2024年3月 5日 (火)

消防団はどうなる、どうする(2)各地の消防団で何が起きているのか

 佐倉市の消防団の何人かが、新年会かの帰りに酔っ払い運転で事故を起こしたという、なんとも“しまらない”一件を思い出す。だいぶ古い話になるので、ネットで調べても分からずじまいだったが。

 また、近所の中学校の校庭から、夏の夜遅く、何やらの掛け声が聞こえてくるので、不思議に思ったものである。後で、消防団の操法訓練と知った。消防操法大会というものがあってそれに向けての訓練で、たまたま帰宅が遅くなって中学校を通り抜けたとき、太いホースを走って巻いている姿に出会ったこともある。ご苦労さまと思う反面、消防団にまつわる問題も浮上してくる。

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2023年7月30日、毎日新聞より

 見落としはあると思うが、この問題について熱心に取材を続けているのが毎日新聞ではないか。

手元のスクラップを繰ってみると

  • 記者の目(岡山支局 高橋祐貴)・私物化される「幽霊消防団員」の報酬 2019年1月11日
  • 消防「幽霊団員」9000人 昨年度活動ないのに報酬/報酬「中抜き」4割超 (本誌調査)旅行や接待費に流用 2020年12月28日
  • 消防団報酬不正「野放し」 新たな情報次々 不徹底な自治体調査・20人の通帳印鑑保管・団員に振り替え指示 2022年7月19日
  • なるほドリワイド・消防団の課題 2023年7月30日
  • 外国人消防団員 活動どこまで 2024年2月2日

 3番目までは高橋祐貴記者の記名がある。見出しを見ても分かるように、団員には自治体から年間報酬と出動による報酬とが各消防団に支払われている。これらをめぐって、団員数や出動回数を水増ししたり、団員への報酬を消防団が一括して受領し、それを飲み代や旅行代に流用する例や団員に渡った報酬の一部を再徴収して消防団としてプールしたりする各地の実態などが報告されている。
 こうした実態とマイナンバー制度の導入などに伴い、政府は、報酬の団員個人へ振り込みにするよう進めているが、徹底していない。

 人口17万、世帯7万9000の佐倉市の場合、以下2023年度(令和5年度)予算の数字である。
・一般会計:518億、消防費:29億2000万円
・消防費のうち常備消防(消防署関係):26億9000万円、非常備消防(消防団関係):2億4000万、消防団員701人(定員  805人)
・消防団員報酬(年額):団長156000円~一般団員36500円計2942万円
・災害出動(1回)4時間以上8000円、4時間未満4000円、他の出動1500円 計2538万円
・交付金(年額)本部54000円、分団45000円×7、部54000×52 (消防団は地区わりで、7分団、52部より構成されている)計380万円

令和5年度消防団の概要
https://www.city.sakura.lg.jp/material/files/group/48/R5syouboudanngaiyou.pdf

 自治体によって、数字は異なるのだが、佐倉市の場合は、消防費全体の約一割強が「非常備消防」に充てられている。かつては、多くの市町村で、地域の自営業に近い人たちが仕事の傍ら、消防団業務に従事していたが、現在は会社員など被雇用者が大部分であって、十分機能しなくなっている。そこで、無理やり入団させたり、団員数を水増ししたり、自治会から後援会会費を徴収したりして、飲食代などの慰労費にあてたりする不正会計、地域の有力者による旧態然とした運営が上記の報道にも垣間見ることができる。ちなみに、佐倉市は、昨年度より、団員の報酬は団員個人の口座に振り込むことにしたという。

 そもそも、消防団は、地域の事情に詳しい団員が、防火水槽や消火栓の確保、交通規制、住民誘導などが円滑にできることがメリットとされてきたが、現在は、昼間は地域を離れている被雇用者が増えるにしたがって、活動が難しくなっている。また、消防団員たちが、消防士たちの業務や活動を補完することによって、常備消防費を抑制してきたという。しかし、ここにも、近年の防災、災害救援における行政の対応を見てとれるようだ。

 最近の災害救助、支援において、消防士も足りず、消防団員も被災者であって活動が困難な状況を目の当たりにして、ボランティア的な消防団に頼るのではなく、自衛隊の災害出動を拡大活発にすることではないかと思うようになった。
「専守防衛」のためなどという絵空事に防衛力の拡充、防衛費に莫大な予算を投入するのではなく、目の前の国民の命と暮らしを守るための自衛隊、自衛隊というより災害救援のための訓練を重ね、充分な機材をつかいこなせる隊員を育てることの方が先決ではないか。

 殺傷能力のある次期戦闘機の共同開発に兆の単位の予算が投入されるという。被災地の復旧・復興のためにと称して、新年度予算の衆院採決を強行した政府だが、補正予算でも予備費でも対応できるはずである。裏金を全額拠出するだけでも、できることはいっぱいあるはずなのに・・・。

 

 

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2024年3月 4日 (月)

消防団はどうなる、どうする(1)消防団への「お礼」って

 少子高齢化社会に加えて、コミュニティの衰退が進むなかで、近年、消防団の在り方が問題になることが多い。
 一つは、消防団員の減少と高齢化が進み、後継者の確保が困難になっているが、ざっくり言えば1950年前後200万人いた消防団員が1980年代には100万に、2022年4月1日現在、78万3578人までに激減している。消防団の担い手の確保が困難なっていることである。また近年は、消防団の任務自体も消防活動よりも災害出動の方に重点が移りつつあることである。

 私が消防団に関心を持ったのは、7・8年前に、順番に回って来る自治会の班長になって、自治会の決算書をよくよく見てみると、いつのまにか、消防団協賛金2万円という支出が続いているのを知って驚いたからである。
 というのも、もう四半世紀も前になるが、私たちの自治会では、当たり前のように、日赤の社資、社協会員、共同募金等にかかる「寄付金」を、班長がそれぞれ500円の領収書をもって集金していた。いずれへの拠出金は、寄付であって、強制的に集めるものではなく、自由じゃないのか、と疑問視する会員も多かったのだろう。私を含め主婦たちが、自治会の役員10人の半分ほどを占めることになって、集金をやめて、自由意志によるものとする提案をしたところ、班長の負担軽減にもなるというので、班長会ではすんなり承認された。ただ、自由な寄付金をどう集めるかが問題となったが、A4の茶封筒に小さめの切れ目を入れて、そこへお金を入れてもらい、手渡しで、回してもらうことになった。二十数年たった現在もその方法は踏襲されている。
 なのに、消防団協賛金という名目で、支出されていたのである。2017年になるが、佐倉市の自治推進課と危機管理課と何回か電話や文書でやり取りしたことは、以下のブログでも書いている。

防団・社協・日赤などへの寄付を強制されていませんか~自治会の自治とは(1) »
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2017/04/post-8f66.html

消防団・社協・日赤などへの寄付を強制されていませんか~自治会の自治とは(2) »
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2017/04/post-7804.html

 そこでわかったことは、消防団員は、非常勤地方公務員なので、消防団は寄付金を求めてはいけないが、協賛金、後援会費などは、自治会と消防団との間のことであり、佐倉市は関知しないとの一点張り。また、自治会支出の消防団協賛金は、地域の商店会・自治会連合体共催の夏祭りの警備のための謝礼とわかった。
 そこで、危機管理課に、祭りのときに制服を着て警備にあたっている以上、地方公務員として謝礼を受け取っているのは寄付にあたりませんか、の質問には、地域住民による自治会が、警備等のお礼の「お気持ち」であって寄付とは言えないとの説明だった。 
 この見解は、今でも変わらず、以下の「自治会等役員の手引き」では、「労をねぎらうために支援をされているもの」「消防団を支援しようという地域の厚意による任意のもの」との説明がされている。

(Q)消防団の後援会費というのはどういうものなのですか
(A)後援会費につきましては、地域の方が、同じ地域の中で、仕事を持ちながら消防団活動に従事されている方々の労をね     ぎらうために支援をされているものと考えます。

(Q)消防団の後援会費は絶対に支払わなければならないのですか
(A)あくまでも消防団活動を支援しようという地域の厚意による任意のもので強制・義務的なものではありません。 また、消防団は市内の全地区を管轄しており、後援会費支払いの有無に関わらず、火災発生時には、必ず出動いたします。

<佐倉市の消防体制>令和5年度自治会等役員の手引き(自治会活動Q&)
https://www.city.sakura.lg.jp/material/files/group/16/yakuintebiki.pdf 
42-43頁

 佐倉市の見解では、地方公務員はその業務について、地域住民から「労をねぎらうため」「厚意による任意」の金銭を受け取ってもなんら問題もない、ということになる。
 一方で、以下の「自治会等問題解決の手引き」では、「募金を自治会費にあらかじめ上乗せして集めること」について「募金の一律収集は注意が必要です」の見出しで「募金を自治会費に上乗せして集める場合は注意が必要です。募金を自治会費に上乗せして強制的に徴収するとした決議は無効であるとした裁判例があります。」と注意を促している。この文言は、令和3年度の手引きには「自治会費からの寄付金や募金等を出すことは危険です」と言って裁判例の説明が続いていた。「危険」から「注意」への変更は何を意味するのか。私には、寄付金等の一律徴収の違法性からの一歩後退にしか思えなかった。

 いま、私にとって、自治会は遠い存在になってはいるが、消防団協賛金、夏祭り参加費、防犯活動をしているNPO法人の会費が自治会財政からの一括納入になっている件ついて、会員の自由意思にゆだねるべきもので、こうした種類の募金・寄付は拡大する危惧があるので見直しをと、何回か自治会執行部に要望書を提出してはいる。しかし、なしのつぶてだったり、近隣自治会、地域住民との関係上必要との回答だったりしている。

皆さんの自治会では、どうなっていますか。

<募金の収集で悩んだら>自治会等問題解決の手引き(事例方式による問題解決の参考)
https://www.city.sakura.lg.jp/material/files/group/16/tebiki_mondai_2022.pdf  28頁

 その裁判例というのは、自治会決議による募金及び寄付金の徴収は「会員の生活上不可欠な存在である地縁団体により、会員の意思、決定とは関係なく一律に、事実上の強制をもってなされるものであり、その強制は社会的に許容される限度を超えるものというべきである。したがって、このような内容を有する本件決議は、被控訴人の会員の思想、信条の自由を侵害するものであって、公序良俗に反し無効というべきである。」(大阪高裁平成 19 年 8 月 24 日、最高裁上告棄却)

  さらに、最近は、消防団内部の運営・会計における不正、脱法が問題になっている。(続く)

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きのう、買い物帰りに、一本違う道を抜けようとすると、広い庭のお宅の門近くの樹にハシゴをかけてを剪定しているのに出会った。見上げると黄色い花をいっぱいつけていた。「立派ですね、なんの木ですか」と尋ねると「ミモザ」という。ミモザってこんな大きな木になるのか、とびっくりしてしまった。灌木のイメージが強かったのだが。道に落ちた枝を拾って「いい香りもしますね」「お持ちになりますか、どうぞ」ということで一枝いただいた。3月8日は国際女性デー、ミモザの日だそうだ。

 

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2024年2月 9日 (金)

大人の対応?私の「オバサン」騒動の顛末

 1月30日、麻生自民党副総裁が地元福岡での講演の際、上川外務大臣を名指ししての「オバサン」発言は、謝罪と撤回でケリがついたようだが、上川大臣は「大人の対応」でかわしたらしい。

 2007年のことなので、20年近く前のことながら、私にも「オバサン」体験があった。佐倉市には、「市民の声」係や「市長への手紙」などを通じて、市民の要望を聞く仕組みがある。当時、私は、まだ元気があったのだろう。5年ほどの自治会役員から解放されたあとも、町内の人たちと、地域の都市計画事業に伴う環境問題などについて開発業者や市役所と交渉したり、市への情報公開請求や市政への要望書をよく提出したりしていた。

 どんな用向きであったか、今では「記憶にない」のだが、「市民の声」係に電話したところ、電話口に出た女性が、「少々お待ちください」のあと、他の係員に「あの、なんかオバサンからの電話なんだけど・・・」との声がしたのである。いまのように保留のメロディが流れることもなかったのだろう、まともに「オバサン」呼ばわりされているのを聞いてしまったのである。

 私もまだ、「若かった」のだろう、代わって電話口に出た男性に、用件より先に、女性の「オバサン」発言に抗議したのである。「市民の声の窓口ともあろう人が、そのような、いかにも市民軽視の発言や対応は許されるものではない」と。その場で、男性が一言謝罪したかもしれないのだが、私の怒りは収まらず、女性やその上司にも反省を求めた。そして、今後、同じようなことが起こらないためにも、その反省を形で示して欲しいとの要望もした。

 後日、以下のような書類が、秘書課長名の送り状付きで届いた。上が、「オバサン」発言の女性によるもので「誤解を生じやすい表現を用いたことにより、市民の方に不快な思いをさせてしまいました。・・・」の一文は、「誤解を招く」「誤解を生じる」は、現在の役人や政治家も好んで使用する「言い訳」である。「誤解」じゃないだろうと、この頃はテレビに向かって叫んでいる。
 また、上司の副申書にある「お客様」なる表現にも、違和感があり、私は、あなたの「お客」ではなく、「市民」です、というやりとりをすることが多い。

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2023年9月10日 (日)

図書館を支える人々~非正規と障がい者の方々の待遇の実態(1)

 図書館勤めが長かったため、さらに、いま、日常的に図書館を利用していることから、図書館関連のニュースが目に留まる。昨年8月、今年の3月に、末尾にあるような記事を書いた。今回も、図書館の非正規職員、国立国会図書館のデジタル化作業に携わる障がい者の人たちの記事に着目した。

1)図書館職員の4人に3人が「非正規」

 日本図書館協会は、今年の5月1日付で「▽非正規職員の賃金と労働条件を、専門性の観点から改善する▽会計年度任用職員の雇用を更新する際は、勤務実績を最大限評価する」などを求める文書を全国の都道府県と市、東京特別区の首長に送付した。

 協会の調査によれば、全国の公立図書館の職員の76%が非正規なのである。

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図書館職員4人に3人が「非正規」処遇改善を日本図書館協会が要請(2023年6月7日)
東京新聞 https://www.tokyo-np.co.jp/article/255085

  私が利用しているもっとも近い市立図書館は、分館で(数年前、学童保育所の拡張で狭くなった!)、実用書と小説類・児童書が申し訳程度に配架されているにすぎず、リクエストした図書を市内や他市、県立図書館から取り寄せてもらうことがほとんどである。それもコロナ禍以降は、50センチ四方の小さな窓口でのやり取りで、職員の顔も見えない。もはや図書館とは言えない施設である。

 先の記事でも書いたように、佐倉市の中央図書館は、新設の「夢咲くら館」という総合施設の中に移設され、オープンした。全体の建設費は40億近くにもなったが、職員は会計年度任用職員で補い、わずかな資料購入費でのスタートであった。車を持たない我が家では、モノレールと電車で行くしかない。距離的には近い図書館となると、モノレール、電車、1時間に1本くらいしかないバスに乗り換えての道中となる。立派でなくともよい、駅近のビルの空フロアでもよい、大型商業施設の一画でもよい。特に大型商業施設の閑散ぶりとテナントの出入りが激しく定着しないこの街に、市は思い切って、なんなら床を補強して開放的な図書館をつくったらよいのにと思う。図書館の命は入れ物でなく、人と資料にお金をかけて欲しいのである。

 また、公共図書館でなく、現在、大学図書館でも同じようなことが起こっている。

田 和恵「非正規31歳男性が憤る<大学図書館の働かせ方> 民間への業務委託が進むことによる<悪影響>  ボクらは<貧困強制社会>を生きている」『 東洋経済オンライン

2023年525日)  https://toyokeizai.net/articles/-/673423?

 

  かつて私も、私立大学図書館職員として働いた身である。正規・非正規の割合は、今の方がもちろん悪化している。名古屋で78年働いていた頃、連れ合いの転任で、転職先を探していた。ある人の伝手で、たった一つ、非正規ならば雇用するという大学図書館があった。条件を聞くと、正規の職員と勤務日数、勤務時間が全く一緒で、当時の月収の三分一近い金額を提示され、情けない思いをしたことがある。連れ合いには申し訳ないが、単身赴任をしてもらうことにした。そして、3年後、連れ合いは東京に転任、またの転職先探しである。その後の顛末は、当ブログの以下の記事にも書いた。女性の転職の難しさ、女性が非正規の受け皿になっていることをいやというほど知らされた。

 <当ブログ参考記事>
図書館が危ない!司書という仕事(2022831日)
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2022/08/post-fd7d26.html

・危うい佐倉市立図書館オープン~“夢咲く”どころではない「夢咲くら館」
 図書館らしからぬ??(202337日)http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2023/03/post-f768c4.html

 

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2023年6月14日 (水)

川村記念美術館「芸術家たちの南仏」へ

 梅雨入り直前の晴れ間、6月8日、佐倉市内の川村美術館に出かけた。企画展の「南仏」が気になったといっても、私たちは、かつて、エクス・アン・プロバンスから日帰りのニース、マルセイユを訪ねたというレベルのことである。先日のマティス展に続いて、マティスにも出会うことができるかもしれない。

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 カタログの表紙も、チラシもマティスの切り紙絵「ミモザ」(1947年)だった。入館料、シニアは200円引きの1600円であった。

  今回、はじめて、午後2時からの学芸員による常設展、企画展をふくめてのガイドツアーに参加した。常設展は、印象派のルノアールから20世紀のアメリカ美術に至るまで、バラエティに富んでいるが、ふだんなら、通り越してしまいそうなマーク・ロスコの壁画やフランク・ステラの部屋での解説を聞いて知ることも多かった。ロスコの壁画はニューヨークのレストランからの注文であったというが、彼は、その店の雰囲気が気にいらず、納めなかったものの一部が、川村美術館に収蔵されたというエピソードも興味深い。ステラの作品の自在さと多様性には驚きつつ、美術館入り口近くのモニュメント「リュネヴィル」(1994年)という彫刻?には、職人たちとの苦労が偲ばれるのであった。

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ステラ「リュネヴィル」(1994年)、八幡製鉄所の職人さんたちとの汗をも思う。

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セザンヌ「マルセイユ湾、レスタック近郊のサンタンリ村を望む(1877-78)

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アルベール・アンドレ「マルセイユのプティ・ニース」(1918年)。プティ・ニースは、1917年にできたばかりのレストランであったが、現在では高級ホテルとレストランとして健在である。アンドレは、上記のセザンヌとは親子ほど年も違うが、親しく交流し、多大な影響を受けた。1918年はセザンヌの没年でもあった。

 マティスやシャガールには癒される作品も多いのだが、ピカソの前では、どうしても構えてしまう。しかし、今回は、以下のようなわかりやすいメッセージ性の高いポスターや広告もあって、心和むのだった。

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ピカソ「平和のための世界青年学生祭典(東ベルリン)」(1951年)。こんなスカーフがあったとは。この祭典は、第1回が、1947年プラハで開催され、第3回が東ベルリンであった。以後、中断もあったが、共産圏の都市を巡回して開催され、ソ連崩壊後も続いている。

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ピカソ「リュマニティ(日曜版)挿絵」(1953年12月27日)。ピカソの「ゲルニカ」(1937年)は有名であるが、彼は、フランスがドイツナチスから解放された1944年に、フランス共産党に入党、1973年亡くなるまで党員だった。しかし、スターリンの死去の折、描いたスターリンの肖像画はソ連から拒否されている。1949年以来、鳩は何度か
描かれ、平和のシンボルとして、定着し、世界に広がっていった。

 ピカソの女性遍歴は目まぐるしいが、最近、愛人の一人フランソワーズ・ジローの訃報が、小さな記事となっていた。抽象画家として活躍、6月6日、101歳で、ニューヨークのでなくなっている。1943年、1881年生まれのピカソが、1921年生まれの画学生ジローと出会い、二児をもうけたが、1953年の破局後は、ピカソはかなり未練がましかったらしい。

 なお、これまでまったく知らなかった、ラルフ・デュフィの「花束」の里芋の葉がなぜ青なのか、気になる作品だったし、また、マティスやピカソ、ボナール、シャガールらの作品で飾られた「ヴェルヴ」(1937年12月~1960年)という文芸美術雑誌の表紙にも興味をそそられたのだった。

 川村記念美術館は、DIC(旧大日本インキ)が所蔵する美術品を中心に、1990年に開館、3万坪の庭園は、みごとに整備され、折々の自然を楽しめる。京成佐倉・JR佐倉を巡回する無料のシャトルバスがありがたい。

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美術館の渡り廊下から。

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ツツジ、藤の花の季節は終わってしまったが。

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藤棚から美術館を望む。

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いまは、アジサイが見ごろ、ガクアジサイの下にひそむカタツムリ。

 

 

 

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2023年3月 7日 (火)

危うい佐倉市立図書館オープン~”夢咲く”どころではない「夢咲くら館」

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写真は「夢咲くら館の今」佐倉市ホームページから。屋上から飛び出す長い庇?キャノピーというそうだ。無用なだけではない、危険な長物、これだけに一億円もかけたという。
https://www.city.sakura.lg.jp/soshiki/shakaikyoikuka/286/16573.html

図書館らしからぬ??

 3月4日、新しい佐倉市立図書館が、市の複合施設「夢咲くら館」のなかに、オープンした。「佐倉」と「咲くら」のごろ合わせのネーミングもいまひとつ。写真にあるこの施設には、図書館と子育て交流センター、地域情報発信コーナーやカフェなどが併設されてのオープンだった。5年前、旧佐倉市立図書館の老朽化のために計画された新図書館なのだが、その計画から、出来上がりまでに、図書館らしからぬ数々の危険と不安が浮上してきたのである。当初より市民有志による「より良い佐倉図書館が欲しい会」が、多くの問題点を指摘してきた。

 当初、地上三階建ての15億円の予算であったのが、地下1階、地上2階となり、2022年度(令和4年度)予算の概要では、つぎのように説明する。図書館を含む複合施設は「(仮称)佐倉図書館等新町活性化複合施設整備事業、交通安全施設整備事業や橋梁維持事業等の施設整備費の増加により、普通建設事業費は全体で 37.7 億円と 26.7 億円の増加となった」として、その事業費は当初の二倍以上になったのである。これだけでも計画の杜撰さが目に余り、議会の多数会派はいったい何をやっていたのだろう。設計事務所、工事業者の選定も不明確極まりないものだった。設計事務所は、事前に市と協議をしていたり、不祥事続出、指名停止を何度も繰り返している前田建設が落札したりしている。

 地下の掘削、その土砂の処分、埋蔵物撤去の過程で軟弱地盤が判明、くい打ち工法の強化が重なり、工事費は増額していく。床の強度の必要から、地下があるならば、保管、書庫機能を置くのが普通だが、新図書館は、まるで逆なのが不思議でもあった。障がい者対応、災害対応のリスクも解決されないまま、オープンしてしまったのである。

職員の半分は司書資格がなく、非正規には司書資格を求める?!

 図書館の建物もさることながら、図書館のカナメは人と本、人材と資料である。下記の当ブログの記事でも指摘しているが、あらためて、佐倉市の最近の図書館関連予算を調べて驚いた。

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 すでに決算が出ている2021年度(令和3年度)以降で見てみると、佐倉市立図書館の「人と本」の実態はと調べてみたのだが、まことに“残念な”実態であった。正規の職員には手厚いが、会計年度任用職員は、職員の二倍ながら、その待遇は見ての通りである。最近の会計年度任用職員の募集案内によれば、図書館については、司書資格ないし図書館勤務5年以上が条件となっているが、7時間45分勤務、夕方の4時間勤務の二種類で、いずれも2~4日に限られる。いずれも時給1030円である。「千葉県の図書館2022(公開版)」というデータでは、2021年度決算によるとみられるが、当初予算で21人とあったが、23人となっていた。さらに、21人の内訳として、司書資格持つ者が11人、その他が10人となっている。会計年度任用職員に司書資格を求める一方、職員の半分は資格を持っていないことになる。もちろん、資格の有無だけで、仕事への熱意と能力が問われるはずもないことは、かつて、ある大学の司書講習会で10年ほど講師を務めた経験や講習会修了生たちと同じ職場で働いた経験からも承知はしているが、司書資格が図書館業務の入り口であることに変わりはないだろう。

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『こうほう佐倉』2022年12月15日号より。

 なお、『千葉県の図書館』の職員人数23人と予算書21人の食い違いを、市の財政課に尋ねたところ、2人は、再任用職員ではないかということであった。決算書の人件費については、すべて人数が省かれているというのも、市民には理解しがたく、実態をわかりにくくしているのではないか。
 さらに驚いたこと、市内三館合わせての図書購入費が毎年3500万ほどしかない。表で見るように、2022年度と2023年年度の図書購入費は、3526万、千の位まで同額である。これって、最初、私の見まちがいかとも思ったが、同額だった。「去年と同額にしておけ」という冗談のようにも思える。「夢咲くら館」内に新図書館もスタートするというのに、まったく「夢」のない数字に、少々あきれもした。それもそのはず、新図書館は、書架などは特注品を購入する一方、「新しい本の購入は大型絵本とヤングアダルト向けだけというお粗末さ」だというのである(岡山眞治「図書館問題から見えた佐倉市政」『さくら・志津をまもりたい会ニュース』45号 2022年12月)。「夢咲くら館」には、増額に増額を重ねて37億以上の建設費を出す一方で、図書費が3500万とは、まさに”箱もの行政“の典型ではないのか。いつまでこんなことを続けているのか、続けさせているのだろうか。責任の一端は市民にあるといってもいい。私たちは、もっともっと図書館を利用して、自分がほんとうに読みたい雑誌や読まねばならない、読んでみたい本を、子供や若者に読ませたい本をリクエストしてみてはどうだろう。
 とりあえずは、館長以下職員は、何を考えているのだろうか。館長の職員歴を知りたいものである。

学校図書館では、今

 下記の、当ブログ記事では、学校司書の実態にも触れたが、今回は、ついでながら、市立の小学校23校、中学校11校の図書購入費を調べてみると、表のようになる。それぞれを、23校、11校に分配するそうだ。生徒・児童数によるのではなく、各校の「配備率」?によって、年々額が変わると、財政課は答えていたが。いずれにしても、少ない図書購入費にも思えた。あわせて34校の図書館に11人の会計年度任用職員の学校司書が奮闘しているわけなので、ただただ頭が下がる思いである。

図書館が危ない!司書という仕事(2022年8月31日)
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2022/08/post-fd7d26.html

 ついでながら、昨年12月15日『こうほう佐倉』の「市職員人事・給与などの状況」によれば、2022年(令和4年)4月1日現在、職員1024人、再任用職員57人、会計年度任用職員70人となっていた。この会計年度任用職員はフルタイム勤務職員のみの数字で、その他、パート勤務の800人以上の職員がいて、合わせると900人程度の会計年度任用職員に、市政は支えられていることになる。 こうした状況のなかで、図書館への指定管理制度の導入の声が聞こえないわけでもない。「 2021年9月現在,283自治体,731館において指定管理者により管理運営が行われていることが確認できる」とする調査もある(桑原 芳哉「公立図書館の指定管理者制度導入状況 2018年度以降の動向を中心に」『尚絅大学研究紀要A』2022)。しかし、指定管理者制度導入館は漸増しているが、さまざまな不具合から、自治体直営に戻った図書館も多いのである。佐倉市にも懸命な選択を望みたい。

 

 

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2023年2月27日 (月)

マイナンバーカード申請に並ぶ人たち

 先週の金曜日2月24日、駅に近いビルの一画にある佐倉市出張所の前を通りかかると、いつになく人が立て込んでいる。入口の外に長机を置いて、マイナカード申請専用の受付を行っていたのである。出張所の外かべにそって、椅子も並べられていて、多くの高齢者が、ひとりで、あるいは夫婦で、順番を待っているようだった。受付には二人いて、20000円の文字が大きいのぼりが見えた。

 のべつまくなく流されるテレビや新聞のコマーシャルで、あるいは周辺からの口づてで、せかされてやって来た人たちだろう。さまざまな情報が盗み取られるリスク、持ち歩くことのリスクを覚悟しているのかしら。マイナ保険証とても、あちこちからのシステムの不具合、現場の混乱が報道されているではないか。

 2月22日は、東京保険医協会の医師ら計274人が、健康保険証の代わりにマイナンバーカードで保険資格を確認できるオンラインシステムの導入を国が医療機関に義務付けたことは憲法違反だとして、国を相手取り、義務化に従う必要がないことの確認などを求める訴訟を東京地裁に起こしている。当然の訴えである。

 総務省の発表によれば、2月19日現在、全人口の69.8%がカードを取得したという。資格証明だとか、更新はどうするなど・・・、中途半端なことばかり。マイナカードを健康保険証代わりにして、マイナカード取得を義務化しようとする先に、何をしようとするのか。銀行口座の紐づけ、運転免許証代わり、民間での利活用促進・・・などとなったら、リスクは果てしもない。「持ち歩けば便利」の先にあるものは。

  以下の当ブログ記事も併せてご覧下さい。

「マイナンバー制度」は、日本だけ!? 先進国の失敗からなぜ学ばないのか
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2015/11/post-afb2.html

  ちなみに、1月末日現在ながら、交付率は、全国で60.1%、千葉県59.9%、千葉市64.7%、佐倉市は57.4%であった。そんな中、千葉市の交付率が、2月21日現在、66.9%となり、政令指定都市20の内の中で1位だそうで、松本総務相が2月23日視察に現れている。

 なぜそれほど必死なのか。佐倉市は、2月末日まで、何パーセントまで伸びる?

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2023年1月 6日 (金)

きのうから、旋回の自衛隊機、なぜ?!

 5日、10時すぎ、ベランダで洗濯ものを乾していると、数機の自衛隊機が旋回している。下総海上自衛隊基地の離着陸調整のため旋回しているのかな、と思ってしまった。訓練機は館山沖での訓練のための離着陸は、ほぼ定時であるのをかつて調べたことがあるのを思い出していた。

 ところが、きょう6日の午前中の航空機騒音はいつもと違う。窓を開けて見上げると、かなりの低空で機体を斜めにして東へと向かう。我が家の真上、ユーカリが丘方面へ、一機、二機と・・・。それが、何回も、何回もめぐってくるのである。下総基地の広報、かつて控えていた内線に電話して、いま飛んでいるのは、そちらの基地の飛行機か、いつもの飛行と違うがどういうわけか、いずれにしても、住宅地をあれほどの低空で飛ぶのは危険ではないかなど、問うのだが、「担当者がきょういないのでわからない」と、ぼそぼそと繰り返すばかり。佐倉の上空を飛んでいる航空機がそちらのものかどうかだけでもと尋ねれば、どんな機種か、どんな形かわからないかとの質問、軍事オタクならともかく、素人が見上げただけでわかるわけがないのに。とにかく今日の午前中の飛行についてわからないはずはないしょうから調べておいて欲しい、また電話すると切る。

 二時間ほどあとに、電話すると、今回はバカに明るい声で「あの自衛隊機は習志野空挺団の<コウカクンレンハジメ>の予行演習です」という。聞き直して「降下訓練始め」とわかる。

 さっそく、習志野空てい団の「地域振興課」に電話すると、1月8日が本番で、「<降下訓練始め>と言って、パラシュートで降下するのをみなさんに見ていただくんです」という。宣伝広報の訓練のために、住宅街をあんなに低空で長時間飛んでいいのですか、といえば「申し訳ありません、ご迷惑おかけします」の一点張り。イベントのためだけの不要な訓練はやめにしてほしい、見直してほしい旨、検討してください、と伝えておいたが、まだ、本番は1月8日、あしたも続くというわけだ。

 自衛隊にパフォー-マンスは不要である。オリンピックのときの飛行演技、航空祭や今回のようなイベント自体が不要ではないか。

 習志野空てい団のHPを開いてみると・・・。訓練日程表も出て来た。

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<1月8日付記>

以下のニュースによれば、3年ぶりの大規模なイベントで、多国籍軍による訓練が実施されています。恐ろしいことがすでに進んでいるようです。

陸自第1空挺団の年頭行事「降下訓練始め」日米英豪の4か国で実施

https://news.nifty.com/topics/traffic/230108621431/

 

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2022年8月31日 (水)

図書館が危ない!司書という仕事

 もう、終活の方が迫っているのだが、たまに外出して、車内で就活スーツの女子学生に出会うと、「頑張ってね」との思いが募る。かれこれ60年前の就活について思い出しては、危ない橋を渡ってきたものだと、思い返す昨今である。

 つい最近、ネット上で、つぎのような見出しの記事に出会った。神戸新聞の「まいどなニュース」である。

「手取り9万8000円では暮らせない」非正規図書館員の訴え 知っていますか図書館の“現実”
8/26(金) 19:30配信
https://www.kobe-np.co.jp/rentoku/omoshiro/202208/0015586692.shtml

 30年近く、図書館職員として働いていてきた身としては、やはり気になる見出しだった。最近、古巣でもある国立国会図書館の資料はデジタル化されて、検索や遠隔複写、個人配信の資料も増えたので、よく利用する。買ってもいいかな、と思う本は、まず、地元の公共図書館の所蔵を調べて、なるべく借りて読むようにしている。新刊のベストセラーものは、ブームが去ってからでないとまず借りられない。所蔵してない古い図書や学術書を読みたい場合は、相互利用制度によって他館から貸し出してもらい、多くは自宅に持ち帰って利用する。現代詩歌文学館などは、雑誌などでも貸出してもらえるが、自宅には持ち帰れず、館内閲覧・コピーしかできないながら、大いに助かっている。 
   こうして、近くの市立図書館を利用していて思うのは、カウンターの女性がよく変わることだった。市の広報で、一年限りの、いわゆる「会計年度任用職員」募集の記事のなかに、保育士、栄養士、看護師、保健師などとともに図書館職員の募集も見かけたことがある。「任期付き職員」の募集もあって、こちらの方は2年とやや長期で、待遇も職員並みとあるが、図書館職員の募集記事は見かけない。

   冒頭の「まいどなニュース」によれば、日本図書館協会の統計では、全国の公共図書館3316館の専任職員(いわゆる正規職員)の数はここ20年、減少傾向にあり、2001年には1万5347人だったのが2021年には9459人に減少、逆に、非正規職員は、職員全体の7割を占め、その9割が女性だというのである。
   30年近く前ながら、私の最後の職場だった千葉県の新設大学の図書館では、退職時、私を含めて職員二人に、アルバイト三人だった。その後どうなったか。その前に、11年間働いていた名古屋の短大図書館では、職員四人、バイト二人であった。ここは、すでに四年制大学になって久しく、新館も完成、学部新設でキャンパスは二つなったが、その後の状況はわからない。国公立大学の図書館でも、非正規職員の激増が伝えられている。

  地元の佐倉市立図書館の場合、2021年、「令和3年度の当初予算」で見てみよう。図書館としては分館を入れて4館の職員の21人分の給与・手当・共済費併せて人件費総額約1億8972万円、会計年度任用の図書整理員42人分の報酬・手当・共済費は、図書館の一般事務費のなかに約6638万円計上されている。総額を人数で割れば、ざっくり、職員856万、非正規158万と待遇の差は、信じられないほど歴然としていた。税金や共済費が天引きされるわけだから、冒頭の記事にある「手取り9万8000円」という実態に近いのではないか。
   市立図書館のみならず、学校司書の場合も、状況はかなりきびしい。佐倉市は小学校23校、中学校11校あるが、「学校図書館活性化事業/令和3年度」の説明書によると、会計年度任用職員は11人、1校当たり年間勤務数平均50日、月平均25時間という数字が示されている。報酬・手当などを合わせて1177万円になる。1人が1週間で3校を回るという目まぐるしさ、佐倉市は各校の司書配置などは念頭にないらしい。

 また、佐倉市の2021年6月市議会での質疑によれば、2021年4月1日現在、佐倉市の市職員が1006人、会計年度任用職員は63種職、819人に及ぶという(6月16日、萩原陽子議員)。図書館は、21人の職員、非正規42人なのだから、正職員は3分の1ということで、全国平均でもある。非正規職員採用を通り越して、図書館の民間委託が隣の印西市で検討を始めているという。全国的には、すでに、ツタヤが委託されて運営する公共図書館もある。佐倉市においても、学校用務員、学童保育所は、すでに、民間委託が定着してしまったようだし、近くの学童保育所は、まとめて地元開発業者のグループ会社が指定管理者になっている。政府は、「働き方改革」、「人への投資」とかを口にするが、家庭や学校でのいじめや虐待の対応の無責任さ、教員の超過勤務・人手不足、奨学金返済困難者の激増、若手研究者の任期付き採用などが引き起こすさまざまな悲劇が明らかになると、具体的な解決策が示されないまま「再発防止」とか「第三者機関設置」とかでやり過ごすことが多い。「人への投資」というならば、国民の健康・福祉、教育・研究が基本であろうに、行政の手抜き・無為無策とさえ思われる事案、企業の都合が優先されてしまう無力感に苛まれる昨今である。

 司書として働く人たちは、熱心で使命感をもっている人が多い。箱モノとしての図書館ではなく、蔵書構成、整理、選書、レファレンス、出納業務などを利用者目線でこなすためには、暮らしのできる報酬とともに、安心して、長期展望のもとで働き、研鑽できる環境が必要で、ときには他館の利用者となってみる余裕があってもよいはずである。

 新町にある佐倉図書館が、移転新築されて、来年3月には開館予定であるというが、その建設費25億が30億に膨らみ、総額37憶5000万円になるという。総合施設の中の地下スペースが図書館になるとして、市民団体が反対運動をする過程で、様々な問題が浮上、いま裁判にもなっている。そして、こともあろうに、新館の新規購入は、ヤングアダルト用と大型絵本に限るという方針が打ち出されていることがわかった。何を考えているのか、図書館は崩壊の道を歩んでいる。

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「佐倉図書館等新町活性化複合施設実施設計」のパースの一枚。この入り口のキャノピーだけでも5000万円、いまでも、必要性と安全性を問い続けたい。

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「よりよい佐倉図書館が欲しい会」の会報53号には、姿を現したキャノピーの写真が右下に収められている。なんときゃしゃな造りで、風雨に耐えられるのだろうか。城下町?佐倉に似合いそうもないではないか。

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2022年6月19日 (日)

今、「自治会と寄付金」はどうなっているのか~日赤、社協、消防団、地域の祭り・・・、佐倉市は?!

 定着しつつあった「寄付は個人の自由」

 昨年度、十数年ぶりで、地域の自治会の班長の役が回ってきた。コロナ禍のため、活動は極端に縮小し、月一回の班長会の参加とそのときに手渡される会報と行政からの配布や回覧物を班の人たちに届けるのが仕事だった。
 その中には、日本赤十字社、市の社会福祉協議会への寄付へのお願いのチラシと当自治会が用意した集金袋もある。当ブログでも、相当しつこく?自治会が会費以外に、他団体への寄付を募るのは違法だと言い続けてきたし、もう20年前にもなろうか、私が自治会長を務めていたとき、役員会での協議の末、班長の戸別訪問による一律500円会費(日赤の場合は「社資」)の集金を廃し、自治会員の自由意思による寄付ということで、集金袋の回覧方式に変更し、定着しつつあった。
 私たちの自治会では、集金袋を回す際に、集金袋には、寄付は強制はでなく自由意思によるもので、会費(社資)として一口500円以上収める者は小袋に住所氏名を記して入れることになり、領収書は後で発行、届けるという仕組みとなって久しい。何回か当ブログでも紹介したが、その上、近年には、自治会長名による「補足説明」が集金袋といっしょに回覧されるようになり、寄付は自由意思によるとの念押しもされて、「進化」してきたなと思っていた。私としては、さらに自治会が「募金」に協力すること自体、止めにして欲しいと願うばかりなのだが。
 さらに、いつからか自治会が拠出するようになった「消防団協力金」、また、地域のNPO法人となったボランティア団体へ団体会員として納めている会費、地域の商店会などによる広域の祭りへの協力金が自治会財政から支出されていることも気になっている。これまでも、消防団員が特別地方公務員であることからその違法性が問われ、あとの二者についても、会員の意思にかかわらない自治会としての支出は、適切ではないとする意見書や要望書を佐倉市や自治会にも提出してきたが、改まる気配はない。

 先日、佐倉市が、毎年、年度初めに、市内の自治会長、町内会長・役員を集めて実施する説明会に配布する「自治会等役員の手引き」を、久しぶりにホームぺージで確認したところ、「手引き」の曖昧な文言は、相変わらずではあった。ところが、これはいつからホームページに載せるようになったのか不明だが、問答式の「自治会等問題解決の手引き」というものが掲載されていた。「令和3年4月改訂」版に「募金の収集で悩んだら・・・」①という頁に行き当たった。拡大して読んで欲しい。

朱文字で、コピーしてみると・・・。
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問 募金の収集で悩んだら・・・
事例 (前略) A自治会長は、募金を自治会費にあらかじめ上乗せして集めることを考え、総会にかけることとした。
一つの解答案
1.募金の一律収集は危険
 自治会費から寄付金や募金等を出すことは危険です。寄付金や募金は、本来、個人の自由な意思のもとに行われるものです。一方、自治会費は、会員に対して金額の差が生じる場合があっても会員であることを理由に一律に課されるものです。特に事実上自治会が抜けられない等の状態にある場合には、思想・信条の自由を侵害する可能性が高まります。この様な募金の収取を定める総会決議は無効となる可能性が高いです。

裁判例としては以下のものがあります(略)

2.会費からの募金への振り替えも危険
 上記の裁判例の趣旨は、一律徴収というやり方の問題ではありません。また、自治会からの制裁的な対応があることを問題にしたものでもありません。ポイントは会員の意思に反するような方法で募金を集めてはいけないということです。したがって、会員の同意もなく自治会費の一部を募金へ流用してしまうようなことも危険です。
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 上記の文書①「1.募金の一律収集は危険」の後略部分の「裁判例」は、2008年8月31日最高裁決定により上告棄却となったので、大阪高裁2007年8月24日確定した判決の要旨である。判決文というのは、いつ読んでも、何回読んでも、意味がとりにくいし、判決独特の言い回しがあるので、まさに要注意なのである。とくに、佐倉市が要約した上記下線部分「一方、自治会費は、会員に対して金額の差が生じる場合があっても会員であることを理由に一律に課されるものです。」などは、どういう状況を指しているのかわかりにくい。しかし、見出しは「募金の一律収集は危険」と警告しているのである。
 また、「2.会費からの募金への振り替えも危険」の下線部分以降の「ポイント」部分は明快だが、前段は、「一律徴収も可」、「自治会の制裁的な対応も可」とも読めないか。しかしここでも、会員の意思に反する方法での募金集め、「自治会費の募金への流用が危険」であることを警告していたのである。これまでの、「手引き」などでの曖昧表現や文言に比べると、ともかく「募金の一律徴収」と「自治会費の募金への流用」が自治会としては危険なことを明言するようになったとの感慨もある。

 佐倉市は、なぜ後退したのか

 ところで、この記事を書くにあたって、もう一度、市のホームページににアクセスすると、6月1日付で、「自治会等役員の手引き」の令和4年度版と「自治会等問題解決の手引き」が掲載されていた。あらためて、両者の必要個所を確認してみると、前者の「手引き」の内容は前年度とほとんど変更はなかった。後者の「問題解決の手引き」の表紙には「令和3年4月改訂」と記されていたので、これも昨年度と変わりはないだろうが、念のため、同じ28頁の「募金の収集で悩んだら・・・」②を見ると、設問も変わりがないまま、下記のように変更されていたのである。

 裁判例はまったく同じながら、その前後を拡大して読み比べて欲しい。
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2022

一つの解答案
〇募金の一律収集は注意が必要です
募金を自治会費に上乗せして集める場合は注意が必要です。募金は自治会費に上乗せして強制的に徴収するとした決議は無効であるとした裁判例があります。

裁判例としては以下のものがあります。(略)

〇自治会内で募金について様々な意見が出た場合
募金は任意であり、強制力を伴わないものです。会員から募金について様々な意見が出た場合は、総会や役員会等で十分話し合ってください。
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 最初に、ホームページで閲覧した日は、何日だったのだろう。5月下旬だったようにも思う。「問題解決の手引き」の方は「令和3年4月改訂」と銘打って、何の変更もないような体裁ながら、少なくとも、28頁に限っては、重大な改変がなされていたのである。昨年度の「警告」は何であったのかの思いが強い。「警告」は、いつの間にか?実にどうともとれる短い文章に変更されていた。「自治会と寄付金」の佐倉市のスタンスは確実に後退したのである。昨年度分も、一昨年度分も、過去のものはホームページ上では確かめることができない。これって、もしかっしたら、公文書改ざん?!

 一律に集めて欲しい、上乗せして集めて欲しい募金団体からのクレームでもついたのか、そうした団体に関係のある会員のいる自治会やいささかでも手間が省けると考えた自治会役員たちから抗議があったのか。いや、行政内部で異議が出たのか・・・。

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上記は、拙稿「私の視点/自治会と寄付金~一律集金に異議を唱ええよう」『朝日新聞』2014年3月17日。2016年には、TBS『白熱ライフビビット』の「自治会特集」コーナーに出演?したり、『朝日新聞』の「自治会は、今」シリーズの取材を受けたりしました。

なお、当ブログの関連記事の主なものをまとめてみました。その他の関連記事は、ブログのカテゴリー「寄付・募金」の検索で見ることができます。

自治会費からの寄付・募金は無効」の判決を読んで―自治会費の上乗せ徴収・自治会強制加入はやっぱりおかしい(2007年8月31日)
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2007/08/post_6d09.html

赤い羽根共同募金の行方~使い道を知らずに納めていませんか1~3(2009年12月7日、9日)
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2009/12/post-2f90.html

http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2009/12/post-dd38.html

http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2009/12/post-8c19.html

自治会の募金・寄付の集金の問題点~やっぱりおかしい、全社協や共同募金会の考え方(2010年11月8日)

http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2010/11/post-1838.html

消防団・社協・日赤などへの寄付を強制されていませんか~自治会の自治とは(1)(2)(2017年4月9日)
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2017/04/post-8f66.html

http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2017/04/post-7804.html

http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2010/11/post-1838.html

赤い羽根共同募金」の使い道、ふたたび(2019年10月2日)

http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/cat20187440/index.html

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