2023年9月21日 (木)

歌壇におけるパワハラ、セクハラ問題について、いま一度

 2019年末から翌年に下記の当ブログ記事において、短歌結社雑誌『未来』の選者の一人のパワハラ、セクハラ問題について触れていた。そんなこともあって、短歌史や資料の件で何かとご教示いただいている中西亮太さんとのご縁で、上記パワハラ、セクハラ問題ついて、当事者の加藤治郎氏とのツイートやnoteで追及されている中島裕介さんに中西さんと二人でお話を伺う機会があった。

・歌壇、この一年を振り返る季節(2)歌人によるパワハラ?セクハラ?~見え隠れする性差(2019年12月22日)
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2019/12/post-b5862e.html

・歌壇における女性歌人の過去と現在(2020年3月 3日)
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2020/03/post-d8f3d9.html

  インターネット上で、加藤・中島間のやり取りを見ていると、論理的な中島さんに感情的に答える場面も多いのだが、やはり、それだけでは、何が真実か、どの情報を信頼すべきか、正直、迷うこともあった。今回、私たち二人の疑問にもていねいに応える中島さんの話のなかで、わずかに伝えられた被害者の方々からの情報を間接的ながら知ることによっても、その全容が少し見えてきたように思う。

 『未来』のホームページによれば、2019年11月30日、理事会報告で 理事1人から提出されたハラスメントの事実確認をすることとハラスメントに関する委員会、相談会設置することなどを表明して以来、2020年1月19日に、ハラスメント相談窓口設置発表、2022年7月21日、「ハラスメント防止ガイドライン」「ハラスメント相談窓口フロー」を発表するにとどまり、表だった動きが見えない。『未来』の会員にも、公式には、これ以上の報告はないようである。『未来』会員の中島さんからに限らず、名指しされている選者の一人のセクハラ問題なのである。ハラスメント委員会はこれまでの間、どのような活動をしてきたのだろうか。理事(=選者)会には、女性も多いのに、何とか解決の糸口はなかったのだろうか。できれば表ざたになるようなことはしたくないという結社自体の保身、そして、理事たちの保身がこうした結果をもたらしているようにしか思えない。男女各1名のハラスメント相談窓口を開設以来、相談件数はゼロであったという、大辻隆弘理事長からの報告もある。結社内の人間が担当したのでは、非常にハードルが高く、機能は果たし得ないのではないか。

 また、短歌関係メディアは、「噂」としては知っていた、あるいは、少なくともネット上の情報で知り得ていた情報の真偽を確かめようとなかったのだろう。なぜ、そのまま放置して、当事者の起用を続けているのだろう。現に、起用を控えているメディアもあることは、誌面によりうかがい知ることもできる。決して、一結社の問題ではないはずである。

 ハラスメントを、セクハラを受けた側から考えれば、加害者の名前を見るのも、画像を見るのもいたたまれないのではないか、メディアはそうした想像力を働かせてほしい。ジャニーズ問題は、どんな組織にも起こり得た問題だったのである。

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2023年6月12日 (月)

宮内庁広報室全開?!天皇家、その笑顔の先は

 新年度4月以降、宮内庁に広報室が新設されたのと、Coronaが2類から5類に移行し、感染対策の緩和がなされたことが重なり、一気に皇室報道が目立ち始めた。

 5月以降、私自身が新聞・テレビで目についた報道から天皇・皇后はじめ皇族の動向を拾い上げただけでも、以下のようになった。天皇には、内閣の助言と承認を得て行う国事行為について、憲法第三・四条・七条に定められており、国事行為は限定的であり、皇室典範に定めのある儀式は、即位・大喪の礼のみである。たとえば、以下、この一カ月余りの活動は、そのほとんどが私的活動とみてよい。いわゆる「公的行為」について、法律上の基準はなく、平成期における天皇は皇后とともに、この「公的行為」を創出、拡大してきた経緯があり、定着したかのような様相を呈していたが、代替わりとCorona禍により、そうした行為、活動は、中止や縮小、オンラインなどで実施されることが多かった。が、どうだろう、天皇家、皇族の写真や動画が溢れだしたのである。

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 上記の表の備考に、純然たる私的行為と思われるものに「私」を記してみた。そうでないものについて、例えば、戴冠式参列(1953年、エリザベス女王戴冠式に皇太子参列)、園遊会主催(1953年~)、植樹祭参加(1950年~)などにしても、法的な根拠はなく、新憲法下の昭和期、平成期において、たんに「恒例」として実施されてきた行事に過ぎない。行事の筆頭に、第○回と付されているものは、その限りの沿革であることがわかるし、備考欄に、「○年~」と記したものもある。
 今回、突如、発表されたインドネシア訪問は、即位後初めての親善訪問とされ、皇后も同行することが注目されている。この国が選ばれたのは、現在、外交的にも経済的にも密接な関係を保ち、対日感情も東南アジアの中では良好とされているからであろう。

 しかし、アジア・太平洋戦争時1942年から、日本の軍政下にあった三年半の間、コメの強制供出や労務者の強制徴用、さらには、日本語、日の丸、君が代などを強要された世代は、もちろん、犠牲となった現地人の遺族たちの存在も忘れてはならないはずである。彼らには、いったいどのように対応するのか、関係省庁と調整中なのであろう。

 こうした親善の訪問と戦争犠牲者のいわゆる「慰霊の旅」は、平成期に増大した。昭和・平成期において、皇太子時代を含めて明仁天皇夫妻は沖縄へ11回も訪ねていることでも明らかであろう。それに加えて、被災地訪問も随時実施され、「公務など」と括られ、拡大されていった。
 このような「公的行為」には、必ず訪問先や移動時の警備体制や訪問先の受け入れ準備に多大の業務と費用が伴うはずである。「国民に寄り添」うことによって「慰撫され」「励まされ」る人々を生み出したかもしれないが、実質的な解決や成果につながることは、まずなかった。
 令和期の今に至って、こうした「公的行為」の環境が整ったことになるのか。

 また「私的行為」によって、三代にわたる「理想的な」家族像を発信できたとしても、それがいったい何の意味があるのだろう。
 若い人たちは、非正規という不安定な働き方を強いられ、結婚も出産もできない。大事に育てられるべき子どもたちは、家庭や学校で不安定な日々を送っている。社会保険料は値上げされ、高齢者の年金は抑えられ、老後生活への不安は尽きない。
 この現実と天皇家の風景との落差は、何なのか。すべての差別の根源ともいえる天皇制、この辺で、じっくり立ち止まって考えてみなければ。

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2023年4月 3日 (月)

宮内庁の「広報室」って、何を広めようとするのか

 4月1日に、宮内庁総務課に「広報室」が新設され、その室長が決まったという。報道によれば、職員は、従来の記者クラブ対応の総務課報道室(15人)からの5人と兼務職員、増員3人と併せて9人、増員のうち1名は民間出身でのスタートで、室長が、警察官僚から起用された女性であった。茨城県警捜査二課、警視庁組織犯罪対策総務課長を経て、警察庁外事課経済安全保障室長からの転任である。暴力団、外国人犯罪対策、国際的な経済犯罪対策にかかわってきた経歴の持ち主が宮内庁へというのだから、ただならぬ人事といった印象であった。

 そもそも、広報室新設の背景には、秋篠宮家長女の結婚や長男をめぐっての情報が報道やネット上に氾濫したことや秋篠宮が記者会見で、事実と異なる場合に反論するための「基準作り」に言及したことなどがあげられる。

 現に、広報室は、皇室への名誉を損なう出版物に対応する専門官、あたらしい広報手法を検討する専門官も置き、SNSを含めた情報発信の強化を目指し、さらに1人、民間からの起用を予定しているという。

 ということは、裏返せば、皇室報道の規制強化、広報宣伝による情報操作をも意味するのではないか。

 象徴天皇制下にあっても、深沢七郎「風流夢譚」事件(1960年)、嶋中事件(1961年)、天皇制特集の『思想の科学』廃棄事件(1961年)、小山いと子「美智子さま」連載中止、(1963年)、富山県立美術館カタログ販売禁止(1987年)・・・にみるような皇室情報のメディア規制が幾度となく繰り返されてきた。その結果として、現在にあっても、メディアの自主規制、タブー化のさなかにあるともいえる。逆に、新聞やテレビが昭和天皇の在位〇年祝賀、昭和天皇重病・死去、平成期における天皇の在位〇年祝賀、生前退位表明・改元の前後の関係報道の氾濫状況を目の当たりにした。

 メディアの自主規制が日常化する中で、広報室長は、記者会見で「天皇陛下や皇族方のお姿やご活動について皆様の理解が深まるよう、志を持って取り組んでいきたい」と述べたそうだ。

 <マイナンバーカード普及宣伝>を民間の広告代理店にまかせたように、宮内庁も<電通>?人材を入れたりして、大々的にというより、格調高く、丁寧な?広報を始めるのだろうか。

 現在の天皇・皇后、皇族たちへの関心が薄弱になってきている現状では、情報が発信されれば、されるほど、「なぜ?」「なんなの?」という存在自体を考えるチャンスになること、メディアが確固たる自律性を取り戻すことを期待したい。

 

わが家の狭庭には桜はないけれど、春は一気にやって来た。 

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3月29日、黄スイセンは、かなり長いあいだ咲いていた。

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3月31日、レッドロビンを越え、モクレンは2階に届くほど。

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4月4日、奥のツバキは、ほぼ散ってしまったが

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2023年1月17日 (火)

天皇家の「令和流」って? 宮内庁に広報室新設

 元旦の新聞に、天皇・皇后の短歌が載らなくなって、私は、正直言ってほっとしている。平成期の天皇・皇后は、必ず、天皇五首、皇后三首の短歌が掲載されていたのである。

平成の天皇・皇后 元旦発表短歌平成2~30年
https://www.kunaicho.go.jp/joko/outa.html

 代が替わり、コロナ禍と重なったこともあって、元旦の天皇家の集合写真は、家族ごとの写真となり、宮内庁のホームぺージでは、何葉もの写真が掲載されるようになった。さらに、平成期と令和期の違いとして、少しく話題になったのは、二〇二一年と二〇二二年には「新年ビデオメッセージ」として、天皇は皇后と並び、「おことば」を述べたことだった。皇后もひと言ふた言の挨拶をした後、隣で、にこやかにうなづいたりするビデオが流されたのである。夫妻ともどもビデオに収まるのが<令和流>と、一部で、もてはやされもしたが、今年は、どうしたことか、文字だけの「天皇陛下のご感想(新年に当たり)」と元に戻った形である。

 そして、その二〇二三年のメッセージ冒頭に「昨年も、地震や台風、大雪などの自然災害が各地で発生したほか、新型コロナウイルス感染症が引き続き社会に大きな影響を与えた年になりました。また、物価の高騰なども加わり、皆さんには、御苦労も多かったことと思います。」のくだりを受けて、「令和の徳仁天皇は『家庭天皇』 専門家たちを驚かせた天皇の“お言葉”」という記事が現れたのである。その冒頭は、「驚いたのは、『物価の高騰』という言葉が、入っていた点でした。まさに『家庭天皇』です」という、象徴天皇制の研究者、名古屋大学の河西準教授の発言だった(AERAdot 2023年1月14日)。「家庭天皇」?驚いた「専門家」! 驚いたのは私の方だった。

 これまでも、天皇家では衣裳やティアラを使いまわしをしているとか、皇族の「お出まし」の折のティアラはつけないことにしたとか、その<倹約ぶり>が喧伝されたことはあったが、「おことば」が「物価高騰」に触れたからと言って、何が変わるというのか、私には理解できないでいる。8月15日の戦没者追悼の「おことば」に「反省」が盛り込まれたかを云々するむなしさに共通するのではないか。

 宮内庁は、新年度予算に向けて、かねてから検討していたようだが、昨年12月23日、SNSの発信などによる情報発信を強化するため、今年四月から広報室を新設すると発表した。 たしかに、平成期と比べて、皇室のメデイアへの登場、露出度は低くなり、コロナ禍により、皇族の活動も激減した。宮内庁は、一部メディアのゴシップや中傷に悩まされた上、国民の皇室自体への関心が薄れてゆくことに危機を感じているのも確かであろう。しかし、私の知る限り、天皇は、時の政治権力と利用・利用される関係の存在でしかないのではないか。現憲法下という制約の中で、天皇や皇室の在り方を考えるとき、私は、なるべく、ひそやかに、つつましく、暮らしてもらうしかないと思っている。跡継ぎがいなければいないでよいではないか。

 新設の広報室には、せめて、”電通“が入ったりしなければいいがと願う。

 

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2022年12月18日 (日)

怒りの年末、次からつぎへと(2)国民に執拗に迫るマイナカード

 マイナンバーカードについては当ブログでも何度も書いてきた。政府がこれほどまでに執拗に、マイナンバーカードで迫ってくるのはなぜなのか。“丁寧に”説明すればするほど、政府への不信は募るばかりである。

 10月13日、河野太郎デジタル大臣が、健康保険証を2024年秋に廃止し、マイナンバーカードへ一体化した形に切り替えると表明したのを受けて、NHKは直ちに、その日の夜のニュースでつぎのように報道している。登場した、関係閣僚や官房長官の発言は、日頃の言動から直ちに信じられない思いで見ていた。

「政府 再来年秋 健康保険証を廃止 マイナカード一体化発表」(2022年10月13日 18時56分) 
岸田総理大臣は13日、河野デジタル大臣や加藤厚生労働大臣、寺田総務大臣と、マイナンバーカードについて協議しました。

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この人、コロナワクチン担当時は、「来週にもお示しします」を連発、デジタル化すればすべてが解決するような発言を覚えてますよ。

河野デジタル大臣が記者会見を開き「デジタル社会を新しく作っていくための、マイナンバーカードはいわばパスポートのような役割を果たすことになる」と述べ、2024年の秋に現在使われている健康保険証を廃止し、マイナンバーカードへ一体化した形に切り替えると発表しました。

松野官房長官「よりよい医療 受けてもらうこと 可能に」

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この人、記者会見では、めったに顔をあげず、ひたすら朗読が続く。メディアは、記者との質疑を決して伝えないのはどうしたわけか。

 松野官房長官は、午後の記者会見で「マイナンバーカード1枚で医療機関を受診してもらうことで、健康・医療に関する多くのデータに基づいた、よりよい医療を受けてもらうことが可能となる。こうしたことから、マイナンバーカードと健康保険証の一体化を進めるため、再来年秋に保険証の廃止を目指すことにした」と述べました。

加藤厚生労働相「理解得られるよう丁寧に取り組んでいく」

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この人、安倍政権時代の厚労大臣のとき、「働き方改革法案」の基礎データのデタラメを追及されていましたね。

加藤厚生労働大臣は、記者会見で「システム改修などの対応に必要な予算は経済対策に盛り込んでいく。岸田総理大臣からは国民や医療関係者から理解が得られるよう丁寧に取り組んでいく必要があると指示があった。医療関係者や関係省庁などと連携して取り組みを進めていきたい」と述べました。

寺田総務相「保険証と一体化 格段に普及が進む」

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この人、何で総務大臣を辞めさせられたのでしたっけ。

寺田総務大臣は、記者団に対し「日本は国民皆保険制度であり、保険証と一体化するということは、ほぼすべての国民にマイナンバーカードが行き渡るということで、格段に普及が進む。ただ、生まれてすぐの0歳児にどうやってカードを取得してもらうかや認知症の方への対応など、いろいろクリアすべき点がある。(中略)マイナンバーカードは非常に安全なものだ。ナンバーが仮に他人に知られたとしても個人情報が流出することは一切ない。」と述べました。

 さらに新聞各社は、つぎのような社説を掲載している。その主張は、見出しを見ても分かるように、毎日・朝日・東京の三紙と日経・読売ときれいに分かれた。

毎日「マイナ保険証に一本化 国民不在の強引な普及策」【10月14日】
朝日「マイナ保険証 あまりに拙速、乱暴だ 」【10月15日】
東京「マイナ保険証 強引な義務化許されぬ」【10月15日】
日経「もっと使えるマイナンバーカードに」【10月15日】
読売「マイナ保険証 丁寧な説明で普及を図りたい」【10月20日】

 三紙は、政府の強引な手法に疑問を呈してはいるものの、結論的には、「利用者の理解と納得があっての話である」(朝日)、「導入を急がず、制度への不信感と誠実に向き合うことが先決」(東京)、「国民に対し丁寧に説明し、理解を得る手続きを怠ってはならない」(毎日)と、要するに「丁寧な説明」と「国民の理解」を求めるにとどまり、マイナンバー制度そのものには、決して切り込まない。それはそうでしょう、マイナポイントの全面広告をあれだけ掲載しているのだから。NHKは、各党の反応、専門家・街の声・現場の声を取材するものの、メインのニュース番組では、中立・公正どころか、編集次第、「残る課題」「動向を注視」の指摘で終わる<政府広報>となるのが現状なのだ。

【こちらで詳しく】健康保険証がなくなる… “マイナ保険証”導入の現場では

 の後、従来から指摘されてきたさまざまな問題点や新しいトラブルが浮上してきた。私のような一般市民の素朴な疑問が投書欄に見かけない日がないくらい寄せられている。

情報管理への不安
 一つは、マイナンバー制度そのもの、情報一元管理への不安である。政府は、カード自体に情報が蓄積されているわけではない上に、暗証番号が必要だし、情報は国や自治体が分散管理しているから、芋づる式に情報い洩れが生じない、としている。すでに社会保障・税番号として機能しているわけだが、自治体の事務上の作業は、2021年度の個人情報保護委員会の報告によると、45%以上が外部の業者に委託し、再委託もあることが分かっている。この個人情報の拡散は、さまざまな重大な漏えい―データの誤送付、不正アクセス、職員による違法収集・・・も報告されている(朝日新聞22年10月30日)。さらに、民間での利用拡大の方針をすでに打ち出しているのである。

交付、普及を急ぐ拙速
 カードの交付は2016年から始まっているが、2017年3月には8.4%であって、20年9月から21年12月にわたって、カード申請すれば特定のキャッシュレス決済に限って2万円に5000円のポイントが付くというキャンペーンを実施した。第2弾として、22年1~12月までは、公金受取口座に紐づけなど含め、2万円のポイントを付けるというキャンペーンを実施の末、22年11月現在53.9%にたどり着いたようだ。この間のすさまじいほどのネットやテレビでのCM、度重なる新聞の全面広告は記憶に新しい。なぜここまで、政府は躍起になるのか、逆に不信を招いたのではないか。
 しかも、このマイナポイント事業には、第1弾に2979億円、第2弾に1兆8134億円を計上していることが、12月1日の参院予算委員会の質疑で判明した。いわゆる宣伝費はここに含まれていたわけである。さらに、カード交付の申請サポートを民間施設に委託拡大、その費用を加えると今年度だけで2兆円を超える。

医療現場の混乱、利用者の不安
 2021年11月からマイナ保険証の運用ははじまっているが、2022年11月現在、システム導入の医療機関・薬局は35.7%である。顔認証のカードリーダーの不具合、トラブルが続出して、その原因も未解明なのが現状であり、全国の開業医約11万人が加盟する全国保険医団体連合会の調査によれば、保険証廃止に反対が65%、システムを導入しない・できないと回答した1279件の内、その理由のトップはセキュリティ対策の不安で、多額の費用の発生、オンライン請求をしていないが続く。スタッフが少ない・いない、高齢で数年後に閉院予定などという切実な理由も挙げられている。詳しくは以下の記事をご覧ください。

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『全国保険医新聞』2917号(2022年12月15日)、調査は10月14日から11月20日、回答数は8707件(医科診療所5186、歯科診療所2668、病院449、無回答ほか)

 マイナンバーカードやマイナ保険証について、国民の受け止めについてのある調査によれば、「健康保険証の廃止」について、全体では概ね、約25%が肯定的、約45%が否定的、約30%が「わからない・どちらともいえない」であった。以下のようにまとめている。
「現段階では反対の割合が高いと言えよう。ここでも、マイナンバーカードの取得有無によって、考えが異なる。既にマイナンバーカードを取得している層は、約30%が肯定的、約40%が否定的となるが、マイナンバーカードを取得するつもりがない層は、約7%が肯定的、約67%が否定的と、強い抵抗感が窺える」。SMPOインスティチュート・プラスhttps://www.sompo-ri.co.jp/2022/11/15/6126/

 かつて私は、自治体に、マイナンバーの付与を拒否する要望書を出したことがあるが、自治体判断のマターではないとの回答を得ている。残念ながら、番号は付与されている。そもそも、マイナンバーカードの交付は法律上任意のはず、強制、義務化されるいわれはない。利用者としての私は、マイナ保険証を登録しない最大の理由は、やはり、セキュリティへの不安である。現に、カードを持つことの必要性もメリットも感じない。身分証明は、保険証やパスポートで用が足りるし、薬情報はくすり手帳で用が足りている。公金の入金口座は登録している。現在、保険証の確認は月一であるが、マイナ保険証は毎回提示しなければならない。乳幼児や未成年のカードの交付、カードの保管、利用のこと、紛失や災害時、停電のことなど想定するとリスクは際限がない。

 私は、マイナンバーカードの交付も申請しないし、当然、マイナ保険証の登録も出来ない、しないことになる。

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2022年11月30日 (水)

二冊の遺稿集に接して(2)長沼節夫著『ジャーナリストを生きる 伊那谷から韓国・中国そして世界へ』

 長沼節夫(1942-2019)さんの名前を知ったのはいつのことだったのだろう。何がきっかけだったのかが思い出せないでいる。ともかく、今回、遺稿集が出されたと聞いて、求めたのが457頁に及ぶ大冊であった。飯田高校同窓生、京大吉田寮生、ジャーナリストの方々による渾身の遺稿集である。

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長沼節夫著作集編纂委員会編 南信州新聞社 2022年7月

 長沼さんは、京都大学在学中の「京都大学新聞」の記者時代から、いわばジャーナリストであり、アメリカ留学を経て、ヨーロッパ・中東・アジアなどを歴訪、大学新聞に寄稿を続け、院生時代には京都ベ平連での活動、韓国大統領選取材に始まる金大中との交流、「天皇の軍隊」の執筆などの傍らフリーの記者や予備校講師をしていたが、1972年時事通信社に入社している。経済部、社会部配属の記者として、時にはプライベートの取材を重ね、ポーランドの「連帯」取材、日本の原発取材、「第3回天皇マッカーサー会見録」の発掘などについて執筆、2002年60歳で時事通信社を退社している。在職中には、組合運動を理由に記者職をはずされたため不当配転無効確認訴訟を起こし、賃金差別の東京都労働委員会への救済申し立てなどの活動を続けた。退職後も、「生涯ジャーナリスト」を貫いた。

 その長沼さんが、短歌を詠み始めたのである。私の属するポトナム短歌会に入会されたのが、今回の遺稿集の年譜では、2001年、小学校の恩師代田猛男さんの勧めすすめとあった。今年の4月、創刊100周年記念の『ポトナム』の年表によれば、長沼さんは、すでに2000年8月には「五七五七七のミッシング・リンク」を寄稿している。2011年退会するまでに、つぎのようなエッセーを寄せていた。

五七五七七のミッシング・リンク     2000年8月
「大事件」と短歌「9・11テロ」を巡って 2002年4月
漢字短歌の面白さ            2004年8月
イラク派兵と「サマワ詠」        2005年2月
諏訪・岡谷の空気を深呼吸…忘年歌会に参加して
                    2007年2月*
私の歌枕 日比谷公園          2009年7月*
白秋のパレット             2010年6月*
国際ペンのシンポ「短歌とTANKA」傍聴記 2010年12月*
*は遺稿集にも収録されている

 何しろこのあたりの『ポトナム』を最近、近代文学館に寄贈してしまったもので、確かめられない。短歌も同様で、いつから発表して始めたのかも、定かではないが、ブログ「チョーさん通信」では、2006年から2010年まで、「ポトナム詠草」として残されている。遺稿集にも厳選された68首が「源流」と題されて収録されている。

 いま手元にある、長沼さんからのはじめての手紙(2001年2月27日)によれば、やはり入会は、2000年小学校時代の恩師代田猛男・直美夫妻の勧めに拠ったとの記載があった。猛男さんは2004年に、直美さんは2022年1月94歳で亡くなられた。若い時、『ポトナム』の全国大会などで代田夫妻にはお目にかかってはいるのだが、晩年は、作品を読むにとどまってしまった。いまから思えば長沼さんの話も伺っておきたかったなどと思う。その長沼さんの手紙には、私が出版したばかりの『現代短歌と天皇制』(風媒社 2001年)をお送りした折のお礼と感想が書かれていた。簡易封筒いっぱいの文字、身に余る励ましの言葉が綴られていたので、私も大事にしていたのである。さらに、翌日日付のはがきの追伸もあり、これも裏表に綴られている。和歌の時代からの天皇制の呪縛、歌壇の一笑に付すべき文章などに触れていた。またもう一通は、私の第二歌集『野の記憶』(ながらみ書房 2004年)への礼状であった。この頃、『ジャーナリスト同盟報』をお送りいただいており、手紙と一緒にファイルに収めてあった。さらにメールでは、「メディアウオッチ100」も何度かお送りいただいたことなどを思い出す。
 それにしても、お会いしたことはただの一度、2004年以降だと思うが、議員会館での集会で、初対面の挨拶だけをした記憶がある。たぶん、連れ合いが集会の主催者側で、私もあたふたとしていて、ゆっくりお話しすることができなかったのではないか。また別の集会でも、参加者としてお名前がありながら、お目にかかれなかったこともあった。
 あらためて、ご冥福をいのるとともに、残された短歌の一部を紹介したい。ブログの短歌詠草300首近い中から、私の気になった、そして共感する短歌は多すぎるのだが・・・その思いに重ねて。とくに注記がない作品は、『ポトナム』詠草である。

ああ短歌なぜ「みそひと」だけなのか思い余りて行をこぼれる【2006年4月】

2005
・白日にさらせ特高の拷問を「横浜事件」の再審裁判 

・ブラジルに明日発つ午後の紀伊国屋で南の空の星座表探す

・提灯屋も下駄屋も炭屋も綿打ち屋も 町内会は屋号で呼び合う

・市長より「ふるさと大使」の委嘱受く我がふるさとは万緑の中

・地下鉄にイスラムの民乗り来れば不安よぎれりその我れを叱る

・自裁せし我が先達の死に顔の凛たるを見て襟を正せり

・取り入れを目前逝きし人の米四十九日の土産に賜ぶる

2006
・年明けて初出勤に急ぐ道心持ち胸を反らせて行かん

・残生もかくあれかしとこころもち胸張りて行く仕事場への道 

・我ら記者に定年などなし「生涯一記者」を自負する我ぞ

・木曽谷に隠れキリシタンの歴史あり首毀たれしマリア地蔵よ

・踏み場全くなきにはあらねども所狭(せ)き家いざ片付けん

2007
・残留孤児の老人たちにねぎらいの一語だに無き棄却判決

・まやかしの予測はあれど「もしかして」と沖縄密約裁判に並ぶ

・真実に目つぶる判決相次ぎて国の僕(しもべ)か司法危うし

・若者が死ぬるや哀れまして今みずから逝くはなお哀れ

2009
・記者皆が批判精神失せしより記者会見は空しくも過ぐ

・ごみでしょういや資料だと争いつつ我が家を埋める「切り抜き」の山

・大路往く金大中氏の国葬の列に手を振りて別れを告げる

・投獄や死刑判決拉致監禁乗り越えし人いま身罷りぬ

・去年まで気付かざりしに曼珠沙華窓の向かいの小暗き土手に

2010
・ああミレナあなたは真夏のダリアです、どこを切っても水のしたたる
(カフカの恋人)
・エッセーもルポもあなたの文章はそのまま短歌になりそうだね、ミレナ

・大丈夫これで治すと励ませる丸山ワクチンに夢をあがなう

・お互いに「否!」とう言葉を戒めるわれらの中の安保体制

・伊那路なる飯田市歴史研究所その静けさに風そっと行く

・化粧箱に入れ仕舞いたる母の骨時々振りて母を思えり

歌集『伊那』2015年版
・ 今日もまた国会前を埋め尽くす人らに交じりて抗議叫びぬ 

・ 朝礼のたびに倒れし傍にいて支えてくれし恩師を見送る
04年代田孟男氏死去)

・ 鶴見さんと「六・一五」に国会で花捧げしは十年前か
(05年7月鶴見俊輔氏 死去)

・ 鶴見さんに仕事課された幸せをかみしめており訃報聞きつつ

・「この夏を忘れないように」と呼びかける女子学生に未来の光

歌集『伊那』2019年版
・治りません。付き合うのですときっぱりと若き医師から励まされいる

・うず高き資料の山が部屋を埋め我が「平成」は未整理に逝く

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2022年10月19日 (水)

「マイナ保険証」義務化?ここまでやるの、バカにしないでョ!

 10月13日、河野デジタル大臣は、首相との面談後の記者会見で、現在の健康保険証を24年秋には廃止し、マイナンバーカードと一体化すると公表した。ついこの間の6月7日閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針 2022  新しい資本主義へ ~課題解決を成長のエンジンに変え、持続可能な経済を実現~」(タイトルからしてなんとも欲張った?「骨太の方針」)では、マイナンバーカードについて、以下のようにまとめられていた。

2.持続可能な社会保障制度の構築
(社会保障分野における経済・財政一体改革の強化・推進)
オンライン資格確認について、保険医療機関・薬局に、2023年4月から原則義務づけるとともに、導入が進み、患者によるマイナンバーカードの保険証利用が進むよう、関連する支援等の措置を見直す。2024年度中を目途に保険者による保険証発行の選択制の導入を目指し、オンライン資格確認の導入状況等を踏まえ、保険証の原則廃止を目指す

 要するに、保険証の原則全廃には期限が付されていなかったが、すでに、昨年21年10月からマイナンバーカードが保険証として利用可能になったところもある。一方、医療機関・薬局でのカード読み取り機の普及が進まないので、6月の段階では、そちらの方に期限が付けられていたのだ。それが、突然、24年秋という期限もって現行保険証の廃止が打ち出されたのである。
 これまでも、政府はマイナンバーカードの普及には躍起になって、コロナ対策の10万円一律給付にはカードがあった方が便利だとか、マイナポイント1弾では5000円分付与、第2弾では、カード取得自体で5000円分、保険証、銀行との紐づけで各7500円分と併せて20000円分のポイント付与というニンジンをぶら下げた。カードの普及率がようやく50%をこえたというので、今回の方針転換へと勢いづいたのかもしれない。第2弾のマイナポイント付与は9月末終了を12月末まで延長した。繰り返される、あの広告のいじましさ、一番喜んでいるのは、それこそ、広告代理店だろう。
 さらに、カードの普及率によって、政府は自治体への地方交付税の算定に反映させると明言しているのだ。自治体にも、交付税というニンジンをぶら下げて、「尻を叩く」という、暴力的にさえ思える手段に出たのである。
 ここまで来たのだから、意地でも、全国民にカードを持たせようというのか。この間は、近くのスーパーの前で、「ここで、カードが作れます」と呼び込みをやっていたし、これからは郵便局でも作れるようにするとか。ニンジンに目がくらんで?作ってはみたが、おそらく、大したメリットもないと思い知らされるのではないか。さまざまなリスクが潜んでいるというのに。
 保険証の利用者、患者側からすれば、まず、必要性がない。身分証明書代わりというけれど、これまでだって、健康保険証、運転免許証、パスポートで、用がたりる。
 健康保険証として使用できるというが、マイナカードと一体化したとしても大病院はともかく、現在、通院している近隣のクリニックなどでは使えない。読み取り機―オンライン資格確認システム―を導入している医療機関や薬局は少ない。

 マイナカードには住民の基本情報、氏名・住所・生年月日・性別が内蔵されている上に、医療情報が加わることになり、その情報漏れのリスクがある。マイナカードの管理は、昨年成立したデジタル改革関連法により、国と地方公共団体が共同して管理運営する法人に改められた。実際の管理作業は、ほぼ、民間への委託、再委託が実態であろう。情報の拡散、情報漏れのリスクは高まり、政府はさらに、民間のカードの利活用を目論んでいるから、カードに蓄積された個人情報のセキュリティの整備は一層困難になるにちがいない。

 上記「骨太の方針」では、このオンライン資格確認システムの義務化には、医療機関側から、さまざまな問題点が指摘されている。「全国保険医団体連合会」発行の『全国保険医新聞』のアンケート結果は以下のようであった。

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 設備設置の経済的な負担は、助成金の30万程度では間に合わない場合が多く、ランニングコストもかかる。導入済みの機関では、トラブルにも悩まされているらしい。医師の高齢化によって閉院を予定しているケースも一割程度あって、義務化の必要性や助成金の返済などが課題になっている。これを機に閉院を早めるケースもあるという。
 私自身の周辺でも、当地に転居以来30年以上かかっていた内科のクリニックが、コロナの出現の直前に閉院した。コロナのさなかには、眼科クリニックが閉院してしまって、戸惑いもした。地域で親しまれた街のお医者さんが消えてゆく。近くの大学病院は、紹介状なしでは相手にしてもらえない。医療費も2割負担になってしまい、医療難民になりかねない様相になって来た。どうも長生きはさせてくれない国らしい。

 そもそも、マイナンバー法(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律)17条1項では、個人番号カードは、住民の申請により交付するものとされており、カードの取得は任意なのに、保険証を原則廃止することは、カードの取得を事実上強制するものであり、法律に違反するのは明らかなのである。

 むかし、学校でならったことわざを思い出す。
You can take a horse to the water, but you can't make him drink.

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2022年7月22日 (金)

『朝日新聞』川柳欄への批判は何を意味するのか

 わたしは、長年、短歌を詠み、かかわってきた者ながら、新聞歌壇にはいろいろ物申したいこともあり、この欄でもたびたび書いてきた。最近は、毎日新聞や朝日新聞の川柳欄をのぞくことの方が多くなった。

・疑惑あった人が国葬そんな国

・利用され迷惑してる「民主主義」

・死してなお税金使う野辺送り

 7月16日の「朝日川柳」は「国葬」特集なのかな、とも思われた。短歌やブログ記事ではなかなか言えなかったことが、短い中に、凝縮されていると思った。

 安倍元首相の銃撃事件について、「民主主義への挑戦」といった捉え方に違和感を持ち、さらに、全額国費負担で「国葬」を行うとの政府にも疑問をもっていたからでもある。こうした川柳をもって、安倍元首相や政府方針を「揶揄」したのはけしからん、ということであれば、安倍批判や政府批判を封じることに通じはしまいか。政府への「忖度」が、言論の自由を大きく後退させ、自粛への道をたどらせたことは、遠くに、近くに体験してきたことである。  

 大手新聞社やNHKは、たださえ、安倍元首相と旧統一教会との関係、政治家と統一教会との関係に、深く言及しないような報道内容が多い。もっぱら週刊誌やスポーツ紙が取材や調査にもとづく報道がなされるという展開になっている。テレビのワイド番組が、それを後追いするような形でもあることにいら立ちを覚える昨今である。

 朝日新聞社は19日、J-CASTニュースの取材に対し「掲載は選者の選句をふまえ、担当部署で最終的に判断しています」と経緯について説明。「朝日川柳につきましてのご指摘やご批判は重く、真摯に受け止めています」と述べ、「朝日新聞社はこれまでの紙面とデジタルの記事で、凶弾に倒れた安倍元首相の死を悼む気持ちをお伝えして参りました」とし、「様々な考え方や受け止めがあることを踏まえて、今後に生かしていきたいと考えています」と答えたという。どこか腰が引けたようなスタンスに思えた。さらに7月22日には、重大な訂正記事が載っていた。上記「利用され迷惑してる『民主主義』」の作者名が編集作業の過程で間違っていたというのである。なんとも「シマラナイ」話ではないか。

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二句目のの作者が、「群馬県 細堀勉」さんだったとの訂正記事があった(『朝日新聞』2022年7月22日)

 また、今回のNHKの報道姿勢について、当ブログでも若干触れたが、視聴者団体「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」は、7月19日、「犯罪捜査差の発表報道に偏せず、事件の社会的背景に迫る公正な調査報道を」とする要望書を提出した。番組のモニタリングから、容疑者の銃撃の動機についての解説や識者のコメント、安倍元首相の政治実績の情緒的な称揚、東日本大震災の復興政策、経済再生政策、安全保障政策において、事実と国民の意識とはいかに離反していたかの分析もない報道を指摘している。NHKはどう応えるのか。

 NHKには「政治マガジン」というサイトがある。事件後の関連記事には、安倍元首相と旧統一教会、政治家と旧統一教会の記事は一本も見当たらず、もっぱら警備体制、国葬に関する記事ばかりで、7月19日号の特集では「安倍晋三元首相銃撃事件<政治が貧困になる>」と題して、政治学者御厨貴へのインタビュー記事が掲載されている。「戦後日本が築き上げてきた民主主義が脅かされていると同時に、今後の政治全体の調和までもが失われる深刻な事態だと警鐘を鳴らした」という主旨で、今度の事件は「民主主義への挑戦」とのスタンスを展開している。NHKよ、どこへゆく。

 

 

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2022年7月18日 (月)

動機は明白になって来た~容疑者に「精神鑑定」は必要か

 安倍晋三元首相銃撃報道における容疑者と旧統一教会との関係、容疑者が「なぜ安倍をねらったのか」について、大手メディア、とくに、テレビの報道番組のスタンス、メインキャスターやコメンテイターの発言は、そろいもそろって、旧統一教会と安倍との関係を薄めよう、薄めようという意図が歴然としてきた。加えて、安倍の功績をたたえ、その上塗りをするものであった。安倍の銃撃事件と旧統一教会・政治家との関係は切り分けて考えないといけないとの論調も依然として有力である。

 NHKは、容疑者は旧統一教会と安倍が密接な関係があると「思い込み」によって犯行に及んだと「7時のニュース」では言い続けている。旧統一教会と容疑者の母親の寄付・金銭トラブルや安倍との関係は極力触れず、旧統一教会の記者会見後も 「宗教団体(世界平和統一家庭連合)」というのがテロップでの表示である。7月12日の「ニュースウオッチ9」ではこともあろうに、第一次・第二次安倍政権で、防衛大臣や党の副総裁を務めた高村正彦を登場させ、安倍晋三の“政治的功績”をるる述べさせた。そして「(安倍への)批判も確かにあったが、その評価は後世の史家に委ねられる」と締めくくり、MCの田中正良もなんと高村と同様に「事件の判断は歴史に委ねられる」と言い放った。メディアの機能不全、自殺行為にも等しい。ちなみに、高村は、弁護士時代、旧統一教会の訴訟代理人だった人である。政権・政治家への擁護がここまで露骨だと、視聴者の疑問をかえって深めてしまうだろう。

  テレビ朝日「報道ステーション」の大越健介は、容疑者がなぜ安倍を狙撃したのかは「理解不能」とまで明言した。日テレ「ウエークアップ」(7月16日)の野村修也は、安倍元首相の銃撃事件を「教団を壊滅させようと道具として利用した面もあるかもしれない」などと述べる。複数の局の番組で、田崎史郎は「政治家は、選挙で一票でも欲しいから、頼まれれば、祝辞やメッセージ、行事への参加も断れない」などとぬけぬけというではないか。

 そして、政府は、警備体制の不備を強調し、今後の強化を進めるといい、捜査当局は、容疑者の銃や火薬の製造やその性能をしきりに究明するのに熱心で、挙句の果て、奈良地検は、容疑者の動機には「飛躍」があり、刑事責任能力を調べるために本格的な「精神鑑定」を実施する方針を固めたという(毎日新聞7月17日)。容疑者の動機の解明、政治家と旧統一教会との長期間にわたる密接な関係究明からはますます離れてゆく様相がみえてきた。

 さらに、岸田首相は、早々と全額国費で、秋には、安倍晋三の「国葬」を実施すると表明し、憲法改正を突破しようという魂胆である。コロナ感染が収まらず、物価高騰に歯止めがかからず、経営苦の中小企業、生活苦の非正規雇用の人たち、医療費の負担増額が強いられる高齢者たちは、事件や人の死を利用した税金の無駄遣いを許せるわけがない。

 

 

 

 

 

 

 

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2022年3月17日 (木)

NHKは、余分な解説をするな、事実を正確に伝えよ!

  NHKの7時のニュースに合わせての首相記者会見には、もう、うんざりである。NHKは官邸の広報か、国営放送かと紛うばかりである。会見の内容も相変わらず具体性のないものだし、記者たちの質問もゆるい。そしてそれをスタジオでは、解説という名の後追い、繰り返しでしかない。時間をそのために延長しているにすぎない。
 もちろん、NHKに限るわけではない。民放も含めて、報道番組全体に言えることなのだが、そこに登場するコメンテイターや専門家のコメントほど役に立たないものはない、とつくづく思うようになった。

・予報士の横でごちゃごちゃうざいアナ(勝浦 ナメロー)

「仲畑流万能川柳」(『毎日新聞』2022年2月26日)の入選作である。かねてより、7時のNHKニュースの最後の天気予報を見ていて、予報士が地図を見ながら解説している途中で、左側に立つアナウンサーが、合の手を入れるというか、言わずもがなのセリフを発するのが、まさにうるさく「うざかった」のである。「ふれあいセンター」にも伝えたが、いっこうに改まらなかった。それがなんと、今年の2月からか、そんな場面がぴたりとなくなったので、「晴々とした」?気持ちで予報を聞くことができるようになった。
 ついでながら、女性の予報士が、毎晩、とっかえひっかえの衣装や髪形で登場するのにも、私など不快感を覚えていた。コツコツとハイヒールで天気図のパネルに近づいたり、離れたりするのも気になっていた。そうかと思えば、マタニティ服で登場すること自体には応援したい気持ちなのだが、二度と同じ服は着ませんみたいなコンセプト?のファッションにも違和感があった。気象情報は、まさに淡々と正確な情報をわかりやすく伝えるのが命だろう。余分な情報発信はやめて欲しい。

 事件や情勢が深刻であればあるほど、マス・メディアの発する情報や言葉は重要になって来る。
 そして川柳はむずかしい!!ナメローさんから拝借して。

・現地からの画面にゴチャゴチャうざい“専門家”

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例年より少し遅く咲き出したスイセン、エサ台には、つがいの?ヒヨドリが交代でやってきた。

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