2014年5月19日 (月)

「風評被害」の名で、政府は責任を転嫁している~「美味しんぼ」批判の重大性

 安倍首相の福島県視察は7回目になるという。 517日、福島市の県立医大、仮設住宅、飯館村などを訪ね、サクランボ農家ではサクランボ試食のパフォーマンスも見せた。「根拠のない風評を払拭していくためにも、県民や国民に正確な情報を出して行くことに力を尽くしたい」と述べた(NHK[ニュース7]517日、毎日新聞518日朝刊)。また、原発事故による影響に関して「放射性物質に起因する直接的な健康被害の例は確認されていないということだ」と記者団に強調した(東京新聞518日)。報道によれば、これらは、記者の「美味しんぼ」(雁屋哲作・花咲アキラ画)の原発事故による健康被害にかかる描写についての質問に応えてのコメントだったようである。

 常々思うのだが、いわゆる原発事故による放射性物質によって引き起こされる健康被害、農畜産物・水産物などについての「風評被害」っていったい何なのか。その被害の要因は、放出し続けている放射線、除去できない放射線物質、流出が続く汚染水のいずれもがコントロールされていないことにあるのではないか。昨年の9月、汚染水は完全にコントロールされていると国際社会に発信した以降も、報道されているだけでも汚染水事故は続出し、今日に至っている。* そのこと自体が県民や県民以外の人々を不安に陥れているという「風評」以前の無策を、漠たる「風評被害」を助長したという批判で、多様な意見や考え方の提示さえも抑え込もうとする今回の政府の対応は、看過できない。

*(参照当ブログ記事)「福島第一原発事故の汚染水問題から見えてくるもの」(2013年10月30日)

http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2013/10/post-9b65.html

 政府に不都合な真実を口にしたり、書いたりする人々を黙らせ、筆を折らせるのには、「風評」を使えばいい・・・、ということになった。言論や表現の自由の萎縮効果、抑止力を目論んだものだろう。

かつて「土方殺すにゃ刃物は要らぬ、雨の三日も降ればいい」といわれた。いや、非正規労働者が増大し続ける今日でも生きていることわざかも知れない。もはや「雨」も「特定秘密保護法」も要らない。政府は、自治体には予算をチラつかせ、首相は、ときどきマス・メディアの要人と会食し、財界は、広告費をチラつかせればよい。「園遊会」や「叙勲」「授賞」という手もあるではないか。

 

「歌人殺すにゃ刃物は要らぬ、・・・」この先は、歌人も心に手を当てて考えてほしい。

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2010年9月20日 (月)

ある講演会のあとで~雁屋哲氏にお会いして

思いがけない展開で、「美味しんぼ」の原作者雁屋哲氏と数人の会食の席に、私もご一緒できることなった。

918日、調布(市文化会館たづくり)での安川寿之輔氏「日韓併合と福沢諭吉~坂の上の雲は明るい明治か~」の講演会にオーストラリアから帰国後間もない雁屋氏が参加された。講演会後の会が企画され、お誘いを受けた。もとはといえば、「坂の上の雲」批判つながり、福沢諭吉批判つながりで、安川氏と雁屋氏が最近知り合い、中塚明氏・安川氏と共著を刊行したばかりの連れ合いがその会に誘われ、安川氏がマンガ『日本人と天皇』の著もある雁屋氏に拙著『短歌と天皇制』『現代短歌と天皇制』を紹介されて、私もお誘いを受けたという次第だった。

雁屋氏の本は、マンガ『日本人と天皇』(いそっぷ社 2001年、のち講談社α文庫)刊行後間もなく入手、読んでいたくらいだった。大学サッカー部を舞台に、スポーツやその周辺にただよう「天皇制」の残滓をひとりの部員が理解者と共に払しょく、改革してゆき、チームとしても強くなってゆくストーリだった。よく調べてあるマンガだな、と思い、参考文献の多さにも驚いたことを思い出す。それでもグルメマンガぐらいにしか考えていなかった「美味しんぼ」、断片的に雁屋氏のことについては読んだことはあっても、「美味しんぼ」までにはいたらなかった。

お誘いを受けてから、文庫の「美味しんぼ」、新刊の「美味しんぼ」を書店で探したりした。そして、ブログ「美味しんぼ日記」にもたどりつき、氏の関心の広さと探求の深さにあらためて驚いた。20数年前、「美味しんぼ」が爆発的人気を得た直後、お子さんの教育を考えてオーストラリアに移住したこと、以来、仕事はシドニーで、年に数か月、日本に帰国して取材や資料収集などの仕事をこなすという。

会食は原宿の「S」という和食のお店。雁屋氏、安川氏、関係の新聞社、雑誌社、出版社の方々と私たち二人。談論風発ながら、日本の近現代史とくに、当日の安川氏の講演のテーマだった福沢諭吉から始まり、日朝関係、教育、戦争責任、天皇制、メディアの役割などをめぐって、雁屋氏の基本的な姿勢を伺う展開になった。雁屋氏は理系の出身で、論理的、実証的であることを旨とし、曖昧な、感情的な対応には手きびしい。例えば、福沢諭吉信奉者や擁護論者には、福沢の著作をしっかり読んではいないことが多い、日本の、天皇の戦争責任を断ずるためには、日本の旧植民地での暴虐や政策の実態を知ること、日本の識者の変わり身の早いことなどを強調される。近く、福沢諭吉についても書く構想があるそうだ。

そうした議論の合間に、運ばれてくる料理、一品一品にいたるコメントや給仕の方・料理人の方との素材や産地、料理法までのやり取りが聞いてとれるのだった。私にとっては初めてで、格別美味しかったのが、すっぽんのスープ、猪肉の角煮、ぎんなんのてんぷらの小どんぶり、パッションフルーツのゼリーなどだった。。雁屋氏の「美味しんぼ」105冊目の新作は、食の安全をテーマに10月に発売される。次には国家的な公害、ダムについても執筆の由、その創作・研究意欲とに大いに刺激を受けた一夜であった。

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