2023年9月12日 (火)

図書館を支える人々~非正規と障がい害者の方々の待遇の実態(2)

2)障がい者の報酬はこんなことでよいのか

 国立国会図書館の資料のデジタル化は急速に進み、「図書館送信」と「個人送信」の範囲も拡大され、「個人送信」の場合は、自宅で、閲覧できるし、必要個所を印刷もできるようになった。その恩恵は計り知れない。

  国立国会図書館が進める蔵書のデジタル化に、障がい者の延べ約500人が本のスキャンやデータ入力などの作業をもって貢献しているという。図書館が自力でできる作業量でないことは理解できるし、しかも、その作業は決して単純ではなく、細かいノウハウも必要な作業だと思う。下記の毎日、日経の記事はともに、そうした作業に携わることが、障がい者の誇りとなり、やりがいにつながっている、という報道であった。

  ところが、共同配信の「時給222円を変えたい・・・」の記事を読んで愕然としたのである。障がい者雇用の実態がこれほどまでとは、知らなかったのである。近所で、障がい者のグループホームを運営している知人は、仕事探しの容易でないことを嘆いていた。商業施設でカートを集める仕事、近くのマンションの草刈りの仕事が見つかったの、と喜んでいたことがあった。また千葉市のハーモニプラザの売店では、作業所の人たちが作ったという紙すきの葉書や端切れで織り込んだコースターなどを買ったことがある。

 上述の222円というのは、作業所の全国平均の時給なのだが、国立国会図書館の上記デジタル化作業を請け負った日本財団が、全国8か所の作業所で実施し、月収がこれまでより3倍ほどの5万円にアップできたというのである。日本財団によれば、2022年度は、三億七千万円、約三万冊分を受注でき、これからも拡大の意向だという。

・「障害者、デジタル化一助に 根気必要な作業、黙々と 国立国会図書館」『毎日新聞』 (2022929日)https://mainichi.jp/articles/20220929/ddm/041/100/058000c

「「本を未来に」障害者誇り 国会図書館蔵書デジタル」『日本経済新聞』(2022103日)https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE260N90W2A920C2000000/

・(市川亨)「時給222円」を変えたい 障害者が国会図書館をデジタル化 品質に合格点「彼らの力なしでは成り立たない」『信濃毎日新聞』20221011日(共同配信)

・「障害者の実力」示す国会図書館のデジタル化作業(20221107日)日本財団ホームページhttps://blog.canpan.info/nfkouhou/archive/1431

・徳原直子「国立国会図書館のデジタルアーカイブ事業~資料デジタル化を中心に~」国立国会図書館 https://www.tamadepo.org/kouza/tokuhara20170203.pdf

  それにしても、月収5万円とは。何で、こんなにも安価な報酬なんだろう。何のための最低賃金制度なのか。調べてみると、最低賃金制度には、「減額の特例許可制度」というのがあって、最低賃金を一律で決めてしまうと、労働能力が著しく低い労働者の雇用機会が減ってしまうからという理由で、特例が設けられている。例えば、試用期間や職業訓練期間中の労働者と並んで「 精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者」との規定があって、障がい者雇用の場合は、これによって最低賃金制度から除外されてしまうのである。ずいぶんと雇用者にだけ都合の良い制度なのだろう。たとえ、特例を設けるにしても、「同一労働、同一賃金」の主旨を貫ける制度にしてほしい、思うのだった。

 ・「障害者雇用の賃金はなぜ安い? 最低賃金制度と減額特例」(2020年1月13日)『障がい者としごとマガジン』 https://shigoto4you.com/saitei-chingin/

 

 

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2023年7月28日 (金)

天皇はどこへ行く、なぜインドネシアだったのか

  4月以降、メディアにおける皇室情報氾濫の予兆を、以下の当ブログ記事はつぎのような書き出しで指摘していた。その皇室情報の実例を一覧にしていたが、6月中旬の天皇夫妻のインドネシア訪問を経て、さらに拍車をかけたようである。
「新年度4月以降、宮内庁に広報室が新設されたのと、Coronaが2類から5類に移行し、感染対策の緩和がなされたことが重なり、一気に皇室報道が目立ち始めた。」

宮内庁広報室全開?!天皇家、その笑顔の先は(2023年6月12日)
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2023/06/post-9183da.html

   印象だけに頼っていてはいけないので、数量的に示せないものかと、思案していた。最良の方法とは思えないが、いつもの悪いクセで、天皇記事大好きな?『朝日新聞』のデジタル配信記事とNHKの配信記事との統計を取ってみたところ、当初の予想とはかなり違っていた。その概略を、以下の表にまとめた。けっこう手間ヒマかかってしまったのだが、1・2の読み違いはご容赦ください。ここから見えてくるものは何か考えてみたい。

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  6月に、二つのメディアにおいて天皇家の記事が突出しているのは、6月中旬に天皇夫妻がインドネシアを訪問したからであり、天皇にとっては即位後初めての外国訪問であり、皇后にとって二人揃っての外国訪問は21年ぶりのであることが喧伝された。また5月に秋篠宮家の記事がやや多めなのは、秋篠宮夫妻が英国チャールズ国王の戴冠式に参列したためである。

 なぜ、インドネシアだったのか

 政府は、天皇夫妻のインドネシア訪問を6月中旬以降に予定していると、4月6日に発表していた。6月17日から23日までのインドネシア訪問が、正式に閣議決定されたのは6月9日であった。なぜ、インドネシアなのかは、日本との外交関係樹立65周年に当たり、ASEANN友好協力50周年に当たるからというものであった。「グローバルサウス」の主要国であるインドネシアとの関係強化、中国との関係での軍事的な連携などを強めたい政府の意図は明らかであろう。経済的にも、インドネシアには、日本からは多大の投資や技術援助がなされ、自動車や電気機器の市場であり、インドネシアからは、ゴム、液化ガス、パルプ、魚介などの天然資源を輸入している上、現地の安い労働力を利用する多数の日本の工場が進出している。我が家でもインドネシア産のエビが食卓にのぼるし、メイド・イン・インドネシアの下着なども見かける。セブンイレブンなどのコンビニ、吉野家や丸亀製麺などのレストランチェーンなどの進出も著しいという。

 そんな両国の関係を十分理解した上だと思うが、天皇は訪問前の記者会見で、室町時代にゾウがやってきたことや近くはニシキゴイの交配による交流についてはともかく、都市高速鉄道や排水事業、砂防事業などへの日本の技術援助や東日本大震災時のインドネシアからの支援などによる交流を強調していた(「戦後生まれの陛下 模索の旅」『朝日新聞』6月18日、「両陛下、あすインドネシアへ」『毎日新聞』6月16日)。

 しかし、私がもっとも関心を持ったのは、太平洋戦争下の1942年から、日本が占領していた時期、現地で強制動員された“労務者”や食料の強制供出などによる犠牲者とオランダ軍の捕虜4万人、オランダ系民間人9万人の強制収容による犠牲者たちに、天皇はどう向き合うかであった。太平洋戦争にかかわる歴史を記者から問われ、つぎのように答えている。
先の大戦では世界各国で多くの尊い命が失われ、多くの方々が苦しく悲しい思いをしたことを大変痛ましく思う。インドネシアとの関係でも難しい時期があった。過去の歴史に対する理解を深め、平和を愛する心を育んでいくことが大切ではないかと思う」

 「先の大戦では世界各国で多くの尊い命が失われ」と、問題を普遍化し、インドネシアとの関係では「難しい時期があった」とさらりとかわし、「痛ましく思う」「理解を深め」「平和を愛する心を育んで」・・・と、反省もなく「未来志向」へと“安全に”着地するのである。訪問先の日程を見ても、日本の占領下から脱し、再びオランダからの独立戦争による犠牲者たち、インドネシア人とともに闘った残留日本兵たちが埋葬されている「英雄墓地」には参拝するが、日本の占領下での犠牲者たちへの慰霊の言葉もなく、姿も見えない。ここには、日本政府の強い意図が感じられ、所詮、天皇は、時の政府の見えずらい籠の中の存在でしかないのではないか。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                      

上皇夫妻報道と佳子さん報道は何を意味するか

 私がこれらの作業する中で、つぎに着目したのは、上皇夫妻のメディアへの登場とその頻度であった。いまの憲法上、天皇に格別の権威があるとは認めがたいが、平成期の天皇の生前退位表明以降、退位後の旧天皇「上皇」と現天皇の二重権威への懸念が取りざたされた。それを払しょくするために、なるべくひそやかに暮らすかに思えたが、どうだろう。上記の表で、天皇・秋篠宮関連以外の皇族たちの報道の半分、朝日の18件中9件、NHKの12件中6件が、上皇夫妻の記事であった。その大半は、5月中旬の奈良・京都訪問の記事であった。7月24日から28日までの那須御用邸での静養報道に先だって、上皇夫妻は、「お忍び」で7月6日正田邸跡地の公園、19日には、東京都美術館のマチス展・東京都写真美術館の田沼武能作品展に出かけているのを、朝日は報じている。「お忍び」と言いながら。宮内庁と朝日の見識を疑ってしまう。主催者の美術館にしてみたら、これとない宣伝効果が期待されるに違いないが、利用されていて良いものか。また奈良・京都訪問も、いわば後期高齢者のセンチメンタル・ジャニーかもしれないが、出迎える側の警備や準備の負担を考えてしまう。「葵祭」の際は、街中にテントまでしつらえての見学であった。
 つぎに、全般的に、皇嗣秋篠宮関連報道に熱心なのがNHKだったと言える。次期天皇家を見据えてのことなのか、佳子さんの仕事ぶりをこまめに報じているのもNHKであった。若年層の視聴者を意識してのことなのか、とも思うが、皇室への関心がもはや薄れてしまっているなかで、どれほどの視聴効果があるのかは疑問である。

 週刊誌では、しばらく下火になったといえ、小室圭・眞子夫妻に関する記事は、いまだに続いている。ことしの3月、秋篠宮家は改修された住まいに移ったが、次女佳子さんが、仮住まいに住み続けているという別居問題がたびたび報じられ、宮内庁の対応の混乱も重なって、関連記事が増えた。朝日やNHKでも小さい記事となって報じられた。巨額を投じて改修した住まいに、自分の部屋がないから移る・移らない、工事費を節約したために生じた問題だとか、いまの若者たちの現実との乖離の大きさに気づかないのだろうか。
 なお、朝日新聞は、インドネシア訪問後の6月24日の社説で「天皇外国訪問 政府の姿勢が試される」が掲載され、「国益」を掲げて天皇や皇族を利用して疑念を持たれることのないようにという「警告」をするにとどめ、NHKは、この4か月間、社説とも言うべき「時論公論」や「視点論点」に、天皇に関する記事は見当たらなかった。

 憲法に定められた「国事行為」を超えて、「公務」をとめどなく拡大し、「私的」な活動も国費で賄われていることを知った国民は、やがて、天皇や皇室自体への疑問は増すばかりだろう。

「国民に寄り添う」の名のもとに、国民の暮らしに何ら寄与しない、いや、差別や分断の根源というべき天皇や皇室自体の存在は、今こそ問われなければならないと思う。

 なお、昨年の同じ時期、2022年4月~7月の朝日新聞の皇室情報も調べていたので参考までに。まだコロナが2類の時期であったため総数は少ない。秋篠宮家が多いのは、4月の「立皇嗣の礼」関連の記事が多かったためである。
 記事総数70+総合記事9,天皇家24件、秋篠宮家26件、他の皇族20件であった。

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2023年6月 4日 (日)

マイナンバーカードを持たない<わけ>~健康保険証とマイナカード一体化の虚実

 6月2日、マイナンバー法・関連法の改正案が成立した。カードの申請の任意性には変更はない。2016年に発足したマイナンバー法の趣旨は、マイナンバーを使用して、災害、社会保障、税における行政事務の効率化であった。しかし、情報漏えいやプライバシー侵害の怖れから、国民の不安を払しょくできない中、例えば、コロナ禍における給付金の遅延やトラブルにより利便性への疑問も高まった。マイナンバーカード申請の伸びは鈍く、進捗しなかった。

 そこで、マイナポイント制度、5千円、2万円というポイントで、「申請しなきゃ損!?」かのような新聞広告、テレビ、ネット上での広告をなりふり構わず展開していたのは、記憶に新しい。さらに、昨年からは、健康保険証としても利用できるようになったが、大病院はともかく、多くの医療機関やクリニックでの利用が増すにつれて、トラブルや不具合が続出している。その他の種々のトラブルは、人的ミスとあしらい、システム上のトラブルは、下請け会社に責任を転嫁している。

 しかも、デジタル庁、総務省、厚生労働省の大臣たちは、まるで他人事のように、他の省庁や下請けに、その責任を擦り付けているのが現状である。

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5月28日、日曜の朝の何の番組であったか。左から河野デジタル庁、加藤厚生労働省、松本総務省の担当大臣だが。

 そして、今回の法改正によって、2024年の秋をめどに、健康保険証とマイナンバ―カードの一体化を図るといい、いわば脅しにかかってきたのである。この改正法によれば、カードの利活用の拡大を促進するあまり、セキュリティの強化が追い付いていない。

 以上のように、マイナンバー制度の経緯を、なんど振り返ってみても、当ブログでも、その都度、制度自体への疑問を提示してきたが、その疑問は解けないままである。

 私は、マイナンバーカードを持たない生活を続けていきたいだけである。

 なお、朝日新聞の報道によれば、デジタル庁は、マイナンバー制度十年目にあたる2026年、あたらしいマイナンバーカードの導入を検討しているとのことである(2023年6月3日)。利活用の拡大、口座の紐づけ・・・。所得税と言わず、何億もの預貯金、資産、スイスの銀行?に口座を持つ富裕層の口座にこそ紐づけて、<富裕税>を新設、しっかりと税金を取り立てて欲しい。切なる願いである。与野党とも、なぜ、それを言い出さないのか。

 少子化対策の財源にしても、6月にも骨子が示されるはずが、年内と先送りされた。増税は封印しているので、歳出改革という名の社会保障費の見直し、介護保険対象の見直し、つなぎ? の国債発行ということになる。高齢者軽視、国の借金は増えるばかり、次世代へ負担が重くなるばかり。手当、手当と増やしてみても、若者たちの安定的な雇用に基づく所得が保障されない限り、安心して結婚し、子どもを持ちたいという気持ちにはならないのではないか。
 「こども未来戦略」?こども家庭庁の創設基本理念「こどもまんなか社会」?実質が伴わない限り、まるで、ことば遊びにも思えてくる。

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ヤマボウシとキンモクセイの間で、肩身の狭い思いをしているような夏椿、今年の最初の一輪。いつの間にか、たくさんツボミをつけていた。

 

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2023年4月16日 (日)

"軽老”の時代に生きる

 4月14日の朝日新聞を広げて、え?敬老の日?いや9月だったはず。最初に目に飛び込んだ全面広告が、「音で、認知症に挑め。」という、塩野義製薬と「ピクシーダストテクノロジーズ」とかいう会社とのコラボ広告らしいが、文面を読んでも認知症に音がどうかかわるのかわからなかった(5頁)。

 全面広告は、イエローハットのタイヤ、ホームミュージック全集、コンサート案内と続く。つぎに、現れたのが「デュオセーヌ」船橋高根台の所有権型シニア向け分譲マンション(20頁)、グラクソ・スミスクラインKKの「50歳以上の皆さん!」として帯状疱疹予防(22頁)、「80代でも「シャキッ」と歩けています」というサントリーロコモア(24頁)、「ラビドール御宿」介護付き有料老人ホーム(26頁)の全面広告だったのである。

 この日の朝日は36頁、そのうち全面広告に限っても8頁、その半分の4頁がシニア向けの広告だったといえる。新聞はもはやシニア世代が支えているのかもしれない。若者の新聞離れも著しく、スマホやテレビで用が足りてしまうのだろう。テレビをよく見るのは前世紀?生まれの者たちなのか。電車内で新聞を読んでいる人自体めったに見かけなくなった。全面広告以外でも、「薬に頼らず血圧を下げる」「健やかな暮らしに生薬の力」「朝までぽかぽか」「腎機能改善」などの文字が大きい。

 発行部数も激減、物価高騰の中、朝日は、来月から1カ月の購読料が4500円から4900円になる。値上げをするからには、広告収入もぜひ公開してほしいものである。* わが家も、かつて、日経や日本農業新聞、琉球新報などを購読している時期もあって、5~6紙が郵便受けにあふれんばかりの時代があった。いまは、4紙となり、3紙の夕刊をとめている。最近は、もう1紙減らそうかと話している。新聞販売店には申し訳ないが、引き落としではなく、集金をお願いし、家計費から支払い、金額を確認、意識するようにしている。

 上記のシニア向けの分譲マンションは、販売価格が2500~5000万、管理費だけでも4~6万、修繕積立金やその他もろもろ経費が上乗せされ、もちろん生活費は別となると、いったいどんなシニアが購入するのだろうかと思う。介護付き老人ホームの方は、入居金2590~5590万、管理費81400円、食費が65400円、光熱費、リネン代、おやつ代、介護にかかる消耗品・・・。いずれも、全面広告の割には極端に小さな文字でぎっしり書かれているのである。どちらの場合も、よほどの年金をもらっているか、貯えのある人たちにちがいない。夫婦二人で長生きしたら!?なおさらのことである。

 同じ日の新聞には、13日には「高齢者の医療保険料の負担増」にかかる健康保険法ほかの改正案が衆院を通過した、とのニュースがあった。これによれば、75歳以上の4割にあたる人が負担増になる。昨年の10月に続いての負担増である。さらに14日には、保険証を廃止してマイナンバーカードに一本化する法案改正が衆院本会議で審議に入った。同時に、マイナンバーカードの利用拡大、マイナンバーと預貯金口座の紐づけが盛り込まれるが、個人情報満載の一枚のカードを持ち歩くのは、高齢者にとってはかなりの負担とリスクがあるばかりでなく、現在でも、医療機関や高齢者施設の現場ではかなりの混乱を招いている。(「保険証廃止 根強い懸念」『朝日新聞』2023年4月14日)

 財源の確保がないまま、“異次元”の少子化対策といって、増税、国債、社会保険料からの捻出をもくろんでいる。得体のしれない”経済学者“成田某の発言ではないが、高齢者は、早く死ねと言わんばかりである。増税というならば、法人税増税、富裕税新設、所得税の累進性の徹底の実現と税金使い方―予算の見直し、防衛費の削減が先だろう。

  うやまってもらわなくてもいい、当たり前の暮らしができればいい。

*
《新聞社の経営関連調査》広告収入の構成比2割切る 総売上高は1兆6619億円(日本新聞協会)
https://www.pressnet.or.jp/news/headline/191126_13250.html

新聞社の総売上高の推移(日本新聞協会)
https://www.pressnet.or.jp/data/finance/finance01.php

新聞業界全体の総売り上げが2兆円を割ったのは2010年、販売収入が1兆円を割ったのが2017年、総売り上げの60%から徐々に減って2021年は56%になっている。広告収入が5000億を切ったのは2009年、20%を割ったのは2018年、2021年は18%であった。

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数日前に、ご近所の菜園をなさっている方からいただいた、たくさんの菜の花。おひたし、みそ汁の具、炒めもの・・・、何でも使える重宝な野菜。今晩は、てんぷらにしてみました。冷蔵庫の中で、花が咲かないように。

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2023年4月 7日 (金)

フランスでは、大規模な年金改革反対デモが続いている~日本人は勤勉なのか

 3月28日、フランスでは、年金改革反対の大規模な反対デモが繰り広げられた。日本での報道は、ネットや新聞で見る限り、かなり控えめ?であった。フランスでのデモは、今年の1月以来、年金の受給開始年齢を62歳から64歳に引き上げる法案をめぐっての10回目のデモだった。これまでの経過は、下記の当ブログでも触れている。11回目のデモも4月6日に予定されている。

どうする高齢者!立ち上がるのは誰か(2023年2月13日)
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2023/02/post-5d21d1.html

どうする高齢者!どうすればいいのか~ルーブルや大英博物館職員がストできるのは(2023年2月18日)
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2023/02/post-3ba626.html

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3月28日、年金制度改革への反対を唱えながらパリ市内をデモ行進する人たち。(『東京新聞』4月4日)。かつて、私の学生時代、両手を広げて手をつないだ、道路いっぱいのデモ行進を、フランスデモと呼んで、穏やかな抗議手法だったのだが。

 

 年金改革法案は、3月20日、僅差で、すでに成立しているのだが、3月23日の9回目のデモは、フランス内務省の発表でさえ、1月に始まって以来、過去最多となる109万人が参加し、3月28日の10回目の抗議運動にも93万人が参加したと報じている。(谷悠己「フランスで年金改革反対デモが激化 「62歳定年」を死守したい国民…実は欧州随一の高い生産性」『東京新聞』 2023年4月4日)法律が成立した後も、抗議運動の勢いが衰えないのが頼もしい。

 それでは、なぜ、多くの市民が、これほどまでに持続して、抗議を続けるのか。
 フランス在住のジャーナリスト安部雅延は、マクロン政権が安全保障や社会保障で緊急性、重大性が認められる場合、議会審議の投票を省略して法案を可決させられるとする、憲法49条3項を適用し、国会の審議がないまま、一方的に法案を可決成立させたことをまずあげる。二つ目の理由として、反対派を見下す態度を国のトップ、マクロンが取ったことが、国民の怒りに火をつけた、と分析する。さらに、年金改革案に反対を表明しながらも、デモには参加しない市民の声として、「16歳から働いている人や肉体的に重労働の人たちへの配慮が足らない」「いかにも超エリート家庭で育ち金融機関で高給を取っていたマクロン氏の庶民感覚のなさが露呈した」とも伝える。(「パリがゴミだらけ、仏年金改革「反対スト」深刻背景受給年齢の引き上げに怒りを爆発させる理由」東洋経済オンライン 2023年4月1日)

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AFPBB-newsより

 そういえば、もう四半世紀ほど前になるが、退職して通っていた大学の社会学のゼミで、ピエール・ブルデューの報告があったとき、「ハビトゥス」とか「ディスタンクシオン」とかの言葉が行き交っていた。人間は、気づかないうちに、生まれた時から、自らが属する社会的階層によって教養や学歴、社会的地位などが決定づけられるという理論がなぜもてはやされるのだろうと、戸惑っていたことを思い出す。いまの日本では「親ガチャ」なるイヤな言葉を聞くのだが。

 続くフランスのデモについて、日本では暴徒化する抗議デモと報じられることが多いが、先の安部雅延は、「デモ隊に紛れ込んで警官や憲兵隊に暴力を振るい、公道に面した店の商品の略奪やバス停の破壊行為を行う、通称<ブラックブロック>と呼ばれる暴力グループに警察は頭を悩ませている」という。(同上。 東洋経済オンライン 2023年4月1日)

 また、欧州連合(EU)の統計では年金受給はドイツやイタリアが67歳で始まる一方、フランスの62歳は最も低い。そのため年金財政は苦しく、2020年の支出は国内総生産(GDP)比15.9%と、加盟国で3番目に高い。その一方で、フランスの専門家は、「フランスの生産性は欧州随一だ」とし、週35時間の制約がある中で業務量は変わらないため、従業員が同じ時間内でこなすべき業務量は逆に増えた、という。(前掲『東京新聞』2023年4月4日)決して働きたがらないわけではないと。

 なお、マーサーの「グローバル年金指数ランキング」によると、「十分性」「持続性」「健全性」の三つの指標での評価で、フランスは43か国の中で22位、ちなみに日本は35位である。

マーサーの「グローバル年金指数ランキング」(2022年度)(2022年10月12日)
https://www.mercer.co.jp/newsroom/global-pension-index.html

 かなり劣悪な年金制度の日本では、65歳になっても、70歳になっても、働け、働け、と言わんばかりの風潮である。働かないにしても、年金や医療、介護の不安から、せめて健康寿命だけは延ばしたいと、高齢者は、歩け、歩けと街中を歩いている光景は見かけるが、年金制度の不安解消や改革に向けての抗議デモというのを、最近聞いたことがない。国家公務員に限っても、諸外国の近年のストライキの事例が、人事院の資料からも見て取れる。Img649
諸外国の国家公務員制度の概要(人事院)より。クリックして拡大してみてください。

  もう20年も前のことになるが、初めてのパリで、ロダン美術館の帰りだったか、官庁街を通り抜けたのが、午後4時半ごろだった。ちょうど退勤の人たちの群れに出会ったのである。誰もが、さまざまなファッショナブルな着こなしで、実にいきいきとした表情で家路へと急いでいるのが印象的であった。日本の官庁街ではあまり見かけない光景であった。

<参考資料>

主要各国の年金制度の概要<日本年金機構)
https://www.nenkin.go.jp/service/shaho-kyotei/kunibetsu/20131220-01.html

主要国の年金制度の国際比較
https://www.mhlw.go.jp/content/12500000/000941410.pdf

諸外国の国家公務員制度の概要(人事院)
https://www.jinji.go.jp/kokusai/syogaikoku202202.pdf

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2023年4月 5日 (水)

バングラデシュ、ダッカの衣料品市場で火災

 

 5日、数時間前の先ほどのNHK「キャッチ」で、2500軒の店が建て込むダッカ最大の衣料品市場で火災が発生したとのニュースが流れた。ダッカにはこうした衣料品市場と4500の衣料工場があるそうだ。これまでだったら、遠くの出来事として見過ごすところだったが、やっぱりと、こころ痛むニュースであった。まず、昨年、岩波ホールでの映画「メイド イン バングラデシュ」を想起した。劣悪な環境の縫製工場で働く女性たちが妨害を受けながら労働組合結成に至る内容だった。本ブログの下記記事を参照していただければ幸いである。

岩波ホール、さようなら~「メイド イン バングラデシュ」(2022年5月17日)
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2022/05/post-13a535.html

  きつい管理の下、一か月の給料はTシャツ3枚分の売り値にも満たない。不平を言えば即刻クビにもなる環境で、働く女性たちとその家族たちが丁寧に描かれていた。改善しようとしない経営者を行政は見て見ぬふりをする怠慢ばかりか、行政との癒着ぶりをも、告発していた。工場の火災での負傷にも保障はない・・・。そんな画面が浮かんでくる。

 今回の火災は、衣料品市場の火災であって、すべてを失った店主が、この先どうすればいいのかと嘆いていた。そして、さらに驚くのは、近年に限っても、ダッカでは、2019年2月に旧市街、3月に中心街の高層ビル、8月にスラム街での大規模な火災が発生、2022年6月にはコンテナ集積地での火災も発生していて、いずれも、密集した建築物、狭い道路のため、消火活動が思うようにできない状況で、多くの犠牲者を出していた。まさに人災でもあったのである。

 お気に入りのTシャツやパンツのタグをもう一度、確かめてみて欲しい。どこの国で、どんな工場で、どのような人たちが縫い上げたものなのか、を考えるチャンスとしたい。

<追記>2023年4月19日
今日の毎日新聞朝刊で、上記火災の詳報とこの10年の動向を追跡した現地からの報告記事があった。
「バングラ<縫製ビル>崩壊10年 安い労働力っ苦境の今も 先進国側の都合優先・・・」
記事によれば、低価格ブランドのGUやイタリアのベネトンなどの衣料品製造を請け負う現地の企業グループと日本の東レの子会社との共同ベンチャーが2015年に設立されたそうだ。「環境重視」への転換は、まだ模索中という。

以下で記事の半分ほど読むことが出来る。
https://mainichi.jp/articles/20230419/ddm/002/030/110000c

 

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2023年1月 6日 (金)

きのうから、旋回の自衛隊機、なぜ?!

 5日、10時すぎ、ベランダで洗濯ものを乾していると、数機の自衛隊機が旋回している。下総海上自衛隊基地の離着陸調整のため旋回しているのかな、と思ってしまった。訓練機は館山沖での訓練のための離着陸は、ほぼ定時であるのをかつて調べたことがあるのを思い出していた。

 ところが、きょう6日の午前中の航空機騒音はいつもと違う。窓を開けて見上げると、かなりの低空で機体を斜めにして東へと向かう。我が家の真上、ユーカリが丘方面へ、一機、二機と・・・。それが、何回も、何回もめぐってくるのである。下総基地の広報、かつて控えていた内線に電話して、いま飛んでいるのは、そちらの基地の飛行機か、いつもの飛行と違うがどういうわけか、いずれにしても、住宅地をあれほどの低空で飛ぶのは危険ではないかなど、問うのだが、「担当者がきょういないのでわからない」と、ぼそぼそと繰り返すばかり。佐倉の上空を飛んでいる航空機がそちらのものかどうかだけでもと尋ねれば、どんな機種か、どんな形かわからないかとの質問、軍事オタクならともかく、素人が見上げただけでわかるわけがないのに。とにかく今日の午前中の飛行についてわからないはずはないしょうから調べておいて欲しい、また電話すると切る。

 二時間ほどあとに、電話すると、今回はバカに明るい声で「あの自衛隊機は習志野空挺団の<コウカクンレンハジメ>の予行演習です」という。聞き直して「降下訓練始め」とわかる。

 さっそく、習志野空てい団の「地域振興課」に電話すると、1月8日が本番で、「<降下訓練始め>と言って、パラシュートで降下するのをみなさんに見ていただくんです」という。宣伝広報の訓練のために、住宅街をあんなに低空で長時間飛んでいいのですか、といえば「申し訳ありません、ご迷惑おかけします」の一点張り。イベントのためだけの不要な訓練はやめにしてほしい、見直してほしい旨、検討してください、と伝えておいたが、まだ、本番は1月8日、あしたも続くというわけだ。

 自衛隊にパフォー-マンスは不要である。オリンピックのときの飛行演技、航空祭や今回のようなイベント自体が不要ではないか。

 習志野空てい団のHPを開いてみると・・・。訓練日程表も出て来た。

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<1月8日付記>

以下のニュースによれば、3年ぶりの大規模なイベントで、多国籍軍による訓練が実施されています。恐ろしいことがすでに進んでいるようです。

陸自第1空挺団の年頭行事「降下訓練始め」日米英豪の4か国で実施

https://news.nifty.com/topics/traffic/230108621431/

 

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2023年1月 1日 (日)

忘れてはいけない、覚えているうちに(6)1953年という年ー70年前のお正月は

 そんなに大きくないボール箱を開けてみたら、なんと、日記と思しき手帳が30冊くらいびっしりと入っていた。忘れていたわけではないが、一番古いのが「昭和27年」、これは中学校受験と中学校入学までの4カ月間の記入しかない。しかし、ここで、私は一つのつらい体験をしている。ある私立女子大学の付属中学校を受験して不合格となった。それだけならあきらめがつくのだが、一緒に受けたクラスメートが合格した。不合格だったことを担任に報告しにいくと、なぜか「成績が悪かったわけではなかったんだよ」「だいじょうぶ、こんど、がんばればいい」と、職員室の先生たちから慰めたり、励ましてもらったりして、「成績では負けていないはずなのに」のくやしさもあって、思わず涙をこぼすといった体験をした。そして、後から受験した国立の付属中学校に、運よく合格したので、何とか気持ちがおさまった、という経緯があった。

 次の年、「昭和28年」は、それでも1月から9月まで続いている日記で、小さな横罫のノートにややなぐり書きにも近い勢いで書いている。今から70年前の1953年の正月には、いったい何があって、何を書いていたのだろう。

「初春のよろこび」
1月1日(木)晴、くもり、午後風:今年こそ、一年間、日記を書き続けるぞ、の覚悟と人には絶対見せないから、書きたいことを書く、とも記されている。
2日(金)晴、くもり:宿題の書初めは「初春のよろこび」で、池袋東口の西武デパートに書初めの紙を買いに行っている。商店街をやって来た出初式の人に、父が二百円あげたら「はしごの途中までいってちょっとさかさまになっておりてきた。ほんとに貧弱なもんだ。竹やさんや自転車やさんはさすがにすごかった」とご祝儀の差をまざまざと見せつけられたらしい。
3日(土)晴:「今日も朝湯にいった」と店の向かいの銭湯「平和湯」に出かけ、夜は、家族と「百人一首」、次兄と「はさみしょうぎ」で遊んでもらっている。

放送討論会と「ひめゆりの塔」
1月4日(日)晴:「昨日あたりからさわがれていた秩父宮がおなくなりになりました。秩父宮様は天皇下の一つちがいの弟です。なんとかむづかしい病名だが結局はじ病の結核だろうと思う」など、一応敬語が使われているが、「陛下」を「階下」と疑いもなく書いている。もっとも、語源からすると、「陛」も「階」も同じらしいが、戦前だったら不敬罪。なんと、同じ日に、豊島公会堂でのNHKの放送討論の中継放送を見に行っている。たぶん母と一緒ではなかったかと思う。議題は「各政党の情勢判断とその対策」で、講師は自由党総務星島二郎、改進党幹事長三木武夫、右派社会党書記長浅沼稲次郎、左派社会党書記長野溝勝、司会河西三省で、いずれも懐かしい名前である。日記のその先は少し長くなるが引用してみる。

 「討論会はなかなか大変なものでやじも多く、質問も多かった。星島二郎は自由党らしくすましていて何を言われてもへいちゃら。改進党の三木はちょっと小さい声を出して皆を引きつける。そしてあんまり人気もなく、質問も少ない。かえって司会者から「三木さんへの質問ある方」といった調子。稲次郎は、相変わらずのがさがさ声をだし、結局はみんなこの人の話に興味をもちひきつけられたよう。野溝書記長は、ちょっとおもしろい顔している。質問の答が一番多かった」 

  学校に提出する日記とはちがって、勝手なことを書いているが、この頃、政治への関心というより、政治家への関心があったのか、今から読むと笑えてしまう。

9日(金):映画「ひめゆりの塔」を次兄と見に行っている。入場料80円。この映画のロケが、母の実家のある、私たち家族の疎開先であった千葉県佐原附近でなされたと聞いていて、見たかった映画だったらしい。「映画はあんまりばくげきばかりやっておもしろくなかった。そして最後のところはいそいだせいか、まとまりがぜんぜんなかった」との感想も。 

皇族の葬儀は質素がいい
1月12日(月)小雨:この日は始業式だったのだが、学校帰りに、都電組の級友5人で、「秩父宮様の御そう儀のお見送りにでも」と護国寺下車。秩父宮妃、高松宮・同妃、三笠宮を目の当たりして、やや昂った様子だが、「花輪はスポーツ界が最も多かった。豊島岡墓地をで、また護国寺停車場の方に戻り、並んでくるのをまった。ほんとうに質素なもので護なんかずい分すくない。ということは世の中が進歩した。また前のようにならずにほしい。貞明こうごうより質素、この次は秩父宮様より質素となっているのだから、今さら前のようにやろうというのは一般がゆるさないだろう」と。添削したくなるような誤字や文章だが、皇族の葬儀の簡素化を期待していたなんて。ちなみに、貞明皇后の場合は、国費から2900万円準国葬、秩父宮の場合は宮廷費から700万円国の儀式として閣議決定されていた。

再軍備をめぐって、父と兄とが大激論
1月30日(土):この頃、大学生だった次兄と父親が何かにつけて口論になることが多かったようだ。この日は、再軍備論だった。次兄は「(日本は)武器を輸出したり、作りはじめている。輸出された武器は、朝鮮で人を殺したりしている・・・」と。父は「その武器を輸出しているから日本は成り立っている。人の国で人を殺したって、日本がもうかるならいい。そして日本は昔のように大帝国、五大国にならなくては・・・」と。「光子は、お父ちゃんの話を聞いて気持ちが悪くなった。日本の武器によって人間が死んでいる。その人たちは日本に住んでいないだけの事で、世界中の人間が死んではいけない。光子は半泣きで色々話した」と書いている。当時、私は、一人称を使うことができないで、家でも自分のことを「光子は」「光子が」と話したり書いたりしていた。いまの私には、晩年の父の老いのイメージが強く、こんなひどい、おそろしいことを主張していたとは、あらためて驚いている。父は、両親を早くに亡くし、その後、二十歳そこそこで、薬剤師になって朝鮮に渡り、兵役を済ませてから、シンガポールのゴム園で働き、大正末期に帰国、結婚している。日本の植民地での<いい思い出>ばかりがよぎっていたのだろうか。夏休みの8月4日にも、父と次兄は、この問題で口論になっている。父は相変わらず、愛国心と日の丸は大和民族の誇りみたいなことをいい、アメリカは教育に力を入れているところが優れている、だから、勉強が大事という結論?になったとある。次兄は、いまから思えば<アメリカの民主主義>に一種の憧憬を持っていて、父の反対を押し切って「英米文学科」を選んだのではなかったか。赤坂のアメリカ文化センターにもよく通っていたようだった。(続く)

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門柱の下に、近頃はやらない”根性”スミレ。

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2022年12月25日 (日)

2022年12月、怒りのの年末(3)有識者とはだれか、なぜ隠す

 毎日の新聞やテレビを見ていて、怒りのタネは尽きないのだが、ふだんから、どうして?と腑に落ちないことがある。政府の方針策定、閣議決定する前には、政府の諮問委員会、首相の私的諮問委員会、数々の審議会が長期的に設置されたり、臨時的に新設されたりする。

「GX実行会議」って
 近々では、12月22日「グリーントランスフォーメーション(GX)実行会議」での結論が政府の基本方針として決定した。7月に立ち上げられ、5回の会議で決まったと言い、そもそも、「GX」と略されているが、「X」というのはなに?
 「クロス」を意味し、ビジネス用語で使われているらしいが、そんな用語でけむに巻かないで、日本語で示せ、と言いたい。それはともかく、実行会議の結論は、福島第一原発事故以降、原発の新設・建て替えは想定しないとする政策を大きく転換する内容であった。その骨子は、①脱炭素推進のため再生可能エネルギーとともに原子力を最大限に利用する、②次世代型の革新的な原子炉の開発・建設を進める、③原発の運転期間を「原則40年、最長60年」という法律のもと、審査による停止期間を除外し、60年以上の運転を可能にする、④企業の脱炭素投資を推進するため、10年間20兆円規模の特別国債「GX経済移行債」を発行する、というものだった。
  2011年3月の原発事故の悲惨さと深刻さ、避難生活を余儀なくされている人たち、生業を失った人たちの切り捨て、避難解除になったからといって、暮らしができる環境にないのに戻れといった愚策が続く。再処理に回すはずの使用済み核燃料も各原発で貯まる一方だし、最終処分場選定もとん挫、後始末ができないまま、建て替え・新設を進めるというのは暴挙に他ならない。
  それもそのはず、「実行会議」のメンバーは、各界代表というつぎのようなメンバーであり、ほとんどが企業のトップであり、エネルギーや原発についての「有識者」ではない。環境問題にかかわっている竹内委員は東京電力出身だし、生協出身の河野委員、研究者と思われる伊藤委員・白石委員は、いずれも様々な政府審議会のメンバーとして重用されている、”安心・安全な“人たちなのであった。

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 政府の諮問機関は「有識者会議」と称され、有識者の代表が首相や担当大臣に重々しく、しかもにこやかに、報告書や答申案が手渡される光景はよく報じられる。審議会のの様子が頭出しで、メンバーの顔が映し出されるが、その名前が表示されることはない。政府は、まず、“有識者”たちの議論や結論を“十分踏まえる”形を整える。しかし、内実は、有識者を選ぶのは、政府なのだから、よほどの手違いがない限り、政府の意向に添った「結論」にいたる。というのも、提出資料も論点整理も結論も官僚が作成、有識者は、ベルトコンベアに載せられているようなものなのではないか。異論があるときは、「両論併記」に落着き、議会での審議はもはや形骸化し、与党多数で決まる。「議会民主主義」など、どこかにすっ飛んでしまっている。

安倍元首相国葬を「検証」したのはだれか
 また、同じ12月22日に、政府は、安倍元首相の国葬に関し、有識者への意見聴取に基づく検証結果を発表した。この検証は、岸田首相が安倍元首相の死亡から一週間足らずで国葬の開催を表明し、内閣府設置法の所管事項「国の儀式」をその根拠に内閣が開催の決定をなしうるとした。その手続きや規模、国費によるものとしたことから、世論が二分されたことを受けての検証であった。

 9月27日の国葬後、約50人の法律・政治・歴史の研究者や報道関係者に打診の上、応じた21人の意見聴取が10月から12月に実施された。「静謐な環境で進めたい」という政府の意向で、メンバーの事前発表はなされなかった。会議を開いて議論するつもりもなく、政府が
①法的根拠 ②実施の意義 ③国会との関係 ④国民の理解 ⑤対象者の選定 ⑥経費や規模、
にわたる論点整理をして、その賛否の両論併記したものだった。その21人を明確に報じるメディアは、少ない。『東京新聞』は豊田洋一論説主幹が聴取に応じていることもあって、各論点の賛否意見要旨を名入りで記事にし、彼の「国民の理解が十分に得られないようなことを閣議決定してよかったかという問題が残る」の意見を紹介している。以下は、毎日新聞紙上によるImg532_20221225185901

<参考>
東京新聞:「これが検証?政府が安倍氏国葬を巡る「論点整理」を公表 有識者の見解並べただけ 今後の対応は示さず」2022年12月22日 21時43分https://www.tokyo-np.co.jp/article/221568

東京新聞:こちら特報部「世論を分断した「国葬」 衆院報告書はわずか3ページ 検証結果を検証してみると…」2022年12月21日 06時00分https://www.tokyo-np.co.jp/article/221184

毎日新聞:「安倍氏国葬評価二分」「国葬の基準 遠い結論」【12月23日朝刊】

 なお、この意見聴取の報告に先だって、12月10日に、安倍元総理大臣の「国葬」について検証してきた衆議院議院運営委員会に設置された与野党の協議会は、結果として世論の分断を招いたと指摘したうえで、今後、国葬を実施する場合には国会が的確な行政監視を行う機会を確保することが望ましいなどとした報告書をまとめ、細田衆院議長に手渡している。
 山口俊一委員長(自民)のもと、丹羽秀樹(同)、吉川元(立憲民主)、中司宏(日本維新の会)、岡本三成(公明)、浅野哲(国民民主)、塩川鉄也(共産)の議運メンバー6会派の6人で「率直な意見が出しあえるように」と、非公開で行われた。会派の推薦で選ばれた有識者計6人麗沢大の川上和久教授(政治心理学)、東京工業大の西田亮介准教授(社会学)、中央大の宮間純一教授(日本近代史)、九州大の南野森教授(憲法)、早稲田大の長谷部恭男教授(同)、関西学院大大学院の井上武史教授(同)のヒアリングを実施した。その報告というのが、たった3頁の「概要報告」を全文掲載した下記の『東京新聞』の記事によれば、
国民の間で国葬の共通認識が醸成されておらず、結果的に世論の分断を招いた。
②国民、国会への説明では実施に至るまでのプロセス
③法的根拠・実施の
理由
④対象者のルール化
⑤国会の関与の在り方、
についての様々な意見を列記している内容で、誰の発言かも分からない。国費による実施については、いっさい記載がない。

 以上、議会での検証協議会、政府による意見聴取においても、結論を先送りのまま、丁寧な説明など在り様がない。両者に共通しているのは「国葬」自体の是非の論議に触れていないことである。ぐずぐずのまま、閣議決定の国葬を正当化する役割をはたしたのではないか。皇族であっても、政治家であっても、「国葬」なるものは、身分・評価以前に、もともと不要であると私は考えている。

<参考>
東京新聞:こちら特報部「世論を分断した「国葬」 衆院報告書はわずか3ページ 検証結果を検証してみると…」2022年12月21日 06時00分https://www.tokyo-np.co.jp/article/221184

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数日前に、短歌の友人から、作ってみましたと、可愛らしいリースをいただいた。

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2022年7月22日 (金)

『朝日新聞』川柳欄への批判は何を意味するのか

 わたしは、長年、短歌を詠み、かかわってきた者ながら、新聞歌壇にはいろいろ物申したいこともあり、この欄でもたびたび書いてきた。最近は、毎日新聞や朝日新聞の川柳欄をのぞくことの方が多くなった。

・疑惑あった人が国葬そんな国

・利用され迷惑してる「民主主義」

・死してなお税金使う野辺送り

 7月16日の「朝日川柳」は「国葬」特集なのかな、とも思われた。短歌やブログ記事ではなかなか言えなかったことが、短い中に、凝縮されていると思った。

 安倍元首相の銃撃事件について、「民主主義への挑戦」といった捉え方に違和感を持ち、さらに、全額国費負担で「国葬」を行うとの政府にも疑問をもっていたからでもある。こうした川柳をもって、安倍元首相や政府方針を「揶揄」したのはけしからん、ということであれば、安倍批判や政府批判を封じることに通じはしまいか。政府への「忖度」が、言論の自由を大きく後退させ、自粛への道をたどらせたことは、遠くに、近くに体験してきたことである。  

 大手新聞社やNHKは、たださえ、安倍元首相と旧統一教会との関係、政治家と統一教会との関係に、深く言及しないような報道内容が多い。もっぱら週刊誌やスポーツ紙が取材や調査にもとづく報道がなされるという展開になっている。テレビのワイド番組が、それを後追いするような形でもあることにいら立ちを覚える昨今である。

 朝日新聞社は19日、J-CASTニュースの取材に対し「掲載は選者の選句をふまえ、担当部署で最終的に判断しています」と経緯について説明。「朝日川柳につきましてのご指摘やご批判は重く、真摯に受け止めています」と述べ、「朝日新聞社はこれまでの紙面とデジタルの記事で、凶弾に倒れた安倍元首相の死を悼む気持ちをお伝えして参りました」とし、「様々な考え方や受け止めがあることを踏まえて、今後に生かしていきたいと考えています」と答えたという。どこか腰が引けたようなスタンスに思えた。さらに7月22日には、重大な訂正記事が載っていた。上記「利用され迷惑してる『民主主義』」の作者名が編集作業の過程で間違っていたというのである。なんとも「シマラナイ」話ではないか。

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二句目のの作者が、「群馬県 細堀勉」さんだったとの訂正記事があった(『朝日新聞』2022年7月22日)

 また、今回のNHKの報道姿勢について、当ブログでも若干触れたが、視聴者団体「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」は、7月19日、「犯罪捜査差の発表報道に偏せず、事件の社会的背景に迫る公正な調査報道を」とする要望書を提出した。番組のモニタリングから、容疑者の銃撃の動機についての解説や識者のコメント、安倍元首相の政治実績の情緒的な称揚、東日本大震災の復興政策、経済再生政策、安全保障政策において、事実と国民の意識とはいかに離反していたかの分析もない報道を指摘している。NHKはどう応えるのか。

 NHKには「政治マガジン」というサイトがある。事件後の関連記事には、安倍元首相と旧統一教会、政治家と旧統一教会の記事は一本も見当たらず、もっぱら警備体制、国葬に関する記事ばかりで、7月19日号の特集では「安倍晋三元首相銃撃事件<政治が貧困になる>」と題して、政治学者御厨貴へのインタビュー記事が掲載されている。「戦後日本が築き上げてきた民主主義が脅かされていると同時に、今後の政治全体の調和までもが失われる深刻な事態だと警鐘を鳴らした」という主旨で、今度の事件は「民主主義への挑戦」とのスタンスを展開している。NHKよ、どこへゆく。

 

 

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