NHKはオリンピック専門チャンネルか
雨来たる敗戦の日にして野に立てば五輪の金も国歌もいらず
この一首は、先月刊行の歌集『一樹の声』の2004年の章の拙作だ。
年表によれば、2004年のアテネオリンピックが8月13日から始まっている。その数日前、8月9日、長崎原爆の日に、関西電力美浜原発3号機の配水管の「蒸気漏れ」があって、作業員5名の死亡事故が報じられていた。冷却水が3分の1にまで下がり、一部の専門家は炉心溶融の危険性を指摘していたことを知った。点検・管理業務は、三菱重工と日本アームが実施していた。いまでこそ、その事故の重大性が私たちにも理解できるのだが、国民にはどう受け止められていたのだろう。私自身、死亡事故の記憶はよみがえるものの、詳細については思い出せない。忸怩たる思いがある。
1999年9月の東海村JOC 臨界事故は、杜撰な核燃料管理により2名死亡1名重傷(後、死亡)、667名の被爆者がいたことなど、正確なことは昨年の原発事故以後に知ったことだった。地理的に隣接県での事件だったので、当時、危機感はあったものの、核燃料加工施設JOCは、住友金属鉱山の子会社だったことなどもあらためて知ったというありさまである。
2004年オリンピックの年の前半、4月には、イラクで日本人3人が人質になった事件が起こり、5月には、北朝鮮から拉致家族5人が帰国している。
冒頭の一首は、アテネオリンピックで「湧き立つ」メディアや世の中への危機感を訴えたつもりだった。歌集への礼状で、この一首をあげてくださる方が多かったので、臆面もなく、掲げさせていただいた。
おかしくないか、オリンピック漬けの日本のメディア
7月29日のNHKテレビ「ニュース7」を見ようと思って、テレビをつけると、オリンピックの中継をやっていて、さっぱりニュースが始まらない。延々と柔道の中継が続く。7時15分ごろから、ふれあいセンターに電話を入れるが通じない。ようやく7時30分、画面はスタジオに切り替わり、ニュース仕様になったと思ったら、また、オリンピックのレポート、それが10分近く、いや8分ぐらいだったかもしれない、すぐに、また、柔道の中継に切り替わる。
おかしくない?あらためて新聞のテレビ番組欄を見ると、朝の7時からと午後4時30分からが大きなひと枠で、オリンピック種目が羅列されている。その間に、のど自慢、高校野球の地方決勝戦、連続ドラマなどは通常に戻るという編成だった。二つの大きなオリンピック枠の中に、ところどころ、「中断ニュース・天気予報」、「7:00ニュース」などと記されているが、少なくとも、この日の夜7時台には、オリンピック以外の報道は一切なかった。ふれあいセンターの電話は、何度かけても通じない。
午後8時からはウオーキングに出て、9時に戻っても総合テレビの画面はオリンピック。ふれあいセンターへの電話再開、通じない状況が10時過ぎまで続き、相変わらず「しばらくたってからおかけ直しください」のテープが流れるのみ。10時までの受付時間を延長したのか? 入浴後、テレビをつけてみると大河ドラマを放映中だった。
きょうの議事堂前の脱原発の抗議デモはどうなったのかなと思いつつ、いくつかの民放を見てみた。短いながら普通のニュース番組を見てほっとする。
(ちなみに、NHK総合テレビでは、 その夜9時41分から、「平清盛」が始まる10時03分まで、ふつうのニュース報道が挿入されたそうだ)
7月30日のふれあいセンターとのやり取り
翌朝いちばん、9時過ぎの電話は、数分で通じ、女性のオペレーターが出た。
質問:どうしてオリンピック一色の編成になるのか、報道番組、ふだんのニュース番組をこれほどまで軽視するのはどうしたわけか。
回答:四年に一度のオリンピックを、オリンピック放送を楽しみにしている視 聴者が多いからです。お客様のご意見は担当者に伝えます。
ここまでは定番のやり取りなのだが、さらに「視聴者の趣向の多い少ないだけによって、こうした編成にするのはおかしい。NHKは公共放送、受信料で成り立っている以上、日常的なニュース番組を確保した上で、オリンピックの特別番組なりを編成すれば足りるのではないか。とても少数とは思えないニュース番組視聴者、たとえ視聴率が低くても少数者のためにもニュース番組を排除するのはおかしい。こうした視聴者の意見は、何処に伝えられ、どう処理されるのか」と言えば男性の上司?に代わる。そこで上記オペレーターに述べた件を含めて以下の3点を要請した。
①オリンピック偏重の番組編成は異常で、日常的な番組編成の中で、オリンピックの特別番組やスポーツニュースの拡大版で十分ではないか。いま、この国が内外で重大な局面を迎えているなかで、山積みの報道すべきニュースが軽視、無視されるのは、視聴者として、受信料支払者としては、納得できない。オリンピック期間はまだ先がある。8月12日までなので、再考して欲しい。こうした編成を続けるということは、国民の生活に密接な国内外の重要案件がひしめいているこの時期に、政府与党・企業、官僚・メディアが一体となって、必要以上にオリンピックに国民の眼を惹きつけさせ、それら課題から国民の眼をそらさせようとする意図さえ感じさせるほどだ。
②上記のような意見が、今回複数、多数寄せられていると思うが、その実態と、その意見に、NHKとしてはどう対処したのか、しなかったのか。その理由を明確に、視聴者に分かるように伝えるべきだ。ネット上での「視聴者の声」の報告(週間、月間、年間)見ても、そのまとめ方では、杜撰で実態を反映していない。議事録を見ても、理事会・経営委員会でどのように報告・議論されたのかも不明である。
③ふれあいセンターの電話がいつもつながりにくい。とくに7月29日(日)の状況は異常で、視聴者窓口の体をなさない。(「平清盛」の放映時間が8:00時から10:00時に延期されたことへの問い合わせが多かったということだが) 電話回線を増やすなり、朝9時~夜10時までの受付時間を延ばすなりできないのか。 私は、かつてから折あるごとに事務連絡で済む内容の問い合わせと番組編成・内容にわたるものとは、仕分けすべきではないかと提案している。問い合わせは、回答内容が明確で短く、効率的な対応ができるはずだ。後者の意見や要望については数も少なく、別の電話番号にすればよい。待機する視聴者の身になって考えればすぐにも実行できることである。げんに受信料に関する問い合わせは、賢明にも?ふれあいセンターでは受付けず、別の窓口を開設しているではないか。ひとまずは視聴者側から選択、二次的にNHK側で仕分けることもあるかもしれない。
これらの質問や要請については、「担当者に伝えます」以上の回答はしない、一方通行の「ふれあい」センターなのだ。
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