費に上乗せして徴収するとした総会決議は無効であるとの判例(*H19.824大阪高裁)もございますので、自治会等におかれましても、募金等の取扱についてご配慮いただきますようお願いいたします。」 

==============================

直近の以下二つのブログ記事もあわせて参照いただければと思います。

2013223 ()

社協会費の集め方、皆さんの自治会では??「自治会の自由」ではなく、「市民の自由」をこそ

http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2013/02/post-5d4d.html

2013429 ()

自治会は、いま、総会の季節~社協や日赤への募金はどうなっていますか~佐倉市の場合

http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2013/04/post-74bc.html

 

 レジメでの参照資料を精査していただくと、全社協の2回にわたる通知が、大坂高裁の判決を意図的に曲解しているのがわかります。佐倉市社協が発信する文書自体に矛盾があるのが分かると思います。「自由意思」をうたいながら「全世帯」の会員加入を依頼している点、また、配布資料には、各自治会等の500円×世帯数の目標額をかかげ、昨年度の納入額の実績一覧を付している点こそ整合性がないことを露呈しています。さらに、佐倉市社協は、上記の判決が出たことさえも、各自治会に通知することはありませんでした。佐倉市自治人権推進課による手引きに、注として書かれた太字の部分は、今年度の手引きに初めて書き加えられたものです。これは市民に発せられたと同時に、社協への指導方針でもあるはずです。社協が進める会費徴収の方法を黙認するのでなく、少なくとも、判決の主旨を周知徹底すべきだと思います。

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