2008年6月 4日 (水)

「考える街。ユーカリが丘」って、ディベロッパーは何を考えているの(2)

これって記事、広告?

 「毎日新聞」の企画特集「役立つ住宅情報」は、首都圏を対象にしている広告記事で占められる。住宅メーカーやマンション業者の販売広告や情報記事が載る。紙面1頁分の構成としては一般記事と紛らわしいのが“特徴”といっていい。だから、唯一署名入りである住宅事情の時評的な「櫻井幸雄の住アドバイス」が特定業者を褒め上げる記事を書いても話し半分で読み流すことが多い。 

2008529日「櫻井幸雄の住アドバイス」の見出し「ユーカリが丘 まれに見る個性・先進性」が目を引いた。末尾の肩書きは「住宅ジャーナリスト」となっている。ユーカリが丘に20年も住んでいる者にとっては、ああ、「また山万がガンバッチャッテ」の思いが先に立つ。山万の開発手法やイメージ先行の広告を間近で見ている住民にはやや食傷気味のフレーズなのだ。

森と水に囲まれたァ~♪

このブログでも、何度か触れているのだが、私が住んでいる住宅街は、この業者が7割近く所有していて、業務代行を務める土地区画整理事業による開発区域に隣接している。宅地造成が完了した工区に、いま、14階のマンションが建設中で、日に日に積み上がるコンクリートの物体は、工事の騒音や振動とともに周辺の住民を不安に陥れている。私たちが住み始めた20数年前、マンションが建つあたり一帯は、戦国時代の井野城跡、鎮守の森に続く雑木林で、市街化調整区域だった。事業組合が認可されると、森は伐採、山は切り崩され、その切り土はくぼ地に盛られ、八社大神の境内の杜だけがお椀を伏せたように取り残され、造成された。その造成過程では、トラック800台分の産業廃棄物が持ち出されたという経緯も発覚した。30度に近い盛り土の傾斜地が2度にわたって崩れ落ち、幹線道路からのこの街区への導入路は傾斜10度に近い危ない橋だった。この盛り土の上に建設中のマンションは、ゴールデンウィークから「森と水、都市機能を備えた、環境共生・子育てを考えた」をキャッチフレーズに販売を開始した。周辺に残る森や水田は、30年以上前、ニュータウン開発当初、山万の買収に応じようしなかった農家の集落と田んぼだったのである。その農家の当主の一人は「われわれが守ってきた森と田んぼなのに、よく言うヨ」と苦笑するのだ。

スーパーがいつのまにコンビニに!

さらに、このマンションの西に位置する私たちの家並みの多くは、日照時間が大幅に短縮されるのは必至。また、マンション入居者には、近接商業施設が必需だが、その建設が、狭い斜面地に私たち住宅街側に寄せて計画され、屋上に駐車場を設置するという。私たちの生活道路や通学路は、500戸以上の新マンション入居者や商業施設・新設公園などを利用する車輌の抜け道となり危険にさらされる。また、数年前、別のマンションの完成時にオープンした近接スーパーがすぐに撤退、コンビニに変わってしまったのを目の当たりにしている。入居者のお年よりは、スーパーがなくなるなんてだまされた、コンビニなんか用がない、と。そんなこんなで、私たち既設住宅街の自治会は環境保全のために、さまざまな要望を行政や山万に提出するのだが、都市計画や開発関係法令を楯になかなか応じようとしないのが実態である。脱法にも近い、法令をギリギリ、クリアすれば事足りるのか、そんな場面を何度も見せつけられている。かつての顧客だった私たち旧住民をこんなにもないがしろにしていいものなのだろうか。このディベロッパーのやることなすことに信頼が置けなくなっているのだ。

評論家って?

先の新聞の広告記事の執筆者「住宅ジャーナリスト」は、業者の宣伝文句そのままに「ニュータウンを何十年もかけて1社で開発するのは、私が知る限り日本ではユーカリが丘だけ」、保育所から老人ホームまで、住宅販売からリノベーションまで、「生涯不安なく生活できる街をというのも先進性の表れ」と書く。マンション販売開始にあわせて、55日に、山万は「住宅評論家櫻井幸男先生と巡る<街の見学会>と<マンション見学会>、櫻井先生がこっそり教えるマンション購入のためのセミナー」を実施したことを後で知った。ああ、やっぱり。

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2007年8月 4日 (土)

佐倉市「マンション紛争あっせん条例」ってこんなもの?

組合清算前、業務代行によるマンション着工あり?

井野東土地区画整理組合の開発事業は、とにもかくにも、いま、どの工区でも工事たけなわである。その第4工区は、このブログでも再三お伝えしているが、一回り123分の新交通システムの内側は、田んぼや里山、古くからの集落が広がるが、辺りの人々の鎮守の森であった里山の一つ「宮ノ台」のわずかな境内地を残して、宅地造成が完了した。しかし、隣接の住宅街の道路より高さ6m以上の盛り土による造成、産廃処理の不手際、盛り土の崩落などが重なり、近隣住民の怒りが爆発、井野東開発対策協議会が作られ、2年をかけて、20072月下旬には組合・業務代行山万と対策協との「覚書」が交わされた。その第4工区9㌶あまりは、組合の業務代行、地元の開発業者「山万」が清算に先立ち、山万の換地となる特約のもと、マンション建設が始まろうとしている。それだけでも、組合事業と名乗るものの業務代行の恣意がまかり通るものだと驚く。第4工区はもともと市街化調整区域だったのだが、第1種低層住居専用地域に変更されるかなり前から、変更を前提に、宅地造成工事が先行していた。都市計画法によれば用途地域の変更には、縦覧、意見提出、公聴会、都市計画審議会の審議などの手続きが前提となっているが、形骸化も著しく、セレモニー化し、変更案が変更されることはまずないのが、現状である。だから、行政も事業者(組合・業務代行)も前倒しの宅地造成など当然のこととみなしている。私たち住民の「もし変更案が白紙になったらどうするのか」という問いには、行政は、組合・業務代行のリスクで先行しているので、心配には及ばない?!という。要するに、事業者ペースでの進行であって、隣接・近隣住民の声を聞こうというスタンスはなく、住環境保全は二の次なのだ。

そして、さらに、地権者への換地と保留地が決定していない時点でのマンション建築が可能であることなど、私たち素人には分りにくい。保留地処分の価格決定の甘さから頓挫し、清算できないまま解散ができない組合、その過程にある赤字組合は千葉県下でも続出しているというのに。業務代行(業者)のペースでの開発の失敗のツケが零細の地権者に及ぶケースもある。地権者が清算金を拠出しなければならない場合や減歩率が極端に高くなる場合もある。そして、工事途中の荒地のまま放置される例も見聞きするではないか。

マンション建築計画の看板が立った!

私たちの住宅街に隣接する第4工区にいくつかの建築計画を持つ山万は、「覚書」(20072月)において、まず地上13階・地階合わせて14階建て、325戸のマンション建築計画を明らかにした。そして3月のある日突然、「マンション建築計画概要」のたて看板が設置された。一見「覚書」に添った内容の計画と思われたが、戸数、高さ、階数などが微妙に異なっていることがわかった。

佐倉市には、20023月に制定した「佐倉市中高層建築物の建築に係る紛争の予防及び調整に関する条例」「同条例施行規則」がある。あるマンション業者と近隣住民とのトラブルがきっかけになって制定され、紛争解決と予防のための、行政が業者と近隣住民の間に入る、いわゆる「あっせん条例」である。条例では、近隣住民の見やすい場所に建築計画概要を示す「標識」を立てなければならないことになっている。私たちが目にした看板は、日付の欄が空欄になっているものだった(平成193月○日)。

 また、条例では、建築確認申請の20日以上前に、先の標識設置届け出提出後10日間後の期間に隣接住民の場合は説明済み報告書を提出しなければならないし、近隣住民には申し出による説明後の報告書を提出しなければならないことになっている。標識設置日は、これら手続きの起算日になっているにもかかわらず、空欄である上、事業者の隣接住民への説明義務、近隣住民への申し出による説明義務を周知する文言は、看板のどこにも表示されていない(ちなみに、前者は建築物敷地の隣接地の住民、後者は建築物の高さを敷地境界から2倍の距離の範囲内の住民を指す)。条例の標識設置の根拠条文の表示もない。これでは、多くの近隣住民、この標識設置の意味は分からないにちがいない。少なくとも私は、今回、件のマンション建築確認申請が65日になされているにもかかわらず、いまだに確認済み証が下りていないことに端を発して、行政に問い合わせなどして知ったことだった。

建築基準法改正で、確認検査手続きは遅れている

そして、今回のマンション建築確認申請手続きを調べてみると、「建築計画概要」の近隣住民への説明に瑕疵があった。確認申請の取り下げか、やり直しが事業者・行政の「法令順守」と思うのだが、まるで「そんな細かいことまでやってられない」「条例は努力目標だ」といわんばかりの態度なのである。些細な法令違反は補正で処理されるのが従来の慣行であった。

姉歯事件がきっかけで建築基準法が改正され、確認検査業務は厳格化するという。これまでは、確認申請後21日以内の交付であったのが、今後は35日以内と延長された。改正直後だから手間取って交付が遅れているのだろう、交付はその日にならないと分からない、と山万はいう。しかし、新法の適用は620日以降の申請からで、今回の申請は65日だから、旧法でのいわば駆け込みである、といえる。新法ではさらに、高さ20m以上の鉄筋コンクリート造などは専門家チェックが義務化され、審査機関は最大70日まで延長されている。今回の当地のマンションは申請日からしてあくまでも旧法扱いではあるのだが、8月4日現在、申請後60日以上経つが、未交付なのだ。申請内容の実質的な審査で長引いているのか、移行期間で混乱しているのか、私たちはどこまでも、事業者や行政、民間の確認検査機関への不信を拭い切れないでいる。             (20078月4日)                      

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