2024年6月29日 (土)

沖縄の離島の悲劇を忘れてはいけない―「慰霊の日」に(2)

ハンセン病者の人体実験が続けられていた!

 この稿を終わろうとしたとき、「ハンセン病開発中の薬、療養所で 副作用確認後も投与試験」の報道に接した(『朝日新聞』2024年6月25日)。熊本県「菊池恵楓園」の調査報告書の公表を受けての報道であった。園長室で薬剤「虹波」を服用させたり、半ば強制的に注射をさせたりする人体事件のようなことが戦中・戦後も繰り返されていたというのである。

 「菊池恵楓園」といえば、1952年、あるハンセン病患者が証拠不十分なまま逮捕され、不当な裁判を受け、その結果、死刑となった「菊池事件」を思い起す。この療養所の医師にハンセン病と診断され、療養所への入所を執拗に迫られた被告が村の衛生担当者を殺害したと疑われた事件である。逮捕後は、構内の仮拘置所に隔離され、療養所内の特別法廷においては、本人が否認する中、一度も出廷したことがないままに、第3次再審中の1962年9月、福岡拘置所への移送直後2時間後に死刑が執行されるという異例の事件であった。この事件の背景には、戦時下の「無らい県運動」を引き継いだような病者の強制隔離政策と差別助長の社会的風潮があったのである。

<詳しくは、以下を参照>
・熊本県HP 3-1.菊池事件
https://www.pref.kumamoto.jp/uploaded/attachment/49316.pdf

・菊池事件略年表(菊池事件再審を求める会作成)
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 今回の報告書では「薬剤投与試験」1942年から開始されたとする。戦後も続けられたがいつまでかは不明で、調査中という。1943年アメリカでは新薬プロミンが開発され、1947年国内でも使用開始したにもかかわらず、1948年「優生保護法」で、ハンセン病者や障害者の断種や中絶が続き、1953年「らい予防法」では隔離政策は維持されていたのである。1996年「らい予防法」の廃止、2001年熊本地裁が「らい予防法」の違憲性、国家賠償請求を認め、国は控訴せず謝罪、「ハンセン病補償法」成立、2009年「ハンセン問題基本法」成立後も、さまざまな偏見と差別が続いているのが実態である。長島愛生園初代園長で、「無らい県運動」を率先して進めた、戦後も「らい予防法」での隔離政策を維持した医師光田健輔に1951年、文化勲章が授与されている。

なぜ、沖縄に、二つの国立ハンセン病療養所があるのか

 こうした日本のハンセン病小史を省みて、私の沖縄旅行で忘れられない一件がある。2017年2月、今は本島と橋でつながっている屋我地島の国立ハンセン病療養所「沖縄愛楽園」を訪ねたときのことである。米軍機が兵舎と間違えて空爆がなされた愛楽園であったが、ここにも、病者への過酷な隔離と差別の歴史があった。

 私の「愛楽園」訪問の目的は、「癩」と皇室との関係への関心から、貞明皇后の「御歌(みうた)碑」を確認することだった。1932年11月、大正天皇の皇后、貞明皇后が「つれづれの友となりても慰めよ行くことかたきわれにかはりて」と詠み、この歌を全国のハンセン病療養所に下賜金とともに贈ったことから、歌碑が建てられたのである。「愛楽園」の10万坪近い敷地は出入り自由らしいので、地図と案内板を頼りにまわったものの、その歌碑を見つけることができなかった。海岸に出れば、水子の供養塔があり、思わずドキリとした。広い砂浜の先には小島や岩が点々とし、左には古宇利島への長い橋も見えた。その日は、交流会館の閉館時間も過ぎていたので、翌日、出直すことにした。通常の病院と変わらないたたずまいで、夕方とあって建物の間を白衣の人たちや配膳の人たちが行き来していた。

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 翌日、交流会館の展示で、「沖縄愛楽園」の沿革と国策によるハンセン病者の強制隔離と差別の実態をあらためて目の当たりにするのだった。

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米軍の空爆後、瓦礫と化した屋外で解剖がなされている。1945年7月10日米軍の撮影による

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1944年3月に着任した2代目愛楽園園長の早田晧は、7月から空襲時の避難壕の掘削を開始、手足の不自由な患者たちにも、掘ることを課し、病状を悪化する者が続出した。それが原因で、米軍の上陸後一年で死者が274人に上っている。下の銘板は自治会の名で1997年に建てられている。上の写真は、「早田壕」と呼ばれた壕の入り口の一つである。

 翌日、交流会館の展示を見て、「御歌碑」のたどった経緯も分かってきた。

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 上記の写真は、1932年11月に貞明皇后が詠んだ歌が全国のハンセン病療養所に下賜され、愛楽園では1943年2月に建立された「御歌碑」である。この写真説明には「絶対強制隔離政策の正当化と強化の役割を果たした」と明記されていた。皇室の威をかりての国策推進の典型といえよう。

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 上記の写真は、空爆による焼跡の中に立つ「御歌碑」だが、米軍の指示により、台座からはずされ、沖合の海に沈められたと説明されている。続いて、米軍は「国家神道」につながるものとして撤去を命じた、とも説明する。「国家神道」というより、GHQは、天皇、皇族崇拝につながるものとして撤去を命じたのではないか。

 案内の地図にある現在の「御歌碑」はどんなふうになっているのか、ふたたび構内を歩き回るのだが、見つからない。半分諦めかけていたところ、草ぼうぼうの広場の片隅に、思いもよらない姿をさらしていた。はじめは信じられなかったのだが、ボロボロになったブルーシートの間から、「貞明皇后」と読める文字、「つれづれの・・・」の文字も見える。

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 帰り際に、交流会館に寄って、係の人に尋ねてみた。見つけたのは古いもので、新しい歌碑があるのではないかとも。どこかあいまいな返答で、釈然としないまま、愛楽園を後にしたのだった。

 平成期の天皇夫妻が、1975年7月、皇太子時代に沖縄国際海洋博の開会式のために、沖縄に初めて訪問した際、沖縄愛楽園を訪問している。その時、「御歌碑」は再建されていたのか。横倒しの歌碑は、沈められた歌碑と石の形も台座も異なるところから、再建されたには違いないが、あのような姿になったのはいつだったのか。交流会館の前には、「高松宮妃殿下」「三笠宮妃寛仁殿下妃殿下」の記念植樹があった。

  あの「御歌碑」はどうなっているのか、気になっていた。2018年、沖縄愛楽園開所80周年の記事を見たので、園に電話してみた。「元の位置に戻しました、あの時はまだ工事中でして」とのことであった。工事中にしては、相当長い間放置されていた姿ではあった。正直なところ、自治会は、あのまま海に沈めてもよかったのではと思う一方、日本のハンセン病の歴史的遺構として、残されるべきものであったかもしれない。残す以上は、しっかりとその果たした役割を伝えてゆかねばならないと。

 なお、沖縄県には、もう一つ、宮古島に、国立ハンセン病療養所南静園がある。全国に13ある国立ハンセン病療養所のうち、二つが沖縄にあることになる。大正期の1916年8月、前述の光田健輔が多摩全生園の園長時代、西表島に3万人の患者を隔離できる候補地として、視察に来ている。収容人数の拡大と逃亡防止のためだったとするが、地元の猛反対行動に、逃げるように島を離れたとの、当時の報道もある。現在の沖縄の基地問題に共通するものがあるのではないか。
 

<以下もご参照ください>
冬の沖縄、二つの目的をもって~「難しい」と逃げてはならないこと(1)
沖縄、屋我地島、愛楽園を訪ねる(2017年2月14日)
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2017/02/post-eeb9.html

 

なぜ、貞明皇后だったのか

  また、なぜ、貞明皇后の「御歌碑」だったのかについては、以下の拙著も併せてお読みいただければと。

「貞明皇后の短歌が担った国家的役割 — ハンセン病者への<御歌>を手掛かりに」
『<パンデミック>とフェミニズム(新フェミニズム批評の会創立30周年記念論集)』翰林書房 2022年10月

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2024年6月26日 (水)

沖縄の離島の悲劇を忘れてはいけない―「慰霊の日」にふたたび(1)

 沖縄は、6月20日に梅雨が明けて、6月23日の慰霊の日前後の新聞は、『沖縄タイムス』と『琉球新報』はもちろん各新聞は、温度差があるものの、さまざまな形の特集や記事を掲載している。手元の四紙に目を通して思ったのは、式典の様子や平和の礎に祈る人々への取材がほとんどであった。

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左「沖縄タイムズ」【2024年6月23日」臨時号
右「東京新聞」(2014年6月24日)より

 中に一つ、東京新聞の「集団自決 息絶えた母」は、渡嘉敷島へ米軍が上陸した際、日本軍が住民を集め、手りゅう弾を渡し、集団自決を迫ったという事件を報じている。母と弟を目の前で殺された遺族の姉妹に取材した記事だった(2024年6月24日)。死にきれなかった者は、日本兵や身内が手をかけ殺すといった凄惨な場面を目撃した姉妹は死んだふりをして難を逃れたという。渡嘉敷島の住民にとって「慰霊の日」は、集団自決がなされた3月28日であった。90歳と86歳の姉妹は、6月23日に「平和の礎」を訪れ、日本軍への怒りと悲しみを新たにしたとある。

渡嘉敷島へ~欠航の合間に

 2017年2月初旬、私たちは、夫の強い要望で渡嘉敷島へ渡ったのは、村の人口よりやや多い、700人以上のマラソンランナーたちが去った直後だった。高速船は欠航だったが、波に強いというフェリーで出港、内海を出ると、甲板にいた私たちは波しぶきを浴びた。島では、タクシーの女性運転手のガイドによって、「観光案内書」にはないコースを巡ることになった。

  大江健三郎の『沖縄ノート』(岩波書店 1970年)を巡る裁判や教科書裁判で争われた「集団自決」について少しでも知りたいと思ってのことだった。渡嘉敷村のHPには、以下のように記されている。「パニック状態に陥り」「かねて指示されたとおりに」「集団を組んで」と、曖昧な表現となっている。

「3月27日には渡嘉敷島にも上陸、占領し、沖縄本島上陸作戦の補給基地として確保しました。日本軍の特攻部隊と、住民は山の中に逃げこみました。パニック状態におちいった人々は避難の場所を失い、北端の北山に追込まれ、3月28日、かねて指示されていたとおり、集団を組んで自決しました。手留弾、小銃、かま、くわ、かみそりなどを持っている者はまだいい方で、武器も刃物ももちあわせのない者は、縄で首を絞めたり、山火事の中に飛込んだり、この世のできごととは思えない凄惨な光景の中で、自ら生命を断っていったのです。」

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 一方、1979年、曽野綾子らによって建立されたのが「戦跡碑」であった。その碑文には、一家が集団自決をする凄惨な場面が記述されたあとに「そこにあるのは愛である」という文言が唐突であり、いささか驚いた。

 27 日、豪雨の中を米軍の攻撃に追いつめられた島の住民たちは、恩納河原ほか数か所 に集結したが、 28 日敵の手に掛かるよりは自らの手で自決する道を選んだ。一家は或いは、 車座になって手榴弾を抜き或いは力ある父や兄が弱い母や妹の生命を断った。そこにあるのは 愛であった。この日の前後に 394 人の島民の命が失われた。 その後、生き残った人々を襲ったのは激しい飢えであった。(中略)  315 名の将兵のうち 18 名は栄養失調のために死亡し、 52 名は、 米軍の攻撃により戦死した。 昭和 20  8  23 日、軍は命令により降伏した」

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赤丸が訪ねたところ、黒丸が訪ねたかったところです。

以下の当ブログの過去記事もご覧いただければと。
 冬の沖縄、二つの目的をもって~「難しい」と逃げてはならないこと(5)「アリラン慰霊のモニュメント」をめぐる 2017.02.24

 冬の沖縄、二つの目的をもって~「難しい」と逃げてはならないこと(4)渡嘉敷村の戦没者、集団自決者の数字が錯綜する、その背景 2017.02.22

 冬の沖縄、二つの目的をもって~「難しい」と逃げてはならないこと(3) 2017.02.19

 

伊江島で何が起きていたのか

  2016年6月、本部(もとぶ)港から伊江島に渡っている。島の中央に突起したグスク山を目指し、フェリーで30分の船旅であった。島内は地元出身の運転手さんに案内してもらったが、今やリゾート地としての島、百合の花の島、伊江牛の島が自慢らしかった。

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 伊江島に米軍が上陸したのは1945年4月16日、六日間の激戦の末、4月21日には占領された。本島に疎開できず残っていた島民の半数近くの1500人、兵士2000人が犠牲となった。米軍は、伊江島の滑走路が何としても欲しかったという。その後、米軍は、「銃剣とブルドーザー」により島民の土地を収用、島民は追い出され、米軍基地がおかれた。一時は全面返還の話もあったが、現在も島の3分の1以上が米軍基地である。その四分の三600ヘクタールの私有地には、防衛省が地代を払い続け、1800人ほどの地主に、毎年16億の予算が付けられている。基地内には「黙認耕作地」というものがあって、耕作地、住宅地にも利用されている。
 なお、案内の運転手は、「地代が年に1000万以上の農家もざらにいるさ」とも話していたが、実際は、6割以上の地主は、100万以下ともいう。また、基地内の私有地が、不動産屋により売買され、「絶対返却されることはない」からと投資の対象にもされている。

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 1961年、「伊江島の土地を守る会」が発足、米軍に対する非暴力による抗議運動の根拠地となった団結小屋である。もちろん今は無人で、外壁には、大きな文字で、伊江島の土地を守る会、そしてその運動の中心だった阿波根昌鴻(あはごん・しょうこう/1901~2002年)からのメッセージが書かれている。

ふたたびの沖縄、慰霊の日の摩文仁へ(4)伊江島1(2016年 月17日)
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2016/07/post-2b26.html

ふたたびの沖縄、慰霊の日の摩文仁へ(5)伊江島2
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2016/07/post-4891.html

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 1948年8月6日、米軍の上陸用舟艇に積まれていた未使用砲弾が爆発、島民107名の犠牲者を出した。地上戦で生き残った島民の命が奪われた大惨事であった。

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苛烈な激戦で、
唯一残骸をさらしている「公益質屋」。1929年の世界恐慌は、島民の暮らしを直撃し、高利貸しに苦しむ村民に、村が設けた質屋であった。

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ガマの一つ、手前の平らな部分が広く、多くの人々が潜んでいた。

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『毎日新聞』(2024年6月20日)の記事では、1943年日本軍は伊江島に飛行場建設を決定、戦況が悪化する中、要塞化を進め、1945年4月16日米軍上陸後は、軍は住民を巻き込み、多くの犠牲者を出した。毎日新聞は、このシリーズで、6月21日は、与那国島出身の大舛松市大尉の戦死を軍神とあがめ、戦意を高揚した同調圧力を、22日には、波照間島の島民が強制避難した先でマラリアに感染、島民の3割に当たる477人が犠牲になったことを報じていた。

 

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 私が6月23日の追悼式に参加したのは2016年だったから、すでに8年も経つ。会場に入るのは二重のチェック、式典後の帰りのバスから見た会場周辺の光景、青い制服の警備スタッフがが延々と続く。安倍首相の時代である。ことしはどうだったのだだろう。

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 私のわずかな沖縄体験ながら、沖縄本島はもちろんだが、伊江島、屋我地島、渡嘉敷島を訪ねただけでも、多くを知り、考えさせられることも多々あった。次回は、国立ハンセン病療養所「沖縄愛楽園」のある屋我地島について書いておきたい。

 

 

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2024年6月15日 (土)

菅沼正子さんから「デボラ・カー」が届きました。

 久しぶりに届いた「今も輝くスター55(10)デボラ・カー」は以下をご覧ください。

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 私にとってのデボラ・カーも「地上より永遠に」です。「ここよりとわに」と読む題名がかっこいい、と思ったものだった。 何しろ、男優たちがスゴイ。私の関心はそちらへ。バート・ランカスター、モンゴメリー・クリフト、フランク・シナトラに、ここでは悪役のアーネスト・ボーグナイン。モンゴメリー・クリフトは、元ボクサーで、相手を失明させたという過去を持つ、翳のある兵士を演じている。日本の軍隊ものと違うのは、閉鎖的な軍隊という組織の腐敗を、アメリカ映画はどこか、余裕をもって描いていたことになるのかなと、いま思う。

なお、左画面のマイリスト「すてきなあなたへ」ではこれまでの第一回からまとめて10本を順次読むことできます。

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2023年12月 4日 (月)

続々届いています「今も輝くスター55」

今回は、ジョン・ウェインとジェームス・ディーンです。私の映画メモによれば、1955年には「エデンの東」を、1957年には「理由なき反抗」も「ジャイアンツ」も見ている。「エデンの東」は高校の映画教室で池袋の映画館に早朝出かけ、二度見ていることになる。

菅沼正子の「今も輝くスター55」
(6)ジョン・ウェイン
(7)ジェームス・ディーン

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2023年8月21日 (月)

「チャールズ・チャプリン」が届きました。

 菅沼正子さんから、「チャールズ・チャプリン~映画を語るには真っ先に名が出る偉大なる映画人」が届きました。シリーズのタイトルが「菅沼正子の映画招待席」から「今も輝くスター55」に変わりました。あなたにとってのスターはだれですか。続々と登場するスターたち、楽しみです。8月初め、私が、たまたま、「映像の世紀・ヒトラーVSチャプリン~終わりなき闘い」(2022年6月放映)の再放送を見たばかりのところでした。

 以下を開いてお楽しみください

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「チャールズ・チャプリン~映画を語るには真っ先に名が出る偉大なる映画人」

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東側の生け垣にテッセンの花が咲いた、年に一度、初夏にしか咲かないものと思っていたテッセン、なんと花をつけていた。というのも、あたらしく買った鉢植えのテッセンとともに、夫が水やり、夕方の米のとぎ汁を欠かさなかったのが功を奏したか。剪定もこまめにすれば、花もいくどか咲くとのこと。

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2023年5月 4日 (木)

「フェイ・ダナウェイ」の思い出とともに~「菅沼正子映画招待席」再開、第2弾

 菅沼正子さんから「フェイ・ダナウェイ」が届きました。当時評判だった「俺たちに明日はない」の主演女優です。あのラストシーンは、私にとっても忘れ難いシーンの一つです。私の知らないフェイ・ダナウェイも満載です。思い出の一つと重なる映画や忘れられない感動のワンシーンがあるかもしれません。

以下をご覧ください。

「菅沼正子の映画招待席」44

フェイ・ダナウェイ ~アメリカン・ニュー・シネマの先駆けになったトップ女優~

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前回は以下で読めます。

「菅沼正子の映画招待席」43
キャンデイス・バーゲン ~ニュー・シネマの時代では美しすぎた~

ダウンロード - suganumamasako2043.pdf

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2017年3月 8日 (水)

3月4日、学習会「千葉の空にもオスプレイ!―なにが問題?どこが危険?―」に参加~軍拡競争の真っ只中で、どうすれば

日本、米・中・韓国・北朝鮮の軍拡競争の再来

 

 227日の衆議院本会議で2017年度の予算案が通過、参議院でどうなろうとも衆議院優先で成立したことになる。974547億円の過去最大規模で、防衛費51251億円、前年度より1.4%増で、5年連続の増額である。収入内訳で、新たな借金となる国債は34兆円を超す。

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『朝日デジタル』227日より

 

    227日、 韓国政府は、北朝鮮の核やミサイルの脅威に対抗するため、アメリカの最新の迎撃ミサイルシステム「THAAD」を年内に配備する計画で、配備場所として、ロッテグループが所有するゴルフ場の土地を正式に取得したと発表している。

228日、トランプ大統領は、2018年度の予算について、公共の安全と安全保障を重視するとして国防費を増やす方針を示した。国防費10%、日本円で約6兆円の増額が見込まれるという。

 34日には、中国で、全国人民代表大会が5日から始まる前の傅瑩報道官の記者会見で、2017年の国防費の「増加率は7%前後」と明らかにした。1兆人民元を超え、日本円で17兆円に迫る見通しとなるという報道があった。

 36日、北朝鮮は、弾道ミサイル4発を同時に発射、秋田沖300350キロの排他的経済水域内外に落下した。日本は、「北朝鮮の脅威は新たな段階に入った」と安倍首相は、米韓日が緊密に連携して対応するとしている。

 

中国の尖閣列島周辺の動向や北朝鮮の弾道ミサイルの発射は大きく報道され、その脅威を増幅させているのが常である。たとえば、北朝鮮は、日米の軍事同盟の<強化>パフォーマンスがなされたとき、米韓合同訓練や日米合同訓練に合わて、ミサイル発射がされることが多い。相互が挑発に乗りあって、軍拡がエスカレートして、日本でも、根拠のはっきりいしない防衛予算、駐留米軍への多額の経費が計上される。折しも、36日から17日まで、陸上自衛隊とアメリカ海兵隊の合同訓練が、群馬県相馬原演習場、新潟県関山演習場で展開されている現実。政府は、自衛隊員の命をないがしろにする駆けつけ警護、各所での福祉予算の切り捨て、東日本大震災被災地で仮設住宅や店舗の閉鎖、戻るに戻れない原発事故被災地、杜撰な補助金、役人の天下り利権、廃炉費用まで国民に押し付けておいて、守るものは何なのか。国民の命と財産を守るどころか、むしろ脅威にさらしているようなものではないか。

 

軍拡競争に歯止めをかけるのは、憲法9条を持つ日本でしかない。その9条の改悪を進める政府を延命させるわけにはいかない、国民は何を突破口として実現していくのか、が問われているのではないか。

 

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『防衛白書』2016年版より。『日本経済新聞』(2016/12/23 1:30 電子版)では、「防衛費「聖域」扱い 中国・北朝鮮の脅威反映 過去最大の5.1兆円、5年連続増」という記事中、「中国や北朝鮮の脅威を名目に防衛費は<聖域>扱いとなっている」との文言も

 

 

当ブログでも、先日もお知らせした表記の学習会(さくら・志津憲法9条をまもりたい会主催)で、吉沢弘志さんの話を聞くことになった。近年、自分の勉強不足を痛感して、沖縄へ出かけたり、『琉球新報』を購読したりして、何とか沖縄のことを知りたいと思っていた。

 危険だというオスプレイMV22 が、昨年末、沖縄の名護市海岸に墜落大破した。そのオスプレイの整備拠点となったのは、米軍の木更津基地で、すでに1月に飛来している。日本の米軍基地では、各所へのオスプレイ配備計画が進み、何十機ものオスプレイが整備のために木更津にやって来るのではないか。その危険性は現実のものとなるのではないか、というのが私たちの不安だった。

 

吉沢弘志さんの話 

 吉沢さんは、埼玉大学でドイツ語を教えている先生だが、幅広い知見と活動で、市民運動に参加されている。以下は、吉沢さんの話のレポートとしたい。

 

千葉県木更津には、米軍基地に陸上自衛隊駐屯地が併設されているが、米軍のオスプレイMV22CV22 の整備拠点になることが決まり、すでに130日に飛来している。オスプレイは「空飛ぶスクラップ」とも呼ばれ、昨年1213日名護市海岸に墜落し、19日には飛行再開、年明けの113日には空中給油を再開した、あのオスプレイ。日本は、墜落現場に近づけることもできず、原因究明も米軍まかせの安全宣言、すべて日米地位協定に拠るものである。オスプレイの開発は、1982年に始まり、1999年に量産体制に入ったが、開発中の死者も続出、死者を出した重大事故の事故率が、2011年からみても減ることはなく確実に増え、2015年末には、3.58%だという。

 

*参考

MV22の事故率について(防衛省2012 

http://www.mod.go.jp/j/approach/anpo/osprey/pdf/dep_5.pdf

 

MV22の死傷者を伴う重大事故(防衛省資料、新聞記事から作成)                                                                      

開発

試験

段階

 

19916 

試作機初飛行で制御不能で転覆、軽傷2 

19927

エンジンから出火し墜落、死亡7

 

20004

 

急降下で墜落、死亡19

 

200012

 

着陸進入ときに王戎不能不能となり墜落、死亡4  

 

実用

 

段階

 

20104

 

アフガニスタンで墜落、死亡4

 

20124

 

モロッコで演習中墜落、死亡2人、重傷2

 

20126

 

米フロリダ州で墜落、負傷5

 

20155

 

米ハワイ州で着陸失敗事故、死亡2

 
201612  

沖縄県名護市海岸で墜落大破、負傷2

 

 

 普天間基地には、24機が配備されている。1機は墜落、1機は爆破?2機減ったはずが、直ちに増強され24機。横田基地には空軍仕様のCV2210機、岩国にCV2212機、厚木、三沢基地はじめ各地の演習場での飛行訓練が計画されている。70機近いオスプレイが、日本の空、低空を飛ぶ。さらに、自衛隊が2018年度までの「中期防衛力整備計画」で17機購入を決めていて、それらを含めて整備拠点の木更津に離着陸する。

米軍や政府が日本の防衛上、オスプレイの必要性を強調するが、ことごとく、「オスプレイの“ウソ”」として論破する。(下表は、吉沢さんの資料から作成)

                   
 

垂直離着陸ができる 

 
 

重装備の24人搭乗は不可能に近く、重量から垂直離着陸は5%に過ぎず、1500m以上の滑走路を必要としている (木更津は1800mの滑走路がある)  

 

航続距離が長い 

 
 

危険な空中給油を不可欠としている

 

抑止力

 
 

兵力としての乗員数は24名×機数が増強されても、抑止力の増強にならない  

 

災害救助

 
 

300度の熱風を下方に噴出、離着陸の場所確保が困難、積載量が少なく、輸送ヘリCH-47Jの方が効率が機能的 

 

急患搬送

 
 

離着陸の場所確保困難、防寒の必要、酸素吸入の必要も必要で、ドクターヘリの方が機能的  

 

 政府は、熊本地震で、災害救助として役立たずのオスプレイ出動を米軍に要請したが、飛行距離も長い必要はなかったし、積載量は段ボール200個分程度、着地には、熱風除去の大量の散水を必要とし、水不足の災害地では顰蹙を買い、「政治利用」だとの批判を浴びていた。

 

オスプレイは危険性だけでなく、売却価格の不透明さがある。冷戦体制が崩れた以後の日米同盟と米軍再編との流れに沿って、日本の防衛の建前が、離島防衛から離島奪還へと転換する中で、アメリカでの軍事利権保護のためだけに、米軍のオスプレイ配備、日本へのオスプレイ売却が進められているのが現状である。しかも、住民の反対で、アメリカ国内での飛行訓練がままならない状況の中で、主たる訓練は日本で実施されているのが現実。さらに、現在、オスプレイの購入を決めているのは、世界中で日本だけで、その購入価格もアメリカ政府のいわば「言い値」であって、関連機材、訓練費用などを含めると1200億以上という。さらに、おかしなことに、防衛省は、オスプレイのメーカーのボーイング社と契約するのではなく、ボーイング社から買い取ったアメリカ政府から買う仕組みとなっている。しかも、日本に先払いをさせておいて、契約内容を履行しないというのがアメリカの日本へのやり口だそうだ。

 

吉沢さんの話は、まだまだ、あるのだが、とりあえずのレポートである。

 

家にかえって少し調べてみた。オスプレイのアメリカ政府からの買い付けには、間に三井物産が入る。日本の2015年度予算案では、オスプレイ5機の購入費用として516億円(1機約103億円)、2016年度は12機で1321億円(1機約110億)が計上されていた。米軍の購入費用は1機当たり50億~60億円との報道もある。* そういえば自衛隊にオスプレイが届いた話は聞こえてこない。

 

*参考

 

自衛隊内でも異論…安倍政権「オスプレイ」相場の2倍で購入

 http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/157524

 

・熊本地震 オスプレイ物資搬送 「政治利用」の声も

毎日新聞2016419

http://mainichi.jp/articles/20160419/k00/00m/040/083000c

 

・「米軍オスプレイの我が国への配備の経緯」

防衛白書2016年版より

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2015年12月 3日 (木)

沖縄辺野古基地建設にかかわり、同時進行している訴訟の行方(2) ~明確になった国側の「瑕疵」と振りかざす「ご都合主義」  

  これは、私だけのことだったのかもしれないが、けさ、きのうの沖縄辺野古新基地建設にかかる代執行訴訟の第1回口頭弁論の各紙報道を読んでみて、ようやく理解できたところもある。昨日の当ブログ記事の続きにもなる。  私の手元には、朝日・毎日・東京新聞などがあるが、たくさんの頁を割いて解説されているなかで、以下の東京新聞の図表がわかりやすかった。あわせて、昨日の当ブログ記事で、私の作成した年表と図表も参考にしてほしい。  

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  安倍政権の大きな流れの中で、しばしば登場する「法治主義」、「地方創生」は、裏を返せば法律で治めるのではなく「与党独裁」であり、「地方切り捨て」の施策に過ぎない。辺野古の新基地建設の問題にも当てはまる。「日本は法治主義の国ですから・・・」「地方の活力に期待して・・・」とのセリフには実態がない。「国際情勢や国際環境の変化」によって、憲法9条の解釈や判例の解釈を変更したり、地方の民意は、予算のばらまきで首長や住民に目くらましで捻じ曲げようとしたりする。そうした中でも、沖縄県民が示しつづけている「辺野古新基地建設」反対と抵抗の意思を、2013年12月の仲井真前沖縄知事の建設工事「承認」をタテに頑として受け入れない国の「法治主義」「地方創生」は、字面のパフォーマンスに過ぎないではないか。私たちも、アメリカ軍の日本の基地、沖縄の基地、自衛隊の役割が日本の防衛ためという建前は崩れ、アメリカ自らの軍事拠点に利用する目的にシフトしてきているにもかかわらず、日米の同盟関係を強化するなどとの安保法制で、日本国民の命はますます危うくなってきていることを自覚しなければならない。沖縄県を、沖縄県民を米軍基地から解放することは、私たちの命を守ることにもなるのだから、本気で、いまの政府にNOを突きつける手立てを考えなければならない。

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2015年12月 2日 (水)

沖縄辺野古基地建設にかかわり、同時進行している訴訟の行方

 あす122日は、沖縄での裁判で、第1回の口頭弁論が始まるという。沖縄新基地建設をめぐって、基地をつくらせないと闘っている人たちを支援したいと気持ちが焦り、沖縄の最近の動向を整理しようとして、例のごとく年表を作成していて、どうも分かりにくい点がいろいろ出てきた。とくに「法廷闘争」が入り組んでいて難しい。少したどっていって理解できたのが、以下のようなことだった。もちろん足りない部分や勘違いもあると思うが、とりあえずのレポートとしたい。ご教示いただけたらと思う。沖縄で進む三つの訴訟の進捗状況と何が争われているのかを整理しておきたい。

 今年の1013日、翁長知事が辺野古埋め立て工事の承認を取り消したことに始まる。その「承認」というのは、20131227日、安倍首相との会談を終え、仲井真沖縄県知事が、従来の主張を覆して、3000億円の振興予算とオスプレイ分散配備などを条件に辺野古埋め立て工事を承認したことを指す。知事の「これで、いい正月が迎えられる」とのセリフが、いまでも思い出されるのである。一年後の昨年末、圧倒的な勝利を収めた翁長知事が就任して以来、「基地をつくらせない」闘いが始まっていたわけである。

 訴訟では以下の三つの方法で、争われることになる。

①国が「民間事業者」としての立場から、防衛局が、公有水面埋立法を所管する国交相に不服審査請求をした場合で、すでに石井国交相は、1028日、翁長知事の取り消しを違法として取り消し処分の執行停止という裁決を下し、翌日から本体工事着手を始めている。県は、1124日に国を提訴している。図表では、赤字で示した流れである。

②国が「行政体」としての立場で、石井国交相が翁長知事に取り消しの是正の指示・勧告を行ったが、それを拒んだ県に対して、取り消し処分の撤回を行う代執行を求めて、福岡高裁那覇支部に提訴したのが1117日である。122日第1回口頭弁論が開かれる。図表では黒字で示した流れになる。

112日、翁長県知事は、国土交通省の工事承認取り消しの効力一時停止の処分を不服として国地方紛争処理委員会に対して審査を求め、1125日に意見書を提出している。

①は、行政不服審査法1条は、行政庁の違法、不当な処分行為について「国民救済」の手立てとして不服申し立ての道を開くことを目的としているにもかかわらず、「国民ではない、国が申し立てる」ことは想定してない、との考え方から、県は「違法」として国を提訴している。

②は、地方自治法で定められた手続きではあり、裁判所による公正な判断が待たれるが、なんと10月末日の人事異動で訴訟指揮を執る福岡高裁那覇支部の支部長が交代し、政府より人事との報道もある。

③は、まだ始まったばかりのようで、今後の動向を注視しなければとも思う。

もう日付が変わって、122日となってしまったが、第1回の口頭弁論の行方を見守りたい。

以下の図表は、PDFでご覧ください。

・近年の沖縄辺野古新基地建設の動向、二つの裁判を中心に(2015121日現在、内野光子作成)

・辺野古新基地建設にかかる訴訟手続き(2015121日現在、内野光子作成)

http://dmituko.cocolog-nifty.com/okinawanenpyou.pdf

(参考)

辺野古承認取り消し:前例なき法律闘争、国の対抗策3つのケース沖縄タイムス914日)

https://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=132782 

 

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2015年11月25日 (水)

「マイナンバー制度」は、日本だけ!? 先進国の失敗からなぜ学ばないのか

日本のマイナンバー制度は、国民の利便性や行政の効率化を考えてのことなのか

 

「マイナンバーのお知らせ」、 皆さんのお手元に届いただろうか。私の家には11 22日に届いた。全国から簡易書留の配達ミスや自治体の窓口での交付ミスが連日続いていて、関係者があちこちで頭を下げている映像を目にする。とくに千葉県内の件数が多いとか。情報漏えいについては万全を期しているという法律ながら、スタートの時点でなんとも基本的なミスが続くではないか。他人のマイナンバーがいとも簡単に知られてしまうリスク、その無防備さが露呈した。

 

マイナンバー制度について、内閣官房は「マイナンバー 社会保障・税番号制度 国民生活を支える社会的基盤として、社会保障・税番号制度を導入します。」、総務省は「マイナンバー制度は行政の効率化、国民の利便性の向上、公平・公正な社会の実現のための社会基盤です。」と、そのホームページのトップで説明する。果たして、ほんとうなのだろうか。

 

マイナンバー法とは「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」の略称で200頁以上にも及ぶ。関連法合わせて四法を指すこともあり、すでに2013531日に公布され、来年20161月から運用が開始される。さらに、今年、201593日には、マイナンバーの利用範囲を預金口座や特定健康診査(メタボ健診)、予防接種にも拡大する改正法が成立した。日本年金機構の個人情報流出問題を受け、マイナンバーと基礎年金番号の連結は延期した。預金口座へのマイナンバー登録は、いまは、預金者の任意としているが、義務化が検討されている。義務化により、税務当局や自治体は、脱税や生活保護の不正受給を減らせると見込んでいるがほんとうにそうなのか。それより先にやることがあるのではないか。

 

 

どの先進国も、進めている「マイナンバー制度」というが、その実態は

 

10月の終わりに、テレビ朝日の玉川さんの「そもそも総研」で、一部外国での「マイナーバー」実施状況を知った。私も、ネット検索などで調べていくと、いろいろなことがわかってきた。いわゆる「先進国」で、日本のような、「マイナンバー制度」(国民共通番号制度)を採用している国は、見当たらないのだ。国民共通番号制を採用したが撤廃したイギリス、社会保障番号の民間利用を拡大したため「なりすまし被害対策」に必死のアメリカ、納税者IDカードとして税務以外の利用は一切禁止するドイツ、税と健康保険に留まるフランス・・・。いったいどうなっているのか。資料もいろいろ出てきたが、以下のようにまとめてみた。とくに、経過と課題の欄に注目してほしい。日本における、やがて連結される年金情報、健康保険情報などが民間にも開放されたとすると、保険会社や製薬会社などにとっては、格別の情報になってしまうのではないか。

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なぜ「マイナンバー制度」の導入を急いだのか
20161月から運用開始といい、当初は、法律をところどころ、また解説などを読んでいくと、マイナンバーが「行政の効率化、国民の利便性、公平公正な社会」のためにというけれど、今までの役所の縦割り、役所の杓子定規による市民の不便さ、生活保護費の不正受給、富裕層や法人への税優遇が、一挙に解決するとも思われない。相変わらずの役所仕事は続くだろう。ともかく番号一つで国民の個人情報をたばねて、何にでも運用し、国民のひとりひとりの人権に踏み入ろうという狙いは明らかだ。情報漏れに関しては、だれが責任をとることもなく、第三者機関による調査と再発防止をうたって、管理職が頭を下げれば、一件落着である。さらにいえば、役所や法人からのマイナンバー事業の委託や管理事業という、巨大な利権が動く。いわば「コンクリート」公共事業の頭打ちのあおりをIT産業に振り向けるための政策であったのである。 

 

生活保護費の不正受給や医療費の不正請求を取り締まることは、今のシステムだってできるはずで、やらなかっただけではないのか?軽減税率をどの範囲に決めるか?などはいわば、財政上から見ればむしろ些末的な案件であって、それよりも、法人税率を1%でも下げないこと、所得の分離課税から総合課税へ、 逆進性の税制を改めること、内部留保税の新設・・・など、「決める政治」ですぐにでもできる財源確保ではないか。それらを財源に、福祉予算の大幅増額によって、貧困、病苦、非正規雇用、少子などの悪循環を止めることができるのではないか。政府雇いの有識者からは、そんな意見がさっぱり聞こえてこない。

 

安保法制によって得をするのは誰なのか、危険にさらされるのは誰なのか。防衛予算や基地の増強は誰のためなのか。原発再稼働によって得をするのは誰なのか。安心安全な暮らしを奪われるのは誰なのか。同じような構図が見えてくる。

 

この1週間、一日2・3回、マイナンバーの問い合わせ番号0120950178に電話しているが、通じない。もうそれだけでも、私などは、先行きの不安を覚える。たださえ、高齢者をターゲットにさまざまなサギが横行する昨今、民間への利用を推進しようとする「マイナンバー」が、まるで、怪獣のように私たちに襲いかかってくるような恐怖を感じてしまうのだ。

 

 

 

<参考文献>
・「マイナンバー制度」が利権の温床に「IT公共事業」に群がる白アリども『選択』20133
・巨額血税「浪費」のマイナンバー大手IT企業が「談合」でぼろ儲け『選択』20155
・近藤倫子「医療情報の利活用をめぐる現状と課題」『情報通信をめぐる諸課題』国立国会図書館 2014

 

・黒田充(自治体情報政策研究所のブログ)
「先進国は全てマイナンバーのような制度を入れている」のウソ (1)http://blog.jjseisakuken.jp/blog/2015/04/post-d673.html
「先進国は全てマイナンバーのような制度を入れている」のウソ (2)http://blog.jjseisakuken.jp/blog/2015/04/post-5cda.html
・玉川徹ほか「そもそもマイナンバー制度は海外ではうまくいっているの?」(約17分)『そもそも総研』(テレビ朝日、20151029日)
http://www.at-douga.com/?p=14841
・猪狩典子(GLOCOM国際大学グローバルコミュニケーションセンターのHM)「ICT利用先進国デンマーク」
http://www.glocom.ac.jp/column/denmark/igari_1_1.html
・高山憲之「フランスの社会保障番号制度について」(200711月)http://cis.ier.hit-u.ac.jp/Common/pdf/dp/2007/dp344.pdf#search='%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B9+%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E4%BF%9D%E9%9A%9C%E7%95%AA%E5%8F%B7'
・「国家情報システム(国民ID)に関する調査研究報告書―英国、フランス、イタリアなどにおける番号制度の現状」(国際社会経済研究所 20113月)http://www.i-ise.com/jp/report/pdf/rep_it_201010.pdf#search='%E3%82%A4%E3%82%BF%E3%83%AA%E3%82%A2+%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E4%BF%9D%E9%9A%9C%E7%95%AA%E5%8F%B7'
・「諸外国における国民ID制度の現状等に関する調査研究報告書」(国際大学グローバルコミュニケーションセンター 20124月)http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/linkdata/h24_04_houkoku.pdf#search='%E3%83%BB%E3%80%8C%E8%AB%B8%E5%A4%96%E5%9B%BD%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E5%9B%BD%E6%B0%91%EF%BC%A9%EF%BC%A4%E5%88%B6%E5%BA%A6%E3%81%AE%E7%8F%BE%E7%8A%B6%E7%AD%89%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E8%AA%BF%E6%9F%BB%E7%A0%94%E7%A9%B6%E5%A0%B1%E5%91%8A%E6%9B%B8%E3%80%8D%EF%BC%88%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E5%A4%A7%E5%AD%A6%E3%82%B0%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%90%E3%83%AB%E3%82%B3%E3%83%9F%E3%83%A5%E3%83%8B%E3%82%B1%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC+2012%E5%B9%B44%E6%9C%88%EF%BC%89'

 

          

 

















































































 

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