「風評被害」の名で、政府は責任を転嫁している~「美味しんぼ」批判の重大性
安倍首相の福島県視察は7回目になるという。 5月17日、福島市の県立医大、仮設住宅、飯館村などを訪ね、サクランボ農家ではサクランボ試食のパフォーマンスも見せた。「根拠のない風評を払拭していくためにも、県民や国民に正確な情報を出して行くことに力を尽くしたい」と述べた(NHK[ニュース7]5月17日、毎日新聞5月18日朝刊)。また、原発事故による影響に関して「放射性物質に起因する直接的な健康被害の例は確認されていないということだ」と記者団に強調した(東京新聞5月18日)。報道によれば、これらは、記者の「美味しんぼ」(雁屋哲作・花咲アキラ画)の原発事故による健康被害にかかる描写についての質問に応えてのコメントだったようである。
常々思うのだが、いわゆる原発事故による放射性物質によって引き起こされる健康被害、農畜産物・水産物などについての「風評被害」っていったい何なのか。その被害の要因は、放出し続けている放射線、除去できない放射線物質、流出が続く汚染水のいずれもがコントロールされていないことにあるのではないか。昨年の9月、汚染水は完全にコントロールされていると国際社会に発信した以降も、報道されているだけでも汚染水事故は続出し、今日に至っている。* そのこと自体が県民や県民以外の人々を不安に陥れているという「風評」以前の無策を、漠たる「風評被害」を助長したという批判で、多様な意見や考え方の提示さえも抑え込もうとする今回の政府の対応は、看過できない。
*(参照当ブログ記事)「福島第一原発事故の汚染水問題から見えてくるもの」(2013年10月30日)
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2013/10/post-9b65.html
政府に不都合な真実を口にしたり、書いたりする人々を黙らせ、筆を折らせるのには、「風評」を使えばいい・・・、ということになった。言論や表現の自由の萎縮効果、抑止力を目論んだものだろう。
かつて「土方殺すにゃ刃物は要らぬ、雨の三日も降ればいい」といわれた。いや、非正規労働者が増大し続ける今日でも生きていることわざかも知れない。もはや「雨」も「特定秘密保護法」も要らない。政府は、自治体には予算をチラつかせ、首相は、ときどきマス・メディアの要人と会食し、財界は、広告費をチラつかせればよい。「園遊会」や「叙勲」「授賞」という手もあるではないか。
「歌人殺すにゃ刃物は要らぬ、・・・」この先は、歌人も心に手を当てて考えてほしい。
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