2011年1月16日 (日)

クローズアップ現代「ウーマノミクスが日本を変える」(NHK総合1月11日)を見て~基本的になすべきことより「ことば」が先行する不安~

 「ウーマノミクス」とは、ウーマンとエコノミクスからなる造語らしい。いつもの倍以上の時間をかけた拡大版の番組(73分)を見終わって、そんな新語をことさら持ち出さなくとも、従来から主張されている女性の社会参加の必然性を十分語ることができるのに、と思ったのが正直な感想だ。1986年施行の男女雇用機会均等法は改正を重ねつつ、不備が指摘されるものの、せめてこの法律の実効性が高まれば、女性の職場環境は格段の進展が期待されるはずなのに、と思うからだ。「ウーマノミクス」などという「ことば」を持ち出す前に、「日本を変える」ことはできるはずではないか、と思ったのだ。

 番組冒頭では、企業の取締役の40%以上を女性が占めるようになったノルウェーの実態が紹介され、それに比べ日本では、課長級:4.6%、部長級:2.8%、役員級:1.2%という惨憺たる数値も提示された。

 ゲストは、2003年労働省官僚から転身した岩田喜美枝資生堂副社長、福祉が専門の宮本太郎北海道大学教授の二人であった。岩田氏は、労働省時代、男女雇用機会均等法の制定に貢献したというが、この法律制定の経過やその後の動向については、とくにコメントはなかった。また、資生堂でどういう取り組みをしたのかは番組では不明だったし、番組で彼女は、ぼそっとノルウェーのような「クオータ制には経済的合理性がない」と漏らしていたのが記憶に残った。資生堂での彼女の登用も、派手なCMが際立つ資生堂の広報戦略の延長線上にあるのではないかの思いがしないでもない。またノルウェーのクオータ制については本ブログでも若干触れたことがある。 

参照:http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2010/04/post-c1a4.html

NHKも番組の冒頭で、肯定的に紹介するからには、『ノルウェーを変えた髭のノラ~男女平等社会はこうしてできた』の著者でもある三井マリ子氏を迎えるなどして、クオータ制の意義をきちんと検証すべきではなかったのか。

参照:http://www009.upp.so-net.ne.jp/mariko-m/(三井マリ子の世界、112日の記事)

 また番組では、キリンでノンアルコールビール開発に貢献した女性社員、緩衝材プチプチの活用を広げた女性社員の実例もヒット商品開発の女性版“プロジェクトX”の様相だし、両氏はこれまでもメデイアへの露出度は高く、私みたいなものでも、どこかで見たような女性たちで、新鮮味に欠けたし、働く女性一般への普遍性がどれほどかも考えさせられた。むしろ、保育環境の充実や退職社員の再雇用、労働時間の短縮などをもっときめ細かく、多角的に紹介した方が経営者や使用者の意識改革に役立つのではないかと思った。

 さらに、一部の時間帯のコメンテイターとして参加した、女性企業家支援会社の女性社長、ライフ重視・ワーク重視のコースを社員のライフサイクルに合わせて選択できるシステムを採用する会社の紹介があったが、前者の起業者の将来性や後者の賃金体系など気になるところだったが、持続性はあるのだろうか、も不安材料の一つだった。

 なお、もう一人のゲストコメンテイター宮本氏の一番言いたいことはなんだったのか、やや不鮮明ながら、女性労働者の110万、130万の税制上の壁を払う税制改革、保育サービスの充実などをあげる一方、会社や家族の物語に終わらせてはならない、という趣旨のことを述べていた。保育サービスの重要なことはもちろんであるが、より具体的な提言はできなかったのだろうか。

 もっとも岩田、宮本の両氏はともに、内閣府「男女共同参画会議」のメンバーであり、宮本氏は「社会保障改革に関する有識者検討会」のメンバーでもある。一つの方向性を持った人選に偏りはなかったか。NHKにとっては、いわば“安心・安全な”コメンテイターであったのだろうが、論点は論点として示してほしかった。

 最後に、ノルウェーの紹介の中で、大学への進学は女性が上回り、授業料は無料なのだから、女性への投資を回収しないことには国家的な損失でもある、といった趣旨の解説がなされていたが、この「効率性」を突き詰めていくと、社会保障制度との整合性が危うくなるのではないか、の思いもよぎるのであった。

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