2026年8月30日 (日)

NHK夜ドラ『税金で買った本』ってどんなドラマになるのかな?

 図書館が舞台のドラマと聞いて、見ないわけにはいかないと、先週月~木曜日の4話分を録画だったり、リアルだったりで、見ることになった。
 原作は「週刊ヤングマガジン」(ずいの作、系山冏画)で、2021年12月からの連載で、人気が高かったという。この頃のテレビドラマには、原作が漫画というのが多いのではないか。
 シングルマザーと暮らすヤンキーな息子が、昔、読んでもらった本が懐かしくなって、町の図書館に出かけ、利用者カードを作ってもらい、手にするまでの間に、図書館には、本を貸すだけではない様々な仕事、レファレンス、未返却本の処理、破損本の修理、プライバシーの保護などが、女性の非常勤職員や男性職員らによって語られてゆく。そんな中で、アルバイト先からクビを言い渡され、途方に暮れていたところに、その図書館のアルバイトに採用されて、4話は終わる。

 原作者は図書館勤めの体験があるというだけあって、なるほどということもあった。でも、当方としては、公共図書館の利用者ではあったが、国立図書館、短大図書館、大学図書館勤めが合わせて30年余りの身としては、ツッコミたいところもあった。それでも、これから、どんな展開になるのか、楽しみでもある。

 今回のドラマのキャストは、ほとんど名も知らない人ばかり。原作漫画でも主人公の女性職員は丸い眼鏡をかけている設定で、いかにもという感じ。一種の固定したイメージがあるのかな。私の記憶にあるドラマの図書館職員は、古くは、1979年と80年の正月に放映された向田邦子原作の「阿修羅のごとく」である。4人姉妹を演ずる加藤治子、八千草薫、いしだあゆみ、風吹ジュンの三女のいしだあゆみが図書館勤めで、まるっきり男っ気がないという設定であった。父親、佐分利信の愛人問題が発覚したところから始まったのではなかったか。また、ついこの間のような気もしたのだが、調べてみると2001年1~3月放映のTBSのドラマ「ビューティフル・ライフ」も、常盤貴子が車椅子の司書を、木村拓哉が美容師を演ずる恋愛ものであった。いわば、図書館のバックヤードにまではいたらない“図書館”が舞台ではなかったか。

 当方は、最初の図書館では、レファレンス部門の法律担当に回された。当時は、来館者、文書の問い合わせとともに、電話での問い合わせも多かった。来館者や電話での問い合わせは、時間との勝負で、部屋にある辞典・事典、文献目録、雑誌索引、先輩たちが残してくれたさまざまな書誌やカード目録が頼りだった。それでもわからないときは、時間をもらって、膨大なカード目録の検索、書庫に入っての文献の検索、確認の必要があった。まだパソコンなどない時代だった。

 連れ合いの仕事の関係で、名古屋の短大図書館に転職してからは、図書・雑誌の選書、発注、受け入れ、分類・整理、カードの整理、配架などを少人数の職員で手分けしてこなし、交代で、図書の貸借や相談を受け付けるカウンター業務につくという過酷な泥くさい仕事だった。エプロンと首に巻くタオルは必需品だった。1970年代後半から80年代は、私にとっては子育てのさなかではあったが、夏休みの1週間、愛知学院大学の司書講習会で、参考業務演習を担当したことも忘れ難い。200人近い受講生にレファレンスの楽しさを、どれほど伝えられたか分からなかったが、自身が学びながら楽しむことができた貴重な体験であった。 そして、千葉県に転居してからは、新設大学の図書館に転職することになったのだが、ここでもわずか数人で、アルバイトや機械の力も借りながら、図書館業務全般をこなさければならなかった・・・。

 そんなこともあって、退職後、公立図書館の様子も知りたくて、市立図書館の非正規職員募集に応募したこともあったが、採用されなかった。現在、公共図書館では、職員の4人に3人が非正規職員というのが実態である。さらに、管理の程度は様々であるが、市町村立図書館で指定管理者制度の導入も始まり、20%を超えている。佐倉市でも、指定管理制度の検討に入ったという。図書館はどこへ行く。

 そうそう、「税金で買った本」に戻れば、アルバイトといえども、あんな簡単に採用されるものかなあ、というのも疑問だった。
 以下、過去の当ブログ記事もご参照ください。

 図書館の「指定管理者制度」についての講演会へ(2025年8月 4日)
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2025/08/post-757383.html

図書館を支える人々~非正規と障がい者の方々の待遇の実態(1)(2023年9月10日)
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2023/09/post-52425b.html

 

| | コメント (0)

2026年6月30日 (火)

きのうの「NHKニュース7」はひどかった!

 きのうの「NHKnews7」は二重の意味でありえない報道番組であった。

 一つは、サッカーのブラジル戦を6時間後にひかえたという触れ込みで、それは丁寧な解説をしての「番組宣伝」であった。30分番組の12・3分ではと思っていたところ、NHKoneで調べてみると、なんとトップ13分32秒間、延々と続けていたことになる。その後、広島三原市の強盗殺人事件、近鉄の京都駅脱線事故が3分間弱で続いた。その後、衆院定数削減法案が委員長職権で審議入りしたことと皇室典範改正案が自民党部会で了承したことの二件を併せて、たった3分36秒間の放送だったのである。続いて、ベネズエラの地震、中国の対日輸出禁止措置に関して20企業の追加、大相撲名古屋場所番付発表、気象情報で終了。

 公共放送たるNHKが、自分の局の番宣に報道番組の半分近く使うという編成は、どう考えても異常である。もはや受信料納入の根拠は失ったといってもよい。

 もう一つは、皇室典範改正のニュースで、昨日6月28日、富山県の高岡市での中曽根弘文議員による講演の中での皇室典範改正をめぐる発言とその釈明についての放送であった。 

 中曽根議員は、天皇の長女愛子さんには皇位継承はあり得ないし、天皇になっても結婚はむずかしい、という主旨の発言をしたことについて、その発言への批判が高まり、釈明したという内容だった。

 放送では、中曽根議員が「皇位継承をめぐって皇室典範の規定などに触れたうえで「愛子さまはすばらしいが、愛子さまはありえない。『法律だとこういうふうになっている』というのを、しっかり国民に知ってもらわないと、おかしな方向に議論がいってしまう」と述べたことと、「言葉が適切でなったことは反省している。現在の皇室典範などを述べたものだ」と報じていた。

 そして、下のような画面とテロップが流れたが、一瞬、テロップの意味が分からなかったのだ。「皇位継承をめぐり、皇室典範の規定などに触れた上で、“愛子さまはすばらしいが、愛子さまはあり得ない”」??

Nhkimg_3493
6月29日 NHKnews7より。

Photo_20260630010001
6月29日日テレより。

 あわせて、他局のニュースを見ていると、中曽根発言の中身が分かってきた。共同通信によると、講演では、「愛子さまが天皇になったら、結婚する人もいない」「愛子さまが天皇になった場合には、男子を産まないといけないという、すごいプレッシャーがある」とも述べている(6月28日)。また釈明の弁では「皇室典範を根本的に変えれば別だが、今の皇室典範や国会の議論において愛子さまが天皇陛下になることはないということを申し上げ」、結婚する人もいないとの発言についても「世間の期待が高く、個人的な心配を述べた。もちろん愛子さまの幸せな人生を願っている」と語っている(6月29日)。

 また、北日本放送によれば、「愛子さま素晴らしいし、本当に愛子さまの気持ちはよくわかるんですよ。すでに愛子さまはあり得ないんですよ。それでもみんな、愛子さま愛子さまとやっているというのは、マスコミの責任がありますけども、まず法律がこうなっているんですけども、しっかりと国民の皆さんに知っていただかないと、おかしなことがずっと議論が起きてしまう」と、生の発言を記事にしている(6月29日)。

 中曽根議員の発言は、まさに、その通りで、現在の「皇室典範」でも、改正案であっても、愛子さんは天皇にはなれないことは明白である。それを、マス・メディアは、世論調査の結果を踏まえ「女性天皇・愛子天皇」への待望論を展開している。それに、大方の野党、共産党までが、リベラルと称する論者やフェミニストたちまでが、本気でこれに乗じているのが現状である。 そして今回の中曽根発言は与野党からの反発・批判も強めている。
 日付が変わると、女性週刊誌は、女性蔑視のハラスメントではないかとか、「男系男子にこだわりあらわ」(朝日新聞)という記事にまでなってしまうのである。
 ふたたび、NHKのテロップの話に戻るが、「愛子さんの皇位継承はあり得ない」という中曽根発言の主旨を少しでも和らげようと腐心したのではないか。中曽根議員の思想信条とは、およそ相容れない私だが、こと皇室になると、当たり前のことまで口を封じられてしまい、表現が不自由になってしまうことが怖ろしい。

 

 

| | コメント (0)

2026年5月 5日 (火)

憲法改正、急ぐに及ばず~憲法記念日の世論調査にみる

  5月3日の朝日新聞は「高市政権で改憲 賛否拮抗 本社世論調査 賛成47% 反対43%」、毎日は「改憲《賛成》37% 本社世論調査 首相人気 機運押し上げ」と一面で報じている。憲法記念日恒例の世論調査である。この日のための世論調査の結果報道、社説や特集が組まれ、市民団体による意見広告も散見できる。

  この頃、「世論調査」というのに疑問を持ち始めている。まず、思うのは設問・回答の在り方と回収率の低さと調査方法である。最近、ケータイや固定電話に、何か所からかのさまざま「世論調査」らしき電話を受けるようになったが、私自身、警戒心の方が強く切ってしまうので、回答者が世論を反映しているかな、と思ってしまう。かつて、新聞社の文書による世論調査を受けたことがあり、その時はもの珍しさもあって、じっくり考えて記入したものである。

朝日新聞の見出しになっている賛成47%というのは、
・「高市首相は憲法改正を目指すことを明言しています。高市政権のもとで憲法改正を実現することに、賛成ですか、反対ですか。」

  という設問の回答だったのである。正直、この質問には、私だったら回答できない。この設問の直前の二問の問い方とその回答も付してみた。

・「自民党は、憲法9条の1項と2項をそのままにして、新たに自衛隊の存在を明記する憲法改正案を提案しています。こうした9条の改正に賛成ですか、反対ですか。」賛成52%、反対40%
 賛成の理由:明記することで、海外活動がしやすくなる21%
   反対の理由:明記することで、自衛隊の海外活動拡大の恐れがある25%

・「いまの憲法を変える必要があると思いますか。変える必要はないと思いますか。」必要がある49%、必要はない44%

 これらの設問の幾つか前には、つぎのような設問もある。

・「以下は、憲法第9条の条文です。(条文略)憲法9条を変えるほうがよいと思いますか。変えないほうがよいと思いますか」 変えるほうがよい30%、変えないほうがよい63%

 9条に関しては、二つの設問があって、一つは、条文をあげて、1・2項の変更の有無を問うもの、一つは、その後に設けられていて、1・2項はそのままに、(3項として)自衛隊の明記の可否を問うものであった。回答から見えてくるのは、現行9条の「戦争の放棄」と「戦力及び交戦権の否認」はそのままに、自衛隊を明記するというのが大きな流れのように読み取ることができる。

以下の画像は、いずれも拡大て読めます。

20260503
朝日新聞2026年5月3日朝刊、「世論調査」結果の一部

 他の新聞、NHKを見てみよう。憲法改正という設問は共通しているが、毎日が高市首相在任中という条件を付けているが、憲法改正の賛成・反対はたしかに拮抗していると言える。読売とNHKは、改正賛成は、反対をかなり上回っている。もっとも、NHNの世論調査は、「どちらとも言えない」が賛成と同様38%を占めている。NHKの世論調査では、「どちらとも言えない」の選択肢を設けるのが「得意技?」と言ってもよい。ときには「どちらかと言えば賛成」「どちらかと言えば反対」の選択肢を設けることもある。今回は「どちらとも言えない」の選択肢によって、賛成、反対の差を広げたようにも思える。「どちらかと言えば・・・」の回答を用意していたら、賛成・反対の差は縮まるのではないか。

20260505_20260505113901

Nhk9

 朝日と読売は、今回、憲法改正問題だけでなく設問は多岐にわたっているのが、他と異なる所であり、憲法9条についても、両者は、同様である。「自衛隊明記」といういわば「加憲」に特化した設問もNHK以外は用意しているが、いずれも明記に賛成する方がかなり上回っていることがわかる。その理由を問うている朝日の結果によれば、明記賛成の理由で多いのが「海外での活動がしやすくなる」で、反対理由で多いのが「海外での活動が拡大する恐れがある」という真逆の理由であった。

 なお、読売は「今後、9条はどうあるべきか」の設問の回答の選択肢として、つぎの三つを用意していたが、その結果から、①+③を「改正しない」とカウントした。

①これまで通り解釈や運用で対応する43%
②解釈や運用で対応するのは限界なので改正する38%
③9条を厳密に守り、解釈や運用で対応しない12%

20260505
読売新聞2026年5月3日朝刊、「世論調査」結果の一部

 なお、今回調査の対象としなかったが、日本経済新聞の世論調査で「高市首相に優先的に処理してほしい課題」として、憲法改正は8つの選択肢の最下位で、11%に過ぎなかった。また、NHKの設問はいささか異なるが、今国会において、「憲法改正以外の課題を優先すべき」だとする回答が、52%も占めていた。

Photo_20260505110901
日本経済新聞デジタルニュース、2026年5月2日より

Photo_20260505110902
NHK2026年5月3日、
news7より

 世論調査自体は、その回収率からしても、どこか頼りないのだが、各社の結果を総体的にみると、要するに、国民の大半は、いま、憲法改正を望んではいないということではないか。なぜ、そんなに急ぐのか。「法の支配」と「自由と民主主義」を標榜する国のやることかと、不安は増すばかりである。

 

 

 

| | コメント (0)

2026年1月14日 (水)

「歌会始」の不思議~ことしもまたいろいろ

今日、1月14日は、皇居での「歌会始」であった。応募歌数は15000首を超えたが、有効だったのは14600首だったという。近年は、14000から16000首を推移している。

題は「明」、入選者10人の短歌と選者栗木京子、召人ピーター・J・マクミランさんの短歌に続いて、愛子さん、紀子さん、皇后、天皇の歌が朗詠された。

入選者は、17歳の高校生、18歳の大学生から、81歳まで、男女各5人、教員・元教員が3人、青森県での東日本大震災、石川県の熊本地震の被災者の歌が各一首、さまざまなバランスを配慮した、全体的に素直で、伝統的な歌いぶりの十首に思えた。20代、40代がゼロ、30代1人、ほか50代以上が7人で、応募者も偏在していると推測される。また、「新潟日報」(1月14日)によれば気になるのは、高校生の入選者は、おなじみの東京学館新潟高校の生徒で、佳作14人の中にも3人いるそうだ。組織的な大量応募の結果で、私学の広報に利用されてはいないか。いや、歌壇や選者たちが「歌会始」自体を利用している実態も否定できない。

 「歌会始」を国民と皇室を結ぶ文化的、伝統的な行事と位置づける向きもあるが、身分制度をあらわにしたイベントの一つにはちがいない。応募者の短歌はすべて天皇に「詠進」されるものであって、入選者、選者、皇族たちの歌が朗詠される間、当事者は立ち上がる。皇后も同様である。天皇の歌が朗詠されるときは、天皇以外全員起立する。天皇の歌が3回朗詠されるが、皇后は2回、その他は1回という。果たしてこれが日本国憲法下の文化的行事と言えるのだろうか。

 NHKの中継が始まったのは、1962年からで、「歌会始」当日発表されるまで、作品の報道は「禁止」されているが、NHKは入選者、入選歌関係の事前の取材は怠りなく、当日の中継で披露される不思議。まさに国営放送ではないか。

 <参考>

①「歌会始の儀 「明」お題に、陛下 新年の平安への祈り詠まれ、悠仁さま初めてご参列」(産経新聞オンライン 2026年1月14日12時50分)
https://www.sankei.com/article/20260114-QRMYMLCJHRNQXNRJ6FZVT64YL4/

②「歌会始選者5人決まる 宮内庁」(共同通信 2025年7月1日)
三枝昂之(81)=山梨県立文学館館長、日経歌壇選者▽永田和宏(78)=京大名誉教授、歌誌「塔」選者▽今野寿美(73)=現代歌人協会会員、歌誌「りとむ」同人▽栗木京子(70)=読売歌壇選者、歌誌「塔」選者▽大辻隆弘(64)=現代歌人協会会員、未来短歌会理事長
https://news.yahoo.co.jp/articles/62aaca23022b7f7878f1e3244c4f877e57fbacc8
ちなみに、永田は、朝日歌壇の選者でもあるし、栗木とは同じ「塔」の選者であることがわかる。三枝は「りとむ」の発行人で、今野は「りとむ」編集人で、
夫婦である。

 

| | コメント (0)

2024年11月23日 (土)

「再稼働の女川原発で父娘半世紀の闘い」を見ましたか

 今日の「報道特集」の<特集・再稼働の女川原発で父娘半世紀の闘い>は、女川の原発反対運動を半世紀以上も続けてこられた故阿部宗悦さんと娘の阿部美紀子さんに焦点をあてたものだった。2016年、旅の途中ながら、知人から紹介された阿部美紀子さんに女川町の津波の被害から復旧さなかの町と原発近くまで案内していただいたのだ。以降、女川から目が離せなくなって、当ブログでも何本かの記事を書いている。

当時の阿部美紀子さんは、東日本大震災の翌年亡くなられた父親の遺志を継いで町議をされていた。東京の大学を卒業して以来、船問屋だった宗悦さんたちの原発建設反対運動を共にすることになったという。原発が建ってしまった後も、さまざまな形の活動の中心的な役割を果たし、東北電力と対峙してきたことになる。番組では、10月29日の再稼働を目の当たりした口惜しさを何度も語っていた。

Photo_20241123233701

阿部さんは、仕事(町議を三期務めた)を辞めたそうだが、今年の7月7日、父宗悦さんの十三回忌に再稼働反対のデモ行進の様子が映されていた。参加した人々の掲げるさまざまなプラカードの言葉に東北電力はどう応えるのか。宗悦さんもきびしく見守っているに違いない。

76623img450-1
阿部美紀子さんが、25歳頃の父宗悦さんとの写真。

 2016年、鳴り砂で有名だった浜に海抜29メートルの防潮堤の先にある原発が見える小屋取浜に案内してくださった阿部美紀子さんが、長い反対運動を振り返って、しずかに語る、いくたびも味わった口惜しさは、私もいたく動揺しながら、胸に迫るものがあった。

I_20241123233401

<関連の過去記事のいくつか>

女川原発2号機、9月に再稼働か―電気料金が安くなる?(2024年6月20日 )
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2024/06/post-f2b257.html

 写真集『原発のまち 50年のかお』(一葉社)の勁さとやさしさ(2022年11月15日)
 http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2022/11/post-3f4728.html

 女川原発2号機はどうなるのか~再稼働反対の声は届かない(2020年10月30日)
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2020/10/post-bb75a1.html

 連休前、5年後の被災地へ、初めての盛岡・石巻・女川へ(6)(7)(2016年5月14日)
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2016/05/5-5cf0.html

 

 

| | コメント (0)

2023年12月18日 (月)

女性皇族は、皇室の広告塔? ~生き残りをはかる天皇制!

                                                                                                                                                                                      

近頃の皇室報道

 12月に入って、皇室の記事がやたら目につくようになった、一年を振り返るということもあるのか。この4月には、宮内庁に広報室が新設されたことにも拠るのだろう。雅子皇后が12月9日に60歳になり、12月1日には愛子さんが22歳になった。私の目にした範囲でも、大きく報道されていたが、皇后については、12月9日、公表された文書での感想と略年表、写真などを付した特集が組まれたりしている。

朝日新聞:「絆と歩む 自らの道」と題して、「誓った社会に貢献」「覚悟と努力の日々」1頁全面と社会面「皇后さま60歳≺また新たな気持ちで一歩を>」の記事(多田晃子)
毎日新聞:「<人の役に>たゆまぬ歩み」と題して、「苦労実り 大輪の花に」「雅子さま60歳 陛下の支えとともに」1頁全面と社会面「<新たな気持ちで一歩> 皇后雅子さま60歳に」の記事(高島博之)
東京新聞:社会面「皇后さま60歳に」「新たな気持ちで歩む」(山口登史)、4面「皇后さま60歳 感想要旨」の2か所の記事

 特集記事の表題や小見出しを見ても明らかなように、皇后の文書での感想をベースに、結婚以来の曲折を踏まえ、勤めに励んできたことを称えるスタンスであった。朝日、毎日では、ともに、皇后の中学時代からの同じ友人を登場させて、その友情にまつわるエピソードを紹介していた。その点、東京新聞の記事は短く、淡々とした報道に思えた。

 さらに、今年の4月に、宮内庁に広報室が新設して以来、皇室記事、とくに私的な動向を伝える報道が増えたような気がする。このところの推移は、前の記事に追加して、以下のような表にしてみた。

Img997_20231218204501

<参考過去記事>
天皇はどこへ行く、なぜインドネシアだったのか(2023年7月28日)
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2023/07/post-1eb3c3.html

宮内庁広報室全開?!天皇家、その笑顔の先は(2023年6月12日)
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2023/06/post-9183da.html

 

佳子さんの奮闘は、何を意味するか

 ネット上の朝日とNHKのデータをもとにして、調べて分かったことだが、ほぼ、同じ傾向を示している。一つ違うといえば、秋篠宮家関係が、朝日51件に比べNHKが68件と多いことである。皇位継承者上位二人がいることが配慮されているのだろう。記事内容を見ると、秋篠宮家の佳子さんの記事がかなりの数を占めていることもわかる。

 それというのも、宮内庁のホームページに登載の天皇家と秋篠宮家の「ご活動」をみると、なお明確になる。広報室からの発信と思われるが、ちなみに一家を含め佳子さんの活動件数をみてみると、4~11月において31件、この中には、イベントやペルー訪問に先立っての説明や進講を受けたりした場合も含まれ、10件近く、ほぼ3分の1を占める。これらは記事やニュースにほとんどならない。それにしても、佳子さんの参加イベント、公的な活動と思われるものが記事になり、ニュースになり、もしかしたら、単独活動では一番多いかもしれない。そもそも、女性皇族に「公務」はないので、あくまでも「公的な、純然たるプライベートではない」程度のことではある。

 一方、愛子さんは、ほとんどが天皇夫妻と一緒の活動であって、20件に満たないし、単独の活動は見当たらない。4月ウイーン少年合唱団の鑑賞、御料牧場静養、5月天皇夫妻の即位5年成婚30年記念展見学、8月那須静養、今井信子演奏会鑑賞、9月日本伝統工芸展見学、10月日本赤十字社関東大震災100年展見学、11月三の丸尚蔵館記念展、やまと絵展見学など、ほとんどが純然たるプライベートな活動にすぎない。これらの中には、一家で参加している養蚕関係行事も含むのだが、上記のほとんどが新聞、テレビなどで報道されている。「優雅で、文化的な、仲良し家族で結構ですね」との感想は持つが、報道の価値がいかほどあるものなのか、と思ってしまう。たんなるセレブ?の家族とはちがい、そんな暮らしを、国が、国民がストレートに支え続ける意味はどこにあるのだろうかと。しかし、憲法上存在する制度で、財政的に支えなければならないというのであれば、宮内庁は、全面的に情報を公開すべきであるし、新聞等での「首相の動向」のような欄でも公開すべきであろう。

 さらに、愛子さんの単独活動がないのは、共同通信配信記事「愛子さま、まだ単独公務の予定なし ほかの皇族に比べて遅いデビュー、その本当の理由は」(2023年12月10日)によれば、学業優先が主な理由として挙げられてはいるが、研究者河西秀哉によれば、皇位継承者秋篠宮悠仁の手前、現在皇位継承者ではない立場で、あまり目立ってはいけないという配慮があると言い、小田部雄次によれば、皇位継承問題が決着しない限り、単独公務はかなり難しいのではとの見解を紹介している。

 となると、佳子さんの今の活動ぶりは何を意味するのか。いわゆる公的活動を拡大して、さまざまな活動に積極的なのは、彼女自身の意向というよりは、宮内庁の方針で多様なオファーにつとめて応えているというのが実態なのではないか。

 皇位継承者と目されることもなく、いずれ皇室を離れるだろうから、いま一番人気の彼女にはどんどん励んでいただこう、広告塔のお役を果たしてもらおうというのが宮内庁、広報室の本音ではないかとも思えてくる。

 

たしかに宮内庁は、焦っている

 12月1日には、こんな記事も出ていた。「識者に聞く皇室」と題しての君塚直隆へのインタビューである(聞き手、須藤孝。『毎日新聞』2023年12月1日)。「生き残るため 国民の前へ」と題して「広報 隠すより赤裸々に」の見出しのもとに「政府や宮内庁の広報は発信(だけ)ではなく、隠したり抑えたりしています」、スキャンダルを恐れているのかもしれないが、スキャンダルはどの王室にもあるので、隠すのではなく、赤裸々に示して理解を求めた方がよい。さらに、政府の足らざるところ、弱者への対応を補っていくことを提案している。「赤裸々」だったかは別として、政府や宮内庁は、すでに、必死になって発信し、皇族たちも、戦争被害者、災害被災者、病者、障がい者など、いわゆる弱者と呼ばれる人々への「心のケア」を担ってきたことだろう。とくに、平成期の天皇夫妻が、見ていても痛々しいほど努力してきたことを垣間見てきたが、なぜ、これほどまでにして、天皇制は生き残らねばならないのだろうか。

 政府は、皇位継承者問題を先送りし、日本共産党も民主主義とは相容れない天皇制へのすり寄りを見せ、フェミニストたちでさえ、女系・女性天皇待望論を語り、差別の根源たる天皇制自体の問題から逃げているとしか思えない。宮内庁は、この難しい局面に立って焦っているのではないか。

| | コメント (0)

2023年8月31日 (木)

「雨の神宮外苑~学徒出陣56年目の証言」(2000年)における「加害」の行方

江橋慎四郎

 前の記事をアップしたあと、どうしても気になっていたのが、神宮外苑の学徒出陣壮行会で、学徒を代表して答辞を読んだ江橋慎四郎(1920~2018)であった。その答辞は漢文調で、番組で聞いただけではすぐには理解できないところも多かった。後で資料を見ると「生等今や、見敵必殺の銃剣をひっ提げ、積年忍苦の精進研鑚を挙げて、悉くこの光栄ある重任に獻げ、挺身以て頑敵を撃滅せん。生等もとより生還を期せず。」の「生等もとより生還を期せず」がいろいろと問題になっていることを知った。「生等(せいら)」というのも聞き慣れない言葉だったが、「生還を期せず」と誓った本人が、戦後、生還したことについて、いろいろ取りざたされたらしい。

 江橋は、出陣後の12月に陸軍に入隊、航空審査部に属し、整備兵として内地を転々、滋賀で敗戦を迎えている。戦後は、文部省を経て、東大に戻り、研究者の道を選び、「社会体育学」を専攻している。東大教授などを務めた後、国立の鹿屋体育大学創設にかかわり、1981年初代学長となっている。この間、「生還」したことについてのさまざまな中傷もあったりしたが、反論もせず、学徒出陣や兵役について語ることはなかったという。

 ところが90歳を過ぎた晩年になって、マス・メディアの取材にも応じるようになった。その一つに「終戦まで1年9カ月。戦地に向かうことはなかった。代表を戦死させまいとする軍部の配慮はあったかもしれない。ただ、当時はそう考える余裕もなかった」、 「僕だって生き残ろうとしたわけじゃない。でも、『生還を期せず』なんて言いながら死ななかった人間は、黙り込む以外、ないじゃないか」と語り、記事の最後では、「自分より優秀な学生もいたが、大勢が亡くなった。自分が話すことが、何も言えずに亡くなった人の供養になる。最近そう思っている」と結ぶ(「学徒出陣70年:「生還期せず」重い戦後 答辞の江橋さん」『毎日新聞』 2013年10月20日)。
 亡くなる前年の2019年になって、『内閣調査室秘録―戦後思想を動かした男』 の刊行に至った志垣民郎の心境と共通するものが伺える。

田中梓さん

壮行会に参加し、「雨の神宮外苑」に出演の田中梓さんが、今年の1月に99歳で亡くなっていたことを、数日前に届いた「国立国会図書館OB会会報」73号(2023年9月1日)で知った。田中さんは、私が11年間在職していた図書館の上司だった。 といっても部署が違うので、口をきいたこともなく、管理職の一人として、遠望するだけのことだった。ここでは「さん」づけ呼ばせてもらったのだが、温厚な、国際派のライブラリアンという印象であった。

「戦争体験」の継承、「受難」と「加害者性」

 この記事を書いているさなか、朝日新聞に「8月ジャーナリズム考」(2023年8月26日)という記事が目についた(NHKのディレクターから大学教員になった米倉律へのインタビューを石川智也記者がまとめている)。前後して、ネット上で「わだつみ会における加害者性の主題化の過程― 1988 年の規約改正に着目して」(那波泰輔『大原社会問題研究所雑誌』764号2022年6月
http://oisr-org.ws.hosei.ac.jp/images/oz/contents/764_05.pdf)を読んだ。後者は、一橋大学での博士論文のようである。

(1)「8月ジャーナリズム考」(『朝日新聞』2023年8月26日)
「8月ジャーナリズム」を3つに類型化して、①過酷な「被害」体験と「犠牲」体験を語り継ぐ「受難の語り」 ②戦後民主主義の歩みを自己査定する「戦後史の語り」 ③唯一の被爆国として戦争放棄を誓った「平和主義の語り」とした。「ここでは、侵略、残虐行為、植民地制覇などの『加害』の要素は完全に後景化しています。描かれているのは、軍国主義の被害者となった民衆という自画像です」と語り、「受難の語り」に偏重、「加害の後景化」への警鐘だと読んだ。「後景化」というのも聞き慣れない言葉だが、「後退」の方が十分伝わる。「加害」の語りが活発になったのは、戦後50年の1995年前後、歴史教科書問題、従軍慰安婦訴訟などを通じて戦争責任や歴史認識を問い直す記事や番組が多くなったが、それが逆に、右派からの激しい抗議や政府の圧力や新保守主義の論者の批判によって記事や番組は萎縮して、現代に至っていると分析する。

 しかし、私からすれば、外圧によって萎縮したというよりは、たとえば、NHKは、自ら政府の広報番組と紛うばかりのニュースを流し続けている。加えて、「受難」の語りに回帰したというよりは、むしろ積極的に昭和天皇や軍部、政治のリーダーたちの苦悩や苦渋の選択に、ことさらライトをあてることによって、加害の実態を回避しているようにしか見えないのである。「忖度」の結果というならば、番組制作の現場の連帯と抵抗によって跳ね返す力を見せて欲しい。そのあたりの指摘も見えない。現場から離れたNHKのOBとしての限界なのか。 NHKの8月の番組を見ての違和感やモヤモヤの要因はこの辺にあるのだろう。

 ここで、余分ながら、NHKのアナウンサーや記者、ディレクターだった人たちが定年を前に、民放のアナウンサーや報道番組のコメンテイター、大学教員となって辞めていく人々があまりにも多い。NHKは、アナウンサーや大学教員の養成機関になってはいないか。私たちの受信料で高給を支払い、年金をもつけて、養成していることになりはしまいか。受信料はせめてスクランブル制にしてほしい所以でもある。

(2)那波泰輔「わだつみ会における加害者性の主題化の過程― 1988 年の規約改正に着目して」(『大原社会問題研究所雑誌』764号2022年6月)
 那波論文は、「わだつみの会」の変遷を ①1950~58年『きけわだつみのこえ』の出版を軸に記念事業団体の平和運動体 ②1959~戦中派の知識人中心の思想団体 ③1970~天皇の戦争責任を鮮明にした運動体 ④1994~『きけわだつみのこえ』の改ざん問題で、遺族のらが新版の出版社岩波書店を訴えたことを契機に戦後派の理事長が就任した運動体 と捉えた。とくに、第3次わだつみ会の1988年になされた規約改正の経緯を詳述し、人物中心ではない、組織や制度からの分析がなされている。

 規約改正とは、以下の通りで、「戦争責任を問い続け」が挿入されたことにある。
・1959 年 11 月(改正前) 第二条 本会はわだつみの悲劇を繰り返さないために戦没学生を記念し,戦争を体験した世代と戦争体験を持たない世代の協力,交流をとおして平和に寄与することを目的とする
・1988 年 4 月(改正後) 第二条 本会は再び戦争の悲劇を繰り返さないため,戦没学生を記念することを契機とし,戦争を体験した世代とその体験をもたない世代の交流,協力をとおして戦争責任を問い続け,平和に寄与することを目的とする

 1988年以前から、天皇の戦争責任のみならず戦争体験者の加害者意識の欠如や戦争責任に対しての不感性を指摘する会員もいたが、この時期になって、会の担い手は戦後派が多くなり、会員の対象を拡大、思想団体を越えて行動団体への移行を意味していた、とする。さらに、「現在のわだつみ会は、さまざまな会の規約改正が政治問題にコミットし、戦争責任や加害者性にも積極的に言及しており、こうした現在の方向性は1980年代の会の規約改正が影響を与えている」とも述べる。
 しかし、現在のわだつみ会の活動は、私たち市民にはあまり聞こえてこないし、時代の流れとして、先の(1)米倉律の発言にあるように、戦争責任の追及や加害者性は、今や後退しているのではないだろうか。 

 余分ながら、那覇論文にも、学徒兵と他の戦死者を同列に扱うことによって「学徒兵がわだつみ会の中で後景化した」という記述に出会った。若い研究者が、好んで使う「視座」「通底」「切り結ぶ」などに、この「後景化」も続くのだろうか。

2023820
8月の半ばに、2週間ほど続けてゴーヤをいただいた。ご近所にもおすそ分けして、冷凍庫で保存できると教えていただいた。ワタを除いて刻み、ジッパーつきのポリ袋に平らに詰めて置けばよいということだった。なるほど。

 

| | コメント (0)

2023年8月19日 (土)

NHKの8月<終戦特集>散見(2)「アナウンサーたちの戦争」と「雨の神宮外苑―学徒出陣56年目の証言」

「雨の神宮外苑~学徒出陣56年目の証言」(2000年)

 Photo_20230819113101

   サブタイトルに「56年目の証言」とあるように、2000年8月の放映であった。雨の神宮外苑の学徒出陣のシーンは断片的には見ていたが、番組は、今回初めてである。新しく見つけたフィルムは15分で、それまでのニュース映像の約3倍ほどもあったという。行進中の学生のクローズアップや観客席に動員されていた学生、女子学生に、陸軍戸山学校の軍楽隊の様子まで撮影されていた。学生の表情からは、悲壮な覚悟が伺われ、ぎっしり埋まった観客席の俯瞰は、北朝鮮のイベント映像を見るようであった。

 1943年10月21日、文部省主催の「出陣学徒壮行会」に参加した。学生は、77校から2万5000人といわれ、5万人の観衆が動員され、多くの制服の女子学生たちも観客席から声援を送った。番組に登場する証言者の十人近くみなが70代後半で、見送った側の3人の女性は、70代前半だった。

 証言するほとんどの人が、あたらしいフィルムを見て、あらためてマイクの前で、当時の自分の気持ちと現在の思いをどう表現したらいいのかを戸惑いながら、語る言葉の一つ一つが、重苦しく思えるのだった。生きては帰れないという怖れ、時代の流れには抗することができない諦め、地獄のような戦場の惨状・・・複雑な思いが交錯しているかのようだった。

 また、同盟通信社の記者だった人は、東条英機首相が、学徒出陣に踏み切った理由として、二つの理由を挙げていた。一つは、学生への兵役猶予の見直しの必要性であったし、一つは、当時は大学生といえばエリートで、富裕層の子弟にも兵役についてもらうことによって、下層家庭からの不満を解消し「上下一体」となることであったという。

 ただ、多くの証言の中で、この番組でもっとも言いたかったことは何だったのだろう。私には疑問だった。証言者の中で、語る頻度が一番多く、番組の大きな底流をなすように編集されていた、志垣民郎という人の証言だった。彼はよどみなく、戦争は始まってしまったのだから、国民の一人として国に協力するのは当然なことで、大学でも、自分たちだけ勉強していていいのかの思いは強く、戦争に反対したり、逃げたりする者はいなかった・・・と語るのだった。この人、戦後は、どこかの経営者にでもなった人かな、の雰囲気を持つ人であった。どこかで聞いたことのあるような名前・・・。番組終了後、調べてみてびっくりする。復員後、文部省に入り、吉田茂内閣時の1952年、なんと総理大臣官房内閣調査室(現内閣情報調査室)を立ち上げたメンバーの一人だったのである。1978年退官まで、内調一筋で、警備会社アルソックの会長を務めた人でもある。2020年5月97歳で亡くなるが、その前年『内閣調査室秘録―戦後思想を動かした男』(志垣民郎著 岸俊光編 文春新書 )を出版、敗戦後は左翼知識人批判に始まり、学者・研究者を委託研究の名のもとに左翼化を阻止したという始終を描く生々しい記録である。番組での発言にも合点がいったのである。

もうひとり、作家の杉本苑子も出演していて、動員されて参加したのだったが、学生が入場するゲイト附近で、なだれを打って声援をした思い出を語っていた。当時は許される振る舞いではなかったものの、気持ちが高ぶっての行動だったが、学徒へのはなむけにはなったと思いますよ、といささか興奮気味で話していた。が、彼女を登場させたことの意図が不明なままであった。

 そして、エンドロールを見て、また驚くのだが、制作には永田浩三、長井暁の両氏がかかわっていた。二人は、2001年1月29日から4回放映されたETV特集「戦争をどう裁くか」の「問われる戦時性暴力」への露骨な政治介入の矢面に立つことになる。さらに、その後の二人の歩み、そして現在を思うと複雑な思いがよぎるのだった。

  8月も半ばを過ぎた。その他『玉砕』(2010年)、『届かなかった手紙』(2018 年)などの旧作も見た。今年も<昭和天皇もの>が一本あったが、まだ見ていない。平和への願いを、次代に引き継ぐことは大切だ。でも、過去を振り返り、そこにさまざまな悲劇や苦悩を掘り起こし、悔恨、反省があったとしても、現在の状況の中で、いまの自分たちがなすべき方向性が示されなければ、8月15日の天皇や首相の言葉のように、むなしいではないか。表現の自由がともかく保障されている中で、NHKは、ほんとうに伝えるべき事実を伝えているのか。他のメディアにも言えることなのだが。近々では、統一教会然り、ジャニーズ然り・・・。

 

 

 

 

| | コメント (0)

2023年8月17日 (木)

NHK8月の<終戦特集>散見(1)「アナウンサーたちの戦争」と「雨の神宮外苑 学徒出陣56年目の証言」

「アナウンサーたちの戦争」(2023年)

「アナウンサーたちの戦争」は、前評判の高いドラマであった。アジア太平洋戦争下のNHKアナウンサーたちの「葛藤と苦悩」を描くというもので、実在のアナウンサーが実名で登場する。
 私も、これまで、若干、NHKの歴史について調べたことがあったので、関心も高かったが、とくに目新しい展開はなかった。ただ、神宮外苑の学徒出陣の中継は、和田信賢の担当だったが、マイクの前で絶句、隣の志村正順に手渡して、その場を去り、学生たちの行進に悶絶するという場面だった。というのも、事前に、多くの学徒たちに取材し、「死にたくない」と涙ながらの本音を引き出していたからであり、それを原稿には反映できないまま、徹夜で仕上げた原稿を前に、語り出せなかったという設定であった。また、一つは、国策の「宣伝者」、プロパガンダこそが任務として「雄叫び派」の先頭に立っていた館野守男が、インパールで<死の行進>を目の当たりにして、帰還後は一転する。館野の変容は事実ではあったことは、どこかで読んだことがある。
 ただ、和田の一件は、はじめてだった。いまのNHKは、ドキュメンタリーでもドラマでも、平気で史実を曲げることが多いし、編集で都合の悪いところは切ってしまうのが日常だから、この辺は調べてみたい。
 なお、学徒出陣の中継を担当したアナウンサーについては、思い出すことがある。敗戦直後、我が家にはミシンがなく、洋裁が苦手だった母は、自分の着物をほどいたものや安い生地が、闇市で手に入ったりすると、近所のKさんという洋裁の得意なおばさんに、寸法を測ってもらって、ジャンバースカート、ワンピース、トッパ―?などをしつらえていたことがあった。駄菓子屋の裏手に間借りをしていた。これは母からのまた聞きなのであるが、Kさんは苦労人で、先のアナウンサーとは離婚して、子どもを自分の手では育てられなかったと。当時はまだラジオだけだったが、それでも、はなやかな職業の人にも、いろんなことがあるのだと、子ども心に知った。現在でも、NHKの職場はどうなっているんだと思うような、過労死あり、不倫あり、ストーカーあり、ひき逃げあり、・・・。

 戦時下のNHKの報道のニュースソースはすべて、国策に沿った同盟通信社であったから、大本営発表の嘘を平気で放送した。それに、現在のように「記者」はいなくて「放送員」というアナウンサーが原稿を書いていた時代である。だから、アナウンサーに問われるのは、いわゆる「淡々調」か「雄叫び調」にとどまらない、放送内容に深くかかわっていたのである。館野は、敗戦後は解説委員になっている。

 それにしても、登場のアナウンサーたちは、みんなどこか”かっこよく“、美談を背負ってソフトランディングをしているではないか。占領下のNHKはGHQとどう対峙してきたのか。独立後は、そして現在は、表現の自由が憲法に定められているのにもかかわらず。ETV特集「国際女性法廷」、クローズアップ現代「郵政簡保」、統一教会報道などに見る、政府からの圧力、政府への忖度は後を絶たない。
 現在のNHKのアナウンサーは民放に移ったり、フリーになったり、定年後はコメンテイターや大学教員になったりと華やかながら、報道やエンターテイメント番組にしても、その劣化は著しく、国営放送と見まがう国策報道に徹し、ジャニーズのタレントを登用し続け、民放で人気になったタレントを引き入れるのは日常茶飯である。

 なお、和田、館野の上司である米良忠麿がマニラ放送局を死守して亡くなるのだが、赴任中、家族にあてた手紙や絵はがきが残っており、放送文化研究所に寄贈されている。その一部が、「アナウンサーたちの戦争」のWEB特集で紹介されている。日本映画社の友人がフィルムの航空便で日本に送り、家族に届けられた、検閲なしのたよりだった。日本の占領下にあるマニラの町の人々や戦局悪化の中での暮らしの様子などが、うかがい知ることができる貴重な資料にもなっている。

☆☆☆☆☆2023年8月14日 午後10:00~11:30☆☆☆☆☆

Photo_20230819112901

【作】倉光泰子 【音楽】堤裕介 【語り】橋本愛 (和田実枝子役)【取材】網秀一郎 大久保圭祐【演出】一木正恵【制作統括】新延明
【出演者】森田剛(和田信賢アナ) 橋本愛(和田実枝子アナ) 高良健吾(館野守男アナ)浜野謙太(今福祝アナ) 大東駿介(志村正順ア ナ) 藤原さくら(赤沼ツヤアナ) 中島歩(川添照夫アナ)渋川清彦(長笠原栄風アナ) 遠山俊也(中村茂アナ)古舘寛治(松内則三アナ) 安田顕(米良忠麿アナ) ほか

| | コメント (0)

2022年7月22日 (金)

『朝日新聞』川柳欄への批判は何を意味するのか

 わたしは、長年、短歌を詠み、かかわってきた者ながら、新聞歌壇にはいろいろ物申したいこともあり、この欄でもたびたび書いてきた。最近は、毎日新聞や朝日新聞の川柳欄をのぞくことの方が多くなった。

・疑惑あった人が国葬そんな国

・利用され迷惑してる「民主主義」

・死してなお税金使う野辺送り

 7月16日の「朝日川柳」は「国葬」特集なのかな、とも思われた。短歌やブログ記事ではなかなか言えなかったことが、短い中に、凝縮されていると思った。

 安倍元首相の銃撃事件について、「民主主義への挑戦」といった捉え方に違和感を持ち、さらに、全額国費負担で「国葬」を行うとの政府にも疑問をもっていたからでもある。こうした川柳をもって、安倍元首相や政府方針を「揶揄」したのはけしからん、ということであれば、安倍批判や政府批判を封じることに通じはしまいか。政府への「忖度」が、言論の自由を大きく後退させ、自粛への道をたどらせたことは、遠くに、近くに体験してきたことである。  

 大手新聞社やNHKは、たださえ、安倍元首相と旧統一教会との関係、政治家と統一教会との関係に、深く言及しないような報道内容が多い。もっぱら週刊誌やスポーツ紙が取材や調査にもとづく報道がなされるという展開になっている。テレビのワイド番組が、それを後追いするような形でもあることにいら立ちを覚える昨今である。

 朝日新聞社は19日、J-CASTニュースの取材に対し「掲載は選者の選句をふまえ、担当部署で最終的に判断しています」と経緯について説明。「朝日川柳につきましてのご指摘やご批判は重く、真摯に受け止めています」と述べ、「朝日新聞社はこれまでの紙面とデジタルの記事で、凶弾に倒れた安倍元首相の死を悼む気持ちをお伝えして参りました」とし、「様々な考え方や受け止めがあることを踏まえて、今後に生かしていきたいと考えています」と答えたという。どこか腰が引けたようなスタンスに思えた。さらに7月22日には、重大な訂正記事が載っていた。上記「利用され迷惑してる『民主主義』」の作者名が編集作業の過程で間違っていたというのである。なんとも「シマラナイ」話ではないか。

Img337

二句目のの作者が、「群馬県 細堀勉」さんだったとの訂正記事があった(『朝日新聞』2022年7月22日)

 また、今回のNHKの報道姿勢について、当ブログでも若干触れたが、視聴者団体「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」は、7月19日、「犯罪捜査差の発表報道に偏せず、事件の社会的背景に迫る公正な調査報道を」とする要望書を提出した。番組のモニタリングから、容疑者の銃撃の動機についての解説や識者のコメント、安倍元首相の政治実績の情緒的な称揚、東日本大震災の復興政策、経済再生政策、安全保障政策において、事実と国民の意識とはいかに離反していたかの分析もない報道を指摘している。NHKはどう応えるのか。

 NHKには「政治マガジン」というサイトがある。事件後の関連記事には、安倍元首相と旧統一教会、政治家と旧統一教会の記事は一本も見当たらず、もっぱら警備体制、国葬に関する記事ばかりで、7月19日号の特集では「安倍晋三元首相銃撃事件<政治が貧困になる>」と題して、政治学者御厨貴へのインタビュー記事が掲載されている。「戦後日本が築き上げてきた民主主義が脅かされていると同時に、今後の政治全体の調和までもが失われる深刻な事態だと警鐘を鳴らした」という主旨で、今度の事件は「民主主義への挑戦」とのスタンスを展開している。NHKよ、どこへゆく。

 

 

| | コメント (0)

より以前の記事一覧

その他のカテゴリー

24時間営業 CIA NHK TPP すてきなあなたへ アメリカ イギリス インターネット ウェブログ・ココログ関連 オランダ オリンピック オーストリア ジェンダー スイス ソ連邦・ロシア チェコ デンマーク ドイツ ニュース ノルウェー パソコン・インターネット フェルメール フランス ベルギー ボランティア ポーランド マイナンバー制度 マス・メディア マンション紛争 ミニコミ誌 ムハ ミュシャ ラジオ・テレビ放送 世論調査 住民自治会 佐倉市 医療 千葉市 千葉県 原子力 原発事故 古関裕而 台湾 台湾万葉集 吉野作造 喫茶店 図書館 国民投票法案 土地区画整理事業 地方自治 地震_ 大店法 天皇制 女性史 寄付・募金 年金制度 憲法 憲法9条 成田市 戦争 戦後短歌 教科書 教育 文化・芸術 旅行・地域 旅行・文化 日本の近現代史 日記・コラム・つぶやき 映画 映画・テレビ 書籍・雑誌 朗読 東京大空襲 東日本大震災 栄典制度 横浜 歌会始 池袋 沖縄 消費税 災害 災害_ 特定秘密保護法 環境問題_ 生協活動 短歌 社会福祉協議会 社会詠 福祉 租税 紙芝居 経済・政治・国際 美術 美術展 航空機騒音 薬品・薬局 表現の自由 裁判・司法制度 規制緩和 趣味 農業 近代文学 道路行政 選挙 都市計画 集団的自衛権 韓国・朝鮮 音楽 高村光太郎